「……は?」
遂にやって来たモンド・グロッソ当日…待望の千冬の試合を見た私は困惑していた。
剣で一度斬りつけた程度ではほとんど減らないはずのシールドエネルギー…しかし今、有り得ない事が起こった。試合開始と同時に千冬は先の宣言通りいきなり急加速で直進し、驚いたのか棒立ちのままの対戦相手は千冬の斬撃を受けた…と、同時に斬りつけられた程度では大して減らないはずのシールドエネルギーはみるみる減っていき……ゼロになった。
千冬は突然ISが解除され、呆けた顔をする対戦相手に頭を下げると、背を向け自分のいた位置に戻った。
目の前の光景を見たまま、そのまま理解するなら、こうなる……この試合は終了したのだ…千冬の勝利で。
さっきまであれほど響いていた歓声が止んでいた。実況をしてる人の声も聞こえない…いや、何やらガサガサ紙を捲る音が聞こえる…しばらくして、咳払いの声と共に千冬の勝利が告げられた。観客がどよめき、千冬と相手選手が退場していく中、千冬のISについての説明がなされた。
今回モンド・グロッソに出るISにはそれぞれ単一仕様能力という特殊機能が備わっている…千冬のIS「暮桜」の単一仕様能力の名前は「零落白夜」。刀剣型近接武器「雪片」を使って発動し、発動中は自身のシールドエネルギーが減っていくが、もし相手に一太刀でも浴びせる事が出来れば相手のISのシールドエネルギーをゼロに出来る、という何と言うか、非常に千冬向きの能力だった。
その日の試合全てが終了した後、千冬から電話があり、千冬と外で合流した。
「どうだった?」
会うなり千冬にそう聞かれ、一夏君と顔を見合わせる…今日の試合内容について聞いてるんだろうけど…
「いや…どうって言われても…」
「俺も■■さんも今日一日ずっと困惑しっぱなしだったよ…後、強いて言うなら他の奴なら絶対しない戦い方をする辺り千冬姉らしいなぁ…と。」
一夏君もそう思ったんだ。今日一戦目で千冬のISの能力は割れたわけだけど…結局誰一人千冬の突進にまともに対応出来た人はいなかったんだよねぇ…
「…何かしっくり来んな…というかせっかく勝ったのに言うのがそれだけなのかお前らは。」
いや…だってねぇ…
「まだ一日目だぜ千冬姉?大体、千冬姉ならあのくらいどうって事ないだろ?」
勝ち抜き戦だからね…少なくとも明日からはもう少し強い人が出てき…実質千冬の最初の一太刀を受けなければ良いだけの話なんだけど…そんな人いるかなぁ…正直誰も勝てない気がする…
「それは…そうだがな…」
そう言うと千冬が不満そうな顔をした…千冬って時々こういう子供っぽい反応するんだよね…
「でもまぁ改めて言うなら迫力はあったよ…私はカッコイイって思ったかな。」
「……そうか。」
そう言うと気持ち口角が上がる程度だけど、確かに千冬が少し嬉しそうにしているのが分かった。……うん、機嫌良くなったかな。
……カッコイイと思ったのは嘘じゃないけど、今回の場合あの突貫を受ける事になる対戦相手が本気で可哀想に私は思えていたり…それにこの大会オリンピック並に力は入ってるみたいだから…千冬に一撃も与えられずに負けた彼女たちがこの後本国でどういう扱いを受けるのか…なんて…考えてしまう…