赤城がいなくなってからしばらくして、赤城を追おうとして半ば無意識に立ち上がっていた事に気付いて椅子に…
「くっ…!」
そこで気が抜けたのか尻をほとんど叩き付ける様にして椅子に座り込んだ…さすがに尻が痛いが正直それどころじゃなかった…
「ハア…!ハア…!」
酸素を求めて喘ぐ…心臓が…!鼓動が外に漏れるんじゃないかという位に激しく脈打ってるのが分かる…!
「…チッ…!クソがァ…!」
さっきまで奴の前で平静を保てていたのが不思議でならない…!何で俺はあんな勝負に乗った…!?
「…冗談じゃねぇぞ…!?」
深海棲艦に殺気ぶつけられた時の方がまだマシだ…!連中はこの船から遠い…!奴はこの卓挟んですぐ前にいた…!
「…ハア…ハア…」
客観的にさっきの状況を頭の中で思い浮かべる内、多少呼吸は緩やかになって行った…この状況でも未だに寝たままの叢雲に目をやる…
「マジでお前、戦場離れてたから弱くなってたんだな…」
ここに来る前、執務室で奴に砲を向けられた時はほとんど恐怖なんて感じなかった…こいつはどうせあの場で俺を撃たないなんて分かりきってたしな…だが、奴は本気だった…本気で俺を殺そうとしていた…!
「何で…俺を見逃した…!?」
奴は手札の開示すらしなかった…あいつの手札が俺より下だったなんて到底思えない…!
「怖ぇ…!怖ぇよ…!」
呼吸は楽になったが、事態を把握したせいか今度は身体の震えが止まらねぇ…目が潤み、鼻からもドロドロと粘り気のある水が流れ出し、顎まで到達し、机に落ちる…
「あああああ…!」
嗚咽を漏らしながらも鼻筋に握った拳を叩き付ける…今度は赤い物が垂れたが、痛みと共に自然と震えが収まって行く…
「がああ…!」
今度は机に頭を落とす…激痛が走り、椅子から転げ落ちたが、震えは止まった…
「ハア…!ハア…!クソが…!上等だ…!どういうつもりか知らねぇが…そっちがその気ならこっちもお前を利用してやる…!」
何をさせたいのか知らないがあいつは俺に貸しを作ったつもりでいる筈だ…ふざけんじゃねぇ…!俺を利用するのはクソ幹部共だけで間に合ってる…!これ以上良い様に使われてたまるかよ…!
俺は床から立ち上がると部屋の扉を開け、外に出た。
「近くに奴はいねぇ様だな…」
幸い、奴はいなかった…目的の物も近くにある…あいつこの状況想定してたんじゃねぇだろうな…
「……」
ロープが取り付けられたバケツを海に投げ込み、直ぐに引き上げる…海水の溜まったバケツが上がって来た…
「あああああ!」
俺はバケツを置き、その場に正座してバケツに頭を突っ込んだ。