仮面ライダー×仮面ライダー剣〜triple joker〜   作:メタカイザー

1 / 6
1話

我らの住む日本、その首都である大東京から遠く離れた、中東の異国の地にて…今一つの事件が起きていた。

今からもう十数年も昔…紫紺の戦士・仮面ライダーブレイドとして戦い、戦いの中で友情を構築した親友の願いを叶えるために、その身を異形へと変えた青年、剣崎一真。

人々を助けるために永遠の時の中で旅を続ける彼の身に、今危機が迫っていた。

 

「なぜだ!?なぜ俺を狙う!?」

 

剣崎は目の前に立ちはだかり、行く手を塞ぐ金色の仮面ライダーを睨み、叫ぶ。

金色のライダー…アルファベットの「A」を象り、かつて剣崎達所謂「剣ライダー」の四人が使っていたシステムや変身能力とよく似たベルトが特徴的なそのライダー…仮面ライダーグレイブは、自身の武器である醒剣グレイブラウザーの切っ先を向け、剣崎へと近づく。

 

「貰うぞ…貴様の命…」

 

冷淡なその一言を吐き捨てるように言うと、グレイブはラウザーを一閃し、剣崎の体を斬りつける。

 

「ぐああああっ!!」

 

剣崎の体からは異形の証である「緑」の血が吹き上がり、地面に膝をついた。

 

「は…じ…め…」

 

意識が薄くなっていく最中、剣崎は日本で人々の中で生き続けているかけがえのない…そして「最後の切り札」という逃れられない宿命を共に背負ったもう一人の自分ともいうべき親友・相川始を思い、血だまりの中に倒れた…

 

役目を終えたグレイブは変身を解くと、その仮面の下から現れた冷徹な表情で剣崎を見下ろした。

 

「これで俺の望みを叶えることができる…最強の力…俺の手の中に…!」

 

不気味な笑みを浮かべると共にその男…海東純一は拳を握りしめるのであった…

 

あれから長い年月が過ぎ、心を通わせていた少女も綺麗に成長した…

だからこそもう一緒に過ごす時期も過ぎ、これからは彼女自信が自分で自分の運命を切り開いていかなければならない。

それは分かっていたのに…分かっていたはずなのに。

心に寂しさを抱いたまま、かつて漆黒の戦士・仮面ライダーカリスとして戦っていた53番目の切り札…相川始は大都会を彷徨っていた。

荷物を最低限に詰めたリュックと、カメラのケースだけ持った彼はこれからの身の処し方を模索している最中だった。

かつての仲間達を頼れば、きっと快く自分を受け入れてくれるだろう。

だが仲間達の優しさに甘えるなんて迷惑はかけられないし、剣崎が…自分と運命を共にしてくれた心からの親友が今一人、世界のどこかで運命と戦い続けているのに、できようはずもない。

そうは思っても、心にのしかかる寂しさは想像以上に重たかった。

 

「あいつも…こんな気持ちだったのか…?」

 

かつて剣崎が仲間を求め、何度自分に足蹴にされて、対立を繰り返しても歩み寄ってきた時の気持ちが今わかるような気がした。

あいつは今…どこで何をしているんだろう?

もう二度と会うことの許されない親友へと想いを馳せる。

…歩き続ける始の目に、ふと一軒の店が止まった。

 

「居酒屋…か。」

 

不死生物という都合上、腹が空くわけはないのだが、今日はまだこんな時間になるまで何も口にしていないし、水一杯すら飲んでいない。

 

「気ぐらいは、紛れるか。」

 

始は苦笑しながら居酒屋の門をくぐる。

自分を待ち受ける、新たな運命へと…

 

居酒屋の店主は、今入ってきた一人の青年の気配が気になっていた。

ビールとイカ焼きを頼み、寂しさと悲しみを紛らわせようとしている姿に、若さには見合わない重たい何かを背負っているようなその姿が目を引いたのである。

自分も「特異」な経歴の持ち主だが、彼の場合はまた違った…それでいてなにか昔の自分と同じものを感じてしまう。

そんな中、彼の荷物にカメラのバッグが置かれていることに気づいた。

 

「なるほど、似ているのはこれかな?」

 

とりあえず若い者にすこしちょっかいをかけるような感覚で、話しかけてみることにした。

若き頃、自分にとって父親のような存在であったあの人のようにできるかどうか、なるべく寄せるようにしながら。

 

「兄ちゃん、カメラやるのかい?」

「あ…ええ、まあ。」

「俺もさ。」

「え?」

 

居酒屋の店主は、片手でカメラのシャッターを押す仕草をしながら、若者…相川始に笑いかけた。

 

「俺は一文字隼人、フリーのカメラマンで…居酒屋さ。」

 

居酒屋の店主…一文字隼人は、優しくも何かを見通しているような眼差しで始を見つめた。

始はその視線に少し戸惑いながら、残ったイカ焼きを頬張り、ビールを飲み干した。

 

「ご主人も、カメラマンだったんですか。」

「まあ今は居酒屋なんてやってるが、昔はいろんなところに行ったもんさ。南米だったり、オーストラリアだったり…懐かしい思い出さ…よかったら君の写真と俺の写真、見せ合ってみないか?」

「え…ええ、いいですよ。」

「よし、じゃあ決まりだ。」

 

隼人は店の奥に向かい、始は荷物から自分の写真集を取り出す。

少しすると、古いアルバムを持った隼人が、優しく微笑みながら戻ってきた。

 

「少し古くて色褪せているものもあるが、それなりの自信作だ。若い者には負けんぞ!」

「お手柔らかに、お願いします。」

 

お互いに写真集とアルバムを交換しあい、ページを開く。

始にとって、隼人がとってきた写真は古いがどこか新鮮であった。

昭和中期当時の日本の景色、もはや古いドラマでしかみることもできないクラシックカーと呼ばれるほどの車の数々、南米やオーストラリア、アマゾンといった海外…

一万年という長い年月をカードの中で生きていた始には見慣れない光景がその写真の中に広がっており、カメラマンとして心が踊っているのがわかった。

 

「すごいですね…映像や写真で昔の物はいろいろ見てきましたが、ご主人の写真はとても生き生きしている…まるですべてが当時そのまま生きているみたいだ。」

「君の写真もいいじゃないか、無機質な感じがする中にも、ちゃんとした心を感じる…その若さでこれだけ取れるなんて、昔の俺が見たら嫉妬しちまうよ。」

 

実際生きていた年月だけ言えば隼人より始の方がはるかに長いのだから、始はそのことに苦笑してしまう。

そして隼人のアルバムをさらに一ページめくると、オートレースを撮影した写真でいっぱいのページが広がった。

そのレースの写真の中では、一人の男性が中心になるような撮り方をされていることが気になり、始は尋ねてみる。

 

「ご主人、この写真…みんなこのレーサーが主役のように撮られていますね。」

 

…隼人は懐かしみ、その男に想いを馳せるかのように…ゆっくりと口を開く。

 

「…そいつは、俺が知っている中で最高のオートレーサーで、俺とは、血を分けた兄弟以上の親友なんだ。」

「…兄弟以上の…親友。」

 

始は自分の…「血を分けてしまった」親友である剣崎一真の姿を脳裏に描いた。

彼とはもう十数年…仲間である橘朔也のミスでカメレオンアンデッドが解放されてしまった際の事件と、あの無言の電話一本だけの会合しかしていない。

日本各地…それどころか世界中で彼の噂を聞くたびに現地に向かい、彼の姿を探した。

 

…余談だが失われた伝説である仮面ライダー3号が蘇って歴史が愚かな狂い方をした際、剣崎と始は歪んだ形ではあるが一緒に過ごせる世界を過ごしたのであるが、修正された今、触れないでおこう。

 

隼人は始の姿に哀愁を感じ取ると、少し眉間に皺を寄せながらたずねる。

 

「…どうした?なにか悪いことを言ってしまったかな?」

「いえ…俺にもいるんです…血を分けてしまった…くらいの、友人が。」

「そうか…会ってないのか?」

「一度帰ってきたことはあったんですが、まともに会話もしていないし、最近でも四年ほど前に電話があったきりです。今はどうしているかわからないけれど、会って一言、文句を言って殴ってやりたい。」

「そうか、会えるといいな。」

「…はい。」

 

始は立ち上がり、財布から千円札を二枚出すと、カウンターの隼人の前に差し出した。

 

「おう、お釣を今持ってくるよ。」

「いえ、写真も見せてもらえたチップです。ありがとうございました。」

「お、おう。じゃあこのチップで店が終わったら、俺も一杯だけもらおうかな。」

「ごちそうさまでした。」

 

始は居酒屋の引き戸をがらりと開け、一歩外へ出る。

…ふと後ろを振り返って、隼人に尋ねて見た。

 

「…あの。」

「うん?」

「…また、伺ってもいいですか?写真、もっとあれば見せてもらいたいです。」

「…ああ、いいとも。君の写真も、もっと見せてくれよ。」

「はい。」

「それと、よければ名前を聞いてもいいか?写真集の、真崎剣一、っていうのはペンネームだろう?」

「…相川始、です。」

「…是非、また来てくれよ。」

 

隼人は始に微笑み、始も微笑みを返すと、居酒屋を去っていった。

始にとってなんだか、ほんの少し心を許せる先輩に出会えたような気分であった。

 

…薄暗く、不気味な鷲のレリーフが大々的に装飾された手術室に、剣崎一真は拘束されていた。

 

「んっ…ぐっ!?」

 

目を覚ますと、上半身に激痛が走る。

グレイブによって作られた斬撃の傷痕がまだ癒え切っていないようだ。

手術台に拘束されているので自由にとはいかなかったが、周囲を見回し、剣崎はその光景に息を飲む。

 

「ここは…?」

 

最近冬場や春頃になると、時々自分以外の仮面ライダー達と会合し、悪と戦ったり無意味な同士討ちをする運命に抗えず、戦い合ってしまう時がある。

そしてその中で出会った昭和ライダーの先輩達が言っていた、悪の組織のアジト…ここはそんな場所に感じた。

 

「目が覚めたか。」

 

先ほど聞いた声に、反射的にそちらを振り向く。

そこには先ほど自分を斬りつけた青年の姿があった。

 

「お前は…!?」

「俺の名は海東純一、今やショッカーの大幹部、仮面ライダーグレイブさ。」

「ショッカー…昭和ライダー達が戦ったっていう悪の組織か!?」

 

純一は不敵な笑みを見せ、拘束された剣崎の姿を舐め回すような視線で見回す。

剣崎はその不快な視線に、嫌悪感を見せずにはいられなかった。

 

「気持ち悪い目でみやがって!仮面ライダーの癖にショッカーに味方するなんてなんて奴だ!大体、悪の組織って奴らは歴代の仮面ライダー達がみんなやっつけたはずだろう!?」

「確かにな。だがどんな組織にも残党がいる。その残党達は未だに世界各地…それどころか異世界にすら進出し、水面下で行動するなり、新しい首領を祭り上げて勝鬨を上げるなり…滅びることなどないのさ。」

「そんな…!?」

「俺も異世界人でな。貴様の…最強のアンデッド、ジョーカーのオリジナルのデータを手に入れるために捕まえてやったのさ。」

「なんだと!?何のために!?」

 

純一は黒いスーツの内ポケットに手を入れ、一枚のカードを取り出した。

一枚の…白と赤のプライムベスタ…剣崎はそのカードに見覚えがあった。

自分、もしくはかけがえのない親友である相川始が封印された際の姿であるそのカードに、それはとても似ていたのである。

 

「それは…ジョーカーのベスタ!?」

「これは「アルビノジョーカー」…ジョーカーの亜種と言われた、幻のアンデッドをモチーフにして模倣したベスタだ。」

「模倣…だと!?」

「…とある世界、お前とはまた別の「仮面ライダー剣の世界」で、かつてある事件があった。最強のアンデッド、ジョーカーを再現するというな。その事件は解決したが、人為的にアンデッドを再現する考え自体は実に面白い。俺はショッカーに入りその技術をより発展させ、アルビノジョーカーを再現するつもりなのさ。」

「どうして!?どうしてそんなことを!?」

「俺は、故郷である世界の支配者になりたくてね。どうしても力が必要なのさ。お前にはそのための材料になってもらう…お前の、友にもな。」

「まさか!?」

 

剣崎の脳裏に、もう一人のジョーカー…始の姿が…そして最悪の展開がよぎる。

拘束具をガチャガチャと鳴らしながら、剣崎は叫んだ。

 

「やめろ!?始に手を出すな!!やめろおおおおっ!!」

「…始めろ!」

「イィー!」

 

純一の命令と友に、ショッカー科学員がスイッチを入れる。

すると手術台が不気味に光り出し、剣崎の体に激痛が走り始めた。

 

「ぐあああああっ!?う…ううああああああ!?」

「もがけ…そしてデータを俺によこせ…全ては…俺の野望のために…その為に、相川始…貴様にも来てもらうぞ…くっくっくっ…はっはっはっはっはっは!!」

 

手術室には、剣崎の悲鳴と、純一の笑い声が、不気味に…痛々しくこだました…

 

隼人の店を出た始は人気のない廃工場まで来ていた。

とりあえず今宵はどこか夜を明かせる場所を探したのである。

 

「野宿は、久しぶりだな。」

 

ハカランダに来る前…そしてカメラマンとしての仕事で経験もしているが、ここ最近はとんと機会もなかった。

いつもは自分を慕ってくれる少女と、その優しい母の笑顔があった…

ある程度時間は経っているが、そこから去ってしまった寂しさは拭えない。

 

「分かっていたはずだ…分かっていた。」

 

自分が選んだ道なのだ、後悔はしていない。

だがどうしても慣れることが未だできない。

一万年前、ジョーカーとしてバトルファイトの切り札に君臨していた時には考えもしなかったこの感情。

だが剣崎も今…いや、十数年前からこんな悲しみと戦っているのだ。

始は自分に言い聞かせた。

 

「おかしなものだ…あいつと同じものを共有していると思うと、この感情も悪くないものに感じる…ん?」

 

かつて剣崎が「けっこう濃い付き合いして来たのに、寂しいじゃないか」といって来た時、「気色悪い」と一蹴したことを思い出してしまう。

 

「…いかんな、これは気色悪い。」

 

始は考えを改めながら、寝袋の準備をし始めた。

その時である…数発の手榴弾が飛来し、始の元に落ちた。

 

「っ!?」

 

始はとっさにジャンプし、回避すると、凄まじい爆風が上がる。

受け身をとって立ち上がると、無数の鎖が飛んで来て、始をがんじがらめに捉えた。

 

「ぐっ!?こ、これは…」

『イィー!!』

 

爆風が晴れると、無数の黒づくめの男達…ショッカーの戦闘員達が現れ、鎖を手にしていた。

この手榴弾と鎖攻撃は彼らによるものであったのである。

 

「貴様らは…!?」

「ヒヒヒヒ…!」

 

不気味な笑い声が周囲にこだまし、アスファルトの地面を突き破って異形の影が現れる。

サボテンを象ったその姿…ショッカーの魔人・サボテグロンである

 

「相川始!捕らえたり!」

「貴様…何者だ!?」

「俺の名はサボテグロン!ショッカーの誇る改造人間だ!」

「改造…人間…?」

「貴様のアンデッド…ジョーカーとしての力を我々は欲している!すでにもう一人のジョーカー、剣崎一真は我々が捕らえた!」

「なっ…なに!?」

始は大きく眼を開き、驚愕を隠せずにはいられなかった。

剣崎が捕らわれ、危機の中にいる…始の心は動揺し、ジョーカーに変身して抵抗するタイミングが遅れてしまう。

 

「剣崎が…剣崎が…捕まっている…!」

「貴様もすぐに連れていってやる!戦闘員共…やれぃ!!」

 

サボテグロンが号令をかけ、戦闘員達はより強く鎖を縛りあげようとした。

その瞬間である。

 

「待てぃ!!」

 

突如、夜の闇を切り裂くような鋭い叫びが走り抜けた。

同時にバイクの爆音が鳴り響き、高速で駆け抜ける輝くマシン闇の中で煌めきながら、戦闘員達を跳ね飛ばした。

 

『イィー!?』

 

戦闘員達はちりぢりに吹っ飛ばされ、マシンを運転していた男性はヘルメットを外し、捕らわれた始に歩み寄る。

 

「貴方は…」

 

その男…先ほど談笑した居酒屋の店主…一文字隼人は、険しい表情で始を拘束している鎖を掴み…素手で引きちぎった。

 

「大丈夫か?」

「ご主人…貴方は…!?」

 

素手で鎖を引きちぎるその力…明らかに人間のものではない。

始がさらに驚愕している中で、隼人は立ち上がり、サボテグロンを睨んだ。

 

「き、貴様、何者だ!?」

「ほう…その怪人は俺が初めて戦った奴なんだが、どうやら貴様は素体が違うらしいな。」

 

隼人は不敵な笑みと友に、サボテグロンに右手の人差し指を突きつけ、叫ぶ。

 

「教えてやろう…俺は、ショッカーの敵…そして、人類の味方!」

 

上着のジッパーを開け、思い切りそれを両手で開くと、そこにはバッタを象ったエンブレムが描かれたシャッターが目を惹く、赤い変身ベルトがあった。

 

「お見せしよう…仮面ライダー!!」

 

隼人は両手を水平に構え、そこからゆっくりと、半円を描いていく…そして両拳を握りしめるような力強いポーズを最後に取ると、高らかに叫んだ。

 

「…変身!!」

 

それと同時にベルトのシャッターが開き、凄まじい風のエネルギーが中心の風車ダイナモに吸い込まれていく。

 

「トオォっ!!」

 

そして満月が輝く空に天高くジャンプした。

風車ダイナモからは凄まじいエネルギーが放出され、隼人の姿を変えていく。

 

…着地した隼人の姿は「変身」を遂げていた。

 

鮮やかな大自然の雄大さで彩られた緑の仮面…

悪を倒す為と言わんばかりに紅く染まった両腕と両足…

そして夜風に翼の様にはためく、真紅のマフラー…

 

その名も、仮面ライダー2号!

かつて「力の戦士 2号ライダー」とよばれた伝説の戦士が、長い時を超え、今再び大地に立ったのである!

 

「私は必ずお前を倒す…行くぞ!」

 

仮面ライダー2号はその真紅のマフラーをはためかせ、真っ直ぐにサボテグロンへと突き進んだ。

歴戦のその雄姿が放つオーラは、ただ肉体の強度と頭脳の良さだけで選ばれた素体である今のサボテグロンにはとても大きなプレッシャーとなって襲いかかっていた。

 

「せ、戦闘員ども!やれ!!」

『イイー!!』

 

声を震わせながら戦闘員をかからせるものの、戦闘員の一人が2号ライダーに接近した刹那、鋼のような真紅の拳が戦闘員の顔面に打ち込まれた。

 

「トオォッ!!」

「イイィっ!?」

 

戦闘員は地面に倒れて瞬時に緑の液体となり、消滅して行く…

仮面ライダー2号…かつてショッカーが仮面ライダー1号を倒すために作り上げた同型のバッタ改造人間。

脳改造前に1号ライダーに救出され、後にダブルライダーとして名を馳せた、この世に生まれた2人目の仮面ライダーである。

柔道6段、空手5段という武術の達人である一文字隼人を素体として改造された2号ライダーは、その剛力で相手をなぎ倒すように戦うスタイルから、「力の2号」とよばれ悪から恐れられている。

その異名のごとく、襲い来る戦闘員を殴り倒し、蹴り飛ばし、地面へと叩きつける。

あっという間に戦闘員達は全て倒され、残るはサボテグロンのみとなった。

 

「サボテグロン!残るは貴様一人だ!」

「お、おのれ〜!こうなればこのサボテン爆弾を貴様に食らわせてやる!」

 

サボテグロンは大きな球型のサボテンを取り出し、思い切り振りかぶる。

メキシコの花…魔人サボテグロンが繰り出す、破壊力の高いサボテン爆弾である。

 

「くらえ2号ライダー!咲いて散れメキシコの花!!」

 

サボテグロンは力一杯、2号ライダーに向けてメキシコの花を投げつけた。

…しかし、実戦経験のない素体が歴戦の勇士を恐れて破れかぶれになげつけた爆弾など、2号ライダーに効くはずもない。

 

「トォっ!!」

 

爆弾は簡単に飛び蹴りで蹴り返され…サボテグロンに直撃して爆発した。

 

「ぎゃあああああ!!」

 

自分の爆弾の直撃を受けたサボテグロンは爆炎に飲まれ、炎に焼かれた。

もう助からないのは2号ライダーの目から見ても、始の目からみても明らかである。

サボテグロンは炎の中で、始にむけて苦しげに視線を向ける。

 

「あ、相川始…俺はここで死んでも、いずれ貴様にも新たな追っ手がやってくるだろう!どこにも逃げ場はないのだ!!ギヒヒヒヒヒヒ!!!!」

 

サボテグロンは断末魔の雄叫びをあげ、炎の中で爆散した…

…戦いが終わった後、2号ライダーは変身を解き、地面に座り込んでいる始へと歩み寄った。

 

「大丈夫か?少し怪我をしているようだな。」

 

始は複雑な顔で、頬から流れている緑の血をぬぐった。

緑の血…不死生物、アンデッドである異形の証…しかしそれをみても、隼人の視線は居酒屋で見せていたものと同じ、優しく穏やかなものであった。

 

「…驚かないんですか?」

「今の若い連中のことは俺はよく知らんのだが、俺だって改造人間さ。人間でありながら人間でない…そんな悲しみをもう四十年以上もひきづっている。だが俺も、俺の知っている仲間達もみな、それを受け入れてきた。君の悲しみを、苦しみを、そして君自身を受け入れるのだって、俺達にはわけないさ。」

 

隼人はまっすぐに、力強く…そして優しく、始へと手を伸ばす。

 

「これは俺の後輩が言っていた言葉なんだが、人間じゃないってのも、いいもんさ。」

「…ありがとうございます……先輩。」

 

始は彼らしくもなく、少し気恥ずかしさが混じったような気持ちだった。

…しかし、心から喜びながら、隼人の手を取った。

 

一方、ショッカーのアジトの研究室では、海東純一によるアルビノジョーカー開発のための研究が続けられていた。

剣崎から得たデータと血液サンプルにより、一気にアルビノジョーカーのベスタは完成に近づき始めたものの、まだ必要な情報のピースが足りず、純一は苦虫を噛み潰したような気分であった。

 

「チッ…やはり人間からジョーカーに化身した際のデータだけでは必要な情報が足りないか…」

「くっくっくっ…どうやら自慢のアルビノジョーカーとやらはうまく行かんようだな。」

 

苛立っている純一の耳に、小馬鹿にしたような笑い声が響く。

気づくとそこには、黒いシャツの上に青いデニムジャケットを身につけ、革のベルトで留めたジーンズを履いた、純一と同年代ほどの少し筋肉質な男性の姿があった。

 

「レオール…」

 

レオール…彼もショッカーの幹部の一人である。

武闘派な外見と気質の中にも悪の組織の幹部らしい奸計を巡らす二面性を持ち、組織内では恐れられているのである。

 

「海東純一、貴様が送った部隊…仮面ライダー2号に蹴散らされたそうだ。」

「ふん、貴様らの誇る怪人軍団とやらも使い物にならんな。外様の俺が幹部になれるくらいだ、どうせろくな素体を改造人間にしなかったんだろう?」

「俺達の戦力を無駄遣いしたくせに言ってくれるな…」

「悪いが小言を聞いている暇はない、俺は忙しいんだ。」

「…単刀直入に言うぞ。」

 

レオールは純一の前に立ちはだかり、彼の胸ぐらを掴んで睨みつけた。

 

「俺は貴様を信用していない…故郷の支配者になるため組織に入ったと言っておいて、何を企んでいるか…少しでもおかしなそぶりを見せてみろ?その首…落ちることになるぜ?」

「…フン。」

 

純一はレオールを振りほどくと、研究室を去っていった。

そんな彼の後ろ姿を見つめながら、レオールはひとつ舌舐めずりをして口を開く。

 

「海東純一…貴様の真意は知らないが、最強のアンデッドの力…人間ごときに渡すほど俺もバカではない。必ず利用させてもらうぞ、必ずな…!」

 

レオールは一枚の女性の写真を取り出し、パチンと指を鳴らした。

 

「エジプタス!」

「エ〜バラポロポロ!!」

 

不気味なうめき声にも似た鳴き声とともに、黄金の仮面を被ったミイラのような怪人が姿を現した。

この怪人の名はエジプタス…紀元前400万年ごろ、エジプトにいたと言われている怪物をショッカーが改造人間として復活させた者である。

この怪人も素体を新たに、ショッカーの残党によって復活していたのである。

 

「この女…栗原天音を探し出して捕まえろ。海東純一より先に、ジョーカーの秘密を手に入れるのだ!」

「イーバラポロポロ!!」

 

喫茶店「ハカランダ」…かつて相川始が下宿し、人間の心を理解するきっかけになった場所である。

その地下にある一室で深夜、ベッドの上で膝を抱える女性の姿があった。

 

彼女の名は栗原天音…かつて相川始と心を通わせ、憧れを抱いていた少女である。

始が去ったばかりの今、普段は隠している寂しさをさらけ出すかのように始が住んでいた部屋に深夜閉じこもり、少しでも始の温もりを感じようとしているのだ。

 

「始さん…会いたいよ…」

 

…叔父が書いた「仮面ライダーという名の仮面」。

今や大ベストセラーとなった書籍を読んだ時、始のことは詳しくは書かれていなかった。

だが時間が経つにつれて自分もカリスの正体を察し始め、それを確かめようとした矢先に始は姿を消してしまった。

始がいなくなってしまったことは悲しい。

だけどもし、それを察し始めたことによって始を傷つけてしまったのなら、それはもっと悲しい。

会いたい…会ってもっと話をしたい…

何もいってくれなくてもいい、ただそのぬくもりを再び感じたい…それが偽らぬ天音の本心であった。

 

そんな天音の耳に、地鳴りのような音が聞こえてきた。

 

「な、何!?」

「エーバラポロポロ!!」

 

突如部屋の地面を突き破り、エジプタスが出現した。

エジプタスは両手を構えながら、天音へと襲い掛かる。

 

「きゃあああああ!?」

「アバラポロポロ!!」

 

エジプタスはその剛力で天音を捕らえ、締め上げる。

呼吸が苦しくなり、意識が落ちていく中で…天音は大切な人の姿を思い浮かべ、涙を流した。

 

「たす…けて…はじめ…さん……」

この作品はいかが?

  • 面白い
  • つまらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。