「王手。」
「…ふむ、儂の負けか…何じゃ、その顔は?」
「いや…囲碁はまだしも将棋…果てはチェスまで出来んだろう?どんだけ暇なのかと思ってよ。」
「貴様に言われたくないわい。」
「あんたよりは暇人さ…元は一般人だぜ、俺は。」
「フン…まあ良いわい。ほれ、もう一戦付き合わんか。」
「あんた、本当に何しに来たんだよ…何も海に出てまでこんなんやる事もねぇだろ?」
俺と元帥の爺さんは今、艦隊と共に船に乗っていた。
数日前…
「あ?全員行くだと?」
「そうよ、皆あんたの指揮下に入るって言ってるわ。」
「……何かの間違いじゃねぇのか?」
「あんたがそれ言う?こっちが聞きたいわよ、あんた何か皆にご機嫌取ったりしてたの?」
そう言って叢雲が溜め息を吐く。
「そんなもんやってねぇよ…俺がそう言うの苦手なの知ってんだろ?」
俺が誰にでもこういう口調なのは会話が苦手だからだ…神経を逆撫でする話し方をしてれば自然と他人は寄って来なくなる…叢雲は一々俺の言う事にキレて、何度も絡んで来て執拗いから話したし、それにどうも元帥の爺さんは気付いてた様だがな…
「まあね…でも、だからこそ分からないのよ…」
「ま、とにかくだ…同意を得られたんなら仕事だ…もう断る理由はねぇよな?」
「……私一人が反対したって仕方無いじゃない。」
そして出発当日…元帥の爺さんが信用出来る部下を乗っけた船と共にやって来た…俺の部下になった艦娘の仕事を見届けるという爺さんに俺は連れて行けと頼んだ。そして今はこんな状況になっている…
「有事の時以外は休むのも仕事の内じゃよ。」
「艦娘は今も外で働いてるがな。」
「交代で休みを取ってるじゃろう?」
「ああ。俺の指示とかは無くても勝手にだがな。」
外にいる連中は交代で見張りをし、休む時はこの船に普通に乗り込んで来る…結構狭い船の様で時々、俺たちのいるこの部屋にも入って来る。
「しっかり固定された机と椅子、それに磁石入りの将棋の駒…あんた、今も普段から海に出てるのか?」
「暇じゃからのう。」
……この爺さん祀り上げられてるだけで会議でも発言権無さそうだしな。
「お茶よ。」
「…おう。」
「すまんのう。」
爺さんがこういう奴の為、叢雲も敬語は使わない…つーか…
「お前何でここにいるんだ?戦えないんだろう?」
「今更?あんたも海に出るのに私だけ向こうにいても仕方無いじゃない…私は敵は撃てなくてもあんたの護衛くらいしてあげるわよ。」
「どうやって?」
「弾除け位にはなれるわ。」
そう言う叢雲に俺から返せる言葉は何も無かった。