「何、と言われましても…普通の具材を使っただけですわ。」
普通とは…?私はそれ以上は何も聞けなかった…
……後に幼馴染だと言うメイドさんが完全に匙を投げる程、セシリアが手の付けようの無い料理下手だった事実を知り、一夏と箒、私の三人で頭を抱えるのは別の話…面識も無ければ、連絡する方法も無かったとは言え、先に教えて欲しかったよ…せめて食べる前には知りたかったな……知っていても私は食べただろうけど。
「…で、取り敢えず異常は無しか?」
「うん、二人も大丈夫だったんだよね。」
「一応、な。ただ、後々異常が出るかも知れないから何とも言えないが。」
私は医務室に迎えに来た一夏と箒と話していた。
「…う~ん…二人は大丈夫だったのに何か情けないな…」
「…と言っても俺たちも咄嗟に吐き出しただけなんだけどな…どう考えても食べ物じゃない味だったし…」
「まさかと思うが…飲み込んだのか…?」
「え~っと…多分…一応薬貰って来てるけど…」
「……今日はそれ飲んでさっさと休んだ方が良さそうだな…」
「え…?そんなにヤバい…?」
「吐き出した私も未だに命の危機を感じる程だぞ?大事を取るに越したことは無い…友情とかそういうのを抜きにしてな…」
「…あんまり友人の作った物を危険物扱いするのは…」
セシリアは先に帰したから、この場にいないのが幸い…
「いや…アレ…下手とかそういうレベルじゃないしな…」
「私は舌に乗せた瞬間、身体が拒否反応を起こした…正直、味も分からなかった…」
「……そこまで?」
「「その場で気絶した十秋姉(お前)が羨ましかった」」
「え!?」
「アレを食べた後に事態の収拾を着ける羽目になった私たちの身にもなって欲しいな…私もセシリアを責めたい訳じゃないが…アレは…さすがに…」
箒が自分の身体を抱き、震え出す…トラウマになるレベルなの!?
「俺としては…セシリアが味覚音痴じゃないなら正直、殺意を覚えるレベルだ…食わされた方としても、料理を作る人間としても、だ。」
「……」
一夏も身体が震えているけど…これは、箒の様に恐怖を感じてるんじゃない…一夏は怒ってる…私の知る限り、この世界でここまでキレたのは千冬が最後に料理でやらかした時以来…
「…ま、元々お嬢様育ちって話だし、単純にろくに自分でやった事が無い可能性を考えたら有り得なくも無いけど…」
「それで済ませて良いのかアレは…」
「…本人の態度見る限りわざとじゃないみたいだし…」
「…あのレベルを正常に料理作れる様にするのは相当骨が折れるな…」
「……セシリアって食堂で食事してなかったの?」
……休んでた間のセシリアの食事事情を私は知らない。その前も交流無いしね…
「…いや…少なくとも俺らと一緒に食った時は問題無かったな…普通に美味そうに飯食ってた。」
「へぇ…あれ?一緒?」
「…今でこそクラスメイトとは多少話せる様になってるがな…当初は一人で食べてたんだ…寂しそうにしてたから見兼ねてな、私から声をかけたんだ…」
「そっか…てか、あれ?それは分かったけど…それならセシリアって…」
「味覚音痴では無いって事だな…多分味見してないんだろう…」
「味見って…普通するものじゃ…」
「バリバリの初心者だからな…そういう場合もあるんだろ…料理本には手順に一々味見しろなんて書いてないのが大半だし。」
「あー…」
「…とは言え、普通料理本の手順通りならまともな物が出来る筈だが…」
「…調味料も全部目分量だったんだろう…」
一夏がそう言って箒も納得した様に頷く…いやいやちょっと…
「セシリアを庇った私が言う事じゃないけど…それだけでアレ出来るの…?」
そう言うと二人が私から目を逸らす…つまり分からない、と…大丈夫かな、これからの事を考えると不安になって来た(私が教える訳じゃないけど)
「そう言えば味覚に障害のある人に料理教えるのって結局どうやるの?」
「「手順と分量を身体に覚え込ませて、ひたすら練習」」
「……それだけ?」
「味が分からない以上、味見で調整出来無いからな。」
「どうやっても練習あるのみだ…最も、一つ一つの料理覚えるのに通常、それなりの時間がかかるから相当気の長い奴しか無理だろうな…」
「うわぁ…」
私なら教えるのも教わるのもちょっとキツイかな…