「一夏。」
「ん?」
ベッドに寝転がっていた俺は声をかけて来た箒の方を向いた。
「その…本当に私で良かったのか…?」
……何度目か分からない質問…だが俺はそれにうんざりするなんて事は無い…寧ろそんな彼女が可愛くて、それでいて不安そうなその顔を早く安心させてやりたくて…俺はそれにはっきりと答える。
「ああ。箒が良いんだ…寧ろ…箒じゃなくちゃ駄目なんだ…」
俺は心底彼女にイカれている…そうだと断言出来る。
「しかし…私以外にも「箒、じゃあ逆に聞くけど…お前が俺の立場だったらあいつらを選びたいと思うか?」……」
俺がそう言うと箒は口を閉ざし、目を逸らした……言ってから気付く…しまった…これじゃあ消去法で箒を選んだみたいじゃないか…
「悪かった…いや、俺がお前を選んだのはお前がちゃんと"俺"を見てくれたから…そして…俺がお前に惚れているから。」
そう言うと頬を真っ赤に染めた箒が俺を睨み付けた。
「一夏!お前は…!またそんな事を軽々しく「違う。俺は箒にしか言わない」一夏!」
「落ち着けって。俺は本気で言ってるんだから…」
「だって…私以上に魅力的な「いや、あいつらは"俺"を見ようとしないからさ」…そう、かもしれないが…」
「例えば…セシリアは最初は散々俺を罵倒した癖に、勝手に俺を好きになった…根は悪い奴じゃないのは分かってたし、あいつなりに色々あったのも今は知ってるけど…結局あいつはただ、俺に自分の理想を押し付けてるだけだ。」
「なら、鳳はどうなんだ…?」
「鈴は思い込みが激しくて…俺を振り回すばっかりで…俺の話を全然聞いてくれない…まあその辺は他の奴にも言える事だけど。」
「…酢豚の話は、私もどうかと思ったが…」
「そもそも俺は最初にちゃんと断ったんだぜ?…本人は記憶を捏造してたけど…つーか何で中華で色々ある中、日本人が一番苦手そうな酢豚を引き合いに出したんだかな…」
「デュノアは…」
「シャルはさすがに不憫だったから少し手は貸したけど…それで好きになったって言われてもな…あの中では比較的まともな方ではあるけど…俺の中では友人以上にはならないよ。」
「ボーデヴィッヒ「手のかかる妹みたいなもんだな…箒もそう思わないか?」…確かにな。」
「後、聞きたいのは簪か?」
「…いや、そっちは友人なのは知ってるよ。私も本人からはっきりと聞いたからな。」
「…なら、もう不安は「■■さん」……」
その名を聞いて黙る…何で今更その名が出て来たのかと思っていたら気付いた…そっか…今日が命日だもんな…
「…正直に言えば…憧れた事ならある…でもそれだけだな…箒は結局面と向かって会う事は無かったし、知らないだろうけど…あの人割と色々と残念な人なんだよ…」
「残念?」
「……千冬姉が絡むと途端にポンコツになるんだよ…ちょっとした事でも照れて悶えるし…千冬姉は全くそんなつもり無かったのにさ…」
「…初耳だな…私の知る限りでは比較的しっかりした女性だと思っていたが…」
「ある意味、千冬姉と似たタイプだよ…天才肌で、大抵の事は卒無くこなすのに…千冬姉関連だと…どうもな…てか、話した事無かったんだな…」
「ああ…その、すまん…」
「何が?」
「お前はまだ…あの人の事を…」
「……俺は…最終的には…別にあの人に恋愛感情あった訳じゃないから…ダメージなら千冬姉の方がデカいんじゃないか…」
「…結局…気持ちを知ったのは死んでしまってからか…」
「…せめて俺が言ってしまうか、何かフォローしてればなって…お陰で今も千冬姉は色々拗らせてる…」
「それは結果論だ…あの日、あの人が死ぬ事になるなんて誰にも予想出来無かった…それに背中を押してれば、という話なら私も同罪さ…私だって定期的にあの人と電話越しとは言え、話はしていたんだ…私がもっと強く告白する様言っていたら…」
「…もう止めよう。二人とも悪いで良い…箒、次の休みには家に来いよ、あの人の仏壇があるんだ…」
「ああ…結局一度も顔を合わせる事は無かったからな…私も挨拶くらいしておきたい…」
「良し。じゃあ話が纏まった所で…そろそろ寝ようぜ?明日も早いしな。」
「そうだな。おやすみ、一夏。」
「おやすみ、箒。」