■■ちゃんは…本当にちーちゃんが好きなの…?
……私は当初何を言われたのか分からなかった…だから…聞き返した。
「…えっ?今、何て言ったの…?」
「■ちゃんはさ、本当にちーちゃんが好きなの?」
突然来て何を言うのかと思えば…
「…好きだよ…何か改めて言うと恥ずか「本当に?」どうして念押し……」
今さっきまで私は彼女に顔を向けていなかった…執拗く聞かれて漸く振り向いた時、見えたその顔は……
「どうしたの、束?…何か有った…?」
「質問に質問で返さないで欲しいな。悪いけどふざけて聞いてるわけじゃないから。」
……何でイラついてるの?私は彼女の為に入れたコーヒーをテーブルに置くと改めて告げた。
「…好きよ。私は千冬が好き。…愛してる。」
「……そう…ねぇ?」
「何?」
「…私ね、こう思うんだ…■ちゃんが好きなのは…自分なんじゃないかって。」
「……はっ?」
「■ちゃんが好きなのはちーちゃんに普通の女の子として扱われてる自分なんでしょ?…違う?」
「…何を言ってるのか…」
「この際だからさ…はっきりさせときたいんだ…本当に■ちゃんがちーちゃんを好きなのかを…■ちゃんは友達…間違いなく大親友だけど…私はちーちゃんの方が結局大事だから…」
「…束?」
「もちろん■ちゃんが大事じゃないわけじゃない…ねぇ…■ちゃんのお陰なんだよ?こうやって誰かの気持ちを考えてあげられるようになったの…だからね…私ははっきりさせておきたい…本当は私だって■ちゃんの事を応援したいし…」
「…矛盾してるよ?束は何が言いたいの?」
「…■ちゃんはさ、人を変えていく力がある…ちーちゃんはさ、今まで余裕が無かったんだ…いっくんの事ばかり考えて自分を蔑ろにしてた。」
「…うん…」
それは私も知ってる…私は最初に会った頃は純粋に友人として千冬の事を心配していた…それが恋愛感情になるなんて思わなかったけど…
「でも…ちーちゃんは変わったんだよ、■ちゃんに会って。…知ってるよね?最近のちーちゃん、めちゃくちゃ笑うんだよ?」
「…うん…知ってる…」
束程付き合いは長くないけど…私は初めて戦ったあの日からずっと彼女の事を見て来た…だから分かる…
「でもそれは私のお陰じゃないよ…千冬が自分で変わったんだよ…束だってそう…私の存在はきっと唯の切っ掛けの一つでしかない…」
認めたくないけど確かに私は誰かが良い方に変われる切っ掛けになるのかもしれない…私は良く人からそういう感謝を送られる…私には自覚は無い…強いて言うなら私は唯、自分が正しいと思える行動をしてるだけ…
「…ううん。■ちゃんのお陰だよ、間違い無く…ちーちゃんだけでなく…私が変われたのも…」
「…束…。」
「最初に私が会いに来たのはね?ずっとしかめっ面ばかりしてたちーちゃんがほんの少しだけど笑うようになったんだ…だからちーちゃんに■ちゃんの事を聞いてどんな奴か見てやろうって思って来たんだ…まさかちーちゃんと同じくらい大事な人になるなんて思わなかった…」
「……」
「ちーちゃんが言ってたよ…あいつは人に与えてばかりで自分の事を考えないんだ、って。」
「…そんな事…」
無い。私は何時も千冬に助けられて来た…ただ会えるだけで良かった…最初の内は…
「だからちーちゃんは■ちゃんの為に色々頑張ってたよ…知ってる?ちーちゃん、今はもう■ちゃんが来た時しかお酒飲まないんだよ?今まで唯一の娯楽だって言ってたのに。」
「…そう、だったの…」
全然知らなかった…
「理由は分かるよね?■ちゃんに会うためだよ…こっちに来るのにお金がかかるから、って。…別に何時でも私が連れて行くよ?って言ったけど友人に会う金ぐらい自分で出すって笑ってたよ…」
「……」
千冬…
「ちーちゃんは変わったよ、間違い無くね…自分で言うのも可笑しいかもしれないけど私だって…だから不思議なんだ…ちーちゃんが頑張っているのは気付いてた筈…でも…なら、どうして■ちゃんは変わらないの?」
「……」
私、は…
「■ちゃん、もう一度聞くよ?正直に答えて…■ちゃんが好きなのはちーちゃんなの?それとも、自分なの?」
「…私は…」
……私はあの時何て答えたのか…今の私には思い出せない…