執拗く将棋を挑んで来る爺さんに閉口した俺はチェスにしないかと提案した…結果は…
「チェック。」
「む?ではキングをこちらに「往生際が悪いぜ?爺さん。再度チェック…いや、チェックメイトだな」むむむ…!」
「あんた執拗いぜ?どんだけ負けず嫌いなんだ?」
「……貴様は…実力を隠していたのか?」
「ちげーよ。単純に囲碁の方が苦手ってだけだよ、大体、将棋とチェスは似通った所あるが、囲碁は別物だろうが。」
「ならば、次は麻雀でも「相当道楽者だな爺さん…麻雀は二人でやっても仕方ねぇだろ。それともあんたの部下呼ぶ気かい?」不満かのう?」
「残り二人はどちらもあんたの部下…信用出来る訳ねぇだろ?つーか海軍元帥が麻雀は不味いんじゃねぇか?」
「金を賭ける訳じゃないから良いじゃろう?」
「もう勘弁してくれよ…あんた本当に何しに来たんだよ…俺たちはもう深海棲艦のテリトリーに入ってるんだぜ?緊張感無さ過ぎだろ…」
「ずっと気を張ってるといざという時に動けんぞ?」
「何でそんなに落ち着いてられる?」
「簡単な話じゃ…分かるんじゃよ。」
「何が?」
「奴らが来れば必ず分かる…それはお前でもな…」
「今まで一度も戦場に出た事の無い俺でも、か?」
「うむ。奴らが来れば分かる…確実にな。」
そう言って叢雲の持って来たお茶をズズっと音を立てて飲む爺さん…さっきまでは単に年甲斐も無く遊戯に夢中になり、悔しがる面倒な爺さんにしか見えなかった爺さんがまるで別人の様だ…貫禄が出て来てやがる…
「叢雲。」
「何かしら?」
「お前ら艦娘は深海棲艦の索敵は普通どうやる?」
知識はさすがにある程度あるが、一応聞いてみる事にする。
「……私たちはソナーやレーダーの反応を見たり、それに後は目視により発見するわ。もちろん人間より目は良いわよ。」
「爺さん「何も儂に限った話じゃない」…俺でも分かると言ったな?」
「うむ。変わるんじゃよ、空気がな。」
「空気だと?」
「目に見えるレベルで禍々しさが漂うんじゃ。そして、匂いも変わる。」
「匂い?どんなだ?」
「…説明が難しいのう、ただ、間違い無く分かる…奴らが来たと、な。そして…一度体験すれば二度と忘れん。」
「……」
若い頃から深海棲艦と戦い続けて来た爺さんの言う話だ…疑う気はねぇが…
「あると思うわよ?」
「あん?」
「私たちは人間より感覚が優れているけど…それでも先ずは自分の艤装についてる索敵用の装置に頼る…その方が正確だったりするから…でもその分だけ色々鈍くなると思う…その点、感覚的には劣ってる人間の方が逆に勘は鋭くなる…」
「……まあ良い。俺にも分かるんだろ?」
「うむ。間違い無くな…」
なら俺は待っていりゃ良い訳だ。
「そういう訳じゃ。ほれ、もう一勝負付き合え。」
「勘弁してくれ…叢雲、一旦代われ「パス。私は囲碁も将棋も、もちろんチェスも麻雀も出来ないから」……元秘書艦だったんだろ?」
「あんた秘書艦を何だと思ってるのよ…暇潰しの相手をする為にいるんじゃないっての。」