千冬は結局一週間ほど経って私の所に戻って来た。
自分の意思かと思えば束の連絡があったからだそうな。
「じゃあ、結局束は全部自分で引き受けたって事だね…」
「そうなるだろうな…」
束は今各国が血眼になって探している…見付からないと良いけど…
「もう!ちーちゃんに■ちゃん!束さんはここにいるんだから無視しないでよ!」
「私は別に無視してないよ。現実逃避してるだけ。」
まあその束はそもそも今、普通に私の家でご飯を食べてるんだけど…意外と気付かないものなのかな?
「私はいないものとして扱っていたがな…」
「ぶー!ちーちゃん酷い!」
そんな昔と全然変わらない束の姿を見て安心すると同時に不安にもなる…灯台下暗しなんて言うけど何れは見つかっちゃうよ…
「あ!■ちゃん!束さんが見つかっちゃうかもって不安がってるね?」
「何で分かるの?」
「そりゃ束さんだから「この現状で他に考える事なんて無いだろうが。馬鹿なのか、お前は」ぶー!束さんは馬鹿じゃないもん!」
まあ実際束は馬鹿じゃなかったからこうして追われる身になった訳だけど。
「それで…大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫!ちょっと見てて…ほい!」
束の姿が私の前から消えた…そうとしか言えなかった…えっ!?どういう事!?
「■ちゃん!」
「うわぁ!えっ!?束!?」
背中に何かが張り付いた…思った時には束の声が聞こえ、後ろを見ると束の顔があった…本当にどうなってるの…
「とうとう人間を辞めたのかお前は。」
「何でそんな結論になるのさちーちゃん!これで姿を消しただけだよ!」
束が出してきたのは……腕時計?
「ほら!名前はキエールだよ!「ださくない?」ちょっ!酷いよ■ちゃん!」
私は思わずそう口に出していた。
「いや、誰でもださいって言うと思うぞ。」
珍しく千冬が笑いながらそう言った。
「ぶー!良いもん!他人が何言ったって気にしないもん!まあとにかく!これで姿を消せるから問題無し!」
「それは良いんだけどさ、束?まさかずっと隠れてるつもりなの?」
「まさか!ちゃんと今の状況をどうにかする手は考えてあるもん!」
「何をする気だ?」
「ナイショ。さてと、そろそろ行かないとね、じゃあねちーちゃん、■ちゃん、ご飯ご馳走様。」
束がまた消えた…さて…
「千冬?」
「あいつの気配はもう無い。」
「そっか。」
姿を消すだけなら気配は残るからね…後は…
「……赤外線スコープとかなら見つかっちゃうんじゃないかな…」
「そんなに詰めが甘かったらもう見つかってるだろうな…結局私に何の影響も無かったことからしてもあいつの隠蔽は完璧だった訳だな。」
「もう私たちには何もしてあげられないのかな…」
「あいつは昔から寂しがり屋だからな、会いたくなったら勝手に会いに来るだろう…こっちの都合を無視してな。」
「うん…そうだね…」