「…ねぇ、■くん…」
「…何を聞きたいかは分かっている…あの二人の態度、だろう…?」
私は■くんの部屋に来ていた…
ちーちゃんのお節介で■ちゃんの家に来た私は■ちゃんのお父さんとお母さんに進められるまま、家に泊まった…クーちゃんを待たせてるって言ったのに二人は聞いてくれな…ううん。違う…それどころか…
「…束さんとしてはてっきり■ちゃんが亡くなってから一度も家に来なかった事を聞かれるかも、って思ってた…でも二人は全然そんな素振りなくて…最初は、二人が敢えて聞かないんだと思ってた…でも…話してる内に何か変な感じがして来て…」
「ふむ…それで?」
「……お父さんとお母さんの態度を見ていたら、まるで■ちゃんが死んじゃってるのを認識出来て無いみたいに思えて…」
私はそこまで言って言葉を切った。■くんは黙っていたけど、やがて口を開いた。
「…束、君の言う通りだ…二人は■■が死んだ事を吹っ切れていない…いや、二人は今もあいつが生きていると思っている…」
「そんな…ちーちゃんの話だと自分たちで葬式の準備を進めてたって…」
「……あいつが死んだ後、千冬と一夏が滞在している間はまだ良かった…だが、二人が帰った後、プツリと糸が切れるように二人は可笑しくなった…最初は単に間違えて食事を一人分多く用意する程度だったが…段々と、な…」
「……」
「私はしばらく様子を見る為この家で生活していたが…さすがに見てられなくなってな、自分の暮らしてる部屋に戻ったんだ…今回は君が来ると千冬に聞いたから久しぶりに戻って来たんだ…」
「……」
「君には悪いが…正直、来てくれて良かったと思っている…」
「え?」
「あれでも持ち直した方なんだ…最も二人は君を見ておらず、君を通してあいつを見ているだけだがな…」
「…ちーちゃんは…この事…」
「教えていない。間違い無く気にするからな…」
「……どうして…私なら良いの…?」
「君は他人に興味が無い筈だ、忘れてくれるだろう?」
「っ!忘れたりなんて出来無いよ!だって…■ちゃんのお父さんとお母さんだよ!?」
私は声を荒らげていた…どうして■くんがこんな風に言えるのか分からない…確かに昔の私なら忘れられたかもしれないけど…今の私は…!
「…君があいつに何を見ていたのかは知らない。だが、あいつはもういない…今、二人と君は他人だ…私もな。」
「そんなの…やだ!違うもん!私は二人が大好きだから…だって二人は…私をちゃんと見てくれたから…!」
「少なくとも…今の二人は君を正常に認識出来て無い。」
「っ!さっきから「二人」って…何でそんな風に言えるの!?■くんのお父さんとお母さんでもあるんだよ!?」
「そうだ、二人は私の親だ。」
「君は…君は平気なの!?お父さんとお母さんがあんな風になっちゃって…」
私がそう言うと■くんが溜め息を着いた。
「…平気な訳は無い…だが、どうしようも無い。」
「…方法なら、あるよ。」
「何?どういう事だ?」
「二人が可笑しくなったのは■ちゃんが死んじゃったから…なら、取り戻せば良い。」
私がそう言うと■くんは指を三本立てて私に見せた。
「…三つ、考えられる…」
「え?」
「一つは…死後の世界にいるあいつをこちらに連れて戻る事、二つ、過去に戻り、あいつを救う事…最後だ、あいつが生きている並行世界を探し出し、こちらに連れて来る事…」
「…■くん…もしかして…」
「私だって吹っ切れた訳じゃないさ…だが、自分の死を理由に歩みを止める事はあいつが一番望まない…」
そっか…■くんは私よりも先にもう■ちゃんを取り戻す方法を考えていたんだ…
「…■くん、私と行こう?君と束さんが協力したら…きっと■ちゃんにまた会えるよ。」
「…私からお願いしたいくらいだ、宜しく頼む…篠ノ之博士。」
私が差し出した手を■くんが強く握った。