「ロン…これで終わりね。」
「ぬぬぬぬ…!貴様…!」
「お前ら上官にも容赦ねぇのな…」
麻雀は結局何回やっても最後は爺さんが潰されて終わった…読みやすいタイプだったとはいえ、こうも完封されてるとさすがに哀れだな。
「貴方に言われたくないわ。」
「しゃあねぇだろ、自分で持って来るより楽なんだから…爺さん読みやすいしな。」
「ま、この人は元々あんまりギャンブル強い方じゃありませんから。」
「くっ…!もう良いわい…」
「あっ!テメェ…!牌ぐらい片付け…チッ…あのクソジジイ…」
あのジジイ人に片付け押し付けて行きやがった。
「私たちも手伝いますから、そう怒らずに。」
「…お前ら良くあのジジイの下に着けるな?」
「長い付き合いなのよ。…と言うか、そもそも私たちは別に選べる立場でも無かったから。」
麻雀牌を集めて専用のケースに詰めて行く。
「…でもまぁ「ん?」私も赤城さんも、他の二人も多分嫌ってはいないけどね…時々ああやってワガママになるから少しムカついたりはするけど…」
「拾われた恩か?結構義理堅いんだな「違いますよ」あ?」
「少なくとも私は拾われた恩で一緒にいるんじゃありませんよ…理由は楽しいからです。」
「楽しい?あんな偏屈なジジイと四六時中一緒にいてか?」
一瞬下世話な想像をしそうになるが、すぐにそれは無いと思った…あの爺さん、さすがにもう枯れてるだろう…昔はどうだったのかは知らんが。
「あの人は賭け事が好きでしょう?私も好きでしてね…特に…」
赤城が弓に矢を番え、俺に向ける…
「おい。」
「特に…命を賭ける博打は大好きです。」
「この場で俺を殺すか?」
「まさか。そんなの面白くないじゃないですか…せっかくですから私と後一勝負しません?」
「勝負方法は?」
「そうですね…何が良いと思います?」
赤城が弓を下ろし、夕立の方を向く。
「……ここで私に振るの?…ポーカーで良いんじゃない?すぐ終わるし。」
「…良いですね。で、やります?」
「俺が乗らなかった場合、何かあんのか?」
「いえ別に。これはあくまで単なるゲームです。貴方がやらなくても私はこれ以上何もしません。」
「……良いぜ、乗った。」
「あら…本気?」
「ああ。で、確認するぞ?お前が勝ったら俺はお前に殺されて死ぬ「冗談だと思ってないんですね」…ああ。ここで俺が負けたらお前は本当に俺を殺すんだろ。」
「ええ。」
「じゃ、始めよ「待ちなさい。」何だ?」
「赤城さんが勝ったら貴方は死ぬ…で、貴方からは何か無いの?」
「あ?」
「フェアじゃないでしょ?貴方からも何か要求しないと。」
「確かにそうですね…何かあります?」
「何処まで言って良いんだ?」
「何でも良いですよ?さすがに命を賭けて貰うんですから…同じく私の命でも、何ならこの身体でも…何でも。」
「…お前普段からこんなのやってんのか?」
「ええ。あの人は絶対に付き合ってくれます…そして命がかかってる時のギャンブルであの人は一度も負けた事が無い。」
「その際の爺さんからの要求は?」
「……何だと思います?」
「…見当もつかねぇが…別に答えなくて良い。」
身体じゃねえのは想像つくが、な…
「そうですか…じゃ、始めましょうか…カードを配って貰えます?」
赤城が制服の内側に手を入れ、取り出したトランプを夕立に差し出す…
「人使い荒いわね…ま、良いわ「待て。」何よ?」
「相手が用意したトランプをそのまま使える訳ねぇだろ…ちょっと確認させろ…」
「成程…はい。」
夕立から渡されたカードを眺める…パッと見目立つ汚れや、傷は特に無い…ほぼ新品と変わらない物の様だ。
「良いぜ。」
俺は夕立にカードを返した。
「ん。じゃあ配るわよ?」
「ああ…いや、待て。」
「今度は何「ルールの確認をしてなかった」あー…確かにね。」
「そうですね…ジョーカーは無し。勝負は一回…当然降りは無く、交換は一回…それでどうですか。」
「それで良い…始めてくれ、夕立。」
「はいはい…じゃあ配るわ…」
カードをしっかり切り混ぜて、カードを配る夕立…やがて俺の手元にも、赤城の手元にもカードが五枚揃う…
配られたカードをひっくり返し、確認する…
「…で、交換はどっちから行くの?」
「…お前からで良い。」
「そうですか?なら、私は三枚換えましょう。」
「はい。」
赤城がカードを受け取る…赤城の顔から読む事は不可能そうだ…笑顔のまま変わらない…ま、一発勝負なんだから駆け引きの意味自体余り無さそうだがな…
「貴方は換える?」
「…いや、良い。」
「良いんですか?」
「ああ。」
「相当自信がおありのようで。これは楽しみです。」
「じゃあ手札の公開はどっちからかしら?」
「貴方からどうぞ?」
「……」
俺はカードを机の上に置いた。
「へー…」
「……」
カードはキングがそれぞれスペード、ダイヤ、クラブの三枚、次にAがスペードとハートの二枚…
「フルハウスね、確かにそれなら交換はしないか。」
フルハウスはポーカーの手役の中では三番目の強さだ…一番の特徴は出やすいと言う事だろう。この上、となるとフォーカードや、ストレートフラッシュと言ったはっきり言って運だけでは揃えるのが難しい役しか無い。
「それで赤城さん?早く出してくれる?私そろそろ持ち場に戻りたいから。」
先程の麻雀の時から思っていたが、夕立の方は余り賭け事が好きではないらしい…真面目な奴にも見えないけどな…
「……」
先程から赤城は笑みを消して黙っているだけ…怒っているのでは無い…正直、負けが確定してイラついているとかならまだ良かった…その赤城は今、不気味な程、表情が無い…まるで能面の様に。
「……」
赤城がカードを机に置いた……裏返したまま。
「おい、何の真似だ?」
「私の負けです。」
「あ?…何でも良い。まず手札を見せろ「ですから、私の負けと言っているじゃないですか。」……」
何時の間にかまた笑顔を浮かべた赤城がそう言って立ち上がると自分の手札も俺の手札も回収し、山札に重ねるとそのまま制服の内側にトランプをしまってしまった。
「おい!」
「それじゃ…あ、貴方からの要求を聞いてませんでしたね?」
「…保留で良い。」
「成程…ではこれをどうぞ。」
赤城はまた制服の内側に手を入れると今度はメモ帳を取り出し、ペンを制服の胸ポケットから取ると何かを書き、俺に渡して来た。
「こいつは?」
「私の個人無線の周波数です。何か頼み事があるなら何時でもご連絡を…一度だけなら何でも手を貸しましょう。」
赤城はそう言って俺に背を向け、出口に向かった…どうやら夕立は先に出た様だ…こいつら案外仲が悪いのか…?俺がそんな事を考えてる間、結局赤城はそれ以上何も口にせず、部屋を出て行った。