「……あら?目が覚めていたのね。」
さっきの女性が私に気付いた。こっちに近付いてくる…!
私は咄嗟にさっき見つけたガラスの破片を掴んで手を後ろに回し隠す。……手を切ったみたい…痛みと血が流れるのを感じた。
「……もうすぐモンド・グロッソの決勝よ。でも貴女の姉は出られないわ。だって貴女がここに居るんですもの。」
「……私を誘拐したのはやっぱり姉さんの優勝阻止が目的なの…?」
「……賢いわね。そういう子は好きよ。そう。私の目的は織斑千冬が決勝に出るのを阻止する事。だから小憎たらしい織斑一夏を攫うようにこいつらに言ったんだけど、ね……」
そう言い彼女は男たちを睨む。
「……いやあ。すまねぇな、嬢ちゃん顔が似てるから間違えちまった。」
……白々しいにも程がある。確かに今世の私の顔は一夏に似ているけど私と一夏では体格も服装も違う。
「……まあ良いわ。人質としてならどちらでも構わないし、何より……」
そう言い私に近付くと私の頬に手を這わせる
怖気が走る
「……なっ、何…?」
「……怯えてるわね。可愛いわ。私は貴女みたいな子が大好きなのよ。」
……躊躇してる場合じゃ無さそう。さすがに私も千冬以外の同性に食われる経験はしたくないよ……
私は彼女を見る……私に全く警戒していないらしく嗜虐的な笑みを浮かべる彼女はISを纏っていない。やるなら今!
「…ッ!このガキ!」
私は彼女の顔を破片で切りつけ怯んだ彼女を突き飛ばした。
「……何をしてるの!?早く捕まえなさい!」
私は突然の事に驚いている男たちの間を走り抜ける。
目指すはあのドア!
私はドアを開け外に出た。
……スタミナには自信があるけど何処に逃げれば良いんだろう?
外に出て勢いで適当に走っている私の周りには私が居たのと同じような倉庫が並んでいる。
……そもそもここは何処なのかな?
千冬との交渉が目的ならここは多分ドイツなんだろうけど……
私はドイツの地理には詳しくない。
方向音痴の気は無いけど何処に行ったら良いのか分からないんじゃ……
「……とにかく今は走る!」
取り敢えず後ろから追いかけてくる男たちを撒かなきゃならない。私はスピードを上げた
……私は前世の頃より小柄だ。身体能力の差の出る一因である。実際私はどうしても前世との身体と感覚が合わないせいで運動はあまり得意では無い。
……でも小柄だから走るのには自信がある。
コンテナに囲まれたコーナーを録に減速せずに無理矢理足捌きだけで曲がる。
「……イタッ!」
……失敗した。足に激痛が走り倒れ込んだ身体を起こし立ち上がり再び走ろうとするけど……
「……ッ!ダメ。完全に捻った…」
走れないどころかただ立ってるのも辛い。足音は遠いけどまだ聞こえる。
「……このままだと追いつかれちゃう……」
私はキョロキョロと辺りを見回し先程から見えている倉庫のうちの一つに隠れる事にした。足を引きずりながら倉庫まで向かいドアに手をかける
……鍵はかかってない。私は中に入った。
中は私が居た倉庫と特にそれほど変わりは無い。
取り敢えず私は積み上がっているコンテナの影に隠れた。
ブーブー……
携帯のバイブ……そうか。試合中に鳴っても困るからマナーモードにしたんだっけ。
私は携帯を見る……電話だ。
「……一夏…。」
誘拐についてもう交渉されてたのかな。そうでなくてもさっき外を見たら完全に夜になっていたから普通に連絡は来るだろうけど。……どうしよう…。電話に出れば一夏に助けを呼ぶよう求める事も出来る。でも……
「……ここが何処か分からない。それに……」
私は千冬や一夏に助けに来て欲しくない。でも……
「……私に何かあったら千冬や一夏は悲しむのかな……」
電話はまだ鳴り続けている……私は電話を切った
「……私が自力で逃げ切れば良い。そんなに難しくない。」
私は自分にそう言い聞かせる。やがて私のいる倉庫のドアが開いた。
「……ここにいるんでしょう?鬼ごっこは終わりよ。」
そこにはさっきの女性がISを纏い立っていた。……うん。そうだよね、分かってた。生身の人間を撒けてもISは振り切れないよね……
「……出てきなさい。ここに入って行くのは見えていたのよ。人の顔に傷付けてくれちゃって……今なら謝れば許してあげるわ……」
……彼女の表情を見る限り許してくれそうには見えない。……あ〜あ…電話切らない方が良かったかな……