デュノア社。フランスに本社を置き、第二世代型量産機ラファールを主力商品とし世界的なシェアを誇っている大企業。
しかし近年では第三世代機の開発に遅れを取り、他国との技術力の差に経営を傾け始めている。
特に欧州統合防衛計画、通称イグニッションプランの主力ISの選考レースからも完全に乗り遅れており、それに対し政府までもが焦りからデュノア社へと強い圧力を掛け続けている状況が続いている・・・・・・
そんな折り、発覚したのが世界初となる男性操縦者・織斑一夏の存在だ。
女性にしか使えないとされているISの男性の使用。これがどれだけの利益を産むかなど、企業なら馬鹿でも分かる。当然、利益を得るのは企業だけではない、政府も莫大な利益を得る事になるだろう。
そんな中、デュノア社で動きがあった。現社長である『アルベール・デュノア』の愛人の子である『シャルロット』をデュノア家に引き取り、男性としてIS学園へと入学させたのだ。
これには同性として織斑一夏と接触し第三世代機である『白式』の機体データ又は、織斑一夏の生体データを手に入れようとする意図と、フランスが男性操縦者のデータから男性でも扱えるISを解析・開発し世界的に優位な地位を得ようとする思惑があった。
成功すれば大金星、失敗すれば破滅・・・・ そんなハイリスク・ハイリターンな手段を取らねばならぬ程、フランスと言う国は追い込まれていた。
そんな中でもシャルロットは男子生徒の『シャルル・デュノア』としてIS学園へと編入を果たし、政府の傀儡として、そして産業スパイとして、本人が望む望まないに関わらず織斑一夏と接触を図っていく事になる・・・・筈だった。
ーsideシャルロットー
「・・・・とまぁ、此処まででなんか間違ってる事はあるか? 『シャルロット・デュノア』さんよぉ?」
「・・・・・・」
何も、言葉が出なかった・・・・
色んな思惑があるとは言え漸くIS学園へと入学した初日に、僕の正体が・・・・ 僕に課せられた目的が、その全てが彼には把握されていたのだから。
最初、彼が部屋の前に居た時は理由が分からなかった。そして次に部屋へと入れられ次々と僕の秘密を言われた頃には・・・・ 僕は、考える事を止めていた。
彼、秋風和也は全て知っていた。
僕の正体を、何故男性の真似なんかをしているのかを、政府が何を考えているのかを、僕がどんな立場なのかを・・・・
「一応、聞いておきたいんだけど・・・・ その情報は、何時手にしたの?」
「少なくも、お前さんが編入して来る前には把握してたな。ウチの情報収集班は優秀でな~。その気になればデュノア社の口座番号や隠し口座はおろか、社長や夫人の隠れた性癖まで調べ尽くせんぞ?」
「ア、アハハハッ・・・・ 性癖云々は兎も角、そっか。無茶な事をしてる自覚はあったけど、最初から無理な話だったんだね・・・・」
「因みに社長と夫人には、少々露出の気があるらしい。偶に夫婦で下着を身に付けない日が有るらしく、それが家同士のお見合い結婚の決め手だったそうだ」
「その情報いるっ!?」
なんで言ったの!? 僕、性癖云々は兎も角って言ったよね!?
と言うか、それを聞いて僕にどうしろって言うのさ!? もうあの人達を普通の目で見れなくなっちゃうよっ!
「まぁ社長と夫人の性癖の一部は受け入れて貰うとして、話を続けるか」
「性癖の一部って何!?」
「デュノア夫婦、隠された3つの性癖の1つ」
まだ有るの?! て言うか受け入れて貰うって、それ事実なの!?
止めて! それはそのまま隠したままにしといて! 僕はもう聞きたくないからっ!
「真面目な話、デュノア。俺はお前の秘密云々を、誰かに言うつもりはねぇ。ついでに言えば織斑一夏からデータを盗ろうとすんのも、咎めもしなきゃ止めもしねぇ。好きにしろ」
「・・・・えっ?」
それは、どう言う意味・・・・?
彼は僕が学園に来た理由を知っていた。ならそれを咎めたりするのが普通な筈なのに、止めようとすらしない?
「それって、どう言う・・・・」
「ああ、勘違いすんなよ? だからってお前に俺に関するデータをやるつもりはねぇし、無理に奪おうってぇなら手足切り落とした上で殺してやる」
いや、物騒だよ! 流石に冗談だよね!?
「けどな、お前の意思云々はどうであれ折角
そう言うと彼は、言いたい事を言い切った様に何処からともなくペットボトルを取り出し、喉を潤す様に飲み始めた。
どうしたいかを決めるのは僕の意思。全ては自己責任・・・・ それは、確かにそうなんだろう。彼が言ってる事は何も間違ってはいない。
けれども、僕にはそれ等に逆らうだけの力も何も無い訳で、結局のところどうしたいかなんて決める事も出来はしないんだ・・・・
「・・・・とまぁ、お前さんも特に言いたい事も無ぇみてぇだし、真面目な話はこんくらいで良いな。んじゃ次はこれからの取り決めを詰めっか」
「・・・・えっ? これからの取り決め?」
さっきまでの雰囲気が嘘だった様に、ふと彼が変な事を言い出した。
と言うか、さっきは僕がする事に干渉しない様な話しをしてたのに・・・・ どう言う事だろう?
・・・・まさか、自分で言っといてもう忘れたとか無いよね?
「・・・・んだよ、その微妙に呆れたみてぇな顔は? 喧嘩売ってんのか?買うぞ? 」
「ご、誤解だよ! ただ、どう言う意味なのか分からなかっただけだってばっ!」
あ、危ない・・・・ ちょっとは思ってただけに、余計な反感を買うところだった。
それでも僕の考えてた事にジト目を向けてはくるけど、少しすると彼は軽く溜め息を吐くだけで話を続けてくれるみたいだ。
「はぁ~。俺はお前の秘密を知ってる、んで短い間とはいえ同室相手だ。そんな状況でもまだ無理して、そのお粗末な男の格好を続けるつもりか?」
「あ、ああ。そう言う事ね・・・・」
確かに、僕自身もこんな簡単な男装で大丈夫なのかって不安には思っていたけど・・・・ 実際に正体を把握してる人に言われるのは傷付いちゃうな~。
と言うより、そう言うって事は・・・・
「ええっと、じゃあ・・・・ 部屋に居る間は、男装しなくても良いって事かな?」
「まっ、気を抜き過ぎて他の奴にバレなきゃ好きにしたら良いんじゃねぇの? 他にも風呂のタイミング決めたり、部屋に戻る時は事前に連絡を入れるとかそう言うの決めたりってとこか?」
それが本当なら、僕は部屋の中でだけは『シャルル・デュノア』じゃなくて『シャルロット・デュノア』として居られるって事な訳で・・・・
なんでだろう? 最初は怖い相手と思ってたけど、そう言われれば怖いって印象を抱いていたのが間違ってたとすら思えてくる。
もしかすると・・・・ 言葉が悪いだけで、実は優しい人だったりするのかな?
「ああ、それと言い忘れてた。俺は織斑一夏が生理的にも嫌いだから、変な事に巻き込むなよ? 巻き込んだら・・・・ デュノア夫妻の性癖を世界的に拡散してやる」
「それどんな脅し方なの!?」
そんな脅迫に使える程、あの人達の性癖ってヤバイの!? そっちの方がショック大きいんだけど!
「まぁそんな感じに、短い間だろうが付かず離れずな関係で宜しく。・・・・仲良くしようぜぇ~?」
「顔っ! それ完っ全に悪人の笑い顔だよっ!」
あぁ、元々不安しかなかった学園生活だったけど、彼と出会った事で余計に不安な学園生活に突入した様な気がするよ・・・・
それでも、一人だけでも自分を偽らなくても良い相手が出来たのは良い事なのかな・・・・?
ーsideシャルロット outー
デュノア夫妻に変な性癖を付加してみた。反省も後悔もない。
和也はシャルロットの秘密を把握しているが、基本的には助けてあげる気はありません。だって地雷案件でしかないし。
ただ、把握してるだけにシャルロットの知らない事までしっているので、そこからどうするかはシャルロット次第と言った感じにしてみました。
では、ターンエンド。