元帥の爺さんの口利きがあったのか漸く追加の艦娘がやって来て鎮守府の掃除もやっと捗り始めた。
「なぁ提督…」
「何だ天龍?」
艦娘がやって来た際、かなり適当な挨拶をかましたせいかほとんどの艦娘が命令こそ聴くもののプライベートでやって来る奴は居なかったという状況で良く話しかけて来るのがこの天龍だ…嘗て俺以上の偏屈な提督を相手にしてたので慣れてるらしい…
「…他に仕事は無いのか…?こっちは身体が訛っちまいそうなんだが?」
建物の補修その物は最終的には専門職に任せるしか無いという状況…鎮守府その物は広いとはいえ、人数が揃えば当然片付け程度なら進むので軈てやる事は無くなってくる…何故か建築の心得がある奴がいたらしく艦娘寮まで建て始めた…そこまで出来るなら建物の修繕もして欲しい所だが分野が違うのか…?
「…無いな、お前らが来た時も言ったが…ここはそもそもとっくに壊滅した鎮守府だ…深海棲艦が付近で目撃される事も今の所無い。」
仕事、と言われてもな…回されてる物資がまだ最低限しか無い事もあり遠征も儘ならない…
「…他の連中はアンタの怠慢でこうなってると騒いでるが…俺はそうは思えねぇな…アンタは多分割とやり手だ…聞かせてくれよ、何でこんな場所で提督やってるんだ?」
「…俺の事が聞きたきゃ上にでも聞きゃいい。」
…基本俺は海軍から見捨てられる寸前だった叢雲以外を信用していない。俺の口から身の上をベラベラ喋るつもりはねぇ…
「…聞いたよ、だけどさ、何かろくな話を聞かなくてよ「なら、良いじゃねぇか。結局お前の聞いた事が全てだ」…う~ん…」
上が何て言ってんのかは知らねぇ…だが、天龍のこの顔と艦娘達からの俺への評判を見る限り相当な悪評をまいているようだ…
「やっぱ納得いかねぇ。なぁ教えてくれよ提督?アンタ一体何者なんだ?」
「知りたきゃ自分で調べな…後の事は保証しないがな…」
「チッ…分かったよ。んじゃあな。」
天龍は俺に背を向けて去っていった…さてと…
「何の真似なんだ龍田?」
俺は後ろから槍を首に当てる龍田にそう聞く。
「天龍ちゃんに手は出させない…!」
「…上の連中どんな噂を流してんだ…?安心しな、何もしやしねぇよ。…見ての通りアイツが自分から俺に寄ってくるだけだ…」
「……信用出来ないわ。なら教えてくれるかしら?貴方、本当は何者?」
「…お前もか…だから知りたきゃ自分で調べな…」
「良いわ。貴方が何者か絶対に暴いてあげる…首を洗って待っていなさい…!」
「……」
……龍田の情報網がどの程度か知らんが俺の正体を割り出せるとは到底思えねぇな…そもそも俺の元の身分は抹消されてる…要は記録その物が無いんだ、出てくる訳ねぇ。つまりは幹部連中の話を鵜呑みにするしかねぇ訳だが…あっ…
「…前評判通りって事なら俺は龍田に殺されんじゃねぇか?」
完全にとばっちりじゃねぇか、畜生が。…あー!愚痴っててもしゃあねぇな…さて、とっととこの書類の山を片付けるかねぇ…