平時は寝落ちとの戦い。途中保存には助けられてます。
ーside和也ー
鈴と訓練や模擬戦したり、簪の専用機開発に口だしたり、謎の視線を感じる頻度が増えたり、トイレから戻ったら鈴が織斑一夏に更にキレてたり、ダリルとフォルテが百合ってる場面に遭遇したり・・・・まぁ、色々あった。うん、色々と。
「なんか、濃かった二週間だったなぁ~」
「うん? なに言ってんのよ?」
「なんでもねぇよ」
そんな訳で、遂にやって来たクラス対抗戦。各クラスの代表がトーナメント戦を行って、優勝クラスには食堂のデザート半年フリーパスが与えられるそうだ。
・・・・なんでクラス対抗戦なのに、総当たり戦じゃねぇんだ? 四クラスしかねぇのに。
まぁそんな事は置いといて、今は試合か。
今の俺は第一試合に挑む鈴のピットで最後の調整やら何やらを手伝っている。一組所属なのに、二組側の。
あっ。ピットへの入場に関する許可は山田先生から取った。一組ではなく二組代表のセコンドと言ったら微妙に涙を浮かべていたが・・・・まぁ仕方ねぇな。
そして鈴の第一試合の相手が一組の織斑一夏と言うのだから、これ程の皮肉はあるまいて。
「それよりも鈴、問題はねぇな?」
「勿論っ! ワタシも
そう答えると鈴は自身のやる気を表す様に、甲龍の待機状態である黒いブレスレットを俺へと見せ付ける。
無論、俺かて自信が持てなくなるような生半可な訓練など付き合っちゃいない。織斑一夏を完封出来る様に、本気で鈴の訓練に付き合って来たつもりだ。
だからこそ俺は自信たっぷりに笑う鈴に対し満足げに笑みを浮かべると、鈴の前に拳を突き出す。
「試合は試合で大事かも知れんが、気張り過ぎるな。ただただ、ぶっ飛ばして来い。お前なら余裕だろ?」
「・・・・ふん、当然よ! そうでなきゃ代表候補生としてのメンツが立たないってもんよ!」
そう答えると鈴は俺の突き出した拳に自身の拳を軽くぶつける。
そもそもこいつは、グダグダ考えるなんざ性に合わない。考えるより、心の赴くまま、自分の思うままに突っ走った方が力を出せる筈だ。それがこの二週間で俺が見て来た、鳳 鈴音って女ってもんだ。
だからこそ俺は、最後にその背中を押してやるだけで良い。そうしてやりゃあ、後は持てる力の全てを絞り出してくれんだろ。
《まもなく第一試合を開始します。出場選手は、アリーナへと移動して下さい》
「っと、いよいよね・・・・ それじゃあ和也、行ってくるわね」
「ああ、俺も観客席で観戦させて貰う。存分に暴れて来い」
そう言ってやると鈴はふんすと気合いを入れ直し、カタパルトへと向かって行った。
ここまで来れば後は鈴の問題だ。俺からしてやれる事はない。そう思うと俺は静かにピットから退散し、観客席の方へと向かって行った・・・・・・
ーside和也 outー
ーーーーーーーーーーーーー
ーside鈴ー
「・・・・来たわね」
和也に見送られアリーナで佇んでいると、ワタシが来た反対のピットから対戦相手が近付いて来るのが分かる。そう・・・・ 一夏だ。
日本に来たばかりで日本語も満足に喋れなくて周りからイジメられてたワタシを助けてくれた一夏が、初恋の相手である一夏が好きだった。中学二年の時に家庭の事情で中国に戻る事になった時も、中国に戻ってからも・・・・
だけど編入を果たしたその日、中学の時にした告白の答えを聞こうとしたワタシは、一夏の的外れ過ぎる勘違いに心を深く傷付けられた。その時の痛みは未だ、克明に思い出す事が出来る・・・・
正直、ワタシは自分の気持ちが分からなくなった。好きなのに、好きだった筈なのに、その女の気持ちを無自覚に傷付けて来るのが、とても怖かった。
けど、それでもまだワタシは一夏の事が好きだった。
本当は怖い。またワタシの気持ちは届かないんじゃないか? また、ワタシの想いは傷付けられるだけなんじゃないか? そう思うと、怖くて仕方がない。
だけど、そんなワタシの背中を押してくれた奴が居た・・・・
秋風 和也。この学園に来て初めて知った一夏以外の、二人目の男性操縦者。出会ってから殆ど日が経っていないのに、ワタシの言葉を聞いてくれた。
心の奥で思っていた事を引き摺り出し、ワタシにもう一度立ち上がる勇気をくれた。
心の中にあった恐怖を忘れるくらい、ワタシの我が儘に付き合ってくれた。
・・・・アイツに出会わなかったら、今のワタシはどうなってたんだろう? ウジウジといじけていた? 初恋をすっぱり忘れていた? ただ一夏を恨み続けていた? ・・・・それはワタシにも分からない。
だけど、せっかく背中を押して貰えたんだ。立ち上がらせて貰ったんだ。立ち向かう勇気を取り戻させてくれたんだ。なら、その恩義には報わなきゃいけない。
「さぁ、しっかりしない鳳 鈴音。ワタシの想いを、全てぶつけるのよ・・・・!」
そうしてる内にISを纏った一夏がアリーナに姿を見せる。
和也との訓練で慣れたつもりでいたけど、やっぱり男がISを纏ってるってのはどこか珍しくも感じる。特にそれが、初恋の相手ならば尚更だ。
「待たせたな、鈴!」
「別に待ってないわよ。それより一夏、戦う前に聞きたい事があるの」
「? なんだよ?」
そう、これは確認だ。再会した翌日から満足に話す事すらせず、距離を取って互いに考える時間はあった。だからこそ、ワタシは確かめたい。
「あんた、ワタシが放っておいてって言ったらそのまま放っておいて、全くワタシに会いにすら来なかったわよね? それにこの前もワタシを怒らせて・・・・ ねぇ? あんたはワタシが、なんで怒ってたのかとか、少しは考えたの?」
「えっ? いや、だって俺はちゃんと約束を覚えてたし、別に悪い事した覚えは全くないんだけど・・・・ ああ、いや。この前は確かに俺も言い過ぎたかなって、少しは悪かったって思ってるけど」
ーーギリッ!
噛み締めた奥歯が軋む。握り締めた拳がギリギリと音を立てる。
分かってなかった。全く考えてくれてなかった。ワタシがどんな気持ちで一夏から距離を取っていたかも。どんな思いで、一夏と向き合おうと思っていたかも・・・・!
本当なら今にでも殴り掛かりたい。怒りのまま、声を荒げて叫びたい! ・・・・だけど、今はまだ我慢だ。
「・・・・そう、それがあんたの答えって訳ね。なら、もう良いわ・・・・・・」
「? り、鈴・・・・?」
分かってはいた。鈍感なんて生温い唐変木な一夏から、気の利いた答えが出る訳なんてないって。
だけど、それでも・・・・
「もう謝ったって、手加減なんてしてやらないわよ!」
「の、望むところだ! 俺だって全力で相手してやるよ!」
淡い期待くらい、させてくれたって良かったじゃない・・・・!
「全力で・・・・ぶっ潰すっ!」
ーside鈴 outー
ーーーーーーーーーーーーー
ーside和也ー
鈴と織斑一夏の試合が始まって早五分。
「・・・・いや、おっかねぇなオイ」
『一夏ぁぁぁぁぁぁぁあっ!』
『ぐあぁぁぁぁぁあっ!?』
試合は早々に、一方的な展開になっていた・・・・・・
つか、怖ぇよ鈴! なんだよ、至近距離で双天牙月の二刀流による連撃と『龍砲』の乱撃って。しかも鬼みたいな形相で、一切手加減の欠片も感じないから余計に怖いわ!
あんな気迫、訓練中ですら見てねぇよ・・・・
「うわ~・・・・ おりむー、ボッコボコだ~」
「それに、二組の代表も凄い。流石は中国の代表候補生・・・・」
「いや、アレはもう代表候補生とか関係ないだろ? 鬼気迫るって言うか、完全に鬼だろ?」
ああ、因みに今は簪と一緒に、一組寄りの場所で試合を観戦してる。四組の簪と何故一組寄りの席で観戦しているか? それはのほほんに捕まったからだ。
いや、ピットを出たら偶々簪と会って二人で観戦でもすっか?的な話してたら、何処からともなく現れたのほほんに捕まったんだよ。何故か簪を巻き込んで。
で、聞いてみれば簪とのほほんは幼馴染みらしい。しかも簪が専用機開発で塞ぎ込んでいた間はのほほん的には不本意ながら疎遠になっていたらしく、せめてこう言う時くらいは一緒に居たかったそうだ。
「つぅーか、なんであの馬鹿は未だに突撃一辺倒なんだ? 二週間近くも時間がありゃあ、別の動きのひとつは出来んだろ?」
「あぁ~。おりむー、しののんとばっかりISの訓練してたからじゃないかな~? たま~に見たけど、ずっと真正面から斬り合ってばかりだったよ~?」
「えぇ~え・・・・ それ、ISを馬鹿にし過ぎじゃ・・・・・・」
もはや勝負は見えたが、のほほんがもたらした情報に俺と簪は呆れた様な顔を浮かべる・・・・ と言うか、完全に呆れてる。
そもそもアリーナを借りて訓練してたんだろ? なんで回避運動すらまともに取れてないんだよ。正直言って、こんなののせいで簪の専用機開発が丸投げされたなんて頭が痛くなってくる。
「こりゃもう鈴の勝ちで確定だな。後三分も保てば良い方だろう」
「うん。それに、SEも残り二桁になってる。どうやっても巻き返しなんか無理」
もう? さっき見たら四割はあったのに、早くない?
これはもう、絶望的だな。そう思った俺とのほほんは織斑一夏に対し念仏を唱えるかの様に両手を合わせた・・・・が。
ーーバリィーンッ!
「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁあっ!?」」」」
それは、突然鳴り響いた轟音と悲鳴によって遮られた・・・・
「な、なにっ!?」
突然の事に簪は慌てて周囲を見渡し、のほほんはそんな簪にしがみついてる。
轟音の発生源であるアリーナを見てみればアリーナの周囲を覆っていたバリアが破壊されていて、その周囲では攻撃を受けた様に土煙が舞い上がっていた。
「・・・・っ! あいつぁ!?」
そんな中、俺は其処にいた不審者の存在に気付くと同時に驚愕の声を溢す事になった。
飾りっけのない無骨な印象を受ける黒い装甲。人の身体にしては腰回りが細く、薄く白煙をあげる明らかに砲頭の様な右腕。そして
其処にいたのは・・・・・・
「ゴーレム、だと・・・・!」
束が作った無人機『ゴーレム』と瓜二つの物が十二体、アリーナ上空に浮かんでいた・・・・・・
ーside和也 outー
うん、無理にsideを3つに分けるもんじゃないや。ただ文字数だけが掛かった。
さて、次回辺りからちゃんと戦闘頑張るか。
では、ターンエンド!