私と千冬は向かい合わせに立った…
「…久しぶりだな、こうやってお前と戦うのは…」
「……バドミントンだけどね…」
大層な言い方をしたけど要は一夏君たちからラケットとシャトルを借りて二人でちょっとした試合をしようってだけ…ルールは割とフィーリング。…ここは専用コートも無いし…
「そう言うな、腹ごなしには丁度いいだろう?何なら本当の決着は次の大会でつけようじゃないか。」
「…千冬は優勝者だから間違いなく代表入りだろうけど…私は次は他の候補者破らないと出場出来ないんだけど…」
前回はたまたま他にめぼしい候補者がいなかっただけ。次はそれなりの倍率になる筈…
「お前が他の奴に負けるとは私には到底思えない。…それとも自信が無いのか?」
「…煽っても駄目だよ。私は自分に出来る試合をするだけだから。」
…と言うかあんまりハードル上げないで欲しい…変にやる気が出て困るじゃない…!もう…!その期待が嬉し過ぎて…!
「相変わらず謙虚だな。それでいて実際の試合では苛烈。…次は私も危ないかもしれんな…」
「…そんな事欠片も思ってない癖に。」
とはいえ、千冬に褒められるのは普通に嬉しい…顔が火照ってくる…
「もう良いから始めよ?それともこれも作戦?」
「…バレたか。誘っといてなんだがどうもこういう繊細なスポーツは苦手でな…テニスなら良かったんだが…」
「……」
……千冬の本気の腕力でバドミントン用のラケット振ったら壊れるからね…確かにこういうのは私の方が得意かな…でも私も本当はあんまり経験無いんだよね…子供時代は友達もいなかったし…まあ昔の話は今は良いや。それより…この昂りを早く千冬に…!
「…じゃ、行くね?…手加減はしないから。」
私は放り投げたシャトルを千冬に向かって打ち込んだ…
結論から言えば決着はつかなかった…千冬は最終的に力加減に慣れ、バシバシと私にシャトルを打ち返してきた…私は途中から返すだけで手一杯…と言うか何、あのスピード?途中からシャトルどころか千冬の手元すらほとんど見えなかった…千冬のコントロールが抜群に良いのと千冬の癖を知ってるから何とか飛んでくる場所を把握出来たけど…バドミントンってこんなに頭使うんだ…知らなかった…まぁ負けなかったし良いか…それより…
「…お腹減った…」
「あれだけ食ってもうか?確かに動いたが…」
「帰ったら夕飯用意するよ。」
そう言われてもちょっと我慢出来ないかな…あっ、そうだ…
「弾君?」
「何すか、■■さん?」
「確か弾君の家って食堂やってるんでしょ?これから行っていい?」
「良いっすけど…一夏がこの後飯作ってくれるんじゃ?」
「大丈夫。食べられるから。」
「……そういう事言ってんじゃないんだけどなぁ…」
「お前なぁ…私たちは先に帰るからな?お前だけ行ってこい。」
「…弾の所寄るんなら夕飯少な目で良いかな?」
「もちろん大盛りで「自重してくれ」……」
撃沈した私を後目に二人は帰って行った。
「…あの、元気出してください。」
あの後急激に仲良くなった蘭ちゃんの慰めがものすごく心地良い…
「ほら、取り敢えず立ってくださいよ…数馬、お前も来るか?」
「今日は遠慮しとくよ、じゃあな。それじゃあ■■さん、また…」
「うん。じゃあね。…ふぅ。それじゃあ案内してくれる?」
「復活早いすね…こっちです。」