「……」
ページを捲る…悪くない…手持ちの本を読み尽くしてしまい、適当に普段読まないジャンルの本を注文したが中々どうして…面白い。作者の名前を確認する…ふむ、次からはこの作者の本を買い求めてみようか。
「おい志貴!これから将棋でもしようと思ってるんだが、お前も参加しねぇか!?」
そんな声が聞こえ、俺は本を閉じ、そちらに顔を向けた。
「良いですね、やりましょうか。」
本を仕舞い、俺がそちらに向かおうとした時…
「521番!遠野!」
部屋の外から呼ばれたので俺はそちらに顔を向けた。
「はい?何でしょうか?」
「面会だ。」
看守にそう言われ肩を竦め、さっき声をかけて来た同房の囚人の方を向いた。
「すみません、先に始めててください。」
「おう!分かった!」
「行くぞ。」
「はい。」
看守に促され、部屋を出る…やれやれ…恐らくまたアイツだろうな…今日はせっかく作業が無かったというのに…
「面会に来たのは誰でしょうか?」
先を歩く看守にダメ元で聞いてみる事にする…他に可能性は無いとはいえ、出来る事なら違う奴であって欲しい物だ…
「…妹さんだ。」
そう言われ、盛大に溜め息を吐く…普通こんな事を看守の前ですれば叱責物だが、今日は免業日だし、この人は俺の事情を多少なりとも知っているから苦笑する程度で収めてくれるだろう…
「…そういう反応をするな。お前からしたら他人かもしれないが、向こうはお前の事を想ってくれているんだぞ?」
「…すみません、それは分かるんですが…」
「私は良く分からないが、記憶そのものが無い、という訳じゃないんだろ?」
「ええ…ただ、俺にはどうしてもそれが自分の記憶だと思えないんですよ。」
今まで生きてきた軌跡…脳裏にあるそれが自分の記憶だと認識出来ない…他人の生涯を記録として見ているのと何も変わらない。
「家族であるという実感が無い以上、俺は彼女に他人としての反応しか返すつもりはありません。記憶があるからって彼女の兄としての自分を演じるのは、彼女の為にも良くないし、俺もしたくありません。」
「お前がここから出るには彼女の力を借りる必要があるぞ?」
「それは前にも言ったでしょう?俺は…ここから出るつもりはありません。俺は…」
「まあ意固地になる事も無いだろう。とにかく向こうは遠い所をわざわざ来たんだ…ここにいるのは皆、身内がいないか絶縁状態になってる者が多い…お前は恵まれているんだぞ?」
「…分かってますよ、嫌になるくらいには。」
彼女が俺に会い自分や、自分の所にいる従者二人、それからかつての俺の友人の近況…そんな話を早々に打ち切り、俺の方から拒絶の意志を示す度見せる…彼女の顔が…俺に罪悪感を抱かせる…
「なら、少しは彼女の話だけでも聞いてやれ。お前が彼女の話を遮ってその度に彼女が顔を曇らせているのは分かってるだろう?」
「俺みたいのに関わる必要も無いでしょう?さっさと諦めれば良いんです。」
そうだ…俺に構う必要は無い…俺は…人殺しなのだから。