お陰で文字数だけは多い。
たぶん、こんな文字数はもうやんない。
※8/24 誤字脱字訂正
生徒達も登校し、それぞれの教室でHRも始まろうとしている朝の8時。そんな時間に、此処IS学園の搬入口には学園に似つかわしくない白衣を着た集団が訪れていた・・・・
「やぁ出迎えご苦労、更識生徒会長殿」
「ええ、おはようございます『
その集団こそ、日本有数のIS技術を誇ると言われる倉持技研からの遣い。倉持技研IS開発部副所長の古井隆光とそのお付き達だった・・・・
それを出迎えるのは学園の生徒会長にして、更識家の当主でもある更識楯無。そしてその後ろに控える従者、布仏虚。
彼等は早朝と言う事もあり互いに挨拶を交わすが、その様子は今の天気の様に決して爽やかではなかった・・・・
「それで、本日は一体どの様なご用件で?」
「はっはっはっ、これはおかしな事を言われますな。事前に通知はしていた筈ですよ? 我が倉持技研で開発している『打鉄弐式』、
そう古井が訝ひた笑みを浮かべて言った瞬間、楯無はその手に掴んでいた扇子を強く握り締めた。
そんな事をわざわざ聞かなくとも、楯無とて古井が学園にまで来た理由など分かっている。聞いたのはあくまで、それに対し何かしら負い目や申し訳無さを抱いているかの確認したかったからなのだが、古井の態度を見る限りそれは限りなく無いに等しいだろう。
それは古井の連れて来た研究員達も同じなのか、揃って何を今更と言わんばかりの態度を取っていた。
「そうですか・・・・ しかし、良いのですか? 今『打鉄弐式』を回収しては、日本の代表候補生は未だに専用機を与えられていない事になりますよ? そうなっては政府から開発を請け負った側としても、世間の評価に響くと思いますが?」
「言ったでしょ? 今後のIS開発の発展の為だと。それにこれは日本政府も認めている。それはつまり、件の代表候補生に専用機はまだ早いと言われているも同義でしょう?」
「へぇ~え・・・・ それは、簪ちゃんの実力が低いと言うことかしら?」
「いやいや。あくまでも政府の判断を言ったまでですよ。っと、そう言えば件の代表候補生は生徒会長殿の妹君でしたな? これは失礼をしましたな」
そう言った古井の言葉とは裏腹に、そこに謝罪の意思などない。分かって言っているのだ、本来『打鉄弐式』を受け取る筈だった代表候補生が楯無の妹である簪だと言う事も。
そしてその簪が、ロシアの国家代表である姉の楯無に対し劣等感から来るコンプレックスを抱いている事も。
その上でのこれまでの会話。敢えて挑発する様に、遠回しに簪を侮辱する様に、嘲笑うかの様な笑みを楯無へと向ける・・・・
だが、彼等は知らない・・・・・・
「・・・・まぁ良いでしょう。こちらも生徒会の業務が控えてますので、早く用件を済ませてしまいましょう」
「そうですな。こちらもかの男性操縦者のデータを解析するのに忙しい身ですからね。雑事は早く済ませてしまいましょう」
「っ! ・・・・・・どうぞ此方に。今日はあくまで、
倉持技研にとって小さな、然れど大きな亀裂へと変わる復讐が、既に始まっていると言う事を・・・・・・
そしてその事に気付く様子もないまま、古井は楯無と虚に連れられ、『打鉄弐式』が準備されているピットへと向かって行った。
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それを知ったのは偶然だった。
男性操縦者、織斑一夏の出現によって開発が流れ、2割程度の完成度で放置されていた『打鉄弐式』。それが完成しそうになっていると・・・・
しかも完成度2割から完成にまで漕ぎ着けたのは件の代表候補生、更識簪が独自に開発を続けていたと言うではないか。
それを聞いた時、古井は思った。たかが学生の小娘が、ふざけるなと・・・・
『打鉄弐式』開発に携わっていた全ての技術者達が『白式』の開発に流れたのは、何も政府からの圧力だけが原因ではない。
造れなかったのだ、『打鉄弐式』に搭載される予定だった第三世代型イメージ・インターフェイスの要、マルチロックオン・システムが。
さらに専用の武装になる連射型荷電粒子砲『春雷』も、独立稼働型誘導ミサイル『山嵐』も、古井達にとっては開発が行き詰まっていたのは楯無ですら知らない事実であった。
そんな折り、自分達が造れなかった物が完成しつつあると聞いた。武装だけでなく、システムまで。それも自分達の半分も生きていない学生によって。
だからこそ苛立った。たかが学生風情が、プロたる自分達のプライドを安易に傷付けた事が。開発を投げ捨てた自分達が、まるで無能だと言われてる様で。
故に、奪う。完成されたとされる技術も、成し遂げたと思っている小娘の希望も。
しかも都合よく大義名分は簡単に作れた。倉持技研が専用機を宛がったとされる男性操縦者への支援と、日本に於ける今後のIS開発の発展の為。そんな綺麗事で、簡単に政治家どもは今回の事を了承した。
唯一所長である女性が反対して来たが、方々への手回しで黙らせた。最早この件に口出しなど出来ないだろう。
そこまでの準備をし、自分達が頓挫した技術が苦もなく完成した形で手に入ると古井は考え、今日この場に居る。
だが・・・・・・
「な、なんだこれは・・・・?」
その甘い考え自体、既に間違っていたとは気付かなかった・・・・
「なんだ、と言われましても・・・・
「ふ、ふざけるな! な、なんで・・・・ なんでウチが放置した状態になっている!」
そう楯無によって案内され辿り着いた場所にあったのは、完成間近であった『打鉄弐式』ではない。倉持技研が
装着されきってない装甲。特に腕部は内部が剥き出しになっており、技術者側から見てもまだ内部が完成すらしていないの明白だった。
それには技術者達も唖然とし、古井は怒りに満ちた声を楯無へとあげる。しかし・・・・・・
「完成間近? おかしいですね、そちらには開発状況などの報告はしていない筈ですが?」
「それにこれは、紛れもなく
そう言った楯無と虚の言葉に、古井は怒りから顔を赤らめていく。
確かにこれは『打鉄弐式』だ。『白式』の開発、いや、解析前に放置していた時の『打鉄弐式』。それは古井や技術者達も分かる。
だが、『打鉄弐式』は完成間近だった筈。だからこそ方々へ根回しをし、それを奪わんと今日を迎えた筈であったのに・・・・
「さて、此方も時間が押してますので、手早く回収の方を済ませて下さいね? 目的の物は目の前にあるのですから」
「ふ、ふざけるな! そもそも『春雷』はどうした!『山嵐』は? マルチロックオンシステムは? 既に完成していた筈だ、それも寄越せぇ!」
最早取り繕う余裕すら無くなったのか、古井がそう激昂の声を荒げるや、楯無の視線から温度が引いていく。
その視線はまるで汚いものでも見る様で、古井の後ろに控えていた技術者達の背中に悪寒すら走らせた。
と、そこで楯無が絶対零度の視線のまま口を開こうとした最中、第三者の声がその場へと響く。
「そもそもだ。開発コンセプトとネタ提供はそっちだろうが、開発・改訂・完成させたのはこっちだぞ? なんでそれを、三流技術者共にくれてやんなきゃいけねぇんだよ」
「っ!? だ、誰だ!」
その第三者から掛けられた侮蔑とも取れる声に、古井は声を荒げて振り替える。そして次に古井を襲ったのは驚きだった。
「お、男!? 馬鹿な、なんで此処に織斑一夏以外の男が居る!?」
「どーも。IS学園一年一組所属の秋風 和也で~す。好きな物は家族とおっぱい、嫌いな物は日本政府と女尊男卑思想共。得意分野は兵器開発で~す」
「あらっ、品がないわね」
「秋風君・・・・ もう少し良い自己紹介は出来ませんでしたか?」
「相手がまともな奴等だったらな。目の前に居んのは碌でもねぇ部類の奴等なんだから、こんぐらいで充分だろ?」
ケラケラケラ・・・・ と、まるでふざけているかの様な口振りで姿を見せた和也に虚は溜め息を溢し、楯無は『助平』と書かれた扇子で口元を隠す。
全く、想定していなかった存在の登場・・・・ それには古井も先程まで怒りで赤くしていた顔を戻し、驚きから目を見開いて和也を見る。
「そ、そんな馬鹿な話があるか・・・・ 政府からは織斑一夏しか男性操縦者はいないと聞いていたと言うのに・・・・」
「さて、ね。お宅ら、政府から信用ねぇんじゃねぇの? まっ、俺の知ったこっちゃねぇんだけど」
未だ古井の理解が及ばない。それ程までに古井には二人目の男性操縦者となる和也の存在は全く想定していなかった。
だが同時に、それはチャンスでもあると僅かだが思えていた。
もしも此処で和也の専用機も倉持技研で担当すれば、各国に対し大きなアドバンテージを稼ぐ事が出来る。同時に未公開となっている和也を引き込んだとなれば、回収する筈だった『打鉄弐式』なんかより大きな手柄になるとも古井は考え始めていたのだが・・・・・・
そんな考え自体、考える事が間違いだった。
「まぁ取り敢えず、せっかく徹夜してまで『打鉄弐式』を
「戻しといた、だと? ・・・・っ!? お前かっ! お前が完成間近だった筈の機体をこんな状態にしたのかっ! ふざけるなよっ! 『打鉄弐式』は我々、倉持技研が開発したものだ! それを勝手に解体するなど許されると思っているのかっ! 『打鉄弐式』は我々の・・・・」
「うるせぇよ三流技術者。端っから造るの放棄した癖に、今更好き勝手ほざいてんじゃねぇよ」
「なぁっ!?」
冷たい・・・・ 古井にしてみれば和也とは今日が初対面であり、直接的には接点などない筈だった。なのに今の和也からは、まるで積年の恨みでも持っているかの様に冷たく鋭い視線が向けらている。
その視線に沸いた怒りも一瞬にして引くのを感じていると、和也はゆっくりと古井に近付きながら口を開く。
「専用機の開発を放り投げ、なんのフォローもしねぇ。挙げ句、蓋を開けて見れば機体に使われてた部品は粗悪品。OSは勿論、武装も全く手付かず・・・・ こんな状態で放置してた奴等が、よく自分達が開発したとか胸はって言えたなぁ?」
「うっ・・・・!」
「確か、受領した時の完成度が20%くらい・・・・ で、簪が開発を引き継いでから残りの80%を完成させてった訳だが・・・・ 担う割合、普通は逆じゃねぇのか? なんで一個人が一企業より機体造り上げてんだよ。挙げ句お前等、武装に関しちゃそっちじゃ未だに開発すら出来てねぇだろ?」
「そ、それは・・・・」
古井に突き付けられる現実。事実、簪に『打鉄弐式』が受領された時に倉持技研が満たしていた完成度は全体の2割。それを簪は一人で7割近くまで完成させ、最終的には和也や学園の有志達の協力で完成にまで漕ぎ着けている。
日本が誇るとされる企業が頓挫し未だ実現も実用化も出来ていない事を、学生達が果たした。それは紛れもない事実であり、この場に於いて古井を追い立てるのには充分な事実でもある。
「その上でもう一回聞くけどよぉ・・・・ お前等の何処に、技術者として胸はって『打鉄弐式』造りましたなんて言える要素があんだよ? なぁ、教えてくれよ?」
「うっ、ぐぅぅぅ・・・・っ!」
何も言い返せない。何も言い返せる訳がない。ただてさえ今回の接収ですら『打鉄弐式』がほぼ完成したからと言う理由で行った事であり、和也の言う様に技術者としては殆ど何もしていない。
それは古井の連れて来た技術者達も同じであり、和也から視線を逸らす様に顔を背けている。彼等とて、和也から指摘された事は重々に理解した。理解させられた。
その様子は横で見ていた楯無も虚も、指摘した本人である和也も気付いている。気付いてはいるが・・・・ それを気に掛ける様な配慮など、今の和也にはない。
「・・・・なんだ、なんも言い返せねぇのか? 少しは反論くらいしてみろよ三流技術者。まぁ結局、自分達の技術力だけじゃ
そこまで責める様に言われ、もはや古井には和也に対し言い返す言葉すら絞り出す事が出来なかった。
反論しようにも現に和也の言っている事は事実であり、否定しようにも否定出来る材料がひとつもない。
その事に顔を俯かせ歯を食い縛っていると、和也は露骨に溜め息を吐き古井から離れて行った。
「はぁ~あ。言うだけ無駄か・・・・ おい会長、『打鉄弐式』はバラし終えたし俺は帰んぞ。後はさっさと引き取らせとけと」
「ええ、分かってるわ。・・・・さて、古井副所長。此方も暇ではありませんので『打鉄弐式』を回収の上、手早くお帰り頂けますか?」
「・・・・わ、分かっている・・・・・・」
そう力無く答えると古井は引き連れて来ていた技術者達へ指示を出し、『打鉄弐式』の回収を始める。
完成とは程遠い姿となった今の『打鉄弐式』は待機状態にする事も出来ず、機体をコンテナへと積んで帰る事となり技術者達は数人掛かりでコンテナを搬入口まで運ぶ事となった。
そして搬入口で『打鉄弐式』のコンテナを乗って来ていたトラックへと積み、最後に古井が別の車両へと乗ろうとした際・・・・ 最後に和也が言葉を溢した。
「しっかし、こんな碌に機体も完成させれねぇのが日本お抱えの企業とはなぁ・・・・ 日本の代表候補生ってのは、随分と可哀想なこった。自力で他の企業を探さねぇと、満足に専用機すら与えられねぇじゃん」
「っ!? ぐっ・・・・クソっ!」
ーーーダンッ!
そう溢した和也の言葉に古井は怒りに任せドアを閉めると、逃げ出す様に車を発進させた。
もはやこの場に居るだけで・・・・ 和也が口を開くだけで古井の、技術者としてのプライドはボロボロに傷付けられるだけだった。
それは他の技術者達も同じであったが誰一人として和也に反論する事すら出来ず、皆一様に悔しさに顔を歪ませて学園を去るしか出来なかったのだった・・・・・・
ーおまけー
それは、古井達が学園から去って行った後の事・・・・
「そう言えば和也君、ひとつ聞いて良い?」
「あん? なんだよ?」
「さっき自己紹介の好きな物で『おっぱい』とか言ってたけど・・・・ アレ、どう言う意味?」
「どうって・・・・ 言葉通りだけど? 俺、巨乳好きって言うか、単純に胸が好きだし」
「アレ、そのまんまの意味だったの!?」
「因みに貧乳は相手とのフィーリングさえ合えば問題ない。おっぱいに貴賤なし、名言だろ?」
「それは名言じゃなくて、迷言よっ!」
そんな楯無の中で微妙に和也の評価が下がる様な一幕があったそうな・・・・