さて、いざ五反田食堂に来てみると身構えていた私たちはいきなり肩透かしを食らった…
「おう!お前ら良く来たな!まあ座れや!」
…昨夜、弾君にフォローの連絡は入れたし、今日も一応行く事は伝えてあった…営業時間帯に行くと迷惑になるから夜にお邪魔しようとしてたんだけど…弾君から携帯を受け取った厳さんから「時間空いてるなら昼間に来い!」と言われて…いきなり怒鳴られる覚悟もしてたんだけど…店に入るなり厳さんは飛び切りの笑顔を浮かべて来て私は困惑してた…
「あー…取り敢えず入って下さいよ■■さん、一夏に千冬さんも。」
苦笑される弾君に促されても私は直ぐには動けなかった…
「私はついでか?良い度胸じゃないか。」
「いっ!?いや…!そんなつもりじゃ…!」
「止めろって、千冬姉。気にすんなよ弾。今日はメインは間違い無く■■さんだろうし、今のは千冬姉なりの冗談だって。」
「そっ…そうなのか…?俺はまたてっきり…いや!何でもありません。ささっ!どうぞどうぞ!」
「ほら、■■さん。早く入ろう。」
「…私たち以外に客がいないようだ。わざわざ貸し切りにしてくれたみたいだな…さっさと入らないとかえって失礼に当たるぞ?」
「…分かった。」
一番忙しい時間帯の筈のお昼に貸し切りにしてくれた事実に恐縮しながらも私は店に足を踏み入れた…
「で?何食う?」
「俺は…ラーメンにしとくかな。」
「私は…餃子定食にしておくか。…お前はどうするんだ?」
「じゃあ…昨日と同じのを。」
「おう!待ってな。」
そう言って調理に取り掛かる厳さん…思わず昨日と同じのを頼んじゃったけど…食べられるかな?さすがに緊張で喉通らないかも…
「お冷持って来ましたよ。」
「ありがとう、蘭ちゃん。」
蘭ちゃんが持って来たコップを受け取り、そのまま口を付けて…
「…えと…■■さん…?」
「…ふー…何?」
「…お代わり要ります?」
苦笑した蘭ちゃんがテーブルに置いた私のコップを指差しながらそう聞いて来て初めて気付いた…えっ!?私今のでお水飲み干しちゃったの!?
「やっぱり気付いてなかったんですね…それで、要ります?」
「…ごめん…貰える?」
「…ピッチャーも一緒に持って来ますね?」
「大分緊張してる様だな…」
「こんなシチュエーションでしない方が可笑しくない?」
「私は別にしてないな。当事者じゃないというのもあるだろうが。」
「一夏君は…?」
「俺か?俺は…厳さんの人となりよく知ってるしな…少なくともいきなり理不尽な事を言ってきたりはしないと思ってるし。」
長い付き合いの一夏君はそうかもしれないし、千冬は度胸あるからそうかもしれないけど私は昨日初対面であれだけ色々言ったから不安で仕方ないんだけど…
「まあ大丈夫だ。何かあったら私が守ってやる…だから気楽にしてれば良い…そもそもお前は別に何も悪くないからな…」
「そうそう。俺だって味方だよ。」
「…うん…ありがとう…」
少し気が楽になった私は三杯目のお水を飲み干した。