暗闇の妖狐   作:raikusuki

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結局投稿するって言うね。


序章 狐火

木ノ葉隠れの里。

無数の墓が静かに並ぶこの場所に、いつも訪れる。

慰霊碑に刻まれた、仲間たち。

そっと指で名前をなぞりながら、無念を思い出す。

苦しい。哀しい。目頭が熱い。でも…。

「オレは馬鹿だから…すぐに忘れちまうんだよなぁ…」

暗部に入って早三年だ。

仲間たちの死をたくさん見てきた。たくさん作った。

本人たちは痛みと戦いながら世を去っていったのだろう。それが、悔しい。

「何をボソボソ呟いているんだ?」

そこで、一人の男が入って来た。

「黒眼か」

「まったく…お前は飽きないな、毎日来て」

「飽きる飽きないの問題じゃない…オレは…」

「そんな悲観的になるな。過去を悔やんでもしょうがない。狐火。ほら。火影様がお呼びだ」

「…分かった」

そう言って、静かに印を結ぶ。

シュンッと風の音を残し、狐火と呼ばれた暗部は消えた。

「…ナルトも大変だな」

他人事のように呟きながら、黒眼…うちはイタチも消えた。

 

 

森の中を駆ける。

前方三キロメートルに目標。数は五名。真一文字に並んでいる。

白眼を持っている部下が、後ろに向けてそう言った。

今回の任務は、抜け忍の始末。

手配書に金文字で載るほどの大物だ。追い忍の手に負えないということで、狐火ら暗殺戦術特殊部隊…通称「暗部」が始末することになった。

狐火がやや速度を上げる。

「…狐火さん…!」

「オレが五名全員を片づける。恐らく影分身だろう。お前たちは後方で待機だ」

「御意」

指示を受け、狐火以外は全員後ろへと下がった。

足にチャクラを溜め、加速する。

一気に敵の背後へ近づき、背中に差した忍び刀を抜き放った。

まずは一番右。背中を袈裟懸けに斬る。

ボフン、と煙に包まれた。

「…いつの間に!」

目標はすぐに戦闘態勢を整え、クナイを投げてきた。

刀で薙ぎ払い、瞬身の術で敵の背後を取る。

ザクッと一突き。

血も出ずに、それは姿を消す。

と、そこで。

「水遁・水龍弾の術!」

津波が襲って来た。

水のないところでこれほどの水遁を使えるとは、さすがとしか言えない。だが…。

「雷遁・感激破」

雷が水を伝って相手に行き渡る。

「ぐあああ…」

また、影分身か。

後ろから近づく敵を振り返り、手裏剣を打った。

印を素早く結ぶ。

「手裏剣影分身の術!」

手裏剣が二枚、三枚、四枚…と増えていきやがては十枚となった。

三代目火影直伝の術だ。まだ、これが限界であるが。

しかしそれで充分だった。

狐火は背後に近づき、右手にチャクラを集中させる。

チッチッチッ…と鳥の鳴き声がどこかから聞こえてきた。

後ろ…か。

そう思ったときには遅い。

目標の体が、狐火の右腕によって貫かれた。

血しぶきが舞い上がり、踊り狂う。

仮面の下の蒼い目は、ただただ暗殺者だった。

 

任務報告書を渡した後、狐火は仮面を取る。

「ん~…ああ…疲れた…」

暗部の面をとったらもうそれはただのうずまきナルトだった。

「今日も素晴らしい手際だったよ、ナルト」

「そうかぁ?はは、照れるってばよ」

これがつい先ほどまで、S級犯罪者と戦っていた男と思うだろうか。

無論、変化はしていたが、しかし同一人物には変わりない。

里に皆に暴力を振るわれていたナルトをどうにかしてやろうとヒルゼンが忍術を教えた結果、開花した才能。暗部に自ら志願した五歳児であった。

それが今は里の民と変わらぬ五歳児となっている。

「でも、やっぱ千鳥は難しいってばよ、カカシの兄ちゃん」

カカシ、と呼ばれた銀髪の青年はそりゃあね、と答えた。

「あれは速すぎてカウンターがなかなかつかめないから。ま、当分は控えた方がいいと思うよ」

「ん~やっぱそうか…」

うなだれるナルト。

「螺旋丸は使わないの?せっかく九尾に教えてもらったのに」

彼はもう既に、腹の中の九尾と和解している。そして、今は亡き四代目火影の考案した術、螺旋丸を習得していた。そもそもは、決定打がなかったナルトのために九尾が教えた術であった。

「九尾じゃなくて九喇嘛だって。螺旋丸は使ってもいいんだけど、やめとけって九喇嘛が…」

「なんで?」

「四代目火影の関係者だとバレたら面倒でしょ?」

「あ~」

螺旋丸は、今は四代目火影の関係者しか習得していない。しかも、あの天才忍者はたけカカシが出来なかった術でもある。それを暗部の狐火…うずまきナルトが使えたら、どうなるか。大体想像は出来る。

「そう言えば」

カカシが思い出したようにポン、と手を叩いた。

「火影様がお呼びだったよ」

「は?じいちゃんが?」

「うん」

「もー!先に言ってくれってばよ!」

少々キレながら、ナルトは執務室へと駆ける。

「はは…子供って可愛いなぁ」

 

変化をし、暗部姿となって執務室へと入る。

「ナルトか」

「狐火です」

「いや、ナル…」

「狐火です。この姿では、狐火です」

「…」

毎回繰り返される茶番を無理やり終わらせて、ナル…狐火はヒルゼンへと近寄った。

「銀狼から、三代目がお呼びと聞きましたが」

「うむ。実はおぬしに、長期任務を言い渡す」

「長期任務?」

今までヒルゼンは、「変化しても五歳は五歳」と正論をぶちまけて、狐火に長期任務をやらせなかった。それがどういう風の吹き回しか、急にやらせてくれるとは…。

まあ、ずっとやりたかったから異論はないのだが…。

「おぬしには、アカデミーへ入ってもらう」

「…は?」

「じゃから、アカデミーに入ってもらう」

「何故…」

狐火もといナルトの実力は、暗部トップクラスだ。今更アカデミーに入ったって無意味に等しい。

「私の実力を疑っているのですか…」

「まあ待て狐火。だれもそんなことは言っていないじゃろ。一旦話を聞け」

「…」

狐火が引き下がるのを見、ふう、と煙管を机の上に置き、ヒルゼンは口を開いた。

「護衛任務じゃ」

 

「今年は名家、旧家の新入生が多くての。見てもらえば分かると思うが」

今年の新入生リストを手渡され、パラパラとめくっていく。

「…!…これは…」

「奈良、山中、秋道、うちは、犬塚、日向、油女…とにかく多い。分かっておる通り、血継限界の持ち主は抜け忍や裏商人などに狙われやすい。身の危険があるということじゃな。それに日向家のヒナタは、雲隠れの忍に一度誘拐されかけたことがある。あれはおぬしの活躍で未遂に終わったが…ともかく、彼らが中忍になるまで護衛をせよ、と言うことじゃ」

中忍になるまで。

大体、六年か七年…果ては十年近くにまでなるだろう。

「勿論、おぬしも下忍として任務はやってもらう」

つまり、一旦は表の忍…うずまきナルトとして活動せよ、ということか。

なかなかめんどくさい任務だが…。

「暗部としての活動は?」

「続けてもらう」

ほら、めんどくさい。

昼夜逆転の生活が崩れて、休む間もなくなるのが目に見えた。

「異論は?」

「…ないです」

「では、御意…ということじゃな?」

「はい」

そうして、狐火…うずまきナルトは、アカデミーに行くこととなった。




もう続けます!
逆行ものとかすれてるものとか好物なんで!

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