「…あの…」
「…何も言わないで…私が悪かったから…」
あれから時間が経ち、既に窓の外は白み始めていた…刀奈に部屋に引きずり込まれた後の事を私ははっきりと覚えてはいない…
「…あの…せめて聞かせて下さい…昨夜私たちは…」
「…何も無かったわ。誓って言う。私たち二人の間には何も無かった…どんな格好しててもね…」
現在私たちはベッドの上にいた…ろくに眠った記憶は無い…そして私は何故か服を着ていなかった。…二人して見ないようにしてるけど多分刀奈もシーツの下は裸だろう…。……本当に何も無かったの…?
「…じゃあ、昨夜は一体何が…?」
「…覚えてないならその方が良いわ…。…私も忘れたいし…」
「……」
納得はしてない…でも私もその方が良い気がする…
「…先にシャワー浴びて来るから…」
「…はい…。…あの…刀奈さん…?」
「ん?何?」
「…これから宜しくお願いします。」
「…はい。宜しくね。」
私は同室となる刀奈に挨拶をしておく事にした。
「…今日私は生徒会の仕事があるから先に出るわね。」
シャワーを浴び、着替えが終わった後私の作った早めの朝食を食べていると刀奈がそう言って来た。
「…刀奈さん、生徒会に入ってるんですか?」
「入ってるというか、私は生徒会長よ。ちなみにこの学校では生徒最強の実力を意味する肩書きでもあるわ。」
そうなんだ。私としてはすごいなぁという感想しか出てこないけど。…刀奈は今、二年の筈。という事は最高学年の三年より上の実力者という事になる。
「…そうそう。もっと褒めて頂戴♪」
うん。口に出して無いんだけどまた伝わってるみたい…
「私は十秋ちゃんのそれは嘘をつけないって事だから悪い事ばかりじゃないと思うわよ?」
「…余計な事まで伝わって酷い目にあった記憶しか無いんですけど…」
「…聖人君子じゃないんだから悪意ゼロの人の方が珍しいわよ。…十秋ちゃんの場合、悪口の様で悪気は無かったりするから、相手がどう受け取るかで変わるけどね。…それにしても…」
「何ですか?」
「…相変わらず純粋だなって思って。そこまでだと逆に心配になるわ…。」
「……」
首を傾げる…少なくとも前世でも私は特別善人だった記憶は無い。…今世でもそれは変わらない。
「…自覚無しと。…これは困ったわね…!いけない!もうこんな時間!それじゃ十秋ちゃん!私先に出るから!」
そう言って食器を水に浸け、急いで出ていく刀奈って…
「刀奈さん!廊下は走っちゃダメ…って、あ…」
ドアから顔を出すと見回りをしてたのか、我が姉がおり刀奈は下にしゃがみこんでいた。…出席簿って人の頭叩いただけで煙って出るものだっけ…?
「…見なかった事にしよう…」
完全に人間を止めている千冬を視界から外し、部屋に戻った私は自分の食器を片付け洗い物を始めた。