「■ちゃん、本当にそれで良いの?」
「うん。変に凝った事するよりも小細工も良い所の方が逆に私の性に合うと思うから。」
私が束に望んだ事は二つ…私の乗るだろうISに手を入れて、ある単一仕様能力を付ける事と、千冬に内緒で思いっ切りISの訓練の出来る環境だ。
「そもそもさ、私が千冬と一緒に合宿行っても間違い無く差が開いてるだろうし、合宿前にこっそり特訓するくらいは許されると思うんだよね。」
既に合宿行ってISを動かし、大会に出た上…誰よりも早くISに触れた千冬と、これまで一度もISを纏った事が無い私の条件が同じな訳は無いのだ。
「……場所を用意するのは簡単だよ?ただ…付ける能力は本当にそれで良いの?もっと使い勝手の良い能力も付けれると思うけど?」
「私は千冬と違って一芸特化型のワンオフはちょっとね…何か千冬は私を過大評価してるみたいだけど…」
「う~ん…まあ、取り敢えず分かったよ、こっちの準備が出来たら連絡するから。」
「うん…しばらく宜しくね…」
束が消えた。
「さて、これで取り敢えず合宿行った先でISを纏えなくて恥かく事も無くなったね…」
ISは女性しか纏えない。ただそれ以上にある程度の適性が無いとそもそも展開自体出来無いのだ…千冬は完全に忘れてたみたいだけど…いっそ束に連れて行って貰った先で纏えない事が分かったら気が楽に…
「いや、それはそれで何か凹むかも…」
せっかく千冬と戦う覚悟を決めたのに出られないとなったらなったで凹む…まあ、出られたところでそもそも勝ち残らないと千冬とも戦えないんだけどさ…
『■■、悪いが明日一夏を預かっては貰えないか?』
それから数日後、千冬から電話がかかって来てそう言われた…千冬はバイトを掛け持ちして遅くまで働いてるからね、今までも良く頼まれる事はあった…でもこのタイミングか…選手になっても給料として毎月纏まってお金が入って来ないから千冬はまだ多少バイトを入れてたのを忘れてたよ、えと…束が来るのは…良かった…束が来るのは明後日だ…
「明日だけで良いんだね?」
『ああ…ん?明後日からは用があるのか?』
「いや…あのね千冬?昔の千冬程大変じゃないけど、今は私だって働いてるんだよ?そりゃ忙しい時期だってあるって。」
……少なくとも学生時代、バイトに手を付けなかった私と違い、年齢を誤魔化して放課後から明け方まで仕事してた千冬よりは楽な方ではあるけど今の私は普通に社会人である。
『……すまん、それもそうだな…』
本気で申し訳無さそうな声が…いや、千冬は律儀だから電話口なのに頭も下げてるだろうね…
「良いよ。それだけ大変なんでしょう?それくらいで今更私は怒らないよ。で、悪いんだけど私が一夏君を預かれるのは明日だけだよ。」
『……何とかならないか?』
「何とかって言われても…」
まあ、実際は仕事じゃないんだけどね…一週間の休暇を取ってるし……ISの練習の為に。
『頼む!埋め合わせはする!』
……埋め合わせって言われても、実際は仕事じゃないから私も少し揺れてるけど、仕事だった場合、下手するとやっぱり影響は出て来る…一夏君しっかりはしてるけどまだ子どもだしね、家に一人で置いておくのも不安…というかその条件なら織斑家に居てもあまり変わらない気がするのは気の所為かな?
「分かった…ちょっと待っててね?」
私は一旦電話を切り、束の番号を電話帳から呼び出した…一夏君を連れて行くのを多分、束は断らない。一夏君、口は硬い方だから私がこっそりISの練習をしてる事を千冬に言わないでって言えば了承もしてくれるだろうし。