Salon du Livre…フランスでは今くらいの時期に開催されている行事。…何の事かと言えば要するに本の見本市の事。…本と言っても硬い本ばかりでなく絵本や漫画まで扱っていてしかも世界中の本が集まるからフランス人はもちろん、わざわざ他の国から遥々訪れる人もいるとか…私自身は本を読むと言っても人並み程度だけど…ジャンル問わず意外と読書量の多い一夏君に本を送ってあげよう(何気にフランス語と英語読めるんだよね…残念ながら話す事は出来ないけど)
そう思って来たんだけど…
「何で束がここにいるの…?」
「えーっと…■■ちゃんが家を出るのを見て…」
「……跡をつけて来たの…?」
「…はい…」
トイレに行こうとしたら何となく覚えのある雰囲気をした人が会場で立ち尽くしていたのを見つけて取り敢えず会場の外まで引っ張って来た…付き合いが長いから分かっただけで一応変装は完璧だけど…あんなに狼狽えてたら警備の人に連れて行かれちゃうよ…
「とにかく今日は帰った方が…」
前回のお祭りの時と違って私としては束の相手をしている余裕が無い。…と言うか今回は本を買わないと来た意味が無いし…
「え~!大丈夫だよぉ!」
そう言う束の顔色は悪い。あー…完全に人酔いしてるね…正直この状態の束を連れて歩くのはキツい…会場が混みあってて私も酔いそうだし…とても束の相手はしてられない…
「…いや、本当に顔色悪いから止めた方が…」
「大丈夫だって!」
…何処から出て来るのかな、この自信。…仕方無いか…束は元々頑固だし、これじゃあ何言っても帰ってくれないよね…
「…本当に大丈夫…?」
「大丈夫だってば!さっ、行こう!」
「…待って束!走らないで!人にぶつかるから!」
私の手を引っ張って走り出す束を止める…この勢いで会場まで行ったら本当に人にぶつかっちゃうよ…
一時間後、私は束を連れてトイレの個室に来ていた…
「大丈夫…?」
「…ごめん、ダメかも…」
私はしゃがんで吐き続ける束の背中をさすっていた。
「だから言ったのに…。」
「…ごめんね…今日は帰るよ…」
「…この場で姿を消すとか止めてね…?外まで送るから。」
「……うん。」
こんな人の多い所でそういう事されると困る…誰かに見られたら私が説明しなきゃならないし…
「それは大変だったな…」
「…本当にね…」
後日、織斑家に来た私はこないだの一件を千冬に愚痴っていた…
「束は、根は悪い奴じゃないんだがな…」
「それは分かってるけどね?こうも振り回されるのはちょっと…」
何時も突拍子も無い行動を取るから振り回される方は非常に疲れる…私も体力にはそれなりに自信ある方だけどそれでも辛い…
「あの、千冬姉、■■さん?」
「「何(だ)?」」
「さすがに本人の前で色々言うのは止めてあげた方が…ほら、束さん凹んでるし。」
一夏君の指差す方には項垂れる束の姿…別に忘れてたわけじゃない。今日、私は束に日本に送って貰ったんだから当然存在は忘れてない。
「…酷いよ…ちーちゃんも、■ちゃんも…」
「…そうは言うけどさ束、毎回の様に振り回されたら私も色々言いたくなるよ?」
「…だったら私に直接言えば良いじゃん…何も私のいる前でちーちゃんに言わなくたって…」
「…お前の事だ。どうせ言っても流しただろう?」
「うー…」
何か唸ってるけど千冬の言う通りなんだよね…実際何度か言ってるんだけど…言っても都合の悪い言葉はスルーするから、束は。……一緒にいて退屈はしないけど疲れるのも確かなんだよね…