仮面ライダーエグゼイド ~M in Maerchen World~   作:コッコリリン

11 / 26
まずすいません、めっちゃ長いです。戦闘ばっかりです。区切る場所に悩んだんですが、こんな長さになってしまって申し訳ありません。

けど今回で新しいレベル3解禁。皆さんもどうぞ、シャカっとリキっと読んでいただきたいです(ネタバレ)


第11話 偽りのMagic!

 

 

 玉座の間は、イメージした通りに豪華絢爛を絵に描いたかのような場所だった。置かれた彫刻や絵画といった、広々とした室内の至るところに配置された調度品はいずれも高級品だと一目でわかる物であり、天上から吊り下げられた二つのシャンデリアもまた、照明以外にも芸術品としての役目も果たしており、見る者は感嘆のため息をつくだろう。

 

 ここは、王が自らの存在を知らしめす部屋。王が許す者以外は入ることすらできない、特別な部屋である。

 

「お待ちしてましたわ、反逆者の皆さん?」

 

 その部屋は現在、数えきれない兵士、ヴィランによってひしめき合っており、部屋の奥まった場所の高座に位置する立派な椅子に座る男と、その横に立つ女性から鋭い視線が侵入者こと永夢たちへと飛んでくる。当然、友好的な視線は一切感じられない。

 

「やはりな。兵士を全員、自分たちの守りのために一か所に集めていたか」

 

 城の中に兵士が一人も見当たらなかった理由が、ここではっきりした。パーンは取り囲む兵士とヴィランを、普段の穏やかな目つきから一変、鋭く冷たい物へと変える。

 

「ええ、確実に仕留めるのでしたら、誘い込んで一網打尽にした方がいいでしょう?」

 

 高座から永夢たちを見下ろす女性。鈴の鳴るような、この広い部屋でもよく響く声。しかしそこには冷たく、暗い感情が渦巻いているようにも感じる。

 

 だが、声そのものには一行には聞き覚えがあった。

 

「あれは……」

 

 声の主を見て、レヴォルが唖然とする。玉座に座る男、位置的に見てもこの国の王である人物に寄り添うような形で立つ女性。流れるような蒼く美しい髪と気品のある顔立ち。白い花を彷彿とさせるドレスを身に纏い、頭には煌びやかなティアラ。足にはシャンデリラの明かりを受けて水晶のように輝くガラスの靴。

 

 完成された芸術品のような美しい女性。しかしてその女性に対し、一行が驚いているのはその美しさにあらず。それを代弁するように、エレナが呟いた。

 

 

 

「シンデレラ、ちゃん……?」

 

 

 

 360°どこから見ても、レヴォルたちが知るシンデレラそのもの。今、すぐ傍にいるシンデレラと服装以外が瓜二つ。

 

「ま、マジかよ……そっくりっていうか、鏡でもあんのかって思ったぞ!?」

 

 驚愕するティムが言うよう、シンデレラの偽物が王妃となっているという事前情報を持っていた一行ではあるが、何かしら違いがあるはずと、少なからず思っていた。

 

 しかし、声や顔立ち、立ち振る舞いは、まさしくシンデレラ。正直なところ、こちらを鋭く見つめていなければ、本物と見間違える程だった。

 

「わ、私が……本当に、もう一人……?」

 

 一番困惑していたのは、当のシンデレラだった。本来ならばあの場所に立っているのは自分のはずだったのが、まるで幽体離脱をして第三者の目で見ているかのよう。

 

「……ほぉ、なるほど」

 

 そんなシンデレラを、玉座の上から観察するように見る王。威厳溢れる佇まいとは裏腹に、彼の瞳はどんよりと濁っている。それが不気味に思え、シンデレラは震える。永夢はそんな彼女を庇うように立ち位置を変えた。

 

 だが、すぐに興味を失ったかのように鼻を鳴らし、玉座にもたれかかった。

 

「君の言う通り、本当にそっくりだ。私以外の者が見たら勘違いしてしまうだろうな」

 

「ええ、陛下。私も最初聞いた時は驚きましたわ。ここまで似ているだなんて」

 

 そう言葉を交わす王と王妃。長年連れ添った夫婦のような、穏やかな声色。

 

 しかし、その会話の内容が聞き捨てならず、永夢が叫ぶ。

 

「それ、どういう意味ですか? ここにいるエラちゃんが、まるで偽物だとでも言うんですか!?」

 

「そのつもりで言ったのだが、わからないか?」

 

 嘲るように、王は一蹴する。何を言っているのかと言わんばかりに。

 

「そんな……何でわからないの? あなたのお嫁さんでしょう!?」

 

「一度彼女を見初めたあなたならば、どちらが本物かわかるはずだ!」

 

 エレナとレヴォルもまた、王のその態度に憤りを覚える。本当の彼女は、人を牢獄に閉じ込めたり、圧制を敷いたりなどするはずがない。それがわからない王ではないはずだと、二人は叫ぶ。

 

 が、そんな彼らに王は表情を変えた。

 

「黙れ無礼者!! 我が妻の姿を騙るばかりか、私の妻に対する信頼すらお前たちは否定するのか!!」

 

 己だけでなく最愛の人を侮辱されたと思った王の声は、威厳に満ちている。彼の眼が正常とは思えない程に淀んでいなければ、それは一国の主たる器の持ち主だと、レヴォルたちも納得していただろう。

 

「……いいえ、姿形(すがたかたち)はシンデレラさんそのものだけど、決定的に違うところがあるわ」

 

 そんな中、一人冷静に高座に立つシンデレラの姿をした王妃を見つめる、もとい睨む者がいた。

 

 アリシアだ。彼女は手に持つ時計のような装置、カオステラーを探すための感知計を王妃へと向けている。感知計の針は真っ直ぐ、力強く一点を指し示していた。

 

 

 

「間違いないわ! あの女がカオステラーよ!」

 

 

 

 確信を持って、アリシアが叫ぶ。カオステラー、すなわち王妃は本物のシンデレラにあらず。混沌の導き手として、この世界を破滅へと導く元凶そのもの。

 

 すなわち、敵。

 

「そういうことか。国王を洗脳して、自分の意のままに国を乗っ取ろうって魂胆か?」

 

「……」

 

 ティムの指摘に、王妃は答えない。ただ、アリシアに言い当てられてから、先ほどまでの余裕の表情が若干揺らいでいる。

 

「……陛下」

 

 そっと、王妃は王の手を取る。王は愛おし気に、王妃の手を握り返した。

 

「あの者たちを……私たちの幸せを消そうとする、あの破壊者たちを……」

 

「ああ……わかっているとも」

 

 瞳を潤ませ、懇願する王妃。王は、柔らかく微笑みながら頷いた。

 

 再び前を、永夢たちを見据える王。その顔から微笑みは消え、冷酷なまでに冷たく、そして殺意を持って、手を掲げた。

 

「我が忠実なる兵士たちよ!」

 

 それを合図に、兵士が、ヴィランが武器を構える。人間と化け物の混合隊が睨む先は、王にとって愛すべき者に害を与えようとする不届き者たち。

 

 永夢たちは押し寄せる殺気に怯まず、身構える。レヴォルたちは空白の書を開き、永夢はゲーマドライバーを腰に当ててベルトを装着。

 

 そして、

 

 

 

「その者たちを……斬れぇ!!」

 

 

 

 王の号令の下、兵士たちが殺到する。

 

「みんな、コネクトだ!!」

 

レヴォルたちは栞を書に挟み、コネクトを完了させて姿を変える。永夢はというと、躊躇なく振り下ろされる剣を避けつつ、ガシャットの起動スイッチを押した。

 

≪MIGHTY ACTION X!!≫

 

「うぉぉぉぉっ!」

 

「はっ!」

 

 ガシャットを挿入する寸前、兵士が再び剣を振るう。それを永夢はバク宙で回避、距離を取った。前から二人、槍を構えて突撃してくる兵士を目にし、それでも尚焦ることなく叫ぶ。

 

「大・変身!」

 

≪ガシャット!≫

 

 ガシャットをゲーマドライバーに挿入、すかさずレバーを開き、ハイフラッシュインジケータを露わにした。

 

≪ガッチャーン! レベル・アーップ!≫

 

≪マイティマイティアクション・X!!≫

 

「ふっ! はぁ!!」

 

 ピンク色の光と共にエグゼイド・アクションゲーマーレベル2へと変身。左右から突き出された鉄槍を両腕を上げて防ぎ、弾き飛ばした。突如姿を変えたエグゼイドと吹き飛んだ仲間を見て、押し寄せようとした兵士たちは驚き、たたらを踏む。

 

「悪ぃけど、お前らじゃ俺らには勝てねぇぜ!!」

 

≪ガシャコンブレイカー!≫

 

 挑発し、ガシャコンブレイカーを召喚、装備。ハンマーモードにして切りかかって来たヴィランを殴り飛ばした。

 

「シンデレラちゃん、ヘカテーちゃんこっち!」

 

「は、はい!」

 

「わ、わかったわ」

 

 敵の対処はエグゼイドたちに任せ、カーレンとなったエレナとラ・ベットとなったパーンは非戦闘員であるシンデレラとヘカテーを連れ、柱の影へ導いて走る。途中で襲ってきた兵士は、魔法陣か丸盾で吹き飛ばして対処。物陰へと二人を隠し、二人を守る位置取りで敵を迎え撃つ。

 

「行くぞ、ティム!」

 

「ヘッ、足引っ張んじゃねぇぞ王子サマ!」

 

 ロミオとなって剣を振るい、迫るヴィランを切り伏せるレヴォルと、槍盾を手にして兵士の剣を防ぐヴァルト王子のティムと背中合わせとなって猛攻を防ぐ。これまで数多の戦いを潜り抜けてきた二人の前に、一介の兵士やヴィランなど相手にならない。

 

「せりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

 

「どっせい!!」

 

 一方の酒呑童子のシェイン、そして口元を布で隠し、妖艶な肢体を布地の少ない服で覆った、とある青年に対する忠義に生きる女性『モルジアナ』へ姿を変えたアリシアが、兵士とヴィランに鍛え上げられた四肢から繰り出される猛攻を見舞う。ある者は腕が無数に増えたかの如く超高速で繰り出される鬼の拳で殴り飛ばされ、ある者はその細い足から繰り出される鞭の如く鋭い蹴りで吹っ飛ばされ、誰一人として近づく者を許しはしない。

 

 これまでいくつもの想区を救ってきた再編の魔女一行による進撃。それを止められる者は誰もいない。

 

 そして、それは百戦錬磨の仮面ライダーも同じこと。

 

「おりゃぁっ!!」

 

「ぐわっ!?」

 

 ガシャコンブレイカーによる横殴りの攻撃は兵士の剣をへし折り、さらに強烈な回し蹴りは鎧越しでも関係なく、幾人もの兵士を巻き添えにして吹き飛ばす。

 

 これでも、エグゼイドは手加減をしている。彼が戦う相手はバグスターや、この世界のヴィランといった人に害をなす存在。生きている人間を相手取るのは、命を何よりも大切にしてきたエグゼイドの本意ではない。

 

(ごめん……!)

 

 しかし、今回ばかりは不可抗力だ。彼らを相手取らなければ、この世界を混沌に陥れる元凶の下へ辿り着けない。心の内で謝罪しながら、槍を突き出してきた兵士の首元に軽く手刀を叩き込んで昏倒させ、続いてその後ろから剣を振り上げてきたウィング・ヴィランには渾身の拳を叩き込む。

 

「よし、このまま……!」

 

 押し切ってしまおう、そう考えた矢先、エグゼイドの聴覚センサー『センダーイヤー』が、頭上から空を切る音を拾う。同時、その場から横へと転がることで、音の正体である矢、それと光弾を回避することに成功した。

 

「上か!」

 

 見上げると、部屋の高い位置、明かりに群がる虫の如く、二つのうちの一つのシャンデリア周辺を浮くウィング・ヴィラン及びゴースト・ヴィランの混合部隊。手に弓、そして杖を持つヴィランたちは、エグゼイドに狙いをすませて集中攻撃を浴びせようと得物を構える。

 

 遠距離に届く武器はない。しかし、エグゼイドには仮面ライダーの脚力がある。

 

「はっ!」

 

 エグゼイドの『クイックファイトシューズ』を作動させて跳躍、弾丸の如く飛び上がったエグゼイドは、手近にいたウィング・ヴィラン目掛けてガシャコンブレイカーの刃を

 

「そりゃぁ!!」

 

≪HIT!≫

 

 叩きつけ、倒す。そのままシャンデリアの上に乗り、吊り下げられた鎖が揺れてバランスを若干崩しかけつつも持ち直した。

 

「っとと。よし!」

 

 シャンデリアに乗ったエグゼイドを迎え撃つため、ヴィランが一斉に動く。手に剣や槍を持ったヴィランは接近してエグゼイドへ迫り、遠距離武器を持ったヴィランはその場から動かずにエグゼイドへ照準を合わせる。

 

 が、そのうちの一体が爆発。続けざまにもう一体、ウィング・ヴィランの羽に穴が開き、落下していく。

 

「下に私たちがいるのを忘れてもらっちゃ困りますね」

 

「こっちは任せて! 援護するわ!」

 

「わかった! サンキュー!」

 

 タチアナとなったシェインと赤ずきんのアリシアからの援護射撃により、エグゼイドが相手するのは迫り来るヴィランのみとなる。ウィング・ヴィランからの突撃を回避してすれ違い様に切りつけ、ゴースト・ヴィランからの斬撃は受け流して蹴り飛ばす。

 

 ウィング・ヴィランは次々と倒され、消えていく。しかし問題はゴースト・ヴィランにあった。

 

(クッソ、やっぱこいつらは苦手だな!)

 

 以前戦った時同様、ゴースト・ヴィランには斬撃、打撃の類は効きにくい。故に一体二体は倒せても、正直埒が明かない。

 

 ならばロボットアクションゲーマーになるしかない。そう考え、エグゼイドはゲキトツロボッツガシャットを取り出し、起動スイッチを指にかけた。

 

 が、その瞬間、エグゼイドの手に衝撃が走る。

 

「って! あ、やべ!」

 

 それも、よりによってガシャットを持つ手。赤いガシャットはエグゼイドの手から離れ、レヴォルたちが戦う眼下へと落ちていく。顔を上げれば、弓を手にしたウィング・ヴィランがエグゼイドへ向けて「してやったり」と言わんばかりに飛んでいる。ガシャットを叩き落としたのは、あのヴィランだとエグゼイドは気付く。その直後、シェインの矢がそのヴィランを貫いた。

 

 犯人はわかったが、有効打を失くし、エグゼイドはゴースト・ヴィランに対抗する手段を失くす。シェインたちに頼むかとも思ったが、彼女たちは下にもいる敵も同時に相手どっているため、これ以上の援護は難しそうだった。

 

「くそ、どうすりゃ……」

 

 敵の攻撃を防ぎつつ、エグゼイドは思案する。他のガシャットを使うか、それ以外に何かないかと周りを見回して……気付いた。

 

 エグゼイドが動く度に振り子のように揺れるシャンデリア。それを天井に繋げて支える、頑丈な鎖。

 

 少し危険だが、エグゼイドのイメージ通りに動くのならば……。

 

「……よし!」

 

 ガシャコンブレイカーを手放し、エグゼイドはシャンデリアの一番外側の装飾を掴みながら飛び降りる。そして、軽やかに装飾から装飾を伝って、シャンデリアの中央部分へ。

 

「フンッ!」

 

 シャンデリアを掴みながら、身体を前後の大きく揺らす。それに伴い、シャンデリアもエグゼイド同様に揺れる。

 

 何度か繰り返すうち、シャンデリアの揺れが最初は僅かであったものが、やがて大きくなっていく。その間にもエグゼイドを狙おうとヴィランが迫るが、揺れるシャンデリアを前に接近することすらできず、矢や魔法で撃とうにも狙いが定まらない。

 

 やがて揺れは最高潮へ。それによって、シャンデリアはもはやただの照明器具ではなく、

 

「おりゃぁぁぁぁっ!!」

 

 一つの凶器となって、ヴィランを襲う!

 

『――――ッ!?』

 

 揺れを器用にコントロールし、時にチョコブロックを生成してそれを蹴ることで勢いをつけて、円を描くようにシャンデリア操ってヴィランへぶつけていく。凶悪な鈍器となったシャンデリアを前に、ウィング・ヴィランは勿論のこと、さすがのゴースト・ヴィランもただではすまない。成す術なく、ぶつかった衝撃で破損されたシャンデリアの部品と共にヴィランはぶっ飛んでいく。尚、シャンデリアの範囲外にいたヴィランはというと、シェインとアリシアによる射撃で対処されていく。最早ヴィランたちにとっての安全圏は無いに等しい。

 

「ほっ」

 

 ひとしきり倒したと判断したエグゼイドは、シャンデリアから手を離す。一軒家以上の高さもあるにも関わらず、エグゼイドは身体を丸めて回転しつつ落下、そして膝を曲げて華麗に着地。同時、彼の周囲にシャンデリアの壊れた欠片が雨みたく降り注いだ。

 

「む、無茶苦茶しやがる……」

 

「大胆ですねぇ……さすがの私もそのやり方は思いつきませんでした」

 

 ティムが顔を引きつらせ、シェインも呆れ気味に言う。エグゼイドはそんな二人に、立ち上がって手の埃を叩き落としながら返した。

 

「その場にある物をうまく活用してくのも攻略の鍵って奴だ。ゲームの基本だぜ?」

 

「いや、さすがにあれは……まぁ、肝に命じてはおくよ」

 

 確かに、環境を利用した戦い方もあるにはあるが、まさかシャンデリアをあそこまで豪快に使うのはエグゼイドくらいのものだと思いつつも、レヴォルは苦笑交じりに言ってエグゼイドが落としたゲキトツロボッツガシャットを拾い上げ、手渡した。

 

「お、サンキュー……さってと」

 

 受け取り、礼を言ってから見回す。頭上にいたヴィランは殲滅。地上の方も、兵士はほとんどが気絶、無事な兵士は戦意を喪失してすでに逃げ出した後。ヴィランの姿はない。

 

 対し、エグゼイドたちは五体満足。敵は少なくはなかったが、まだまだ余力は十分にある。

 

「これで、後はお前たちだけってことだな」

 

 前座はこれでおしまい。残すは、玉座から見下ろす王と、眉間に皺を寄せて美しい顔を僅かに歪ませる王妃のみ。

 

「お前を守るヴィランと兵士はもういない。観念して正体を現せ!」

 

 レヴォルが王妃に剣を突きつける。対し、王妃は何も言わずに、ただただエグゼイドたちを睨みつけた。

 

 忌々しい……言葉にせずとも、王妃からそんな意思が伝わってくる。が、彼女の横から鋭い声が飛ぶ。

 

「……我が妻よ、下がっていてくれ」

 

 ゆったりと、王が玉座から腰を上げる。豪奢な服に、見た目麗しい顔。まだ若く見えるが、それでも王としての威厳が備わっているのが、離れた位置にいるエグゼイドたちにもわかる。

 

「陛下……私、信じております」

 

「ああ、わかっているとも。かならずや、君の心を乱す狼藉者どもを成敗してみせる」

 

 うっとりと、王を見つめる王妃。微笑み、穏やかな口調で返す王。美男美女、傍から見れば絵画にすらなりえる光景。

 

だが、視線をエグゼイドたちへ戻すと一変。濁った瞳は鋭く、敵意を漲らせてエグゼイドたちを見据える。

 

「我が配下を退けたことは誉めてやる……しかし、私はそうはいかんぞ」

 

「国王が相手ってわけか……こりゃやりにくいな」

 

 倒すべきは、カオステラー。目の前の男は操られているだけで、倒すべき相手ではない。どうにもやりにくいと、エグゼイドが悩んでいる時だった。

 

「王子様! もうやめてください!」

 

「シンデレラちゃん!?」

 

 エグゼイドの横に、シンデレラが立つ。エレナが止めようとしたが、それでも彼女は必死に王へ呼びかけた。

 

「あなたはこんなことをするお人じゃないことを、私はわかってます! お願いですから目を覚まして! あなたの横にいる人は、あなたが愛する人じゃありません!!」

 

 シンデレラとて、彼を愛しているかはいまだわからない。運命の書という筋書き通りに、彼を愛すべきであることはわかっているが、こんな自分に彼を愛する資格などあるかなど疑問にすら思っていた。

 

 しかしそれでも、彼が愛していると思っている人間は、本来彼が愛すべき人間ではない、別の何か(・・)であることは、シンデレラにだってわかる。彼の暴走を止めなければ、また不幸になる人間が出て来る。

 

 だからこそ、彼女は止める。例え愛していなかったとしても、彼の隣に立つべきはずの自分が()を犯したせいでこうなったのならば、これもまた自身の罪なのだと、シンデレラは思いながら。

 

「……フフ」

 

 しかし、そんな彼女の思いからくる説得を、冷たい笑い声が一蹴する。声の主は、王の後ろ。玉座の横で成り行きを見守っていた王妃。口に手を当てて笑う彼女に、エグゼイドが叫ぶ。

 

「何がおかしいんだ!」

 

「……何が? こんなのおかしいに決まっているでしょう?」

 

 言って、王妃は舞台役者のように両手を広げる。

 

「あなたに王の何がわかるの? こんなことをする人じゃない? 私は彼の愛する人じゃない? ……それをあなたが語るの? 彼のことを知ろうともしなかったあなたが?」

 

「っ、そ、それは……」

 

 痛いところを突かれた彼女は、一歩後退る。その姿に、王妃は嘲笑う。

 

「あなたは所詮、我が身可愛さだけの小娘。自分が辿るべき運命すら簡単に奪われるような、そんな人間が王を説得だなんて、ちゃんちゃらおかしいわ!」

 

「黙れ! 他人の運命を玩具にするようなお前が何を言うんだ!」

 

「そうだよ! シンデレラちゃんの運命を取り上げた癖に!」

 

 シンデレラを嘲る彼女を、レヴォルとエレナが憤慨し、責める。それでも尚、王妃は長く煌めく髪をかき上げ、彼らの怒りの声を流す。

 

「取り上げた? 違うわね……彼女は落としたのよ」

 

「……何?」

 

 落とした? 何を? 主語が抜けているその言葉に、レヴォルが疑問符を浮かべた。

 

「彼女は落としたのよ。12時になる前に城から慌てて出て行く際に落としたガラスの靴のように……彼女の運命(・・)をね。それを私は拾っただけ。感謝して欲しいわね? 私が拾わなかったら、この世界は筋書き通りの運命を辿ることができなかったのだからねぇ?」

 

 語る王妃。意味がわからない一行。

 

 しかし、唯一その意味がわかった人物がいた。

 

「……な、何で……そんな、はずが……」

 

「お、おい? 大丈夫か?」

 

 震え出したシンデレラ。顔は青ざめ、言葉を発するのもままならない。今にも倒れそうになるシンデレラを、エグゼイドが支えた。

 

「あら、何となく検討ついたようね? ……けど、あなたはここでおしまい。せっかくだし、余興にでも付き合ってもらおうかしら?」

 

 言って、王妃は掌を一回、軽く叩く。乾いた音が空間に響き、一瞬だけ沈黙が支配した。

 

 突如、沈黙を破るように音がする。キラキラという、鈴を鳴らすような軽やかな音色。

 

 が、その音と共に、エグゼイドとシンデレラが立っている場所を突然暗く、丸い影が覆う。それが何なのかを把握する寸前、エグゼイドの背筋に悪寒が走った。

 

「危ない!」

 

 咄嗟にシンデレラを抱え、飛び退る。直後、二人がいた場所に丸い何かが落下、地面にめり込み、罅が走った。

 

 後少し、エグゼイドの判断が遅れていれば二人を同時に潰していただろう存在を改めて見やる。オレンジ色の光沢を放ち、頂点からは緑の蔓が生えたそれは、エグゼイドの頭一つ分大きい。縦に幾つもの割れ目が入ったそれは、エグゼイドにも、そしてレヴォルたちも見たことがある物体だった。

 

「か、カボチャぁ……?」

 

 それは、カボチャ。しかしこれは、終ぞお目にかかれない程の巨大さを誇っている。

 

 何故こんな巨大なカボチャが? そう疑問に思うエグゼイド。しかし、レヴォルたちは知っている。カボチャとは、シンデレラが馬車として城へ向かうためのキーアイテムの一つであることを。

 

 そして、そのカボチャの馬車を生み出した存在を。

 

「そんな……まさか!?」

 

 レヴォルが見上げる。その先に、この超重量のカボチャを生み出した存在が、宙を浮く形でエグゼイドたちを見下ろしていた。

 

 薄緑の長い髪。花のようなドレス。手にした短杖と、背中から生えた色とりどりの蝶のような羽。一人の少女の幸福を願い、見守り続ける心の優しい女性。

 

 シンデレラも、彼女を知っている。だからこそ、信じられないという気持ちで、彼女を見た。

 

 

 

「フェアリー・ゴッドマザー……!?」

 

 

 

 シンデレラの物語において、彼女の運命を導く最重要人物。妖精の魔法使い『フェアリー・ゴッドマザー』その人が、シンデレラたちに感情のない瞳を向けていた。

 

 

 

~ 第11話 偽りのMagic! ~

 

 

 

「何で!? 何でフェアリー・ゴッドマザーがシンデレラちゃんを!?」

 

 エレナが慌てふためき、疑問を叫ぶ。彼女は、シンデレラを何よりも大事に思っていた筈。そんな彼女が、どうしてシンデレラに殺意を込めて攻撃してきたのか。

 

 そんなエレナの疑問を余所に、王妃がフェアリー・ゴッドマザーに向かって言う。

 

「さぁ、フェアリー・ゴッドマザー。私の幸せを壊そうとする人たちのことをお願いね」

 

 王妃の言葉に、フェアリー・ゴッドマザーは振り返り、二コリと、穏やかに、機械的に笑った。

 

「ええ、シンデレラ。私の幸せは、あなたの幸せ……かならず、守り通します」

 

「……彼女も、洗脳したか」

 

 パーンが王妃のしたことに歯噛みし、そして怒りを込めて言う。王妃はそれすらもしれっとした態度で返した。

 

「ええ。まぁ、さすがに私を一目見てすぐにわかったようだけど。けど、私にかかれば私をシンデレラと認識させるのも簡単だったわ」

 

「なんてことを……最低ね、あなた」

 

「やることなすことえげつねぇな。どのカオステラーにも言えることだがよ」

 

 自分の幸せのためなら、どんな相手だって手駒にする。王妃の卑劣さに、アリシアとティムが悪態をついた。

 

「何とでも言いなさいな……さぁ、陛下」

 

「ああ……任せておきなさい」

 

 王が息を深く吸いこむ。そして、突然その場で蹲った。

 

「うっぐっおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 何をするつもりなのか、成り行きを見守る一行。が、突然王の身体が黒く染まり、やがてその身体は変形していく。身体の骨格が、大きさが、粘土細工のようにグネグネとした動きをして変わっていく。

 

 異様な光景。思わず全員後退する。やがて王の面影が完全に消え、その姿が露わとなった。

 

 

 

『GRAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

 

 

 

 その姿は、まごうことなき竜だった。約3mの高さのある巨体。赤い鱗を鎧のように身に纏った竜。赤く鋭い目。鋭利な牙が生え揃った口を大きく開き、空間を震わせる咆哮を放つ。

 

「メガ・ドラゴン……!」

 

「クソ、すでに彼の運命の書を書き換えられていたか!!」

 

 カオステラーが己の運命を守護するために、想区の住人の運命の書を書き換えることで生まれるヴィラン。彼女を寵愛していた王は、すでに彼女によって自身の運命を狂わされ、メガ・ヴィランの中の一つであるメガ・ドラゴンへと変えられていた。

 

「そんな……王子様……」

 

「エレナ!」

 

「シンデレラちゃん、下がってて!」

 

 王がヴィランに、化け物へと変貌を遂げたことでショックを受けるシンデレラ。そんな彼女を、エグゼイドがエレナに預ける。

 

 そして、エグゼイドはドラゴンへ変わり果てた王を見る。最早人の面影はなく、炎を吹いて威嚇するその姿から、人としての理性をも失ってしまったと見ていいだろう。

 

「……エム?」

 

 黙って見ているエグゼイドに、レヴォルが声をかける。その表情は仮面に隠れて伺えない。しかし、顔は見えずとも彼が何を考えているのか、その身から漂う気迫で理解できた。

 

「レヴォル。あいつはもう元には戻せないのか?」

 

「っ……!」

 

 そう尋ねるエグゼイド。レヴォルはそれに答えるか迷う以前、彼から発する言葉がいつもより低く、感情を抑え込もうとしているのがわかった。

 

 その感情は……“怒り”だった。

 

「……カオステラーに運命を書き換えられてヴィランになった人間は、再編しない限り元に戻らない……」

 

 有無を言わせぬエグゼイドに、レヴォルは本当のことを伝える。それしか救える道はないと、はっきりと。

 

「……そうか」

 

 それだけ言って、エグゼイドは拳を握りしめる。

 

 目の前にいる化け物は、かつて人であった存在。けれど元に戻す術はない。これ以上彼を野放しにしていれば、より大きな被害が出る。

 

 すなわち……倒すしかない。

 

「……ふざけるなよ。人の命を……玩具にしやがって……!」

 

 己のために、人を苦しめ、運命を狂わせ、命を弄ぶ。エグゼイドの爆発寸前の怒りは、真っ直ぐ、ヴィランを突き抜けて、その背後にいる王妃へとぶつける。

 

 嗤う王妃は、下す。最早人ですらなくなった愛すべき人だった者に対し、冷たく、ただ一言。

 

「行きなさい」

 

 それを皮切りに、王であったメガ・ドラゴン。後ろから続くフェアリー・ゴッドマザー。さらには、王妃が呼びだしたのか、あらたなヴィランが数十体、再びエグゼイドたちに牙を剥く。

 

 だがエグゼイドは恐れない。

 

「カオステラー……! お前だけは、絶対許さない!!」

 

 命の大切さを何よりも尊ぶ彼だからこそ、そのやり方を認めるわけにはいかない……故に、退くわけにはいかない!

 

≪ガシャコンブレイカー!≫

 

 愛用の武器を手に、エグゼイドは飛び上がる。そして、

 

「おりゃぁ!」

 

≪HIT!≫

 

メガ・ドラゴンの頭に、ハンマーモードのガシャコンブレイカーによる渾身の一発をお見舞いする。角の生えた頭頂部に一撃を食らったメガ・ドラゴンは痛みに呻く。

 

 が、それだけだった。ギロリとエグゼイドを睨むと、彼に向けて大きく口を開く。

 

「やべっ……!」

 

 口の奥が真っ赤に燃えたのを視認したエグゼイド。空中にいる以上、回避行動に移れない。

 

 容赦なく、メガ・ドラゴンの口から火炎弾が発射、エグゼイドに命中した。

 

「ぐあっ!?」

 

「エム!」

 

 爆発し、煙の中から飛び出すエグゼイド。もんどりうってレヴォルたちの下へ転がっていくが、受け身を取ってすぐに起き上がった。

 

「わりぃ、油断した!」

 

「気を付けろ! 背後にカオステラーがいる以上、今までと同じようにはいかないぞ!」

 

 一体のヴィランを斧で切りつけながらパーンが叫ぶ。その間、またも暗い影が彼らを襲う。

 

「まずい、みんな散れ!」

 

 四方に散った瞬間、先ほど同様にフェアリー・ゴッドマザーが召喚したカボチャが落下、石片が散らばりエグゼイドたちが怯んだところを、ヴィランが襲う。

 

「くそっ!」

 

≪HIT!≫

 

 襲ってきたヴィランをハンマーで殴り飛ばしつつ、体勢を立て直すために距離を取る。レヴォルも同じく、エグゼイドと並んで武器を構えた。

 

「行くぞ、エム!」

 

「ああ!」

 

 ヴィラン目掛け、駆け出す二人。爪や剣で二人を切り裂かんとするヴィランを、逆に切り返して吹き飛ばし、薙ぎ払う。

 

 が、そんな彼らにメガ・ドラゴンによる火炎弾が迫る。左右に回避した二人の間に着弾、爆発する火炎弾。そして回避した彼らに、再び襲い掛かる取り巻きのヴィランたち。

 

「エムさん! レヴォル!」

 

「今援護を……!」

 

 エレナたちがエグゼイトたちに加勢しようとした。が、それをシェインが止めた。

 

「危ない、避けなさい!」

 

 再び爆撃の如く降る巨大カボチャ。慌てて避けるエレナたちだが、フェアリー・ゴッドマザーによる攻撃もまた熾烈を増す。

 

 大火力のメガ・ドラゴン、援護のフェアリー・ゴッドマザー、そして突撃してくる周りのヴィラン。本人たちが意図しているか否かは定かではないが、接近するのを許さない連携を前にして、エグゼイドたちは苦戦する。

 

「このままじゃ埒があかない……!」

 

 レヴォルが悔し気に、エグゼイドと背中合わせに立って剣を構える。ヴィランは倒せても、彼らを総統しているメガ・ヴィランに近づけない以上、このままではジリ貧だ。さらに言えば、その後ろには親玉の王妃がいる。ここで消耗をしていては、相手にすることすらままならない。

 

 どうにかしなければ……そう考えていたレヴォルに、エグゼイドが振り返った。

 

「レヴォル、あのデカブツとヴィランは俺に任せろ!」

 

「な……何を言うんだ!? この数を一人は……!?」

 

 突然の申し出。それはヴィラン全員を自身一人が引き受けるという物。当然、レヴォルは反対し、声を荒げた。

 

「なぁに、心配すんな! こっちには秘策があるからな! お前らは、あの人を相手してくれ!」

 

 エグゼイドは顎を使い、空中で杖を振るうフェアリー・ゴッドマザーを指し示す。彼女によるカボチャ爆撃は確かに強力だが、彼女自身に戦闘能力はそこまで高いわけではなく、こうしてヴィランたちと連携を取られたら厄介なだけで、単体として戦えば苦ではない。それは確かだが……。

 

「しかし……!」

 

 それでも、エグゼイドが相手取ろうとしているのは凶暴なヴィランだ。先ほどもエグゼイドが吹き飛んだ光景を目の当たりにした以上、彼一人を戦わせるのは……そうレヴォルは考える。

 

 

 

「大丈夫だ。俺を信じてくれ」

 

 

 

 ポンと、レヴォルの肩に手を置くエグゼイド。鋭い目付きの仮面越しから、確かな強い意志が伝わる。

 

 思えば、最初に彼が変身した時もそうだった。並み居るヴィランを前に、恐れもなく、前のみを見据える彼の背中には、確かな信頼を感じた。そして、その通りに彼はほぼ一人で完封してみせた。

 

 目の前にいる存在は、より強大だ。しかし、彼は絶対に負けない……彼の仮面を見て、そう信頼をしてしまう。何とも不思議な気分だった。

 

「……わかった。けど、無茶だけはしないでくれ」

 

「ヘッ、誰に言ってんだよ?」

 

 再びヴィランたちへ向き直るエグゼイド。そして、左腰のサブガシャホルダーに手を伸ばす。

 

「俺は誰にも負けるつもりはないぜ? ……なんてったって俺は」

 

 取り出したるは、黄緑色のガシャット。そのガシャットに描かれている絵柄をヴィランたちに見せつけるようにして、スイッチに指をかける。

 

「天才ゲーマーMだからな!」

 

 

 

≪SHAKARIKI SPORTS!!≫

 

 

 

 ガシャットのスイッチを押し、起動。ギターの演奏のような電子音と共に、エグゼイドの背後にカラフルなタイトルロゴ画面が映し出される。そして、そこから一つの物体が飛び出してきた。

 

「な、何あれ……?」

 

 それを見て、エレナが思わずキョトンとする。以前のゲキトツロボッツガシャットのような物体が飛び出してくるのかと思えば、前が緑、後ろがピンクといった派手な色合いの二輪で構成された物が、エグゼイドの周りをぐるぐると走り出す。見た目からして乗り物のように見える。

 

「あれって……確か以前学院の資料室で見たことがあるわ。ジテンシャって乗り物だったかしら?」

 

「ああ。人の足よりも速い乗り物として知られているね」

 

「……何でそんなもんをお医者さんは呼び出したんだよ?」

 

≪ガッチョーン≫

 

 現物を初めて見る一行はそれ、自転車を呼び出したエグゼイドの真意を測りかねる。当のエグゼイドは、アクチュエーションレバーに手をかけて閉じ、そして左手に持ち直したガシャットを左側スロットに挿す。

 

≪ガシャット!≫

 

「大・大・大変身!!」

 

 ゲキトツロボッツの時と同様、腕を大きく三回転。そして勢いよくレバーを開く。

 

≪ガッチャーン! レベル・アーップ!!≫

 

 例の如く、パネルが二枚展開される。それがエグゼイドと重なって、彼の変身シークエンスが開始された。

 

≪マイティマイティアクション・X!!≫

 

≪アガッチャ!≫

 

 猛スピードで回っていた自転車『スポーツゲーマ』が意思を持つかのように飛び上がり、エグゼイドの上で展開、そして、

 

 

 

≪シャカリキ! シャカリキ! バッド・バッド! シャカっと・リキっと・シャカリキスポーツ!!≫

 

 

 

 自転車がエグゼイドと合体。右肩をピンクのホイール、左肩を黄緑のホイール、そして胸部と頭部にカラフルな防具が装着される。

 

 変身が完了し、そこにはエグゼイド・スポーツアクションゲーマーレベル3の姿があった。

 

「わぁぁぁ! 新しい恰好だぁ! すごいすごーい!!」

 

「いいわねいいわねぇ! あの色合い! そして追加された装甲! かっこいいじゃない!」

 

「ほほぉ……ジテンシャをああいう風に付けるとは、斬新ですねぇ……」

 

 エグゼイドの新たな姿にテンションが上がる女性陣。その隣、ティムが何とも言えない表情でエグゼイドを見ている。

 

「……なぁ、前はおチビで邪魔されて言えなかったんだけどよ……仮面ライダーのあの音楽? みてぇのって、場違いすぎじゃねぇか?」

 

「えー? あれがかっこいいんだよ? ティムはわかってないなー」

 

「そうよそうよ! それがわからないだなんて、ダメダメね」

 

「全くこれだからティム坊やは……」

 

「……なぁ先生。俺正直な感想言っただけだよな? なんでここまでボロクソ言われなきゃいけねぇんだ? 俺」

 

「まぁ、人の感性は様々だからね。仕方ないと受け止めるしかないな」

 

 感想を呟いた瞬間に女性陣からダメ出し喰らって軽く凹むティムを、パーンは肩を叩いて慰めた。

 

「っ! みんな、危ない!」

 

 と、そんな彼らにまたもや影が覆い、レヴォルが叫ぶ。

 

「へ? うわわ!」

 

「うわっと!?」

 

 慌て、エレナたちは頭上から襲い来るカボチャを避けた。

 

 

 

 

「何やってんだよあいつら……」

 

 そんな彼らを見て、エグゼイドは呆れる。ある程度の緊張感はあってしかるべきかもとも思ったが、あれはあれで心強い。気を取り直し、エグゼイドは自身を取り囲むヴィランを見据えた。

 

「さぁて! じゃあ行くとするか!」

 

 右肩のホイール『トリックフライホイール』の軸部分を持ち、肩から分離する。腕を引き、その車輪を

 

「うりゃ!」

 

 思い切りぶん投げた。ホイールは高速回転し、ピンク色のエネルギーを放ちながらヴィランへ迫る。そして、

 

『――――ッ!?』

 

 一体のブギー・ヴィランを切り裂き、両断。そのままホイールは弧を描き飛んでいき、再びUターン、エグゼイドへ切りかかったナイト・ヴィランが、その鎧の硬度を無視するかのように切断された。

 

 本来ならば自転車のタイヤの役目を果たすホイールだが、スポーツアクションゲーマーとなって使用した場合、ホイールは鋭利な刃物となる。

 

「よっと!」

 

 そのホイールをエグゼイドはブーメランのように受け止め、

 

「はっ!!」

 

 再び投げる。エグゼイドの頭部の『シャカリキメット』に内蔵された装置により、ホイールを手足の如く自在に操るエグゼイド。エグゼイドを中心に円を描きながら飛ぶホイールは、さながら暗殺武器チャクラムのよう。鋭い刃と化したホイールの竜巻を前に、ヴィランは両断されていく。最後の一体が真っ二つにされて消滅し、あれほど数のいたヴィランは残すところ炎を吐くメガ・ドラゴンのみとなる。

 

「おらぁ!」

 

 ホイールを投げ、エグゼイド自身も飛び上がる。メガ・ドラゴンはホイールを受け止めようと手を伸ばすが、直前で不規則な動きをしてうねるように飛び、その腕を回避、逆に腕を切断した。

 

『GAAAAAAAAAAAAAA!?』

 

 予想外の動きに焦り、腕を切られて痛みに叫ぶ。だがエグゼイドは容赦しない。

 

「はっ!」

 

≪HIT!≫

 

『っ!?』

 

 メガ・ドラゴンの後頭部を縦に回転しながら蹴り飛ばし、エグゼイドは勢いをつけてさらにジャンプ。手元に戻って来たホイールをメガ・ドラゴンに叩きつける。

 

「せぇ! はぁっ!!」

 

≪HIT!≫≪HIT!≫

 

 一撃、二撃、確実にダメージを与えてから飛び上がる。直後、エグゼイドがいた場所をメガ・ドラゴンの牙が襲い、空を噛んだ。

 

 ヒット&アウェイ戦法。単純だが、エグゼイド自身とホイールの連携攻撃をもってすれば、有効打となって相手を追い詰めることができる。

 

「おりゃぁ!!」

 

 ホイールを投げ、メガ・ドラゴンの首元を狙う。が、鱗に弾かれてしまう。

 

「まだまだ!」

 

 戻って来たホイールを、今度は蹴り飛ばす。蹴りによる威力によって、弾かれた部分、即ち傷ついた鱗に再び迫るホイール。傷ついた分、ダメージの入った鱗は弾くことなく、ホイールの刃が通った。

 

『GYAAAAAAAAAAAA!!』

 

 雄叫びを上げ、苦しむメガ・ドラゴン。身体中傷だらけとなり、満身創痍といってもいい。苛立ちと怒りが込められた目を、エグゼイドへと向ける。そして火炎弾を放とうと口を開いた。

 

「いいぜ? そんなら勝負と行こうか!」

 

 勝ちを確定しているとはいえ、油断はしていない。確実に仕留めるならば、今この瞬間……一番もろい、口の中を狙うのみ。

 

 故に、エグゼイドは正面から火炎弾を撃ち破るのを試みる。

 

≪ガッシューン≫

 

 ガシャットを抜き、端子部分に息を吹きつける。そして、左腰のキメワザホルダーへ。

 

≪ガシャット!≫

 

≪キメワザ!≫

 

 右手に持つホイールに、キメワザ発動時のエネルギーが集まり、高速回転を始める。エグゼイドは腰だめにホイールを構え、エネルギーが集まるのを待った。

 

 

 

 

「さぁ、行くわよ!!」

 

 一方のレヴォルたちも、洗脳されたフェアリー・ゴッドマザーと少数のヴィランを相手取る。アリシアの号令と共に放たれた砲弾を合図に、カボチャによる攻撃に対処するために各々散らばる。

 

「おらぁっ!」

 

 アリシアの砲弾が一体のヴィランに命中、爆風を巻き上げると、それに乗るようにティムが槍を逆手に持って飛び上がる。そして気合一閃、矛先から迸る炎が地面に深く突き刺さり、爆炎となって広がる。大蛇の如くうねる炎はヴィランを飲み込み、灰燼へと変えた。

 

「はぁっ!!」

 

 パーンもまた、ヴィランへと躍りかかる。手にした斧に雷を蓄え、それを回転しながら振るう。さらにコネクトしているラ・ベットにとって重要なアイテム、薔薇を花びらを撒き散らし、それら一枚一枚にも雷のエネルギーが宿り、ヴィランを襲う。雷と薔薇、そして斧による嵐。それらを防ぐ手立てを、ヴィランは持たない。ティム同様、雷のエネルギーをもろに受けた彼らもまた、消滅へと追いやられて行った。

 

「さぁて、私もやってやりましょうか」

 

 酒呑童子のシェインも、手甲を付け直して気合を入れる。ふと、周りが暗くなったのに気付き、見上げる。またもカボチャによる攻撃が、シェインへと迫っていた。

 

「いい加減、その攻撃には慣れました」

 

 頭上へカボチャを落とす攻撃など、もはや見切った。その意味合いで言い放つシェインは、手甲の刃を引き、そして真っ直ぐカボチャへと、

 

「はっ!」

 

 呼気と共に突き出す。鬼の髄力による拳は弾丸となり、カボチャの中心部分を穿つ。蜘蛛の巣状に広がった罅はやがて、カボチャを爆発四散へと追いやった。

 

「くっ……!」

 

 カボチャが破裂したのを見て、状況は芳しくないと思ったフェアリー・ゴッドマザーは、より高い位置へと逃れようと羽を動かす。が、突如として羽が動かなくなる。

 

「な……!?」

 

 羽だけではない。身体そのものが重く、宙へ浮くための力が維持できなくなっていることに気付く。何事なのか、フェアリー・ゴッドマザーが眼下を見下ろして原因を探る。

 

「悪いけど、それ以上好きにはさせないよ!」

 

 原因はすぐに見つかった。エレナだ。カーレンとなった彼女の周りには、幾つもの赤い靴が踊り手がいないにも関わらず、軽快なステップを踏むように、されど絶望に嘆き悲しむかのように踊り狂っている。その赤い靴がもたらすものは、破滅。フェアリー・ゴッドマザーの身体を蝕むような呪いが、彼女の身体から力を奪う。

 

 宙へ舞い上がれないフェアリー・ゴッドマザーは、徐々に高度が下がるのを体感する。それすなわち、安全圏からの攻撃はもはやできない。それ以前に、カボチャによる攻撃も今ではままらない。

 

 そこから導き出される結果は一つ。

 

「レヴォル、今だよ!!」

 

 彼らにとっての、反撃のチャンス。

 

「行け、王子サマ!!」

 

 ティムが身の丈程ある盾を上向きにして構えながら、レヴォルを呼ぶ。レヴォルは、すかさずティム目掛けて跳躍、盾の上に飛び乗った。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 ティムの盾を踏み台にしたレヴォルは、手にした剣を頭上に掲げるかのように振り上げたまま飛び上がる。そうすることで、フェアリー・ゴッドマザーとの距離が縮まり、攻撃範囲内へと収まる。

 

(エムのようにはいかないかもしれない……けど!)

 

 確実に、しかし彼女の命を奪わないよう、力を加減しつつ彼女の戦意を削ぐ……その一心で、レヴォルの剣を握る手に力が宿る。

 

(ここで決めなければ……()に顔向けすらできない!!)

 

 剣に、闇の力が宿る。悲恋に嘆き、愛する者との逢瀬を邪魔する存在すべてを断ち切る青年の剣。

 

 彼の心を通し、レヴォルの必殺の一撃となって今、放たれる。

 

 

 

 

≪SHAKARIKI CRITICAL STRIKE!!≫

 

「おりゃぁぁぁぁぁ!!」

 

 キメワザホルダーのスイッチを押し、必殺技を発動させたエグゼイドから放たれたエネルギーの刃は、同時に放たれた火炎弾すらも両断し、勢いを殺さずそのままメガ・ドラゴンの口腔内を貫通し、

 

「はぁっ!!」

 

 レヴォルの放った闇の一撃は、大きな衝撃となってフェアリー・ゴッドマザーの身体に叩きつけられた。

 

 

 

 

『GAAAAAAAAAAAAAAAAA!?』

 

「あぁっ……!?」

 

 天へ向けて断末魔の雄叫びを上げたメガ・ドラゴン。残された左腕をもがくように動かすも、やがて力尽き、黒い煙を吹き出すと共に身体が透けていき、やがては完全に姿が消え、消滅。フェアリー・ゴッドマザーも、地面に叩き落とされ、その衝撃でうめき声を上げつつも気を失った。

 

 

 

 

 

 

 時計の針が12時を指し示すまで、残り30分。




永夢のバク宙、ちょっとでも書けただけでも満足。

もともとシャカリキスポーツは構想段階で書く予定なかったんですが、「あ、このシーンなら出せるんじゃね?」と思ったんでレベルアップさせていただきました。表現できてたら嬉しいですね。

さて、次回からいよいよカオステラーとの決戦。終わりが見えてきました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。