「……どうしよう…?」
「う~ん…」
一夏君を束謹製の特殊空間に連れて来た日の午後、私は束と二人で頭を抱えていた。
朝、千冬が連れて来た一夏君に事情を説明し、私がこっそりISの練習してる事を黙ってて貰う事に承諾を得て、迎えに来た束と三人で私専用のトレーニング施設と化した空間にやって来た。
「……何か、凄いな…」
「私も驚いたよ…」
如何にも、外界とは違う、って言う感じの色々な色の混じり、歪んだ風景が窓から見える建物の中で、一夏君がそんな語彙力の無い感想を漏らした…まあ私は驚いて絶叫したからね…ホント、束といると驚く事ばかりだよ……
「何かごめんね…?」
「え?何がだよ?」
「突然こんな所連れて来ちゃって…」
「…別に良いよ、千冬姉のあの動き見たら、先に特訓しようと思って当たり前だし…別に俺は気にしないって。」
「でも…その間、私は一夏君の相手出来無いよ…?」
「大丈夫だって。俺、そんなに子どもじゃないから…束さんもいるし、後、さっき紹介された…え~っと…そうそう、クロエ・クロニクルだっけ?あの子もいるし。」
クロエ・クロニクル……私が初めてここに来た時に束に紹介された女の子の名前…娘だって言う束に取り乱しつつも詳しく聞いた所、彼女は所謂…試験管ベビーで軍の実験施設にいた子で失敗作として処分されそうになっていたのを束が救出したのだと言う…出自はともかく、彼女は束に良く懐いていて、二人は本当に仲の良い親子に見えた。
「…仲良くしてあげてね?」
「…何言ってんだよ■■さん。当たり前だろ?」
……束と相談して、一夏君には敢えてクロエの出自を詳しく話していない…でも…少なくとも束と血の繋がりが無いのは気付いていると思う…それでもそうやって言い切れる一夏君の気質を好ましく思う。
「…というか…何か放っておけないんだよなぁ…朝飯にあんなの出されると…本人はそれしか作れないのを本当に残念がってたし…」
クロエの役割は主に束の身の回りの世話…とはいえ大抵の家事を卒無く熟す中、料理だけは千冬並に絶望的に下手なのだ……しかも本人が開き直ってるなら逆に救いはあるけど…本人は大好きな束にどう見たって人の食べる物じゃない物を出す羽目になる事を本気で気にしてる…おまけに束は美味しいって言って食べるから余計に……まあ束は本当に美味しいって思ってるんだろうけど。
「頼むね?さてと、それじゃあ私はもう行くから…クロエの事、宜しくね?」
「ああ、分かった。」
その後、束の指示を聞きつつ、ISの練習をしていた私の元にクロエと料理の練習の合間に作った差し入れを一夏君が持って来た所で問題が起きた。
「まさか…一夏君がISを展開しちゃうなんて…」
「やっぱり不味いかな…?」
「……今の世の中だとちょっと、ね…」
私と束に差し入れを持って来た時、私が解除したISに一夏君は好奇心から触れた…そしてそのままISを展開…纏ってしまった…
「まだ原因は分からない…?」
「そもそも何で男には展開出来無いのか束さんにも分からないんだよね~…」
そう言って唸る束…まあ女性でも展開出来無い人も中にはいるみたいだから、ね…千冬は展開出来る訳だから遺伝子的な問題とか?
「束を信用してない訳じゃないけど…一夏君には本当に問題無い?」
「さっき調べた限りでは良好だよ~…健康そのもの!」
「そう…」
なら…後はこの一件をどうするかだよね…別に私はこうして練習してる事が千冬にバレるなら仕方無いと思ってる……私のプライドより一夏君の方が大事だし。
「幸い、ここは外部からは誰も見れないから…束さんとしては黙ってても良いと思うけど。」
「まあ、普通に生活してたら男である一夏君はISに触れる機会すら無いから、展開出来るのはバレないだろうけど…」
本当にどうしたものかな…こういうのって隠してても何れ何らかの理由でバレそうだしね…