「チッ!お前!こんな所で本気で一生を過ごす気かよ!?」
「ああ、本気だよ。…やっと手に入った平穏な生活だ…邪魔しないで欲しいな。」
この刑務所は年齢層が比較的幅広い…まあ突き詰めれば多分何処も似た様なもんなんだろうけど…より具体的に言えば、基本は二十代の若者から最年長は八十五の爺さんまでいるんだ…そんでこれだけ差がある中、他の刑務所もそうだが、受刑者の不満を減らす為に定期的に行事が行われている…そして今、行われようとしているのが最も盛り上がる行事だ。
「ふー…」
「……頑張るのは良いですが、あんまり無理しないでくださいよ?」
俺は横で屈伸をしている爺さんに声をかける…年に一度しかない行事の中でも特に人気があるのでこの運動会で、年齢層こそ幅広いと言ったが、実は比較的若い奴の方が圧倒的に多く、高齢者は人数が少ないので年齢毎に別れての競技は必然的に不可能…だから若いのに混ざって高齢者が一緒に走る…で、俺の横で張り切って屈伸やってるのがさっき言った八十五の爺さん…てかこの爺さん普段は所内を杖着いて歩いてるんだが…俺もいよいよ見慣れては来たがまだ慣れない…
……刑務官も苦笑いするだけだが…正直怪我されても困るし、見てて落ち着かない…っ!
「…志貴、今回はお預けだな。」
「…まあ、良いじゃないですか。これも運動みたいな物ですし。」
刑務所内に響き渡るサイレンの音…火事、ではなくこれは脱走者が出た合図だ…ここは特殊な事情を抱える受刑者が多く外出も基本的に出来無い…基本、房内が生活基盤にならざるを得ない俺たちが仮に脱走するとしたら…実はこのタイミングしか無かったりする…で、何故これを俺が運動と言ったかだが…
「…つってもお前らしか走らねぇじゃねぇか。」
「…どうせ一人じゃないでしょうし、連中も気が立ってる筈ですからね…怪我でもされたらこっちは寝覚めも悪くなりますから。」
ここは刑務官の数が少ない…だが、不思議な程ここは秩序が保たれており、普段は運営上は余り問題が無かったりする…とはいえ、人数が少ない以上、こういう有事の際は俺たちの様な若い受刑者にもお鉢が回って来るのだ…今回の役目は脱走者の確保になるだろうな…
「ほら、大人しく房に戻ってください。」
「ふん。ヘマすんなよ。」
……俺もお人好しの方かもしれないが、そこを差し引いても不思議とこの爺さんに怒る気になれないんだよな…それは俺の同房の他の奴や、刑務官も同じだろうな…おっと、刑務官が呼んでる…さっさと行くか。
で、持ち場を決められて待ってたら、早速やって来た奴がいた訳だ。
「…つーかここ、外にこそ出れないが、割とルールも緩いし、そんなに悪くないと思うが「うるせぇ!そこをどけ!」……」
こいつ入ったばかりの奴か…なら、キツいかもな…ま、同情はしないが。
……殴りかかって来たそいつの頭を蹴飛ばして昏倒させながら俺はそんな事を考えた。