仮面ライダーエグゼイド ~M in Maerchen World~ 作:コッコリリン
「お、俺が、悪いってのか……? 俺は、俺は悪くねぇ、俺は悪くねぇぞ。そうだ、特撮ファンクラブが過去の仮面ライダーを視聴できるって! 電王、キバ、ディケイド、オーズ、鎧武を観れるからって! こんなに仮面ライダーが観れるなんて知らなかったんだ! 俺は悪くねぇっ! 俺は悪くねぇっ!」
「去年の最新話投稿までのあなたとは別人ですわ……」
「お前らだって仮面ライダー好きだろ!? 俺ばっか責めるな!」
某親善大使と思い込んでいる作者です。正気に戻ります。ひとまず投稿遅れました本気でごめんなさい。理由は上記の通りです。怒らんでくだせぇ(土下座)
今年最初の投稿ですが、まだ戦闘には至ってません。次回です。けど次回は近いうちにあげられる筈です。本気で。
こんな下級戦闘員作者ですが、今後も最終話まで読んでいただければ幸いです。では17話、どうぞです。
あ、それから最後に一つ。
グリムノーツ4周年、おめでっとおおおおおおおおお!!(ライドアリス来るまで課金しまくって泣きを見た人間)
「ふむ……さすがはエグゼイド、といったところか。あの数を物ともしないとはな」
場所は王城。国の中心地でもある玉座にて、足を組んで座る檀正宗。本来であれば王のみが座ることを許される玉座に悠々自適に座るその姿は、悪辣なる侵略者が国を乗っ取った証かのよう。その辺にある座椅子のように腰を落ち着かせている正宗は、鼻を鳴らして笑う。
「まぁ、
言って、手に持っているバグヴァイザーⅡを持ち上げ、モニターを見る。
「あなたもそう思うだろう? 王妃様?」
モニターの向こう側。そこには、ゲムデウスに身体を乗っ取られ、バグヴァイザーⅡに吸収された王妃が、恐怖に顔を凍り付かせていた。
『あ……あなた、何をするつもりなの!?』
忠実な僕として傍に置いておいたはずの男が姿を変え、未知なる技術を使って自らを封じたことに対して恐怖を感じているが、それ以上に愉悦で顔に笑顔を浮かべるこの男の底知れない闇を垣間見たことによって、カオステラーの声が震える。
カオステラーの問いに、正宗は笑みを崩さずに答えた。
「何をする、と……前に言ったはずだ」
組んだ足を戻し、玉座から立ち上がる。そして、バグヴァイザーⅡをシャンデリラの明かりに翳すように掲げた。
「あなたは、私の一部となるのだよ……仮面ライダークロニクルを盛り上げるためのコンテンツとして、ね?」
一部……その言葉を聞き、カオステラーが恐怖に慄き、首を振った。
『やめ……やめなさい。い、今なら許してあげるわ』
「許す? これは異なことを言う……」
愉悦が浮かんでいた表情が、変わる。
「世界のルールたる私こそが、許しを乞われる側であることをあなたは知った方がいい」
哀れみを含んだ目を、カオステラーへと向けた。
『いや……いや……!』
拒絶しようとも拒絶する権利はない。逃げようにも逃げ場はない。
救う者も、どこにもいない。
≪ガッチャーン≫
カオステラーの声を無視するかのように、正宗はバグヴァイザーⅡをベルトのバックルと合体させ、バグルドライバーⅡへと変えて身に付ける。
「さぁ……始めよう」
天を仰ぎ、手を広げ、仁王立ちとなる正宗。
新たなるゲームのために。世界の命を管理するために。
「新たなる仮面ライダークロニクルを……!」
瞬間、バグルドライバーⅡのモニターが赤く光り、そこから黒い靄が発生する。やがて靄は正宗の身体を覆っていき、見えなくなる。
『ア、ガアァァァァァァ……!!』
苦しみ喘ぐカオステラー。苦痛と共に身体の中にある力が抜けていく。その力がバグルドライバーⅡを通し、正宗へと流れ込んでいく。
カオステラーは実感する。力が抜けると共に、様々な物が抜けていくことを。
己の身体が、記憶が、そして運命ですら。カオステラーを構成する全てが、吸収されて消えていく。
手を伸ばせない。伸ばそうという意識すら起こらない。もはやそれすらも消えてなくなろうとしている。
『イ、ヤァァァァァ……!』
最後、掠れた断末魔を上げる。それを聞き届ける者は、誰もいない。
物語の主人公に嫉妬し、殺めようとし、挙句その身を混沌に侵され、他者の運命を弄り狂わせ暴虐の限りを繰り返してきたカオステラー。その最期の悲鳴は、最早誰もいない王城の中で木霊し、やがて月明かりの中へと消えて行った。
~ 第17話 最後のtalking ~
「……うん、傷が塞がった分、回復は早くなっているね。ほぼ万全だよ」
バグスターとヴィランの混合群、そしてグラファイトとの死闘を終え、永夢たちはシンデレラの屋敷へ戻って来た。いまだ怪我人は多いが、フェアリー・ゴッドマザーと医療関係の人々の尽力もあり、幾分か怪我で苦しむ人々は落ち着いてきていた。最も、突然の襲撃によって混乱から抜け切れていない人も多く、今は精神的ケアを優先するよう切り替えただけとも言える。
現在、ゲーム病で苦しむ人々は屋敷の中に収容されているため、多くの人間が屋敷の敷地内、或いは敷地に近い場所で兵士が建てたテントにて夜を過ごしている状態だった。永夢たちはそのテントのうちの一つ、屋敷に一番近い大きなテントの中に集まっていた。
「本当に大丈夫なのティム君?」
「なぁに、痛みはほとんど引いてる。寧ろ動かねえとまた痛みがぶり返しちまいそうだ」
永夢と向かい合う形で座って診察を受けていたティムは、心配するアリシアに向けて軽く笑いながら右腕を回した。フェアリー・ゴッドマザーが疲労を押してくれた上に、ヒーラーのヒーローとコネクトしたエレナという二人分の魔法をかけたことが功を制した。痛みこそ完全に除去することはできずとも、回復力を促進することはどうにかでき、こうして早いうちに復帰することができた。まだ万全とは言い難いが、永夢から見ても動く分には申し分はないように見える。
「ドクターとしては止めたいところだけれど……」
永夢は聴診器代わりのゲームスコープのイヤーケーブルを外しながら言う。一ドクターとして彼の身体を気遣い、戦闘に参加するのは止めたいところだが……。
「わりぃな、お医者さん。さすがにそればっかりは聞き入れられねえよ」
申し訳なさそうに、しかし確固たる意思を持って永夢へ断言するティム。魔法のおかげで怪我も治り、動ける程になった。ならばじっとしている訳にはいかない。ここまでされて黙っていられる程、ティムはお人好しではない。
クロノスに対する怒り。それだけが、今のティムの原動力だった。普段は暴走する仲間を抑える役割が多いが、今回ばかりはここに置いて行ったら、彼が暴走してしまいかねない。
「ご安心を、エムさん。いざという時になったら、私が無理矢理にでも動きを止めますんで」
「ババァ、それ遠回しに脅しになってねぇか……?」
彼の気持ちもわかるシェインも、姉貴分として彼の同行を自身が責任を持つという形で永夢に願い出る。もっとも、その動きを止めるという意味をわかっているティムとしては若干顔が強張っているが。
「……うん、わかった。けど無茶はしないでね?」
「さぁて、それはわかんね……いや、すまん。わかった。出来るだけ無茶はしねぇよ」
背後からの姉貴分の突き刺すような視線に、冗談交じりで返そうとしたティムは咄嗟に訂正した。下手したら痛い目に合うということは経験上わかっていた。
「さて……では、色々と話を伺わなければなりませんね」
手近な椅子を引いて、シェインが席に着く。長テーブルには互いが向かい合うような形で他の面々も座る。そして、全員が注目しているのは永夢と、その隣で柱にもたれている形で立っているパラドだった。
「事態は急を要しますが、それにしても私たちが知らない情報がたくさんあります。とりあえず、手短に、かつ要領を得るような話でお願いしますね」
「シェイン、それは……いや、この状況ではそうしなければいけないか」
今回の事件、発端こそはカオステラーであるが、その裏ではカオステラーと永夢たちを戦わせて、カオステラーを弱らせてその力を手に入れるために糸を引いていた人物、仮面ライダークロノスこと檀正宗。それにより、カオステラーは彼の手に落ち、シンデレラは攫われ、挙句には未知なる病『ゲーム病』を大勢の人たちに感染させた。そして今まさに、ヴィランだけでなくバグスターと呼ばれる生物を使って、国どころか世界を滅ぼしかねない暴挙にまで出ている。
無論、彼を止めなければいけないのは確かだが、その力は強大だった。永夢を含めた全員が、手も足も出ずに叩きのめされたという事実は覆しようがない。対策なしに挑んでは、敗北を繰り返すだけだ。
その対策を建てるためにも、レヴォルたちは永夢から聞かねばならない。檀正宗とは何者なのか、バグスターとは……それに加え、パラドは何者なのかを。
「……わかりました」
それをわかっているからこそ、永夢も彼らに打ち明ける決心をする。ここまで永夢たちの世界と関わりのある出来事がたて続けに起きているのだから、もう無関係とも言えない。
「檀正宗……クロノスのことや、バグスターウィルスのこと、そしてパラドのことも。今から、僕が知りうることを説明します」
そうして、永夢は説明を始める。
人間に感染する未知なるコンピュータウィルス『バグスターウィルス』と、仮面ライダーとの関連性。そこから起きたCRの仲間たちと共同で行ってきた、当初は敵対していたパラド含めたバグスターウィルスとの死闘という名の
正宗の狙いはただ一つ。大手ゲーム会社『幻夢コーポレーション』を世界一の大企業にすると共に、己が世界のルールとなり、命を支配すること。そのため、この死のゲームを海外展開へ向けての準備を着々と進めた。
バグスターウィルス根絶を目指すCRのドクターライダーたちにとって、それは許容できない計画だった。故に、永夢たち仮面ライダーは檀正宗と対峙。ゲームのクリアを目指し、人々をゲーム病の脅威から救うために戦う永夢たちに対し、ゲームはプレイヤーのためにあると豪語し、仮面ライダーをゲームのレアキャラと見なして妨害する正宗との戦いが幕を開ける。
謀略、策略、そして己の信念、欲望がぶつかり合う、熾烈な戦いだった。
戦況は最初、圧倒的力を誇る正宗の方に傾いていた。しかし、永夢の周りに集う仲間たちによって戦況は覆されていく。
パワーアップしたエグゼイドに敗北、さらには海外展開が白紙となり、なりふり構わなくなっていった正宗は、ゲームを永遠にクリアさせないために、降臨したゲムデウスの思考ルーチンを書き換えてウィルスを撒き散らした。大勢の人たちに感染させるパンデミックを引き起こした上、己の身とラスボスであるゲムデウスと一つになり、バグスターと化してまで、永夢たちの前に立ち塞がる。
しかし、それすらも正宗の息子、檀黎斗と九条貴利矢によって生み出されたワクチンにより、ゲムデウスウィルスは死滅。最終的にはパラドが己の命を捧げ、永夢たちを勝利へと導き……そして、『仮面ライダークロニクル』は終わりを告げた。
「……以上が、僕が、いや、僕たちが経験してきた全てです」
全てを語り終え、永夢は一息つく。手短に、とは言われたが、それを意識したと言えども、あの時の戦いは一言二言で語るのは不可能な程に凄惨を極めていた。
現に、話を聞いていたレヴォルたちも、何とも言葉にするのが難しい程に呆気に取られていた。これまで幾つもの想区を巡って来た彼らですら、永夢がどれだけ過酷な戦いを経験してきたのか想像もつかない。
「……何て言うか、医者の仕事って感じじゃねぇよな……」
ティムがイメージする医療とは色々と違っている、永夢たちCRのドクターたちの治療方法。だがそれだけバグスターという存在が特殊なものであるかということを示唆している。
「けど、まさかパラドさんがエムさんに感染してたバグスターだったなんて」
パラドを初めて見た時から、彼が普通の人間ではないことはわかりきっていたが、まさか正体が永夢に感染していたバグスターであるということにはアリシアは驚きを隠せない。
「全てのバグスターが悪い存在じゃないんです。中にはパラドみたいに人類に味方してくれるバグスターだっているんだ」
「って言っても、俺だって元は永夢の敵だったけどな……今は違うけど」
苦笑しながら、かつて永夢と敵対していた時のことを話す。それでも紆余曲折あって今の関係となったのだが、その辺りは省略した。
「んじゃ、改めて俺もクロノスを止めるためにお前たちに協力させてもらうぜ。あいつには借りがあるし、これ以上無関係な人間が巻き込まれるのを見たくないからな」
人懐こい笑みのままレヴォルへ手を差し出し、自らも協力していくこと旨を伝えるパラド。その内心は、再び悲劇を引き起こそうとしている上、グラファイトを蘇らせて傀儡にしたクロノスに対する激しい怒りで燃えていた。
「ああ、こちらこそよろしく頼む」
パラドの手を躊躇うことなく握り、硬く握手するレヴォル。先の戦闘で、町の人の為に戦うパラドの姿はレヴォルたちの目に焼き付いている。信頼に値するとレヴォルたちは判断し、彼を快く迎え入れた。無論、ティムにも事情は話してある。最初こそ半信半疑ではあったが、シェインからの説明によって納得はしてくれた。
改めてのパラドの紹介を終え、今後の対策を講じるための話し合いを再開する。
「……今の話で、わかったことが一つある」
静かに聞いていたパーンが、永夢の話から最も重要な情報を知ったと口を開く。
「バグスターウィルスに感染した人は、ゲーム病を患う。そのゲーム病を治療するためには、そのバグスターウィルスを倒さなければいけない」
「あ! ってことは、ヘカテーちゃんたちの病気もそのバグスターを倒せば治るってことだよね?」
いまだゲーム病で苦しむ人々を救う道を見つけ、エレナの表情が明るくなった。だが、その隣のアリシアが顔を曇らせる。
「けど、感染しているのって永夢さん曰く最強のバグスターなんでしょ? そんな奴と、どう戦えばいいのかしら……」
仮面ライダークロニクルのラスボスにして、最強のバグスターことゲムデウス。先ほどの戦いでバグスターであるグラファイトの強さを間近で見たが、あれ以上の強さを持っているとなると、クロノス含めてかなり絶望的であると言わざるをえなかった。
「いや、そうでもないぜ?」
しかし、そのアリシアの不安を払拭させるために明るくパラドが言う。
「クロノスが言ってたろ? 復活したばかりの今のゲムデウスはまだ完全じゃない」
「ゲムデウスウィルスは、強い感染力を持っているんです。言い方は不謹慎かもしれませんが、過去と比べてまだ感染の規模が小さい。感染の拡大が見られない以上、時間はあるはずです」
「じゃあ、まだ希望はあるということだな」
ゲムデウスの本来の力がどのようなものか、レヴォルたちには想像できないが体験もしたくはない。永夢たちの話が事実ならば、今が渡りに舟。倒すチャンスは、今しかない。
「だが……その前に、大きな壁がある」
ゲーム病を治療するためには、ゲムデウスを倒す必要がある。が、ゲムデウスに到達する前に、倒さねばならない敵がいることを、パーンは思い出した。
「……クロノスの野郎か」
忌々し気にティムが呟く。その脳裏に、気付かぬうちに攻撃され、手も足も出ずに倒された記憶が蘇る。
何とか一矢報いてやりたい。しかし、あの男の力は途方もなく強い。それはティムだけではない、この場にいる全員が身をもって知った。
「あ、そう言えば」
一同が何か手立てはないかと考えていた時、思い出したかのようにエレナが声を上げた。
「あの時、おじさんがエムさんに言ってたよね? えっと、ハイパー……モンキー、だっけ?」
「いやそれどんな猿だよ」
うろ覚えのエレナのボケに思わずティムがツッコんだ。
「確か、『ハイパームテキ』……だったか?」
エレナに代わり、レヴォルが永夢に問う。永夢は頷き、説明する。
「主人公最強の無双ゲーム『ハイパームテキ』……幾つかあるエグゼイドのフォームの中で最強のフォームに変身するためのガシャット。クロノスを上回る力はもとより、あらゆる攻撃が一切効かなくなるんだ」
「あらゆる攻撃が……?」
「うん。それこそ、クロノスのポーズだって無効化できる」
「うそ、あの時間停止魔法みたいな力を!?」
ポーズの恐ろしさを知っているアリシアが、そのポーズすらも無効化にできると聞いて思わず腰を浮かせた。
「すごい! それさえあれば勝てるね!」
クロノスに対抗できる唯一の手段、ハイパームテキの存在を知ったエレナが、歓喜の声を上げる……が、その隣に座るパーンが、難しい顔をして口を開いた。
「……しかし、それはできない。そうだね?」
「……はい」
「はれぇ?」
対抗手段が見つかったと聞いたのに、それが無理と言われて肩透かしを食らった気分になったエレナが素っ頓狂な声を上げる。そんな彼女に、シェインが呆れながら言った。
「あなた、自分から思い出しておいて肝心なことは忘れたんですか? あの男が言っていた言葉を思い返しなさい」
「え? えっと……」
言われ、頭を指で抑えながら天井を見上げ、過去を思い返す。数秒後、「あ」と声を上げたかと思えば、ガクリと肩を落とした。
「そうか……あの男の言う通り、今エムはハイパームテキを持っていないんだな」
エレナの代弁をするように、レヴォルが落胆を隠せないような顔で言った。永夢は力なく頷く。
「ちょうど、この世界に迷い込む直前に開発者にメンテナンスしてもらうために渡したんだ……それがこんなことになるなんて」
まさか、あの時にハイパームテキが必要な場面が訪れるなど、考えもしなかっただろう。過去の己を悔いる永夢だったが、過ぎ去ってしまったことはもうどうしようもない。どう足掻いたところで、ハイパームテキは手元にない事実は覆しようがないのだから。
「でも、どうするよ。奴に対抗する手段がない以上、他の手段を考えねえと」
クロノスに対抗する力がない。そうなれば、最早正攻法で戦うことは不可能に近い。ティムの言うように、ハイパームテキに頼る以外の方法を考えなければいけなかった。
「エム、何か思いつかないか?」
クロノスとの戦闘経験が豊富なのは、この場には永夢とパラドしかいない。情けないとは思いつつも、レヴォルが永夢に意見を求めた。
「……一つだけ、方法があります」
言って、永夢は懐からある物を取り出し、一同に見せた。
「それは……さっきのガシャット?」
レヴォルにも見覚えがあるそれは、分厚いガシャットの底部にエグゼイドの頭部を模したスイッチが付けられた『マキシマムマイティX』だった。ホログラム映像にも映し出されていたキャラクターがタイトルロゴと共にラベルにも描かれている。
「このガシャットの力があれば、クロノスに対抗できる」
「へぇ、そんなに強いの? そのガシャット」
インパクト抜群のあのエグゼイドならばクロノスを倒せると聞いて、少しテンションが上がるエレナ。対し、永夢は苦笑しながら首を振った。
「いや、確かにこれも強力なんだけど、性能面ではクロノスの方が上なんだ。それよりも、見るべきところはこのガシャットに備わっているもう一つの機能、『リプログラミング』なんだ」
「リプログラミング……?」
聞き慣れない言葉に、レヴォルが疑問符を浮かべる。パラドを除く他のメンバーも同様だった。
「このガシャットに搭載されているリプログラミングシステムは、相手の遺伝子を書き換えて初期化させることができるんだ。このガシャットをクロノスに使って、クロノスの抗体をリプログラミングすれば……」
「えーっと……どゆこと?」
「……つまり、そのガシャットを使えば、クロノスを無力化することが可能、ということか」
専門用語が多くて、エレナがちんぷんかんぷんと言わんばかりに首を傾げた。横でパーンが、彼女に助け船を出すような形で解釈する。
「はい、そうなります」
肯定する永夢。しかし、過去に二度クロノス相手にリプログラミングを使おうとしたことがあったのを思い出し、そしてそのいずれも成功には至らなかった。最初は黎斗の協力もあって成功するかと思いきや、クロノスによる策略で仲間の一人である飛彩が永夢たちを裏切ったことで失敗。二回目はゲムデウスを吸収したクロノスに力負けして不発に終わった。
次に使うとすれば、三度目。過去のこともあり、成功するかどうか、正直なところ自信がない。が、三度目の正直、という諺がある。他に手がない以上、これに賭けるしかなかった。
ただ、それでもまだ問題はある。
「でも、そのリプログラミングを使うには……」
「そうか、あいつの時間停止の力、『ポーズ』を何とかしないとダメなのか」
アリシアがクロノスの能力を思い出し、レヴォルもあの力の厄介さに頭を抱える。
気が付いたら、ティムと永夢が吹き飛ばされていた、という出鱈目な能力。あれをどうにかしなければ、リプログラミングを使おうにも簡単に防がれてしまう。
「エム。彼があの力を行使する条件はあるのか?」
「うん。ポーズはクロノスがバグルドライバーⅡのA、Bボタンを同時に押して発動するんだ。だから、クロノスの手さえ封じればなんとか……」
ただ、それをするには接近しなければいけない。ただでさえ圧倒的な力を持つクロノスに接近するというのは、正直かなり難しい。
「……なら、もはや手は一つですかね」
と、しばらく黙っていたシェインがため息交じりに言った。
「私たちが、彼の気を逸らした上でポーズを封じます。その間、あなたはそのリプログラミングとやらで彼を」
「おいババァ、簡単に言ってるけどそれは……」
ポーズによって動きを封じられた状態のまま打ちのめされたからこそ、ティムにはクロノスの恐ろしさがわかる。クロノスに対して強い怒りを抱いてはいるが、同時にクロノスを倒すことがどれだけ難しいかを、ティムは身をもって知っていた。
「当然、難しいでしょうね」
しかし、そんなティムの考えていることなどお見通しとばかりにシェインがしれっと言う。
「しかしながら、現状の手が限られている以上、最早それしか方法はない。しかも、時間も無い。それはゲーム病の問題だけでなく、この想区においてでも、です。ですよね、パーンさん?」
「……君も気付いていたようだね、シェイン」
シェインの視線に、神妙な顔つきとなったパーン。どういうことかと、レヴォルたちの注目が集まる。
「先ほど戦ったメガ・ヴィラン。これまで戦ってきた者よりも遥かに巨大化していたね?」
「ええ、確かに異常な大きさではありましたけれども……」
通常でも巨体を誇るメガ・ヴィランをさらに大きくしたメガ・ドラゴン。見た目通りの強敵であったが、それとシェインの話とどう繋がるのかと、アリシアは眉を上げた。
「……あの異様な現象は、恐らくシンデレラがクロノスによって攫われたことが関係あるかもしれない」
「それって、どういう…………っ!?」
何故そこでシンデレラが出て来るのかと、レヴォルが疑問を口にしようとした……が、その意味に気付き、口を噤んだ。
「……この想区のストーリーテラーが、シンデレラが消えたことで混乱しているんだと思う」
パーンは思い出す。シンデレラを取り込んだ、あのホログラム映像を。
想区の主役が、運命の書に載っていない筋書きを辿った結果死亡した場合、
シンデレラは、あのホログラムに取り込まれる形で消えた。クロノスの口ぶりからすれば、シンデレラはまだ生きているだろう。しかし、あのホログラムの行き先が、想区とは全く違う場所だとすれば……。
「エム君、シンデレラが連れ去られた先に心当たりはあるか?」
パーンが永夢に聞く。永夢も、シンデレラが攫われた先は検討がついていた。
「……エラちゃんは、恐らく仮面ライダークロニクルのゲームエリア……僕がガシャットを起動する時に発生する物とは違う、特殊な空間に取り込まれたものと思われます」
「やはり、か……恐らく、そのゲームエリアと呼ばれる場所は、ストーリーテラーですら知り得ない、ましてや想区という概念すら通じないような未知の空間なのだろう。唐突にシンデレラが消えたことで、彼女の生死が判断できていないんじゃないかな」
「それで、その混乱がこの想区にも影響を与え、あのようなメガ・ヴィランが現れた、という訳ですね」
カオステラーのものと違い、ストーリーテラーが運命を円滑に維持するために、異物を除去するために生み出すヴィラン。あの巨大なメガ・ドラゴンがそのヴィランであると、パーンとシェインは当たりをつけた。
「今はまだ、ヴィランに影響が出てきているだけに過ぎない。だがこのまま放置しておけば、想区は混沌を極め、やがて崩壊するだろう」
「そんな……」
想区の崩壊……そうなればこの想区に住まう生きる者全てが消えてしまう。それはレヴォルたちが考えうる最悪の事態だった。
「……エレナさん、今再編をすることは可能ですか?」
一度カオステラーを倒し、物語の流れを掴んだ今なら、再編をすることが可能ではないかと、一縷の望みをかけてシェインがエレナに聞いた。
が、願い空しく、エレナは首を振った。
「ダメ……多分、シンデレラちゃんが捕まったせいで、物語の流れが変わっちゃったみたい……」
クロノスに想区の主役であるシンデレラが攫われた影響で、物語に新たな歪みが生じたせいで再編を発動させることができない。そのことを気に病み、エレナは頭を下げた。
「ごめんなさい! 私があの時、再編を中断しちゃったばっかりに……」
カオステラーの急変に気を取られ、再編の儀式を止めてしまった。そのせいで今の状況になってしまったのだと思うエレナを自責の念が襲う。
「いや……あの状況じゃあ仕方ないさ。僕がエレナの立場だったら、同じく気を取られていただろう」
「そうだよエレナちゃん、悪いのはクロノスだ。自分を責める必要なんかないよ」
そんな彼女を責める者は、誰もいない。レヴォルと永夢がエレナに慰めの言葉をかけ、彼女をフォローした。
「ですね。気に病む必要はありません。それより、今の状況を変えるために動きましょう。まだ取り返しはつくんです」
「う、うん……」
まだ気にはしているが、確かに過去のことを悔いるよりも今後のことを考えた方が建設的だとエレナも思い、気を取り直して話し合いを再開した。
「ともかく……想区が崩壊しかねない今、もはや手段を選んでいる時間はありません。どうにかしてあの男の隙をつき、動きを封じてエムさんの攻撃を一発当てる……他に手段があれば聞きますが、私的にはこれしか方法はないと思います」
作戦としては、レヴォルたちがクロノスを拘束するなりしてポーズを封じ、その隙に永夢がリプログラミングを行う……かなり分が悪い作戦になるが、最早これしか方法がなかった。
「……確かに、あいつの力を無効化できるってんなら、それに賭けるしかねぇな」
「ああ、早く奴を止めないと」
ゲーム病で苦しむ人々が、いつ容態が急変してもおかしくない上、想区の崩壊の危機という、一刻の猶予もない状況。敵の強さもあって絶望的であるが、彼らに後退の二文字はない。
「いや……少し待って欲しい」
と、気合十分で立ち上がろうとしたレヴォルとティムを、パーンが落ち着いた声色で制止させた。
「皆、ここまでほとんど休まずに戦ってきた。体力も限界だろう?」
「それは……」
パーンの指摘に、レヴォルが口を閉ざす。思えば、城へ潜入してから今まで禄に休んでいなかった。先ほどまでは敵との連戦で必死になっていたために疲労を感じる暇すらなかったが、一旦落ち着くとどっと疲れが出てきたように思える。
「確かに、時間に猶予はないと思う。けれども、疲労をおしてまで戦えるかと言うと、そうではないだろう」
「け、けどよ……!」
こうしている間にも、ヘカテーが苦しんでいる。そう思うと、ティムはじっとなどしてはいられなかった。
「いや、僕もパーンさんに賛成だよ」
「エム?」
が、パーンに同調したのは、意外にも永夢だった。
「万全を期して挑まなければ、クロノスには勝てない。今の僕たちはこの町の人たちにとって唯一の希望なのだとしたら、今の状態で立ち向かうのは危険だ」
かつての永夢だったら、レヴォルとティムと共に立ち上がり、今すぐにでもクロノスへ向かっていただろう。しかし、患者の命を預かるドクターが倒れてしまえば、患者を治す者はいなくなってしまう。
「だから、少しだけでも休息は取るべきだよ」
仮面ライダーとなってから多くの戦いを経験し、仮面ライダークロニクルを一度は乗り越えたからこそ、永夢は己のうちの焦燥感と戦い、飽く迄も宥める立場に立った。
最初こそ反論しようとしたレヴォルとティムだったが、クロノスのことを知り、そしてドクターとしての立場で発言する永夢の力強い言葉に閉口せざるを得なかった。
「……ともかく、城へ向かうのは早くても夜明け頃。休む時間こそ少なくとも、少しでも体力を温存するために仮眠を取りましょうか」
「ふぁ……うん、そうだね」
シェインが席を立ち、エレナも欠伸をする。これまでの戦いで続いていた緊張が解れ、眠気が襲ってきたのだろう。
「ヴィランの襲撃に関しては、城の兵士たちが見張りをしているから心配はいらないだろう。私たちは、体力回復に努めようか」
少しでも負担を軽くするためと、城の兵士たちがテント周辺を巡回してくれている。その好意に今は甘え、パーンもまた席を立ちながら言った。
「……仕方ねえ、お医者さんがそう言うんなら、俺もちょっとだけ休んでおきますかね」
「へぇ、珍しいじゃない。昔のティム君だったら無理矢理にでも行こうとしてたのに」
「うっせぇよお嬢サマ」
不服な顔を隠そうともしないが、それでもパーンと永夢の言うことも最もだとわかっているが故か、ティムも異論はない様子で席を立った。そんな彼をからかいながら、アリシアも後に続く。
「そうだな……今は、少しでも休むべき、か」
少し熱くなっていたレヴォルは反省し、皆と共に休むために立った。
「あ、ごめん。僕は先に済ませておかないといけないことがあるんだ」
と、向かい側に座っていた永夢もレヴォルと同時に席を立ちながら言った。
「今から? 大丈夫なのか?」
「ああ、平気だよ。すぐに終わるから」
休むべきだと言っていた永夢は、笑いながら軽くそう言って白衣を翻しながら一人足早にテントを出て行く。その姿を見送ったレヴォルの隣で、エレナも永夢の後ろ姿を見つめていた。
「エムさん、どうかしたの?」
「何か用事があるって言っていたけれど……」
その用事が何なのかわからない二人は、首を傾げるしかなかったが、しっかりとした足取りで歩き去っていく永夢の姿を見て、とても大事なことなのだということだけは伝わった。
「ああ、心配することねぇよ」
二人の後ろ、柱にもたれて立っていたパラドが腰を浮かし、何てことないように言う。どういうことかと二人が首を傾げるも、尚もパラドは笑う
「あれも永夢の仕事だからな」
太陽が顔を出すまで、あと3時間程という頃。一時は恐慌状態に陥ってはいたが、それでも睡魔は誰にも等しく訪れる物。すでに人々は各々の仮の寝床で寝息をたて、先ほどまでの喧騒が嘘のようだった。起きているのは一部の寝付けない人々。見張りの兵士。そしていまだ怪我で苦しむ人々と、彼らを治療するために奮闘する医療関係者たち。
「……脈拍は安定しているようです。けどまだ容態がよくなったわけではありませんので、無理に動き回らないようにしてください」
そして、屋敷の中でゲーム病患者に割り当てられた病室代わりの食堂にて、患者の容態を確認している永夢。一人の男性患者の手首を抑えて脈を確認しながら、安心させるための笑みを浮かべつつそう言った。
「あぁ、わかったよ。すまねぇな、アンタには世話になりっぱなしだ……」
「本当に、ありがとうございます」
城の地下で助けられたことを覚えていた男性は、力無く永夢に礼を言う。彼の妻である女性も、永夢に頭を下げた。
「いえ、皆さんの笑顔を取り戻すのが、僕の仕事ですから」
言って、小さく頭を下げてから次の患者の下へ。治療することは叶わずとも、少しでもストレスを緩和させるために患者の心を可能な限り癒せればと、寝る間を惜しんでこうして動き回っている。
そうしてしばらく患者たちの話し相手になったり、容態を確認したりと働いていた永夢。だが、そんな彼でも睡魔には抗えない。重くなる瞼を擦り、限界が近いことを悟る。
「すいません……僕は一度休みます。後は僕が教えた通りにしていただけたら……」
「は、はい。わかりました」
クロノスを倒すのに、ここで倒れてしまうわけにはいかない。永夢は、予めゲーム病患者のためにストレスを緩和する方法をこの町の医師に教え、彼に引き継ぎをして食堂を後にする。治療はできずとも、これならば難しいことではない。この世界の医師でもできるはずだ。
屋敷を後にした永夢は、野営のテントへ戻る道を進む。まだ空は漆黒の闇に覆われているが、その闇の中に浮かぶ丸い月が淡い光を放ち、夜空を、そして永夢たちがいる暗い地上を照らす。やがて月は沈み、代わりに日が昇り、暗い空は白んでくるだろう。
そして、太陽が完全に顔を出した時が、決戦の時でもあった。
(ハイパームテキが無い……そんな状態で、クロノスに太刀打ちできるかどうか……)
歩きながら、永夢は不安を覚える。かつての激戦も、クロノスを圧倒してこられたのはハイパームテキによる力が大きい。例外として最終決戦の時は、パラドが自らの命を捧げる決死の働きによって、クロノスの中にあるバグスターウィルスを抑制したおかげで、クロノス本来のスペックを大幅にダウンさせ、仲間たちと共に唯一手元に残された初期のガシャットを使って圧倒、勝利を収めることができた。
しかし、大切な相棒であるパラドを再び犠牲にするわけにはいかない。それに、クロノスもバカではない。それくらいの対策は建てている筈だ。パラドがバグヴァイザーに侵入してポーズを無効化させる作戦も同様、通じはしないだろう。
ハイパームテキが無い以上、正面からやり合っても勝ち目は薄い……永夢は、それを痛感していた。
(それでも……!)
「エム?」
ふと、歩いていると声がかけられる。その方を向けば、永夢が目指していた野営テントの入り口で、今では見慣れた金髪の少年がそこに立っていた。
「レヴォル君? どうかしたの?」
エレナたちと共に仮眠をとっていた筈の彼がそこにいることに疑問を覚えながら永夢が聞く。対し、レヴォルは何てことの無いように答えた。
「いや、少し寝付けないんだ。だから気晴らしに外に出てみたんだが……」
「そっか……けど、休めるうちに休んでおいた方がいいよ。夜明けになると厳しい戦いが待っているから」
「それは君にも同じことが言えるんじゃないか? 寝る間も惜しんで患者の為の動くことは素晴らしいけれど、言い出しっぺの君が倒れたらシェインさんに小言を言われてしまうぞ?」
「あ……はは、そうだったね。最初に会った時の質問攻めの時に思い知ったよ」
「ははは」
そう軽口を飛ばし笑い合う二人。しばしそうしていたが、やがて二人共口を噤む。
しばしの静寂。そして永夢は、おもむろに空に浮かぶ月を見上げた。
「……何だか、不思議だな」
「え?」
ポツリと、永夢が呟く。レヴォルはそれを耳にし、聞き返した。
「住んでいる世界が違うのに、こうして見上げる月は僕たちの世界と大して変わらないんだって」
思えば、この世界に来てから、こうして落ち着いて空を見上げることは無かった。そして改めてこの世界の空も、永夢たちが住んでいる世界と変わらないのだと思い知る。
そして、違いは空だけじゃないのだということも。
「……永夢が住んでいる世界には、定められた運命が無いんだったな」
初めて会った日の夜、永夢から語られたのは運命の書が存在していない永夢たちの住まう世界。同じく運命が定められていない空白の書を持つレヴォルたちからすれば、その世界の人々はどのように生き、どのように死んでいくのか、想像もつかない世界。
羨ましいと思っていた。運命の選択肢がある永夢たちの世界を、周りの人たちが自分と同じように生きている、そんな世界が。
その世界に、自分が、そして
「うん。けど、それだけなんだ」
そんな世界で生まれ、生きてきた永夢は、呆気らかんとそう言った。
「運命が決まっていても決まってなくても、その世界で皆一生懸命生きている。どんな運命も自分が後悔のないように生きようと頑張っているこの世界の人たちも、先の見えない未来のために生きている僕たちの世界の人たちも……皆、生きてるんだ」
この世界で懸命に己の運命と向き合って生きる人たちを見てきた。そして、元の世界でも運命を切り開こうとする人たちを見てきた。
その人たちは、皆『生きよう』としていた。
違うようでいて、違わない。どちらの世界も、大して変わらない。運命が決められているか決められていないかの違いでしかない。
「……そう、だな」
レヴォルの脳裏に浮かぶ、最愛の人が自分に向けた儚い微笑み。大切に思っていた少女の健気な姿。一人は海の泡となって消え、一人は寒空の下で凍えた……しかし、それは彼女たちが選んだ運命であり、その時に至るまで、彼女たちは確かに悔いのないように生きて来た。
きっと……想像するしかできないにしても、ひょっとしたら、彼女たちが永夢たちの世界で生まれ育ったとしても、同じような道を辿ったのではないだろうか? そんなことを思ってしまう。
それが、自らの運命を『生きる』ということなのかもしれない。
「……君はすごいな、エム」
「え?」
突然、レヴォルから称賛の言葉を受けて永夢は視線をレヴォルへと戻した。
「病で苦しんでいる人たちのために動いて、それでいて仮面ライダーとしても戦って……たくさんの人の運命を、命を救ってきた。並の人ができることじゃない」
今もなお苦しむ人々のためにドクターとして奔走し、人に仇なす存在が現れれば仮面ライダーとして力を振るう。人々の笑顔のために、何度でも立ち上がる永夢の生き方を、レヴォルは尊敬していた。
「そんな……僕は自分ができることをやろうとしているだけだよ」
恩人に憧れ、努力し、ドクターになることができ、やがて仮面ライダーとなり、そしてここまで来た。それらは全て、永夢自身がやれることをやってきた結果だった。
「そういうレヴォル君こそ。君だって、これまでの旅で多くの想区を救ってきたじゃないか。それこそ、普通はできることじゃないよ」
レヴォルたちが歩んできた旅を、永夢は詳しくは知らない。精々、アリシアたちから話を聞いた程度だ。しかし、この世界に来て、ヴィランと戦い、そしてカオステラーと対峙し、その旅がいかに過酷かを永夢は思い知った。
だからこそ、永夢は初めて会った時と同じようにレヴォルを称賛する。彼らがやってきたことは、立派なことなのだと。
「……確かに、僕たちの旅は過酷だ」
対し、レヴォルは伏し目がちに語る。その顔には、どこか後悔の念が浮かんでいた。
「これまで、たくさんの人たちと出会ってきた。呪いにかけられていながらもいつか結婚する二人や、長い眠りに就きながらも最愛の人によって目覚めることが確約されている姫、そして奇抜な世界に生きる人々……色んな想区の住人と出会って、色んな出来事に遭遇してきた」
だけど……そう区切り、レヴォルは続ける。
「……革命によっていずれ処刑される女王、呪いのせいで両足を切り落として贖罪の道を歩むシスター……報われない恋でやがて泡となって消える姫、寒空の中でマッチの幻影を見ながら永遠の眠りにつく少女……運命の書の筋書きの先に待つ悲劇を、僕たちは見て来た」
ストーリーテラーによって定められた運命を辿った結果、様々な結末を迎える人々がいた。幸せな人生のまま幕を閉じる人や、呪いから解放される運命にある人もいた。
だが、レヴォルはそれ以外の運命……悲惨な結末、悲しい結末を迎える人々がいることを、間近で見て来た。それは、彼が旅に出るよりも前の過去にすでに遭遇している悲劇。
「僕は……こんな運命を作った人間を怨んだ。何で彼らにそんな運命を課したのか。どうしてそんなことができるのかって……僕は、ずっと憤りを感じていたんだ。旅の間も、ずっと」
何故彼女が死ななければいけなかったのか。何故彼女が誰にも手を差し伸べてくれないような運命を背負わせたのか。疑念はやがて怒りへ、苛立ちへと変わる。
「……」
そんな彼に、永夢はかける言葉が見つからない。彼を称賛したつもりが、苦い思い出を呼び起こしたのかと考えると、申し訳なく思えてもくる。
「そして……僕は先日、出会ったんだ。そんな運命を作った人に」
「え……」
運命を作った人……それはまさに神と呼べる人物ではないのかと、永夢の顔が驚愕に染まる。それを見たレヴォルは、苦笑いしながら訂正した。
「いや、多分君が思っているような人じゃないよ。妙な人で、自分のこだわりにはとことん突き詰めるような変わった人だったよ。エレナに執心してるところもあったしね」
「は、はぁ……」
どんな人間なんだそれは、と永夢はツッコみたかったが、レヴォルの話はまだ続いている。故に口を閉ざしておいた。
「彼が、僕の知っている人の運命を作った人間だと知った時、僕は今までにない怒りを感じた。さっき言ったように、どうして彼女たちにそんな運命を背負わせたんだと、感情のままに彼にぶつけた……そんなことを言っても、どうしようもないって、心の内ではわかっていたんだけどな」
それでも、言わなければ気が済まなかった。報われない運命を辿った彼女たちを思うと、レヴォルの怒りは収まらなかった。ただ物語を盛り上げるだけに、彼女たちは死んでいったのか……そう思うと、火に油を注ぐが如く怒りが消えなかった。
「けど、彼が悲しい運命を綴った理由を僕は知った。そして気付いたんだ。彼が、彼なりの信念と思いをもって、物語を作ったんだということに……僕を、理想の読者だと、そう言ってくれた」
彼の描く物語の登場人物でもあったレヴォルの大切な人たちの死を嘆き、憤り、悲しんだ……それこそが、その思いを呼び起こすことこそが、彼が物語を紡ぐ理由なのだと、彼は語った。
彼を罵ったレヴォルを、彼は受け入れた。
「僕の大切な人たちも、きっと、彼の思いを知っていたからこそ、自分の運命を受け入れたんだと思う……悔いのないように生きたんだと、そう思えたんだ」
だからこそ、レヴォルもまた彼の生き方に恥じないよう、自らも生きることを決めた。己の運命を、空白のキャンパスに描くように。
彼の描いた物語の中の彼女たちの生き方に、負けないようにと。
「レヴォル君……」
彼の中にある強い光を、瞳の中に見た永夢。彼が旅の中で得た物を、誇りに思っている……確かに、そう感じ取ることができる強い意思だった。
「……だからこそ、あの男がしようとしていることを止めなければいけない」
そしてその瞳は、強い覚悟の物へと変わる。永夢から聞いた、仮面ライダークロニクルを永遠の物にせんと画策した檀正宗の暴挙。それをこの世界でも同様に広めようとしているあの男を止めなければ、この世界に生きる全ての人々の運命が消えてしまう。
家族の愛を得るために前に歩き始めたシンデレラも、彼女の運命を見届けようとしているフェアリー・ゴッドマザーも……家族と共に平穏に暮らすパン屋の兄妹も。
「うん……その通りだ」
再び挑むことになる悪夢のゲーム、仮面ライダークロニクル。正宗は、この世界でもあらゆる手を使って永夢たちを阻止しようとするだろう。
しかし、永夢は諦めない。かつての仲間たちは、パラドを除いて今ここにはいない。それでも今の彼には、この世界で出会い、共に戦ってきた再編の魔女一行が、レヴォルたちがいる。ハイパームテキが無いという不安はある。しかし、それでもやりようがある筈。
囚われたシンデレラのため、この世界の人たちの運命のため、笑顔のためにも、負けるつもりはない。
「かならず勝とう、エム」
レヴォルは永夢を見据えて右手を差し出す。明日の決戦で背中を預け合う者として、かならず勝つという決意を新たにして。
「うん……絶対に勝つよ、レヴォル君」
微笑むレヴォルに、永夢もまた小さく笑って返す。そして差し出されたその手を、永夢もまたしっかりと掴んだ。
互いの手から確かに伝わる、互いの熱い気持ち。もうじき沈む月明かりのみが、彼らを見守っていた。
そんな二人に呼応するかのように、テントの中で眠るエレナの枕元に置かれた大きな本、『箱庭の王国』もまた、仄かに明滅していることに誰も気付かない。
月は沈み、日が昇る。夜の帳は消え、白い光が地平線から地上を照らす。
決戦の刻がきた。
暇さえあればフォースライザーで一番音声ぴったりのプログライズキー探している作者です。ここまでの読了ありがとうございました。
仮面ライダーゼロワン、最高に面白いですな。仮面ライダー令和ファーストジェネレーション、3回は観に行きましたし。サイクロンライザーも予約したし。
グリムノーツもストーリーが佳境に入りましたし、配信が待ち遠しいですな。とりあえず言えるとしたら、終わらんといてぇ! グリムノーツすっきやねんから終わらんといてぇ! けど闘技場テメェは自重しろい!
そんなこんなで、次回、決戦の刻。お楽しみに! してくれたらいいなぁ!(微妙に弱気)