結局その後は全く眠れないまま、朝を迎えてしまった…一応寝てなかった訳では無いから今の所肉体的にどうこうと言うのは無い…懸念してた胃の方も問題は無さそう…
……ただ心の中は荒れ狂うまでは行かないが、それなりにモヤモヤはしている訳で…
「走って来よう…」
そろそろ一夏と箒は出て来る頃だろう…取り敢えず今朝だけは一緒に走らせてもらおう…そう考えて、私は着ていたパジャマを脱ぎ、ジャージに着替えた。
寝ている刀奈を起こさないようにそっと部屋を出てみれば丁度二人も自分たちの部屋から出て来た所、話しかけてみれば…
「え?今日はランニング行かないの?」
「すまないな、私がワガママを言ったんだ…」
聞けば今日は一夏に剣道で負けてしまった箒の申し出でこれから道場の方へ向かうと言う。
「じゃあリベンジするの?」
「あれからそれ程時間は経ってないからな、あまり実力は変わってないだろうが、改めてやったら何処まで通用するのか試してみたいんだ…」
「アレは正式な試合じゃないけど…俺も勝ち逃げはどうかと思うし、特に断る理由は無いから受けたんだ。」
「そう…あれ?でもこんな朝早くから道場使えるの…?」
「私が千冬さんの方に事前に許可を取っている…当然、と言えばそうなのだろうが、朝方道場を使いたがる奴は案外多いらしくてな…今日までかかってしまった…」
「そっか…」
う~ん…それならさすがに二人の邪魔は出来ないかな…仕方無い、部屋に戻ろう…そう思った時だった。
「…で、お前も来るか?」
「え?」
「このまま帰るのも何だろう?」
「…でも、良いの…?」
「私は別に構わないぞ。」
「俺も特に問題は無いよ。」
「それなら…行こう、かな…」
「ん?何だ、お前も来たのか?」
「あれ?姉さん?何でここに?」
道場に来てみれば千冬がいた。え?何で?
「…織斑先生だ…ま、今は良いか。私は審判さ、まともな試合をやるなら必要だろう?」
「…確かに…」
その後着替えに更衣室に行く二人を待つ間、適当に千冬と話をする…
二人が戻って来た。
「よっ、待たせたな。」
一夏がこっちに来て声をかけて来る。
「…ん?どうしたんだ?」
「それ、もしかして一夏の道着じゃない?」
「…荷物に入ってたんだ。ここに道場あるの知らなかったから使うのか?とか思ってたんだけどな…」
私たちの荷物を用意したのは更識家…既に刀奈と虚が入学してるから道場あるのは知ってる筈だよね…
「それはそうと…一夏、ちょっと緩くない?箒は強いよ?」
「侮っちゃいないさ。ただなぁ…」
そう言って一夏が自分の背後を立てた親指で指す。
……そこには正座をして目を瞑る箒がいた。
「…もしかしてかなり気負ってる…?」
「多分な…俺としてはもっと気楽にやりたいんだけど…」
「…挑戦する方の箒としてはこれが当然かもしれないけどね…」
「俺もあれくらいやった方が良いのかな…?」
「一夏は一夏の思う通りやれば良いと思うよ?」
この勝負に異常とも言える情熱を向ける箒とあくまでも自然体な一夏…それで良いと私は思う。