翌朝、私は迎えに来た一夏と一緒に教室に向かっていた…
「十秋姉、体調は問題無いか?」
「大丈夫だよ…もう…別に迎えになんて来なくても良かったのに…」
「…いや、元々は俺もちょっと早目に部屋に来て刀奈さんに一言、十秋姉の様子を聞きに来ただけだったんだけど…」
「えっ?」
「……廊下で何か千冬姉がスタンバってたから…何してるのか聞いたら『更識姉は忙しくて付き添えんだろうし、病み上がりの十秋をそのまま一人で教室に行かせるのは不安だから私が教室まで連れて行こうと思ってな』…とか言うから俺が付き添うからって言って戻って貰ったんだ…」
「……ありがとう一夏…」
いくら病み上がりでも教師である千冬の付き添い付きで教室まで来るのはちょっと恥ずかしいかな「ちなみに…」えっ?
「帰す前に、千冬姉の様子が何か変だったから念の為何時からいるのか聞いたら『昨日の夜中からここにいる』って答えたよ…」
……千冬ってば…もう…
「あっ、十秋さん元気になったの?」
「うん、心配かけてごめんね?」
二日振りに教室に来た私は皆から声をかけられながら席に座った。
「十秋、見舞いに行けなくてすまなかった…」
「良いよ、気にしないで。…箒に移しちゃったら困るし…」
「…実を言うと、その…お前と同室のかた「ああ、楯無さん?」……楯無?」
そこで私は箒に近付き、耳打ちした。
「刀奈さんは普段は家の事情で違う名前を名乗ってるの。だから皆の前では楯無さんでお願い…」
「…そういう事なのか。分かった…それで「もしかして…苦手?」ああ…どうもな…理由は上手く説明出来ないんだが…」
…箒が刀奈と会話したのは多分、一昨日にセシリアが部屋に来た時に隣の一夏と箒の部屋で待って貰ってた時だね…この様子だとまだ刀奈の本性については知らないみたい…直感的に合わないと判断したのかな?…私でさえ昔から散々弄られてるんだから、生真面目な箒だと多分、格好のおもちゃにされるし、相性が悪いのは間違い無いね…
「…そうだ…戻って来たばかりのお前に言うのも何だが、一つ相談があるんだ…良いか?」
「私は別に構わないよ?…もしかして…内緒の話?じゃあ一限の後の休み時間で良い?」
「…ああ…すまない…」
……何だろう?
ちなみに今日のホームルームで私は、徹夜明けのせいなのか、まるで幽鬼の様な雰囲気の千冬に無言でジッと見詰められるという恐怖体験をしました……我が姉ながら本当に怖かったよ…
「それで何かな?」
一限の後の休み時間…私と箒は授業のやっていない教室に入った…意外とこういう穴場多いんだよね、IS学園…
「ああ…実はセシリアの事なんだが…」
「…思ったより積極的だった?」
「……思いの外一夏と距離を詰めるのが上手くてな…幼なじみというアドバンテージも有って無いような物だし、どうしたら良いかと思ってな…」
そういう相談か…今世でも箒が昔から一夏を好きなのは知ってる…と言うか今回は実際に見てたから…でもまさか、長期間会って無かったのにまだ好きなんて…一途だなぁ…私としては箒の想いに共感出来る所もあるし、セシリアには悪いけど箒を応援したい…さてと…
「…ちょっと厳しい事言うけど…良い?」
「ああ、言ってくれ。」
「それはセシリアが距離を詰めるのが上手いんじゃなくて単に箒が下手なだけだと思うよ?…それから別に幼なじみって必ずしも恋愛面で有利な点じゃないと思う…長い付き合いだと逆に恋愛対象から外れる場合もあると思うし。」
「そう、なのか…」
「距離が近いのはセシリアなりの必死さなんだと思うよ。…一夏との付き合いもまだ短いから、恋愛対象に入れる様に自分の魅力をとにかくアピールしてるんだろうね…」
「…私にとっては本当に強敵だ…何か良い手は無いだろうか…?」
……セシリアの料理下手を教えてマウント取らせるのはフェアじゃないなぁ…というか一夏も料理上手いから胃袋を掴むのが必ずしも有効か怪しいし…それなら、これかな?
「箒がセシリアよりもっと一夏に近付けば良いよ。…悪いけど他に思い浮かばないかなぁ…」
「やはりそうなのか…だが、セシリア以上、となると…私はほぼ一夏に密着するしか無いんだが…」
「私の思ってた以上に積極的なんだね、セシリア…でもそれなら余計に他に方法無いと思うよ?…ただでさえ一夏は鈍いし、長い付き合いの上に、箒はしばらく一夏と会えてなかったし、そうなると一夏が無意識の内に箒を恋愛対象から外してる可能性もあるから…」
「…そこまで危ういのか、私の状況は…」
「…一夏の気持ちは私も分からないから断言は出来ないけどね…う~ん…今の所私から言えるのはこれくらいかな?…結論を言えば事故でも何でも良いから一夏に抱きつけば良いって事だよ。」
……言ってて思った…これ兄さんの発想と一緒じゃ…もしかして似て来ちゃった…?…うわ…ちょっとショック…
「…実行は中々難しいが参考にはなった…ありがとう十秋…」
「……どういたしまして…頑張ってね、箒…」
私…人の恋愛相談乗ってる場合じゃないよね…?ちょっと悲しくなって来たな…今の私は告白すらはばかれる立ち位置だし…大好きだよ…千冬…この一言がもう私には言えないんだよね…やっぱり前世で告白出来ていたら何か変わったのかな…?IFの話に意味が無いのは分かってるけどやっぱり気にはなるなぁ…
「…どうした?」
「…えと…何が?」
「……気が付いて無いのか?」
「…えっ…?いや、本当に何…?」
「…見てみろ。」
「…えっ…!?」
箒の出して来た鏡を見て私は初めて自分が泣いている事に気付いた…