「それで…本当に大丈夫なの…?」
部屋に戻り、改めて箒に事情を説明された刀奈がそう聞いて来る(何でも一夏の携帯に連絡あってその際、先にある程度説明したとか…何で知っていたのか…?は、愚問なんだろうね…)
「大丈夫ですよ…多分。」
私自身は今の所、異常らしい異常は感じない。
「寧ろ、胃は頗る元気ですね「要するにお腹空いてるって事?」ええ…まあ…」
いや…だって…昼食は結局食べてない様なものだし…夕食はまだだし…
「そう。じゃあ今日は私が作るから…」
そう言って刀奈が立ち上がる…
「良いんですか?」
普通に考えて色々忙しい刀奈がこんな早い時間に部屋にいるのは珍しい…それなりに無茶をしてるんじゃ…そう思ってはみたものの、こういう時どうせ聞いても無駄なのはもう分かってたり(付き合いも長いしね…)
「ええ…お粥で良い?」
「え「下手な物食べさせて、吐いちゃったら不味いでしょう?セシリアちゃんの作ったサンドイッチをちゃんと吐き出した一夏君や箒ちゃんと違って十秋ちゃん飲み込んだって言うし。」…いや…あの…」
「今は胃に物が無いから分からないだけで実際に食べ物を通したら直ぐにでも異常が出るかも知れないわよ?」
「う…確かにそうですね…分かりました、お願いします。」
まぁ迂闊に重い物は入れられないか…ちょっと残念だけど仕方無いかな…と言うか、作って貰う側なのに文句は言えないか…
刀奈の作ったお粥を食べ、薬を飲み、刀奈に勧められるままベッドに横になる…眠れない…さすがに時間が早過ぎる…そもそもさっきまで寝てた様なものだし…
「……」
そう思ってたんだけど…机に向かって黙々とペンを動かす刀奈を見てたら自然と目蓋は重くなって行った…顔をずっと一方に向けてるから負荷もかかってそうだし、そうでなくても意外と普段から疲れが取れてなかったのかも知れない…良いや…もうこのまま寝てしまおう…夜中に起きたりしたら面倒だけど…それはその時考えたら良い…私は目を閉じた。
「ん…「あら?目が覚めた?」はい…」
自分の出した声に反応し、目を覚ました私に声がかけられた…まだぼんやりしていた意識が覚醒して行く…
「今、何時ですか…?」
声をかけて来た刀奈にそう質問する…
「二時を回ったところね「夜中のですか…?」ええ。」
それ以外にある訳無いんだけどね…それにしても…やっぱり変な時間に起きちゃったか…私は頭を起こし…次いで、身体を起こした。
「あら?どうしたの?」
「…喉が乾いたので。」
「私が持って来ようか?」
「大丈夫ですよ、そこまで体調悪くないですし。」
「そう?」
私はベッドから下りるとキッチンに入り、冷蔵庫の前に向かう…取っ手の部分を掴み、開けた。
「……」
中からミネラルウォーターのペットボトルを掴み、取り出す…キャップを開け、口を付けた。
「……」
500ml入りのボトルは思いの外早く無くなり、口を離すと息を吐く。
……夢は見なかった…元々、何時も見てる訳じゃないけど期待していなかったと言えば嘘にはなる…今を最悪と言うつもりは無いけど…あっちでの生活は確かに楽しかったのだ…千冬と、親友として対等な付き合いの出来ていたあの頃が。
「……」
今の私は何処まで行っても千冬の妹…あの頃の様に振る舞う事は出来無い…
「あ…」
気付くと手の中でペットボトルが潰れていた…元々潰せる様に柔らかい作りのボトルだが…少なくとも私らしくは無い…普段は一々潰さない。
「十秋ちゃん?」
「…何ですか?」
声をかけられ、そちらを向く…刀奈がキッチンを覗き込んでいた。
「戻って来ないから…」
「……何でもないです。」
私は潰れたペットボトルをゴミ箱に放り込んだ。