仮面ライダーエグゼイド ~M in Maerchen World~   作:コッコリリン

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第15話です。よくここまで書けたものだなぁと我ながら感心してます。自分で自分をほめて花丸あげちゃう。

でもやっぱり一番大きいのは多くの方々からの感想です。とても励みになります。ありがとうございます。中には誤字報告もしていただき、感謝と申し訳なさでキメワザ食らいたいです。推敲してるんですけど、何でこう細かいミスが後々出て来るんでしょうね。世界の不思議として登録してもいいと思うの(単純に見落としてただけ)。

さてとりあえず15話から始める軽いあらすじをば。

前回、クロノスとの戦いで敗退した永夢たちは、フェアリー・ゴッドマザーの魔法によって町へ戻り、世話になったパン屋に身を寄せる。ゲーム病を患ったヘカテーと重傷を負ったティム、そしてシンデレラが攫われるという最悪な状況の中、檀正宗による魔の手が容赦なく永夢たちへ襲い掛かる。そこで下した永夢の決断とは……。


そんな感じの15話。レッツラ・ゴー。


第15話 悪夢のRE:START

 辺り一面、真っ暗闇だった。

 

 光すら射さず、誰かがいる気配すらない。歩けども歩けども、何かに当たる感触もない。

 

「……誰か、いないの?」

 

 一人、呟く。小さな声は反響することもなく、暗闇に消えていき、その声を拾う者すら存在しない。

 

 何でここにいるのだろうか。いつからここにいるのだろうか。いくら考えても考えても、答えは見つからない。

 

 じっと暗闇ばかり見ていると、思い出す。繋いでいた手が離れていった時の感触。大好きだった人が遠く離れていく時の感情。

 

 寂しさ、悲しさ、孤独感、絶望……全部がこの闇に凝縮されているような、そんな気がしてならない。

 

「っ……!」

 

 そう考えた瞬間、進める足は自然と早くなる。早く、早くここから抜け出さないと、自分が壊れてしまう……そんな予感がして。

 

 しかし、走り出した足は急に止まる。もとい、止められる。

 

「……?」

 

 肩に、感触がある。誰かに掴まれる感触。踏み出した足も自然に止まった。

 

 誰だろうか? そう思い、その掴んだ手を確認することなく振り返った。辺り一面暗闇にも関わらず、その顔ははっきりと、鮮明に見えた。

 

 そこにいたのは、見知った顔でも……ましてや人ですらない。

 

 

 

『GUUU……』

 

 

 

「ひっ……!?」

 

 醜い、化け物の顔。三角錐状の角を生やした頭部と、赤い目元と牙。鋭い爪の大きな手が、肩を握り潰さんばかりに強く掴み、咄嗟に逃げ出そうとしてもビクともしない。

 

 その間にも、化け物が動く。右手に持った、片刃の大剣。それをゆっくりと持ち上げていく。その刃から放たれる殺意が、身体を縛り、逃げようとする意思すらも奪い取っていく。

 

「た……助けて……」

 

 動くのは、口だけ。震えながら、ただ助けを呼ぶ。

 

 助けを求める声は、暗闇へ消えていく。化け物は嘲笑うかのように剣をこちらに突きつける。

 

 迫る死の恐怖。身体を縛っているのは、まさにそれだった。

 

「助けて……!」

 

 先ほどよりも強く、声を大きくして助けを呼ぶ。それでも声は返ってはこない。

 

 このまま死ぬしかないのか。そう諦めてしまいそうになる。

 

「助けて……!!」

 

 しかし、尚も叫ぶ。脳裏に浮かぶ、一人の人間。朧気ながらも浮かぶその姿は、いつも一緒に行動している男の後ろ姿。

 

 

 

「助けて、―――――!!」

 

 

 

 そのはずなのに……無意識に呼んだ名は、その男の名ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「エム、彼女の様子は……?」

 

 後ろ手で扉を閉めつつリビングに入って来た永夢に、レヴォルが不安そうに問う。それに対し、永夢は首を力無く振った。

 

「……容態はよくない。ずっと魘されているままだ」

 

 己の無力さを嘆くように、永夢は椅子を引いてそこに座り込んだ。

 

 場所は、永夢たちが今まで世話になってきたパン屋。クロノスに敗れ、危機一髪といった時、フェアリー・ゴッドマザーが咄嗟にクロノスの意識を逸らすことで永夢たちを町まで魔法を使って逃すことに成功した。

 

 重傷を負ってからいまだ目覚めないティム、ゲーム病で苦しむヘカテーを連れ、唯一の当てであるパン屋へ再び身を寄せた永夢たちを出迎えてくれたのは、地下牢から無事に逃げ出せた夫婦だった。二人は助けてくれたことに対して感謝の言葉を述べようとしたが、傷だらけの永夢たちを見て尋常ではないと悟り、こうしてまた部屋を借りることができた。

 

「ゲーム病か……長年生きてきた私も聞いたことがないが、相当厄介な病のようだね」

 

「私もです……医療には詳しくはありませんが、100年生きてきた中であのような病に似た症例は見たこともありません」

 

 長い時を生きてきたパーンとシェインが力無く言う。

 

「……このままだと、ヘカテーちゃんどうなっちゃうの?」

 

 エレナが、寝室で隔離する形で一人横たわっているであろうヘカテーを思い、永夢に聞いた。レヴォルもアリシアも、同様に永夢へと視線を向ける。

 

 少し、言いにくそうにする永夢。しかし、ここにいる者たちは事実を知っておくべきだと、永夢は心の内で決めて口を開いた。

 

「……ゲーム病に感染した人たちは、バグスターに少しずつ身体を奪われていって……最終的には、消滅する」

 

「消滅って……それって、死ぬってこと!?」

 

「そんな……」

 

 突きつけられた最悪の事態に、アリシアが驚愕し、レヴォルが呆然とする。

 

 ヘカテーは、レヴォルたちの仲間ではない。しかし、彼女の身の上を知る者として、それに今重傷を負って別室で眠っているティムにとってたった一人の家族である彼女が失われるかもしれないという事に、その場にいる誰もが衝撃を受けた。

 

「そんなの、嫌だよ……あんまりだよぅ……」

 

 ヘカテーと仲良くなりたいと思っていたエレナの目から、雫が流れ落ちる。あまりの理不尽さに、やるせない思いになる一行。暗い空気が、部屋に蔓延し始める。シンデレラを連れ去られたという事実もまた、その空気に拍車をかける。

 

「なんとか……治療法はないのか?」

 

 パーンが永夢に問う。縋るような思いが、レヴォルたちから感じられる。

 

 対し、永夢は

 

「……あります」

 

「あるの!?」

 

 頷き、それに一気に希望を見出したアリシアが座っていた椅子を蹴って立ち上がる。顔を伏せていたエレナも勢いよく顔を上げた。

 

「ど、どうすればいいの!? どうすればヘカテーちゃんを救えるの!?」

 

「それは……」

 

 正直、その治療法には危険が伴う。それを告げるかどうか、永夢は悩んだ。

 

 だが、

 

 

 

「父さん母さん!? どうしたの!?」

 

「しっかりしてよ! ねぇ!!」

 

 

 

 それを言う前に、一行の耳に入って来た悲鳴にも似た子供たちの叫び。それだけで、異常事態が発生したのだと、誰もが理解した。

 

「どうしたの!?」

 

 リビングを飛び出し、永夢が子供たちの悲鳴が聞こえた場所へ急ぐ。そして、その原因をすぐさま理解した。

 

「に、兄ちゃん! 父さんと、母さんが……!」

 

「急に……急に倒れて……!」

 

 廊下で、先ほどまで父親と母親が帰って来たことを喜んでいた兄妹が、泣きながら永夢を見る。二人の前には、彼らの両親が苦しそうな呻き声を上げながら倒れ込んでいた。

 

「う、うぅ……」

 

「く……苦しい……」

 

 それも、身体にノイズを走らせながら。

 

「これって……!?」

 

 この光景にデジャヴュをレヴォルは感じる。永夢は慌てて、ゲームスコープを起動。倒れた二人にスキャニングライトを当て、モニタを映す。

 

「……ゲムデウスウィルス……!」

 

 モニタ内を動き回るゲムデウスのアイコン。それが、二人が感染者であるという何よりの証拠であった。

 

「何で!? 何でヘカテーちゃん以外にも!? それにこの人たちだって、さっきまで元気だったのに!?」

 

 訳もわからず叫ぶエレナ。しかし、永夢はゲームスコープを外しつつ、狼狽えずに冷静に頭を働かせる。

 

「…………感染者の、データ」

 

「え?」

 

 永夢が一人呟き、レヴォルが聞き返した。

 

「檀正宗が言っていた。不完全なゲムデウスを完全なものにするために、多くの感染者のデータが必要だったって」

 

「それは……まさか!?」

 

 多くの感染者……その言葉に察しがついたパーンが、脳裏に浮かんだその可能性に愕然とする。

 

「檀正宗は……捕まえた人たちにも、ウィルスを投与して実験体にしていたんだ。それでゲムデウスがこの世界に顕現したことで、この人たちに潜伏していたウィルスが活性化して……!」

 

 まさに人を人とも思わぬ、悪魔の如き最悪な所業。罪なき人々を苦しめるあの男に、永夢が憤りを覚えながら、事実を口にした。

 

「なんて、ひどいことを……!」

 

「さすがに笑えませんね……そこまでする外道だったとは」

 

 レヴォルたちも正宗に対して怒りが湧く。ここまでのことをして、高笑いをあげられる男の姿が脳裏に浮かぶ。下手なカオステラーよりも、よっぽど悪魔のように思えてならなかった。

 

 そんな中、レヴォルがあることに気付く。

 

「ちょっと待ってくれ……それじゃあ、この人たち以外の捕らわれていた人たちも!?」

 

 牢屋の中にいたのは、彼らだけではなかった。数十人もの人々が牢屋の中で苦し気に呻いていたのを、レヴォルは思い出す。あの時は劣悪な環境によって健康を害していたのだと思っていたが……最悪な事態に、レヴォルは顔を青くした。

 

 さらに、事態は最悪な状況へと進む。窓の外から、甲高い悲鳴が響き渡る。

 

 何事かと、誰かが問う前に、家の戸が大きな音をたてながら開かれた。

 

「みんな! 大変だよ!」

 

「お婆さん!?」

 

 深夜だが、隣の家に傷と病に効く薬をもらえるかどうか頼んでくると言って出て行っていた老婆が慌てて家に駆けこんでくる。荒い息を吐き、肺を落ち着かせてから叫んだ。

 

「町の中で、化け物が暴れてるんだよ! それもこれまでの比じゃない、大量に!」

 

「な……」

 

 ただでさえゲーム病によって最悪な状況だというのに、それに拍車をかけるように現れたという化け物……恐らく、ヴィラン。

 

この事態の中、偶然とは思えない。意図的な何かを感じたが、それを考察している余裕はない。

 

「ど、どうしよう!?」

 

「どうしようも何もない……町の人たちを救わないと!」

 

 狼狽えるエレナを、レヴォルが窘めるように言う。ヴィランを放っておいたら、より多くの犠牲者が出る。それだけは避けなければいけない。

 

「けど、ヘカテーちゃんやティム君、それにこの人たち、その上に助け出した人たちも何とかしないといけない……さらには、逃げ惑う人たちも助けないといけない」

 

 アリシアが、難しい顔をする。ヴィランと戦わなければいけないが、ゲーム病で苦しむ人々、さらには未だ目覚めないティムを放っておけない。さらには逃げ惑う人たちも助けなければいけない。

 

 一度に片付けなければいけない問題が、山積みだった。

 

「一体、どうしたら……」

 

 正直、広い町全てを駆け回るには永夢たちでは限界がある。何かいい策がないかと、全員が頭を悩ませていた。

 

 

 

「私に任せてください」

 

 

 

 その時、この場にいない誰かの声が聞こえた。直後、永夢たちの前が光りだし、光が形となって人の姿となる。

 

「フェアリー・ゴッドマザー!?」

 

 レヴォルが驚き、現れたのは一人の女性の名を言う。シンデレラにおける最重要人物である、フェアリー・ゴッドマザーだった。

 

 永夢たちをこの家まで送り届け、魔法の力で傷を治してくれたフェアリー・ゴッドマザーは、一度一行たちの前から姿を消した。その彼女が、再び戻ってきた。

 

「一体、どこへ……それに、任せてって……?」

 

 エレナがフェアリー・ゴッドマザーに尋ねると、彼女は真剣な表情で、永夢たちを見据える。

 

「本来であれば、このようなことは立場上すべきではないのですが……今、私の願いを聞き届けてくれた兵士の方々が町の人たちを避難させてくれています。大丈夫、王の考えに否定的だった人たちです。信頼できます」

 

 全ての兵士が、今の王に忠誠を誓っていたわけではない。やむを得ずに従うしかなかった兵士たちに、普段は人前にほとんど姿を見せないフェアリー・ゴッドマザーは、今だけはなりふり構っている余裕はないと判断して声をかけ、町の人々を誘導してくれているという。

 

「避難場所って……そんなところあるんですか?」

 

 国で避難できる場所は限られてくる。唯一候補に挙がったのは王城だったが、今あそこは檀正宗が根城にしているだろう。そう考えるアリシアの質問に、フェアリー・ゴッドマザーは頷いた。

 

「あります……かつてシンデレラが住んでいた、町から少し離れた屋敷が」

 

 それを聞き、パーンは得心がいったとばかりに頷いた。

 

「なるほど、屋敷ならば広さも十分あるだろうし、今は誰も住んでいないから問題はないだろう」

 

 継母はカオステラーとなり、その子供である姉妹もカオステラーに取り込まれ、そしてシンデレラは檀正宗の手に落ちた。シンデレラの両親も他界している今、あの屋敷は今は無人。避難場所として活用しない手はない。

 

 避難場所と誘導する者が増えたことは、素直にありがたい話だった……だが、まだ問題がある。

 

「後は……病に苦しむ人々をどうするか、だ」

 

 目の前で苦しみ喘ぐ両親を前にして泣き続ける兄妹、ヘカテー、そして捕らわれていた人たち……専門医療に携わっていない者がいなければ、対処のしようがない。

 

 そして、その専門医療に携わっているのはただ一人。

 

「……彼らを放ってはおけない。けど、町の人たちも助けなければいけない……どうすれば……」

 

 ヴィランたちは、一介の兵士の手に余る。しかしゲーム病で苦しむ人たちを放ってはおけない。永夢はどうすべきか、判断に迷っていた。

 

『永夢』

 

 そんな彼の頭に、声が響く。その声の主を知る永夢は、戸惑うことなく耳を傾けた。

 

「パラド……?」

 

『ヴィランは俺に任せろ。お前はゲーム病患者たちを』

 

「それは……でも、お前一人に任せるわけには……」

 

『何言ってんだよ。こういう時こそ、俺の出番だろ? それに、俺の実力はお前がよく知っているはずだ』

 

 パラドの実力は、永夢が誰よりもわかっている。何せ、天才ゲーマーMの力は、実質彼の力によるもの。その力は折り紙つきだ。

 

 しかし、それでも懸念すべきことがある。彼の正体を、レヴォルたちにどう説明すべきか、ということだった。

 

パラドを悪く言うつもりはない。が、それでも最悪、彼らから疑いの目を向けられかねない。

 

 そう悩む彼の心を知ったパラドは、軽く笑いながら言う。

 

『心配すんな……お前を信じた連中を、お前が信じないでどうすんだよ?』

 

「っ……」

 

 永夢が信じる人たちが、それくらいで糾弾するような者たちではない。暗にそう言うパラドに、永夢は頭を殴られたような錯覚を覚えた。

 

 これまで共に戦ってきた彼らの性格を、永夢はわかっていたつもりだったが……パラドに言われ、彼らを疑う自らを永夢は恥じた。

 

「……わかった。お前に任せる」

 

『へへっ、そうこなくっちゃな!』

 

 パラドを、レヴォルたちを信頼し、永夢は託す。それを楽しそうに笑いながら、パラドが心の内で自らの胸を叩いているのが、永夢には何となくだがわかった。

 

「エ、エム? 一体、どうしたんだ?」

 

 傍から見れば、突然一人で何もない場所に向かって話し始めたようにしか見えない永夢に、レヴォルが恐る恐ると声をかける。エレナたちも同様、永夢の奇行にしか見えない行動に戸惑っていた。

 

「……皆さん、お願いがあります」

 

 改め、レヴォルたちへ向き直った永夢。真剣な目で話す永夢に、レヴォルたちは何か言う前に口を噤んだ。

 

「今から見る光景に、あまり驚かないでください」

 

「へ? それって」

 

 どういう意味、とエレナが口を開く寸前。

 

 見開かれた永夢の目が、赤く光った。

 

「な、なんだ!?」

 

 永夢の全身の血が騒ぐような感覚に襲われると同時、彼の身体から粒子のようなものが吹き上がる。青と赤が入り混じったようなそれは、驚くレヴォルたちの前で人型に形成されていく。

 

「っと」

 

 やがて、その人型は着地するかのように軽く言って、レヴォルたちと永夢の間に立つように現れた。

 

 色とりどりのコードがぶら下がっている黒いコートと、紫のズボン。長身の男性が、唖然とするレヴォルたちへ気軽に右手を挙げた。

 

「よ。この姿では初めましてだな」

 

「な……だ……」

 

 男性ことパラドを前にし、口が開きっぱなしだったアリシアは、何者かを問おうとしたが声にならない言葉しか発せない。黙っているが、シェインとパーンも同じ感じだった。

 

「え……その声は」

 

 唯一、レヴォルとエレナが気付く。レヴォルの脳裏に浮かぶのは、カオステラーと対峙した際に二人に分裂したエグゼイドの片割れ。オレンジ色のエグゼイドが、緑色のエグゼイドと共に勇猛果敢にカオステラーへ向かっていく姿。

 

「もしかして、あの時のオレンジ色のエムさん!?」

 

「ビンゴッ!」

 

 パチンと、言い当てたエレナに向けて指を鳴らすパラド。その顔は無邪気な子供のようだった。

 

「エム君、彼は一体……?」

 

 永夢の身体から突如として現れたパラドを見て、らしくもなく混乱するパーンが永夢を見る。その目を真っ直ぐ返しながら、永夢は言う。

 

「彼は、パラド。僕の相棒です」

 

「そ。永夢の唯一無二の相棒。それが俺だ」

 

 誇らしげに自らを親指で指すパラド。と、その楽し気な表情が一転、真剣なものへと変わる。

 

「事情を説明して欲しいのは、十分わかってる。けど、今はそれよりも大事なことがある筈だ」

 

 大事なこと……町の人たちの救助。確かに、パラドが言うことは最もだが、彼の事が気になることもまた事実。そもそも、いきなり永夢の身体から現れたことについての説明もまだだ。

 

 疑惑の目を、パラドへ向けようとした……が、永夢がレヴォルたちを真っ直ぐ見て、頭を下げる。

 

「説明は、後で絶対にします。けど、今は彼を……パラドを信じて欲しい」

 

「俺からも頼む。永夢の役に立ちたいんだ」

 

 永夢とパラド。二人からの真摯なまでの頼み。それを聞いて、レヴォルは一瞬考える。

 

 確かに、パラドのことは気にはなるし、正直疑わしい。説明をして欲しいという気持ちも大きい……しかし、これまで共に戦ってきた永夢が、何も考えなしにパラドを信じてくれと言う筈もない。

 

 故に、出す答えは一つだった。

 

「……わかった。説明を聞くのは後にしよう」

 

 それならば……今は、レヴォルはパラドを信じる永夢を信じることにした。

 

「皆も、それでいいか?」

 

 無論、レヴォルだけの判断で決めるわけにはいかない。後ろで聞いていた仲間たちに振り返り、聞くレヴォル。

 

「……うん。わかんないことだらけだけど、私はエムさんを信じるよ」

 

「まぁ……うん、確かに説明は欲しいところだけど、それどころじゃないのも事実だしね」

 

「少なくとも、彼からは悪意は感じられない。私も問題ないと思うね」

 

「……はぁ……全く、次から次へと事態が動いていきますね……まぁ、今は状況を好転できれば何にだって縋りますよ」

 

 考え無しに信じるつもりはない。ただ、永夢の役に立ちたいというパラドの言葉から嘘はないと、誰しもが感じられた。

 

 故に、今は信じる。それがレヴォルたちが出した判断だった。

 

「皆さん……ありがとうございます!」

 

「恩に着るぜ!」

 

 信じてくれたレヴォルたちに感謝の意を伝える永夢とパラド。しかし、今は和気藹々としている余裕もない。

 

「よし、僕たちはヴィランを抑える! その間にエムは……」

 

「わかってる。ゲーム病患者やティム君は、僕に任せておいてくれ」

 

 クロノスにやられた傷も、すでにフェアリー・ゴッドマザーが癒してくれている。疲労感までは癒せなかったものの、戦うには申し分ない。

 

「みんな、行こう!」

 

 レヴォルが先頭に立ち、家を出て行く。永夢は、彼らを見送りながら言った。

 

「皆、パラド! 気を付けて!!」

 

 彼らには彼らの、そしてドクターである自分には自分の戦いをするために。レヴォルたちと永夢は、それぞれ動き出した。

 

 悪夢に苦しむ人々を救うために。

 

 

 

~ 第14話 悪夢のRE:START ~

 

 

 

「た、助けてくれ! 助けてくれぇ!!」

 

「お父さーん! お母さーん!」

 

「た、頼む、俺を置いて行ってくれ……こんな身体じゃ、お前まで巻き添えに……」

 

「何言ってるのよ!? せっかく城から帰ってきてくれたのに、また離れ離れなんて嫌よ!!」

 

「だ、ダメです! 数が多すぎてとても全員助けることが……!」

 

「諦めるな! 俺たちが諦めたら町はおしまいだぞ!!」

 

 レヴォルたちが町の中央広場へ向かうと、そこは阿鼻叫喚の大騒ぎとなっていた。助けを求める人々や、家族と離れ離れになった子供の泣き叫ぶ声、城から逃げ帰れた筈なのにゲーム病によって苦しむ人々が、そこかしこから現れて襲い掛かってくる化け物を前に成す術なく逃げ惑う姿。フェアリー・ゴッドマザーの言う通り、町を救うために迎え撃とうとしている城の兵士たちだったが、押し寄せる敵の群れを前にして劣勢に立たされていた。

 

「な……何あれ?」

 

 エレナが、町を襲っている敵の姿を視認する。そこには、これまで幾度となく戦ってきた無数のヴィラン。ゴーレムやゴースト、そしてドラゴン以外にもハーピー型のメガ・ヴィランまで勢ぞろいだった。

 

 だが、エレナが注目しているのは別にある。

 

 

 

『&$%#!&#?』

 

『#%“!$%&!』

 

 

 

 ヴィランに混じって大きな三又の槍を振るう、オレンジ色の奇妙な形をした頭を持つ、黒いタイツのような服を纏った人型の化け物。言葉にならない奇声を発しながら、人々を追いかけまわす。

 

 初めて見る敵を前に、困惑するレヴォルたち。唯一、あの存在を知るパラドが、苦々しい顔を隠そうともせずに口を開く。

 

「バグスターウィルスだ」

 

「バグ、スター……?」

 

「それって……確かエムさんが言ってた、ゲーム病っていうのにかかる奴だよね?」

 

「ああ、連中はその中の雑魚敵。だけど、数が多いのが厄介な存在だ」

 

 ゲーム病患者に感染するバグスターが患者の身体を乗っ取った際、共に現れる敵。云わば戦闘員のような役付けの存在。

 

 それを見て、パラドは確信する。この騒ぎもまた、檀正宗の仕業だということに。

 

 何故バグスターとヴィランが手を組んでいるかのように動いているのか疑問は尽きない。それを考える前に、パラドは手近にいた女性を襲おうとしていたバグスターに駆け寄り、蹴り飛ばす。吹っ飛ぶバグスターを余所に、パラドは襲われていた女性を助け起こした。

 

「早く逃げろ!」

 

「あ、ありがとうございます……!」

 

 お礼もそこそこに、女性は逃げ出す。パラドは振り返り、ヴィランとバグスターの混合部隊を睨みつけた。

 

「とにかく、あいつらを追い払うぞ」

 

「……ねぇねぇ、パラドさん……だったよね? もしかして、パラドさんも仮面ライダーになれるの?」

 

 パラドの横に立ったエレナが、期待の眼差しをパラドへ向ける。城でも永夢と一緒に仮面ライダーになっていたが、永夢がいない時でも変身できるかどうか気になっていたエレナ。その眼差しを受けて、パラドは不敵に笑う。

 

「当たり前だろ? おまけに、俺はそんじゃそこらの連中とは格が違うぜ?」

 

 言って、すでにお馴染みとなったゲーマドライバーを取り出し、見せつけるように振った。

 

「おおおお……!」

 

「エレナ、エレナ。状況をよく見て……」

 

 目を輝かせるエレナをレヴォルは窘める。その間にも、パラドはゲーマドライバーを腰に当て、自動でベルトを巻き、装着を完了させた。そして、再びバグスターとヴィランを睨む。

 

力無き人々を追いかけまわし、害を為そうとする彼ら。しかし、かつてのパラドもまた、彼らと同じ立場にいた存在だった。

 

 目を閉じて、パラドは思い出す。命と命のやり取りをゲームと称し、無邪気なまでに人の命を奪ってきたパラド。自分たちは人の命と違い、いつでも復活(コンティニュー)することができるバグスターであるという認識を、クロノスの手で仲間を殺められて覆されて、初めて命を失う恐怖を思い知った時、身体と心の震えが止まらなかった。

 

 そして改めて、命の重さを……永夢の荒療治によって理解し、自らがやってきた罪の重さを思い知った時。永夢自身が、パラドと一心同体であるということを認めて、自分の罪と向き合うと言ってくれたあの時から、パラドは生き方を変えた。

 

 己の罪を償おうと決心し、今のパラドがある。

 

 かつてのパラドならば、この状況を前にして心が躍っていただろう。戦いという名のゲームを、存分に楽しんでいただろうから。

 

 だが……今のパラドは違う。

 

 かつての自分を見ているかのように、罪なき人々の命を奪うヴィランとバグスター。そして世界を超えてまで命を弄ぶ檀正宗に対して抱く感情は、興奮でも、愉悦でもない。

 

 

 

「心が、滾る……!」

 

 

 

 ゲームのためではなく、人々のために。パラドは閉じていた目を開き、心を“怒り”で燃やす。

 

 左手で懐から取り出したるは青く分厚いガシャット。そのガシャットは、大きくて黄色いダイヤルが付けられ、中央には赤と青、それぞれ違うデザインが左右で分かれたラベルが貼られている。

 

≪デュアル・ガシャット!≫

 

 そのガシャットこと『ガシャットギアデュアル』を勢いよく、ゲーマドライバーに挿入した。

 

≪The strongest fist!≫≪What’s the next stage?≫

 

≪The strongest fist!≫≪What’s the next stage?≫

 

 そして繰り返し鳴り出す、待機音声のサウンド。前半は力強い曲調、そして後半はユーモラス溢れる曲調。まるで二つのジャンル違いの物を一つに混ぜたような、奇妙なサウンド。

 

 同時、パラドの背後に二枚のゲームタイトル画面のホログラムが浮かぶ。右側を男性が炎の中で拳を振るうイラストが描かれた赤い画面、左側を青い球体に目と口が付いた妙な生き物とカラフルなパズルが描かれた青い画面。それらから発せられる、赤と青のゲームエリアが町中に展開、散らばるエナジーアイテム。

 

 両手を交差し、パラドは構える。そして、

 

「マックス大変身!」

 

≪ガッチャーン! マザル・アーップ!!≫

 

 円状に大きく腕を振り、ゲーマドライバーのアクチュエーションレバーを勢いよく開いた。

 

 

 

≪赤い拳強さ! 青いパズル連鎖! 赤と青の交差! パーフェクト・ノックアーウト!!≫

 

 

 

 鳴り響くサウンド。背後のホログラムが合体、一つとなった瞬間、ハイフラッシュインジケータから飛び出してきた上下を赤と青で色分けされたパネル。それがレバーを開いた際に右手を挙げたパラドの身体を通過し……パラドの姿を、別物へと変えた。

 

 右目を赤に、左目を青にした鋭い目つき。赤と青の刺々しい頭部。背中に取り付けられたガシャットに付いている物と似たダイヤル。そして赤と青が交差した、まさに混ぜられた(・・・・・)ようなスーツ。

 

 レベル50の格闘ゲーム『ノックアウトファイター』と、同じくレベル50のパズルゲーム『パーフェクトパズル』という、ガシャットギアデュアルに内蔵されたジャンルの違う二つのゲーム。それらのゲームを一つにし、ジャンル違いという矛盾(パラドクス)を超えて力に変え、全く新しいゲームへと昇華した存在。

 

 

 

「仮面ライダーパラドクス……レベル99!」

 

 

 

 仮面ライダーパラドクス・パーフェクトノックアウトゲーマーレベル99が、レヴォルたちの前で力強く名乗りを上げた。

 

「うわぁ、新しい仮面ライダーだぁ! こっちもかっこいいなぁ!」

 

「随分と派手ねぇ。けどこれはこれでかなり強そうに見えるわね!」

 

「赤と青の仮面ライダー、ですか……ふむ、見た目鮮やかでなかなか……」

 

「……異論はないけれど、なんで彼女たちはあそこまでテンションが上がるんだ?」

 

「まぁ、人の好みは様々だからね」

 

 永夢と正宗に続いて実質三人目の仮面ライダーを前にし、ティムが付いていけなかった程にテンションを上げる女性陣を、呆れつつ見るレヴォルと苦笑するパーン。

 

 変身を終えたパラドは拳を鳴らす。そして仮面の赤と青の鋭い目つきを、バグスターとヴィランへ真っ直ぐ向ける。

 

「さぁ……始めようぜ!!」

 

≪ガシャコンパラブレイガン!≫

 

 叫び、武器を召喚する。これもまた左右を赤と青に色が分かれており、さらには片側を銃に、片側を斧の刃に変えることができる、遠近両用に戦える異色の武器『ガシャコンパラブレイガン』を手に取った。

 

「よし、僕たちも!」

 

「へんしーん!」

 

「ちょ、エレナちゃん、感化されちゃってない?」

 

 レヴォルたちも負けじとコネクトし、それぞれのヒーローとなってパラドに続く。

 

≪ズ・ガーン!≫

 

「はぁぁぁっ!!」

 

 先手を打ったのは、パラド。赤いAボタンを押して青いジグソーパズルの模様が銃身に施された(ガン)モードへチェンジしたガシャコンパラブレイガンをヴィランとバグスターへ向け、トリガーを引く。青い弾丸が連続して射出され、命中した瞬間爆裂して次々と倒していく。屋根の上から弓矢や杖で狙うウィング・ヴィランやゴースト・ヴィランも見逃さず、照準を合わせて狙い撃つ。

 

≪1! 2! 3! 4! 5!≫

 

 粗方撃つと、ガシャコンパラブレイガンの青いBボタンを5回押す。押した回数を告げる音声の後、飛び跳ねる音が遅れて鳴った。

 

 そして駆け出す。目指すは、ハンマーを振り上げているナイト・ヴィラン。

 

「ほっ!」

 

 ジャンプし、ナイト・ヴィランの頭部を足場にしてより高い位置まで跳ぶ。空中で逆さとなったパラドは、眼下に蔓延るヴィランとバグスターの集団へ銃口を向けた。

 

「くらえ!」

 

 容赦なく、トリガーを引く。すると、銃口から弾丸が射出される。それも一つではなく、ボタンを押した回数だけの、即ち5発の弾丸がマシンガンのように連続発射され、ヴィランとバグスターに降り注ぐ!

 

≪HIT!≫

 

≪HIT!≫

 

≪HIT!≫

 

≪HIT!≫

 

≪HIT!≫

 

『―――――ッ!?』

 

『%#$#“&!?』

 

 厚い鎧で身を守っているナイト・ヴィランでも、頭上からの攻撃には成す術がない。弾丸は獲物を狙う狼が如く、容赦なくヴィランとバグスターに次々命中、そして炸裂。これで一つの集団が断末魔を上げながら消滅した。その光景はまるで、

 

≪5・連鎖!!≫

 

 パズルゲームで組み合わさったパズルが連鎖して消えていくかのようだった。

 

「さぁ、まずは一発目!」

 

≪ガッシューン≫

 

 続き、着地したパラドはゲーマドライバーからガシャットを抜く。そしてそれを、ガシャコンパラブレイガンのガシャットスロットへ装填した。

 

≪デュアル・ガシャット!≫

 

≪キメワザ!≫

 

 キメワザ発動の待機音が鳴り出す。その電子音を聞きながら、パラドは左手を上げた。

 

「こいつと、こいつで!!」

 

 仮面ライダーパラドクスの特性である複数のエナジーアイテムを手元に引き寄せ、それらを組み合わせて使用する『マテリアコントローラー』が内蔵されている左肩『パズレフトショルダー』が起動。そこかしこに散らばる形で点在しているエナジーアイテムのうち2枚が動き出し、パラドの頭上に集まっていく。

 

 集ったアイテムは『鋼鉄化』『分身』の二種類。『鋼鉄化』はガシャコンパラブレイガンへ、『分身』はパラド自身へ吸い込まれていく。

 

≪鋼鉄化!≫

 

≪分身!≫

 

 青い炎のようなエネルギーを吹き出すガシャコンパラブレイガン。そして銃口を今度はより大物へ、メガ・ヴィランのゴーレム種とゴースト種へ向けた。

 

「行くぜ!」

 

 

 

≪PERFECT CRITICAL FINISH!!≫

 

 

 

 銃モードと連動してパーフェクトパズルの必殺技が発動。同時、パラドの身体が6人に分裂、本人を合わせて計7人が横へと並んだ。

 

「はぁっ!」

 

 躊躇うことなく、分身たちと一緒にトリガーを引く。キメワザによって輝く分身から放たれた6つの弾丸に合わせ、『鋼鉄化』によって鈍色に輝くパラド本人が撃った弾丸が、手から魔法の光弾を撃って対抗しようとするゴースト種と、鋼鉄で構成されているゴーレム種と、へ向けて牙を剥く。

 

 分身による6つの弾丸は全てゴースト種に命中、エネルギーを迸らせながら爆散。『鋼鉄化』によって強化された弾丸は、同じ鋼鉄のはずのゴーレム種の胴体に大きな風穴を開け、唸り声に似た音をたてながら崩れ落ちて行った。

 

≪ALL CLEAR!!≫

 

 見事、キメワザが決まったのを報せるサウンドが鳴る中、パラドは余韻に浸ることなく、ガシャットをゲーマドライバーへ戻して次へ走る。

 

「今度は……!」

 

≪ズ・ゴーン!≫

 

 Aボタンを押し、銃を半回転。刃に描かれた赤い炎の意匠が特徴の(アックス)モードへ切り替え、助走をつけて飛び上がりつつ、一体のバグスター目掛けて斧を振り上げる。赤い軌跡を描きながら、バグスターが持つ槍ごと両断、続けざまに横へ薙ぎ払い、数体のヴィランを消し飛ばす。

 

≪1! 2! 3! 4! 5! 6! 7!≫

 

 再びBボタンを連続で押す。今度は7回押し、そして身体を回転させながら豪快にぶん回す!

 

「っらぁぁぁ!!」

 

 回転の勢いを乗せた斧の一撃が、近くにいたナイト・ヴィランが構える盾に命中、轟音を響かせながら衝撃波が広がった。

 

≪HIT!≫≪HIT!≫≪HIT!≫≪HIT!≫≪HIT!≫≪HIT!≫≪HIT!≫

 

 扇状に広がった、強烈なエネルギーを乗せた衝撃波がバグスターとヴィランを襲う。盾を構えて防御態勢をとっていたヴィランも、身を伏せていたバグスターも、その防御を物ともせずに紙きれの如く吹き飛ばしていく。強烈な連撃を一瞬で繰り出すかのような一撃。それはさながら、

 

≪7・連打!!≫

 

 格闘ゲームの必殺コンボが決まったかのようだった。

 

「二発目、行くぜ!」

 

≪ガッシューン≫

 

 先ほどと同じようにゲーマドライバーからガシャットを抜き、斧モードとなっているガシャコンパラブレイガンのスロットに装填する。

 

≪デュアル・ガシャット!≫

 

≪キメワザ!≫

 

 斧と連動しているノックアウトファイターのキメワザが起動。斧の刃が赤い炎の如く輝き出す。そうはさせじと、空中から大型ヴィランのメガ・ヴィランのうちの一つ、女性の身体に鳥の翼と鉤爪を持つハーピーが急降下を始め、その鋭い足の爪を振り上げてパラドを切り裂かんと迫る。

 

「お前らには、こいつらで決めてやるぜ!!」

 

 左手を振るい、エナジーアイテムを集める。今度のアイテムは、

 

≪マッスル化!≫

 

≪高速化!≫

 

 攻撃力強化の『マッスル化』をガシャコンパラブレイガンに、移動速度強化の『高速化』をパラド自身に使用。ガシャコンパラブレイガンが一瞬肥大化し、パラドが黄色に光り出す。

 

「はぁぁぁ……!」

 

 腰だめに構え、斧を構える。すでにハーピーの爪は目と鼻の先。臆せず、パラドはトリガーを押す。

 

 

 

≪KNOCKOUT CRITICAL FINISH!!≫

 

 

 

 キメワザが発動。真っ赤に燃える斧を、ハーピー目掛けて振るった。

 

「はぁっ!!」

 

『――――ッ!?』

 

 凶悪なまでのエネルギー波が、ハーピーをヴィランとバグスターが密集しているところへ吹き飛ばす。甲高い悲鳴を上げながらも体勢を立て直そうとするハーピーが、翼を羽ばたかせた。

 

 が、すでに『高速化』によって一瞬で接近したパラドが眼前で斧を振りかざしていた。その距離……もはやゼロ。

 

「おりゃああああああああ!!」

 

 呼気と共に、ハーピーと後ろのヴィランとバグスターをも巻き込んで斧を振り抜く。赤い一閃が走り、一瞬遅れて斧の軌跡をなぞるように爆発。敵は跡形もなく消し飛ばされた。

 

≪K.O!!≫

 

 まさに一撃必殺。キメワザが華麗に決まったことを、残心を決めるパラドにサウンドが報せた。

 

「うわぁ……むちゃくちゃ強い」

 

 まさに圧倒的。ほとんど一人で並み居る敵を殲滅してしまったパラドの戦い振りを、自身もヴィランと戦う横目で見ていたエレナが半ば唖然としながら呟いた。

 

「こりゃ、私たちの立つ瀬ないわね……」

 

「しかし、心強いのは事実。このまま押し切っていきましょう」

 

 苦笑するアリシアだったが、これを好機と見たシェインが槍を振り上げてきたバグスターを蹴り飛ばしながら言う。

 

 奇怪な声を上げながら吹っ飛ぶバグスター。だが彼が地面に落ちることも、壁にぶつかることもなかった。

 

『フンッ!』

 

 シェインが蹴り飛ばしたバグスターが、突然両断されて消失した。

 

「なっ……!?」

 

 それに気付いたレヴォルが、バグスターを消した存在を目にして動きを止める。

 

 レヴォルたちが戦う中央広場に足を踏み入れてきたのは、一体の怪物。屈強な体格を包む、血とも炎とも取れるような深紅の甲殻のような甲冑。竜を思わせるような頭部を持つその者は、手に両端が牙のような槍を持ち、振り下ろした体勢を戻してレヴォルたちへと意識を向けた。

 

 彼の背後からまた現れる、ヴィランとバグスターの増援部隊。パラドが殲滅した時と同等の数が控えている。

 

「なんだ、あいつは……!?」

 

 レヴォルが先頭に立つ怪人を警戒し、剣を構える。そこに立っているだけで肌がピリピリする程の威圧感は、クロノスに迫るものがある。

 

 さながら、武人。その立ち振る舞いから、そんなイメージがレヴォルたちに湧く。

 

 だが、怪人の姿を見た時、パラドが激しい動揺を見せるように、仮面を揺らす。

 

「お……お前、は……!?」

 

「パラドさん?」

 

 エレナが声をかけるも、答える余裕はない。

 

 何故ならば、パラドは彼のことをよく知っているからだ。それも、先の戦いで己の信念のために戦い、そして敗れ、それでも己の運命、役割を全うできたことに悔いはなく、寧ろかつてない程に満足したまま逝ったパラドの戦友。

 

 その誇りを持って散って逝った彼……その名を、パラドは震える声で言う。

 

 

 

「グラ、ファイト……!」

 

 

 

 グラファイト。ハンティングゲーム『ドラゴナイトハンターZ』のバグスターウィルスとして、パラドと肩を並べて戦ってきた存在。何故、死んだ筈の彼がここにいるのか……一瞬、パラドは考える。しかし、その謎はすぐに氷解する。

 

「……クロノスの奴、保存しておいた仮面ライダークロニクルのデータからグラファイトを復元したな……!」

 

 死して尚、道具として戦友を利用する檀正宗。改めて奴の所業に怒りを抱く。

 

 それだけではない。グラファイトは己の生き方に後悔なく、戦って死んだ。その彼を、こうして再び無理矢理戦いの場へ立たせる……まさに、戦士の誇りをも汚す行為に他ならない。

 

 心がますます滾っていく。パラドの暴発寸前の怒りが、ガシャコンパラブレイガンの柄を強く握りしめることで表れた。

 

「……皆、あいつは俺に任せてくれ」

 

 レヴォルたちを見ず、パラドは言う。

 

「そんな……一人よりもみんなで戦えば!」

 

 レヴォルでもわかる。あいつはやばい、と。故に、全員で戦った方が確実なのではないかと、レヴォルは進言する。

 

「いや、あいつは……俺にやらせてくれ。皆はバグスターとヴィランを。放っておけないだろ?」

 

 頑として譲らないパラド。しかし、彼の言うことも最もであり、グラファイト一人を相手にしすぎて、他の敵を放置してしまうこととなる。ならば、一人が奴の注意を引き、レヴォルたちが周りの敵を相手にして戦う、という図式が理想と言えば理想であった。

 

 建前こそは、確かに理に適っている。ただ、パラドの本心は、別にある。

 

「グラファイト……」

 

『……』

 

 パラドが、グラファイトと対峙する。彼の名を呼ぶパラドだが、返ってくる答えはない。そこには意思も感じられない。

 

「いや……お前は、グラファイトじゃない」

 

 否定し、頭を振るパラド。見た目、そして雰囲気。共にパラドが知るグラファイトである。

 

 それでも否定する。パラドの直感が、彼は違う存在であると……檀正宗の手で人格データを抹消され、操り人形としてここに立っているのだと、そう叫ぶが故に。

 

「俺の知るグラファイトは、もう死んでいる……だから」

 

≪ズ・ガーン!≫

 

 ガシャコンパラブレイガンを銃モードへ変え、銃口をグラファイトへ向ける。それに呼応するかのように、グラファイトも自身の得物『グレングラファイトファング』を腰だめに構えた。

 

 互いに一色触発。二人の間に吹く風。どちらかが先に動いた瞬間、勝負は始まる。

 

 永遠とも取れる、空白の時間。二人の間のみが、静寂を包む。

 

 やがて、動き出す。ジャリッという、砂利を踏む音を鳴らしたのは、

 

 

 

「俺が止めてみせる!!」

 

 

 

 ガシャコンパラブレイガンのトリガーを引いたパラド。青い銃弾を放ちながら、グラファイトへ向けて疾走する。

 

「うおおおおおおおおおっ!!」

 

 連続して射出される銃弾を、槍を回転させて弾いていくグラファイト。グラファイトとの距離が縮まっていき、そして、

 

≪ズ・ゴーン!≫

 

「はぁぁぁっ!!」

 

 斧へ切り替え、振り下ろす。それをグラファイトが防ぎ、互いの得物から火花が散る。

 

 望まぬ復活を遂げる羽目になったかつての戦友を止められるのは自分だけ……その強い意思を持って、パラドはグラファイトとの死闘に挑んでいった。

 

 

 




仮面ライダーパラドクス、解禁。あの待機音、結構耳に残ってしまうから困ります。

今回のパラドの戦闘で使ったキメワザ、原作において大我と飛彩を相手取った時のと大体同じ感じです。もうちょいオリジナリティー出そうぜ私と反省しつつ、ではまた次回。
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