一目惚れなんて信じない…我ながら可愛くない子供だった自覚はある…でも、私は恋愛というのは時間をかけて徐々に好きになるのが普通で会ったその瞬間から好きになるなんていうのは到底理解出来ない事だった。
だから…両親の出会いから今に至るまでの話を何度聞かされても理解出来なかった。そんな私が…初めて会ったその瞬間から心奪われるなんて…それも、同性に…
私の両親二人はフランスで出会い恋に落ちた。母の方が日本人で、元々短期留学で訪れていただけだった母はやがて日本に戻る事になったが、二人は別れる事無く遠距離恋愛になったと言う。…その後、母は妊娠した。父は喜び結婚を考えたがそこで問題が発生した。
生活基盤をフランス、日本…どちらにすべきか。
二人は悩んだ末に日本を選んだ。父に聞いてみた事はある…自分の生まれた国を離れ、日本で暮らす事に不安は無かったのかと。父は笑ってこう答えた。
「不安?もちろんあったさ。だけど、それ以上に母さんと一緒に暮らすのが楽しみでね…」
……とまぁそこからはまた惚気が始まったので聞き流した。
単純に何時も両親から耳にタコが出来るほど二人の恋愛話を聞いていたのですれていた、とも言えるのかもしれない。まあ何が言いたかったのかと言えば、こうして家庭を築いた父と、寡黙ではあるけどしっかりしている兄と私の同年代の男子を比べてしまえば恋愛にはまるで希望がもてなかったという話だ(いや、別にだから同性に走ったって訳じゃないけど)
さて、私立の学校に入り、涼しい顔で学年トップを取り続ける兄(いや、それなりに努力してるのは知ってるけど…暇さえあれば勉強してるしね)と違い平凡な私は公立の学校へ。
……そこで出会ったのが織斑千冬だった。
自慢するわけじゃないが私はモデル並の容姿の両親の血を引いたのか見た目は悪くは無い。ただ、容姿のせいで目立つのは子どもの間では決して良いとは言えない。
日本人離れした彫りの深い顔立ちに、地毛は金髪…男子からはちょっかい入れられるし、小学校低学年にして女の嫉妬の怖さを知る羽目になった。担任は見て見ぬ振りするし。友だちと呼べる相手がいないわけじゃなかったけど、彼女たちも私を助けようとはしなかった…恨んではいない。私を助けたら当然彼女たちも標的にされるだろうしね…でも、辛くなかった訳じゃない。
両親にも何も言えずに放課後、女子たちに取り上げられ、隠された物を探すのが日課になった…ある日、いつもの様に私物を探していた時、声をかけてきたのがちょうど忘れ物を取りに学校に戻って来ていた千冬だった。
「どうした?」
「……別に…何でもない。」
…私は彼女の方を見てすぐに目を逸らした…彼女とクラスの違う私は彼女の顔は見た事があったが話した事は無かった。だから彼女に探すのを手伝って欲しいとも言えなかった。
「……床にしゃがみこんで何でもない、は無いだろう?何か探し物か?」
「……」
「……そろそろ暗くなるな…手伝おう。」
「え…?でも…」
「気にするな、私が勝手に手伝うだけだからな。」
「ありがとう…」
「…礼なら見つかってからで良い…で、何を探してるんだ?」
……彼女は別に特別な事をしたとは思ってなかったんだとは思う。でも、私は本当に嬉しかったし…それに彼女の方を見て目を逸らしたのは…それは…
夕日に照らされた彼女の顔が本当に綺麗で…美しくて…私は小学生にして悟ったのだ…これ以上に美しい物を見る事はこれから先、私の生涯において二度と無い、と。
これが私が千冬を好きになった日の話。