姉さんを起こし私は弟の一夏の元へ戻る
「……あっ、十秋姉。千冬姉は起きたか?」
「うん。もうすぐ来るよ」
「……すまんな。また寝坊してしまった」
「……姉さん?そろそろ自分で起きられるようにならないと一人暮らしした時に辛いよ?」
「……解っているんだが中々な……。」
「……十秋姉、小言は良いから取り敢えず食おうぜ?冷めちまうよ」
「……そうだね。食べようか。…頂きます」
三人で声を合わせ食べる。基本的に私は食事中は喋らない。何故なら……
……ちっ、近いよ、千冬……
私は前世で心奪われた千冬の隣に座っているから……正直下手に口を開くと余計な事を口走りそうになる……
この家に千冬の妹として誕生しもう十年近くなるが未だに千冬との距離感に悩む。
千冬は警戒心が強い方だったが信用してる人間には素の自分を見せ家族なら更に心を開く
……一夏は弟であり異性であるせいか一定の距離があるが私は同性のせいか物理的にも精神的にも千冬は距離を詰めてくるので非常に心臓に悪い。
……というか千冬?お願いだから私を膝に乗せようとしないで?食事どころじゃ無くなっちゃう……
一夏はニコニコしてないで弟なんだから姉の暴走を止めて?苦笑しながら首横に降らないで!?本当にキツいんだってば!?
……というのが千冬が家にいる間の私の状況である。
「……では、行ってくる。バイトがあるから今日も遅くなるからな。先に寝ててくれ」
「……行ってらっしゃい。姉さん」
洗い物をする一夏に代わり見送りをする。……千冬は家事が苦手である。奨学金で高校に行き、かつバイトを掛け持ちし育ち盛りの私たちを養うだけのバイタリティーはあるんだけど家事だけはどうしても苦手らしい。こればかりは前世の時から変わってない。……惚れた弱味と言おうか……毎回彼女の生成する料理に似た何かを口にして寝込んだ苦い記憶が再生される……首を振り考えを切り替える
「……十秋姉?俺もう準備出来たけど?」
「……ごめん一夏。今ランドセル持ってくるね」
……今日は前世の事を夢に見たせいか物思いに更けることが多い気がする……いや。いつもだよね。主に原因は千冬だけど。
……同性とはいえ家に私しかいなければ堂々と目の前で着替えるし、一緒に風呂に入ろうと誘ってくる……正直その度に悶絶しそうになるから本当に止めて欲しい。せめて一夏を生け贄にしようと思った事もあるけど……
「俺は良いから二人で入ってきなよ」
……一夏と私は双子ということになっている……そう、一夏も小学生なのだ。……普通小学生ってもっと年上の家族に甘えるものじゃないの!?お願いだから千冬と二人きりにしないで!?最悪湯船に浸かる前に逆上せちゃうから!?何その母性溢れる笑顔!?小学生男子のする顔じゃないよ!?
……実際料理の腕は前世というアドバンテージがあるはずの私より上なので女子力的には負けている事になるのだが。
「……姉ちゃん何してんだ!?急がないと遅刻するって!?」
「……ごめん!今行くから!」
いけない。私のせいで遅刻したらさすがに申し訳が立たない。
私は用意していたランドセルを掴むと玄関に向かった。