「■■…ただいま…」
私は鈴を鳴らし、一度位牌を見て、上にあるあいつの遺影を見た後、目を閉じ、両手を合わせた…
「最近は中々帰れなくてすまないな…相変わらず忙しくてな…」
主にウチのクラスの馬鹿どものせいでな…専用機持ちがISを展開して、周りの被害も考えず暴れるなど…悪夢だ…同じ専用機持ちでも篠ノ乃がまともで良かったよ…仮にあいつも一緒になって暴れていたら……いかんいかん。こんな事を考えていて八つ当たりでもしたら、あいつにも、そしてあいつがまともなままでいるのに一役買ったであろうお前にも申し訳が立たんな…
「お前はどうせ、私は何もしてない…と言うのだろうな…知ってたか?あいつはお前の事を尊敬していたそうだぞ?篠ノ乃にとってお前は理想とする女性像なんだとさ…」
必死で否定するあいつの顔が浮かんで来る…全く…お前は何時だって自己評価が低過ぎる…
「お前がどう思おうと…何度だって私がはっきり口にしてやる…お前は武も、その心も素晴らしかったとな。」
「今日と明日は休みを取った…親友の命日だぞ?誰にも文句は言わせん。」
仏壇に封を開けたビールの缶を置き、自分のビールを合わせる…
「……なぁ?私は未だに分からないんだ…果たして私は…お前の事を友人以上に思っていたのかどうか…」
あの日、最初に聞いたのはあいつの乗った飛行機が墜ちた事だった……もう試合の事など綺麗に頭から消し飛んだ。
大会を辞退し、私を止める日本政府の連中を殴り付け、一夏と共に向かったフランスで私たちはあいつと対面した。
墜ちた際に飛行機は爆発炎上しており、死体は完全に焼け焦げてはっきり言って誰だかまるで分からなかった。
歯の治療痕からあいつだと言うのははっきりしていたが、私はもちろんの事一夏も信じられなかった様だ…何度もあいつじゃないと声高に否定する私たちを宥めたのはあいつの母親だった。
さっさと葬式の準備を始めるあいつの家族に怒りが湧いたが、一夏の説明で冷静になれた…あの人たちはここに長く滞在出来無い私たちの為に早目に済ませようとしてくれているのだ…
フランスの葬式は服装の指定が無いとの事だったが、一応一夏共々、最低限服装を整えて出席した…その後だ、一夏からあいつの気持ちを聞いたのは…冗談だろうと思っていた私にあいつの母親から渡されたのが、日記帳だ…フランス語で書かれたそれに、あいつの気持ちは記されていた…
生々しい表現こそあったものの不思議と嫌悪感は無かった…ただ、戸惑いだけしか無かった…
「一夏め…普通の男女の恋愛もろくに経験の無い私にどう答えを出せと言うんだ…」
これで一夏も答えを出せていないなら文句の一つも言えるのだが、あれだけ見目麗しい連中に囲まれながらもあいつは篠ノ之一人に既に決めているからな…はっきり答えを出しているのに、まるで諦めるつもりの無いあいつらはどうかと思うが…いや、この場合無自覚に好意を抱かせる一夏が悪いのか…
まぁ所構わずISを起動して、暴れてるんだから結局あいつらが十割悪いがな…その上何度注意しても反省せんし…学園長は何を考えてるんだ…?さっさと追い出せば良い物を…
「…と、悪いな…お前の事が頭から消えていた…せっかく休みを取ったんだ、久しぶりにゆっくり飲もうじゃないか。」
……しかし、あいつの気持ちを知ってしまった今…こうして私があくまでも友人として接しているのはあいつを苦しめているのかもしれん…
『ううん…私はそれでも嬉しいよ…千冬…』
「……そうか。なら、しばらくは今まで通りだな…」
……あいつの声が聞こえた気がした…空耳だったのかもしれないが私は言葉を返した。
焦る事は無い。待ってくれると言うならじっくりと考えるとしようか…