仮面ライダーエグゼイド ~M in Maerchen World~   作:コッコリリン

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どうもです。投稿です。めっちゃ早いです。けどなっがい。後なんか書いてると時々書き方を忘れてしまいがち。そんな時は読み直してちょこちょこ修正したりします。私ったらずる賢い☆ あ、待って待ってスティングディストピアはやばいアバババババババババババ

そんな感じの18話。ついにクロノスとの対決。あと独自設定もりもり。注意してくだちい。


第18話 絶望のPrologue

 太陽が顔を出し、暗闇を裂くように光が地上を覆っていく。陽光煌めく朝もやの中、太陽の光と建物による影のコントラストで彩られた町並は、昨晩の悲劇が嘘のように美しい。

 

 だがその町は、今や無人。人っ子一人、猫一匹すら見当たらない。あるのは崩れた家々、瓦礫の山。昨晩のヴィランとバグスターによる襲撃の悲惨さを物語る光景。その中には人々の営みの名残だけが残っているのみ。人の気配すら、もはや夜の帳と共に消え失せた。

 

 鳥の囀りだけが響く静寂の町。その中を歩くのは、8人の影。朝もやを振り払うように、真っ直ぐ歩く。彼らは、この想区の住人ではない。うち二人は文字通り住んでいる世界すら違う、本来ならば無関係である筈だった。

 

 だが、二人は無関係だなどと露ほども思ってはいない。この世界を覆う悪夢を取り払うため、決死の覚悟を決めて今、この場にいる。そしてそれは他の6人も同様。

 

 想区の運命を救うため、再編の魔女一行である6人、そして仮面ライダーの二人は、真っ直ぐ、宿敵が待つ城へと歩みを進めて行く。

 

 

 

「……遂に来たか」

 

 目的地である城の正門まで来て、一行は立ち止まる。聳え立つ大きな門を前にして、レヴォルが呟いた。本来ならば王族が通る立派な門が、今ではまるで魔王の城の門にも見える。実質、魔王に等しい人間が中にいるのだから間違ってはいない。

 

 思えば昨晩は、忘れ去られた裏口から侵入したため、正面から乗り込むことはこれが初めてだった。あの時は敵に見つからないよう、隠密性を重視しての侵入だったが……。

 

「……誰も、いないね」

 

「変ね。ここまで静かなのも妙だわ」

 

 エレナとアリシアが周囲を見回しながら呟く。兵士はおろか、ヴィラン、バグスターまでもが見当たらない。あれだけの襲撃があったのだから、待ち伏せがあってもおかしくないと思って、いつでも臨戦態勢に入れるようにはしていた。が、町の中同様、城周辺も同じ有様だった。城の中で待ち構えているのか、とも一行は考えたが、中からも気配が感じない。あまりにも静かすぎる。

 

「……クロノスのことだ。こうやって俺たちが侵入することも、あいつのシナリオの一部なんだと思う」

 

「それか、僕たちのことを侮っているか……かもしれないね」

 

 檀正宗の性格を知るパラドと永夢が言う。ゲームを盛り上げるためならば、どんな手を使うような男だ。昨晩の襲撃も、永夢たちがここまで来たのも、檀正宗の考えているシナリオなのだろう。

 

「チッ……胸糞悪ぃ野郎だ」

 

 檀正宗の所業に一番腹を立てているティムにとって、あの男の掌の上というのが何とも癪に障る。思わず毒づき、舌打ちをする。それを止める者は、今この場にいない。全員が口に出さずとも同じ気持ちであるから故だ。

 

「とにかく、行こう。奴を止めないと」

 

 これ以上の狼藉を許すわけにはいかない。レヴォルが先頭に立ち、正門に手をかける。そして一度チラリと振り返り、仲間たちへ視線を向けた。

 

 体力は十分……とまでは、正直いかない。しかし昨晩の疲れは可能な限り癒したし、傷もフェアリー・ゴッドマザー含めた町の住人たちのおかげで今はない。今この時が、万全の状態であるとも言える。

 

 一刻も早く、クロノスを止め、想区の消滅を防がなければいけない……その思いを一つにした一行には、先に進まないという理由は無い。

 

 レヴォルの視線に、永夢たちは頷く。それをOKと捉えたレヴォルは、再び門へ顔を向け、そして力強く押し開けた。

 

「……案の定、ですねぇ」

 

「ここまで無人だと気味が悪ぃな」

 

 敵の本拠地であるはずの城内に侵入……したにも関わらず、外からも感じなかった通り、人の気配どころか、ヴィラン一匹見当たらない。昨晩侵入した際も兵士は一人も見かけず、結果としてはカオステラーが玉座の間にほとんどの兵士を集めていたが、今回はそれ以上。人一倍気配に敏感なシェインですら、人の生気を感じなかった。ティムとしても軽口の一つでも飛ばしたいところであったが、この異様な状況を前にして一言呟く程度に留めた。

 

 誘われている……そうとしか思えなかった。

 

「……行こう」

 

 罠である可能性が高い。しかしそれでも進まなければいけない。レヴォルを先頭に、静寂の城の中を進んでいく。

 

 やがて一行は、中庭へと辿り着く。昨晩、戦場となった中庭は、木々は倒れ、植木は飛び散り、石畳は穴だらけ。見る者全てを楽しませる景観は損なわれ、見るも無残な状況そのままに残されている。やはり、ここにも誰もいない。

 

 永夢の脳裏に苦い記憶が蘇る。目の前でおめおめとシンデレラをクロノスに攫われ、敗北して逃走せざるをえなかった。

 

(絶対に、エラちゃんを助け出す……!)

 

 改めて決意を固め、永夢はレヴォルたちと共に中庭を突き進む。中庭から中に入れば、玉座の間はすぐそこ。そこに檀正宗がいるという確証はない。しかし、一行は感付いていた。

 

 玉座の間の方面から漂う、異様な気配。カオステラーとはまた違う、肌を刺すような邪悪な雰囲気を。

 

 一行は、玉座の間の前まで来た。扉は昨晩同様、閉じられている。それでも中から発せられる気配はより濃厚となり、レヴォルたちは鳥肌が立った。

 

 誰も、何も言わない。この先に待つ天敵を前にし、覚悟を決めて挑むとすでに決めていた。最早言葉はいらないと、全員共通の思いを抱いていた。

 

 レヴォルが、扉に手をかける。そして、正門と違って勢いよく扉を開いた。

 

 中は変わらず、豪奢な造りの一室。王のみが座ることを許される玉座が鎮座している、この国の中心地とも言える場所。そしてそこは、これから戦場となる……

 

「いない……?」

 

 筈だった。

 

「な、何で? 確かにここから……」

 

 エレナが周りを見回しても、誰もいない。奥まった場所にはポツンと、主なき玉座が収まっている。

 

 それだけだった。他の場所同様、ここも無人。倒すべき敵である檀正宗の姿が、どこにもいない。

 

「一体……どこに」

 

 永夢が檀正宗を探すために一歩、足を踏み出した。

 

 その瞬間だった。

 

 

 

≪STAGE SELECT≫

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

 突如玉座の間に響き渡る重々しい声。同時、永夢たちの周囲の空間が一変する。

 

 足元、壁、調度品、全てがピクセル状となって霧散していく。やがて玉座の間は完全に消えた。

 

 代わりに現れたのは、所々罅割れた石造りの床、円状に立ち並ぶ6本の石柱、周囲を取り囲むように作られた石の階段……否、座席と呼ぶべき物。東京ドーム一つ分程の広さと高さがある円形の広場の中央に、永夢たちは立っていた。天井は無く、先ほどまで晴れ渡っていた空は曇天に覆われている。

 

「こ、ここは……」

 

 レヴォルが周囲を見回し、突如として空間が変わったこと、そして重苦しい空気がより濃密となったことに戸惑う。

 

「ここって……闘技場?」

 

「の、ようだね」

 

 周りの観客席と今立っている場所の広さから、ここが何なのか当たりをつけるアリシア。パーンも同様のことを考えていたらしく、アリシアに同調する。

 

 だが、何故こんなところにいるのかという謎が残る。先ほどまで玉座の間にいた筈なのに……。

 

「パラド……」

 

「ああ……どうやら、奴のゲームエリアに招待されたみたいだな」

 

 そんな中、この場所がどういった場所なのか把握している者たちがいた。

 

 そして、永夢はこの感覚を思い出す。

 

(そうか……檀正宗は言っていた。元々奴は、復活するためのゲームを作っていた。それが何故か、ゲームの要素は消えてこの世界へ迷い込んだ……そう思っていた。けど、違ったんだ)

 

 永夢とパラドは、この空気をずっと感じていた。この世界に飛ばされてから感じていた、この異様な空気。現実と虚構が入り混じったような不思議な感覚。それがここに来て、より濃密となった。

 

 その正体を、永夢は今ようやく掴めた。この感覚は、間違い様がない。

 

 

 

(奴が作ったゲームは、消えてなんかいなかった。この世界と、何らかの原因で融合していたんだ……!)

 

 

 

 異世界とゲームの融合……荒唐無稽で、あまりにもバカげているとしか思えない。しかし、檀正宗がこの世界にいることを含め、この感覚を説明するには、最早そうとしか考えられなかった。

 

「クックックック……」

 

 空間……ゲームエリア内に響き渡る、第三者の笑い声。その声の方へと、全員が一斉に振り返った。

 

 闘技場の上。戦士同士が戦っているのを高い位置で見物するための、高貴な身分の者のみが入ることを許される手すり付きの観覧席。笑い声の主は、自分がここの主であることを示すかのようにそこに立ち、レヴォルたちを見下ろしていた。

 

「ようこそ諸君、我がゲームエリアへ。歓迎するよ」

 

「檀正宗……!」

 

 この事件の首謀者にして、この想区の運命を捻じ曲げようとしている、永夢たちの天敵……檀正宗。倒すべき存在が、家に招いた客に対するような態度で、笑みを浮かべながら永夢たちを迎え入れる。

 

「やはり、君ならば諦めないと思っていたよエグゼイド……こうして私の前に再び姿を現してくれた。実に喜ばしい限りだ」

 

「っ……!」

 

 その言葉の真意を、永夢は悟る。要は、自分のシナリオ通りに動いてくれたのだと、正宗は語っている。人を物としか見ていない思考、目つきは相変わらずであった。

 

「……あら?」

 

 ふと、永夢の後ろでアリシアが手元を見る。そして、それは奇妙な物を見たとばかりに、眉を上げた。

 

「これ、どういうこと……?」

 

「アリシアちゃん?」

 

 エレナがアリシアの様子を見て声をかける。だが話はアリシアを余所に進んでいく。

 

「エラちゃんを……お前が攫った彼女をどこへやった!!」

 

 永夢が正宗に向けて叫ぶ。シンデレラが攫われる時、正宗はゲームエリアへ彼女を連れ去った。ならば、ここに確実にシンデレラがいる。

 

 その言葉を待っていた、と言わんばかりに、より笑みを深くする正宗。やがて黙ったまま頭上を指さした。視線を上へ、正宗が指した先を見る。その先を見て、永夢の目が見開かれる。

 

 正宗の頭上よりも高い位置に聳え立つ、三本の石柱。その左右の柱の頂点にて、悪魔を模した石像が二体、向かい合うようにして設置され、手に持っている鋭い槍が、互いを突き刺そうとしているかのように突き出されている。そして、

 

「エラちゃん!」

 

 その槍の間に挟まれるように、一段階低い中央の石柱の頂点にて、シンデレラが両手を鎖で拘束されていた。

 

 鎖は左右の石像の手に握られているかのように繋がれており、槍の矛先がシンデレラへ向いているのも相まって、まるで罪人を処刑しようとしているかのように見える。さらに彼女に背後に威圧感を放ちながら鎮座している、クロノスの巨大な時計。針は12時の15分前を指している。

 

 思わず永夢がシンデレラの名を叫ぶも、シンデレラは力なく俯くだけで、反応がない。

 

「彼女に……シンデレラに何をしたんだ!!」

 

 反応がないのを見て、最悪の結末を予想したレヴォルが、正宗に噛みつくように叫ぶ。対し、正宗は相変わらず余裕の表情を崩さない。

 

「そう慌てるな、眠っているだけだ。言っただろう? 彼女はゲストだと。ゲストを傷つけるような真似はしない」

 

「……一体、あなたは何を考えている。彼女を、そして我々をどうしようというんだ」

 

 パーンが見上げ、冷静な物言いで正宗に問う。しかしその瞳は怒りで燃えているのが見て取れる。

 

「フッ……それも言った筈だ。攫われたプリンセスを救うため、勇敢な戦士が悪に立ち向かう……実に単純明快、そして王道の中の王道……」

 

 右手を掲げ、正宗は語る。優越感、達成感、そして……侮蔑の瞳。

 

「勇敢な戦士である君たちは、プリンセスを救うために世界の悪、即ちラスボスである私に挑み……そして」

 

 掲げた右手で握り拳を作る。まるで虫を握り潰すかのように。

 

「無残にも……敗北する」

 

 笑う。嗤う。愉悦に顔を歪め、世界は己の意のままであることを告げるよう、笑う。

 

「それこそがプロローグ。悪に敗北した戦士たちの死、広がる絶望! 世界は希望という感染症によって次々と新たなる戦士、即ちプレイヤーが悪に立ち向かっていき、そしてまた散って逝く! さらに散った友人、家族、恋人を取り戻すため、より多くの人間がプレイヤーとなっていく! それこそがっ!!」

 

 

 

―――――――新たなる仮面ライダークロニクルという物語(シナリオ)だ。

 

 

 

「て……テメェ……!」

 

 悍ましい。あまりにも悍ましい筋書きだった。

 

 正宗の目的。それは永夢たちという希望を粉々に打ち砕くことで、この世界に絶望を植え付ける。そして彼らを、仮面ライダークロニクルのプレイヤーとして挑戦権を与えるということだった。

 

 当然、彼らを正宗は排除するだろう。かつての仮面ライダークロニクルと同様、消滅した人間を蘇らせることができるという情報を与えることで、さらに人を呼び集めていく……それが正宗の計画だった。

 

 ティムが、この場にいる仲間たちを代弁するように一人ごちる。

 

「笑えない冗談ですね」

 

「どうして……どうしてそんなことができるの!?」

 

 怒りに正宗を睨むシェイン、憤りを覚えて叫ぶエレナ。永夢もまた、正宗の残虐非道さを目の当りにしてきた者として、当然の如く憤怒に歯を食いしばった。

 

「何でだ……何でこの世界の人々まで!!」

 

 怒りに燃える永夢を、正宗は笑みを消さずに見やる。

 

 その瞳には、哀れみの念が宿っていた。

 

「君は哀れだと思わないか? エグゼイド」

 

「何……?」

 

 突然何を言い出すのか。永夢が思わず疑問符を浮かべる。構わず、正宗は続ける。

 

「この世界の人間は皆、運命の書という台本に縛られて生きている。生きていく中で何が起こるか、そしてどのようにして死ぬか……最初から知っていながら、それに従ったまま老いて、死んでいく」

 

 区切り、正宗は観覧席の手すりに手を乗せた。

 

「この世界は童話を元にした世界。童話の中には悲劇のまま、不運のまま終わる話も少なくない……例えるならば」

 

 目を閉じ、思い浮かべながら正宗は再び口を開いた。

 

「……思い人に添え遂げられずに、結局は泡となって消える人魚姫。寒空の中、誰にも知られることなく幻影を追い求めてひっそりと死ぬマッチ売りの少女」

 

「……っ!?」

 

 挙げられた物語に、レヴォルが激しく反応する。いずれもレヴォルにとっては馴染み深い、そして縁の強い物語。それら物語の登場人物たちと、レヴォルは深い関わりを持っている。

 

 だが、

 

 

 

「何とも……何とも哀れで、無残で、そして意味がないとは思わないか?」

 

 

 

「なっ……!?」

 

 正宗のその言葉に、心がスッと冷たい物が走り、頭が熱くなるのを感じた。

 

「悲恋のまま消える人魚姫も、幻影を見て死ぬマッチ売りの少女も……いずれも運命に縛られた結果の死だ。そんな運命に抗うことなく、受け入れられるような者たちが住まう世界など、何の商品価値もない。くだらない物語だ」

 

「商品価値、ですって……!!」

 

 物語を知り、追い求める者として、アリシアが激昂のあまり声を荒げた。

 

「そんな物語を、この私が意味ある物へと変えてやろう、というのだ。仮面ライダークロニクルという、よりスリリングで夢中になれるゲームの一部として、この世界に広める……そう、この私こそが、運命の管理者となる」

 

 両手を広げ仰々しく語る正宗。そして再び、永夢を見る。

 

「君もこの世界に迷い込んで、考えたことはあるだろう? この世界に、大きな疑問を抱かなかった筈がない……君のような人間は、特にね」

 

「…………」

 

 決めつけられるように言う正宗。永夢は、それを無言のまま聞いていた。

 

 永夢は思う。確かに、運命が生まれた時点から定められたこの世界に生まれ落ちていたら、永夢はどういう人生を歩んでいたのだろうか。

 

 己の運命に抗おうとしたのだろうか。それともそのまま受け入れていたのだろうか。

 

 諦め、失望、そんな思いを変えようともせず、運命の書の通りに生きたのか。

 

 そんな運命を跳ね除けようと、抗い続けていたのか。

 

 そんな“もし”を、考えたくなくとも考えてしまう。その答えは、永夢の中では出てこない。

 

「……お前の言うように、僕は最初、この世界に疑問を持っていた……それは否定できない」

 

 歯を食いしばり、拳を握りしめる。爪が皮に食い込み、血が流れ落ちる。それは正宗の考えがわかってしまったという己に対する怒りか、“もし”を考えてのことか。

 

「だけど」

 

 それでも、今わかっていることはたった一つ。

 

「この世界は……この世界で運命と向き合おうとしている人たちは……抗おうとしている人たちは!!」

 

 義理の母と向き合おうとしてきたシンデレラ、罪の意識と戦おうとするフェアリー・ゴッドマザー……そして、この世界で懸命に生きる人々のためにも。

 

「お前の玩具なんかじゃないっ!!」

 

≪MAXIMUM MIGHTY X!!≫

 

 正宗の思い通りには、絶対にさせない。その思いから来る怒りで叫び、ガシャットを突き出し、起動させた。

 

「……さっきから好き放題言いやがって……!」

 

 パラドもまた、心が繋がっている永夢の怒りを通じ、そしてかつての戦友を手駒にした正宗に向け、叫ぶ。

 

「俺が言えた義理じゃないかもしれない……けど!!」

 

 ガシャットギアデュアルを取り出し、勢いよくゲーマドライバーへ。

 

「命を……弄んでんじゃねぇ!!」

 

≪デュアル・ガシャット!!≫

 

 永夢とパラドの背後に映し出されるゲーム画面。広がる二人のゲームエリアと散らばるエナジーアイテム。

 

「……許さない……!」

 

 そんな中、ポツリ、歯を食いしばりながら呟くレヴォル。かつてない程の怒りが、レヴォルを中から湧き上がってくる。

 

「ソフィア姉ちゃんの……アンナの思いを……あの人の信念を……覚悟を……!!」

 

 ギッと、正宗を睨む。最愛の人の、大切な人の死を、尊敬する人間の物語を、無価値な物だと断言した目の前の男を。

 

 かつてこれまで巡って来た人々の運命を……この男は侮辱した。

 

「お前だけは……絶対に許さない!!」

 

 それ以上の言葉は、最早ない。レヴォルは栞を手に取った。

 

「あなたに、人の運命を決める権利なんかない!!」

 

「人の運命を好き勝手言った挙句、商品価値がないとか、ふざけんじゃないわよ!!」

 

 レヴォルに追従するように、この世界に住まう人々を侮辱した男に対する怒りを燃やし、エレナとアリシアも栞を手に取る。

 

「あん時の借り……ここできっちり返させてもらうぜ!!」

 

「本気の本気で、喧嘩祭りを始めましょうか……!」

 

「ゲームによる運命の管理者などと……そんなことは、絶対に認めるわけにはいかない!!」

 

 ティム、シェイン、パーンもまた、正宗を睨みながら戦闘態勢を整える。誰も彼もが、この場から退くつもりはない。目に闘志を燃やし、正宗と対峙する。

 

 そんな彼らを見て、正宗は含み笑いを一つ。そして愉快さを隠そうともせず、口を開く。

 

「それでこそだ……君たちのその勇敢さこそ、仮面ライダークロニクルを盛り上げるエッセンスだ……!」

 

 そして、懐から取り出したるは、彼が究極のゲームと謳うガシャット。その起動スイッチに指をかけながら、正宗は宣言する。

 

 

 

「さぁ……仮面ライダークロニクルの始まりだ……!」

 

 

 

 悪夢の、絶望の始まりを。

 

≪KAMEN RAIDER CHRONICLE≫

 

「変―――身」

 

 手から放されたガシャットは宙を舞い、正宗は腰のバグルドライバーⅡのAボタンを押す。そしてスロットの中へ、ガシャットは吸い込まれていった。

 

≪ガシャット≫

 

≪バグル・アーップ≫

 

≪今こそ時は、極まれりィィィィィッ!!≫

 

 起動。鳴り響くサウンド。そして正宗と一つとなるパネル。エネルギーを迸らせ、その身を究極の戦士、クロノスへと変えた。

 

 以前と変わらぬ威圧感、貫禄。だが永夢たちは怯まない!

 

「行くぞ、皆!!」

 

「ああ、エム!!」

 

 永夢はガシャットを持つ手を交差させ、パラドは腕で円を描き、そして再編の魔女一行は栞を書に挟む。

 

「「マックス大変身!!」」

 

≪マキシマム・ガシャット!!≫

 

≪ガッチャーン! レベル・マーックス!!≫

 

≪ガッチャーン! マザル・アーップ!!≫

 

≪マキシマム・パワー! X!!≫

 

≪パーフェクトノックアーウト!!≫

 

「「コネクト!!」」

 

 永夢とパラドが共にアクチュエーションレバーを開き、ほぼ同時に変身が完了。頑強なアーマーに身を包んだエグゼイド・マキシマムゲーマーレベル99と、パラドクス・パーフェクトノックアウトゲーマーレベル99、さらにここまで共に戦ってきたヒーローへ姿を変えたレヴォルたちもまた共に並ぶ。

 

「勝負だ、クロノス……!」

 

「フッ……」

 

 エグゼイドが一歩前へ進み出る。クロノスは悠々とエグゼイドたちを見下ろしながら立ち、鼻で笑う。

 

 そして、

 

 

 

「この世界の運命は……俺たちが変える!!」

 

 

 

「やってみるがいい!!」

 

 

 

 駆け出すエグゼイド。それに追従する形で走り出すパラド、レヴォルたち。

 

 

 

 観覧席から飛び上がり、エグゼイドたちの前に立つクロノス。

 

 

 

 想区の、世界の運命を賭けた戦いが、今始まる。

 

 

 

~ 第18話 絶望のPrologue ~

 

 

 

「うおおおおおおおおっ!!」

 

「おりゃああああああ!!」

 

 斥候は、エグゼイドとパラド。エグゼイドの重いパンチ、パラドの強力な斧、それぞれの一撃がクロノスへと迫る!

 

「フンッ!」

 

 それをクロノスは両腕を使って難なく防御。拳と斧を弾き飛ばし、怯んだところをすかさず左右のストレートパンチで吹き飛ばした。

 

「チッ! これならどうだ!!」

 

≪ズ・ガーン!≫

 

 地面を転がり、受け身を取ったパラド。起き上がると同時に得物を斧モードから銃モードへ切り替え、銃口をクロノスへ。

 

「援護します!」

 

 その隣、シェインがタチアナへコネクトし、矢を番えた。

 

「おりゃあ!!」

 

 その間、エグゼイドは距離を離されるも伸縮自在の腕を伸ばし、クロノスへ再び拳を叩きつけんとする。それすらもクロノスは避けるか、或いは弾き返して防がれる。

 

「今だ!!」

 

 エグゼイドの攻撃に気を取られている今がチャンスと、パラドは引き金を引く。シェインもパラドの声を合図に、矢を放った。

 

 弾丸と矢による弾幕。それらは全て、クロノスへと食らいつかんと迫る。

 

「甘い!!」

 

 が、やはりと言うべきか、青い弾丸も矢もクロノスには通じない。次々と放つ弾丸も矢も、全てハエの如く叩き落されていく。

 

 だが、それで終わらない。

 

「甘いのはそっちよ!!」

 

 パラドの隣に立った赤ずきんとなっているアリシアは、砲塔にエネルギーを充填していく。そして砲口を真っ直ぐ、クロノスへ。

 

「喰らえ!」

 

 炸裂音と共に、超強力な砲弾がクロノスへ迫る。が、

 

「フンッ!」

 

 それをクロノスは地面へ叩き落とす。砲弾は地面へ着弾、爆発。爆風が煙と共に舞い上がる。

 

 そして、パラドたちが体勢を立て直す直前、

 

 

 

≪PAUSE≫

 

 

 

≪RE:START≫

 

 

 

≪HIT!≫

 

「ぐぁぁぁっ!」

 

≪HIT!≫

 

「きゃあっ!」

 

≪HIT!≫

 

「くっ……!」

 

 三人同時に強い衝撃を受け、吹き飛ばされた。

 

「フッ」

 

 いつの間にやら、三人の背後に現れたクロノス。鼻で笑いつつ、倒れる三人を一瞥する。

 

「野郎、またしてもポーズか!」

 

 槍を手に、ヴァルト王子となったティムが走る。姉貴分を傷つけた怒りに任せ、クロノス目掛けて槍を突き出す。

 

「おっと」

 

「避けんじゃねえ!!」

 

 連続して槍を突き出していく。時に薙ぎ払い、時に叩きつけるように振り下ろす。それらは全て軽々と避けられ、逆に小突くようにしてカウンターパンチをもらう。

 

「チィッ!」

 

それは盾で防ぐが、衝撃が尋常ではない。盾を持つ手が痺れ始めるが、それに意を返さず、諦めずに猛攻を続ける。

 

「ティム! 一人先走るな!」

 

 クロノスの背後から、パーン扮するラ・ベットが斧を振るう。強力な片手斧による一撃は、寸分違わずクロノスへ……が、軽々と左手で防がれる。

 

「先生!」

 

「私が隙を作る。君はそこを!」

 

 防がれ、今度は身体を逆に回転させて遠心力を乗せる。そのまま再び斧を叩きつけた。

 

「ムッ……!」

 

 今度は軽々とというわけにはいかず、クロノスは吹き飛ぶ。そこをティムは逃さない。

 

「行くぞ!」

 

 書を取り出し、栞を裏返す。一瞬光ったかと思うと、ヴァルト王子の姿は消えた。代わりに現れたるは、紳士な身なりのやせ型の男性。一輪の白薔薇を指したシルクハットを被った彼は、手に持つ長杖を器用に回転させる。

 

 怪盗紳士『アルセーヌ・ルパン』となったティムは、真っ直ぐ、クロノスを見据えつつ、

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

 杖を振るい、そこから5枚のトランプカードを飛ばす。トランプは意思を持っているかのように、クロノスへ迫る。

 

「小賢しい真似を……」

 

 それをクロノスは一笑に付し、手を振るってトランプを破壊し……破裂したトランプによって毒々しい煙幕に包まれた。

 

「何?」

 

 さすがに予想外だったクロノスは、戸惑いの声を上げる。トランプに仕組まれた毒の霧がクロノスを襲うが、仮面ライダーに共通して装備されている『エアフレッシュガード』によって毒の霧は通用しない。だが、十分な目くらましにはなった。

 

「喰らえっ!」

 

 そこをすかさず、エグゼイドのアッパーカットがクロノスの腹部へ炸裂、ガードが間に合わなかったクロノスは、宙へ打ち上げられた。

 

「ぐっ……!」

 

 闘技場の吹き抜けギリギリまで飛ばされたクロノス。それを逃さないエグゼイドではない。

 

「レヴォル!」

 

「ああ!」

 

「エレナ! 行け!」

 

「わかった!!」

 

 エグゼイドはレヴォルに、ダメージから回復したパラドはエレナに向けて。ロミオとなっているレヴォルと、赤の女王となったエレナが駆け出す。

 

 そして、エグゼイドが気持ち姿勢を低くして、両手を地面へ向ける。パラドも同様に同じ体勢を取り、そこへ、

 

「はっ!」

 

「やぁっ!」

 

 エグゼイドの手の上にレヴォルが、パラドの手の上にエレナが乗った。さらに、エグゼイドとパラドがすかさずそのまま両手を上へと、二人を乗せたまま勢いよく持ち上げる!

 

「「おりゃあああ!!」」

 

 仮面ライダーの力と、二人の脚力が合わされ、レヴォルとエレナは天高く舞い上がった。レヴォルは長剣を、エレナは大剣を手に、真っ直ぐクロノスへ。

 

「ぬぅ!」

 

≪ガッチャーン≫

 

「「はぁぁぁぁっ!!」

 

 突き出される剣。その寸前、バグルドライバーⅡをチェーンソーモードにして右手に装着、クロノスは己に迫る刃を防いだ。

 

「まだだ!!」

 

 それで諦めるレヴォルではない。エレナと共に、無数の剣閃を描く。長剣による軽やかにして複雑な斬撃、反対側は、大剣による重い一撃。それら全てがクロノスを攻める。

 

「フンッ!」

 

 それら全てを、クロノスは捌いていく。チェーンソー、長剣、大剣が切り結び、火花を散らす。その間、重力に従って三人は落下を始める。いずれは地面に激突し、クロノスはともかくとして、レヴォルとエレナは大きなダメージを負うことは必須。

 

「「はぁっ!!」」

 

「ぐっ……!」

 

 地上まで後4mといったところ、レヴォルとエレナはクロノスを蹴り飛ばす。飛ばされた先には、

 

「おりゃあああああ!!」

 

 同じ高さまで飛び上がり、身を翻しているエグゼイド。

 

「ぐあっ!?」

 

 宙で回し蹴りを喰らい、観客席の方へ吹き飛ぶクロノス。そのまま観客席を破壊し、土煙を上げながら突っ込んでいった。

 

「っと!」

 

 その間、地面へ落下したレヴォルとエレナを、飛び上がったパラドが二人を抱きかかえる形で救出、無事に二人を地面へ降ろすことに成功した。

 

「すまない、助かった」

 

「ありがとうパラドさん!」

 

「へっ、気にすんなって」

 

 礼を言う二人に軽くそう返すパラド。一方で、土煙によってクロノスの姿が消え、エグゼイドたちは警戒する。

 

「……やったか?」

 

「あ、このおバカ。そういうのは」

 

 ティムが呟くと、シェインが咄嗟に止めようとする。と、その時。

 

 

 

≪キメワザ≫

 

 

 

「っ! みんな下がれ!!」

 

 突如鳴り響く必殺技待機音。エグゼイドが大声で全員に呼びかけた直後、

 

 

 

≪CRITICAL SACRIFICE≫

 

 

 

 土煙を吹き飛ばすように、巨大な丸鋸のような緑のエネルギー刃が飛び出す。全員が左右それぞれに飛び退いたその中央を、エネルギー刃が地面を切り裂きながら通り過ぎた。

 

「うぉぉっ!?」

 

「くっ!」

 

 衝撃で顔を腕で覆う一行。エネルギー刃は地面を削り、一行の背後の石柱を破壊した。

 

 やがてしばらくすると、破壊されて大穴が空いた観客席から、足音を鳴らしながら悠々と現れるクロノスの姿があった。

 

「クククッ……なかなかやるようだな」

 

≪ガッチャーン≫

 

 歩きつつ、ベルトにバグルドライバーⅡを戻す。その姿は、いまだ健在。ダメージなど物ともしていないというのが見て取れる程、余裕が感じられた。

 

「クソッタレ、全然効いちゃいねぇぞ!?」

 

「全く……あの状況で『やったか!?』は禁句でしょうに。何を考えているんですかバカティム」

 

「いやババァそんなこと言ってる場合か!?」

 

 あれだけの攻撃を叩き込んだのに堪えていないことに狼狽えるティムを、シェインがジト目で叱責する。その内容はどこかズレていたが。

 

「……しかし、やはり闇雲に攻めても勝機はない、か」

 

 パーンは冷静に分析する。やはり昨晩、エグゼイドの説明の通り、スペック上ではクロノスが遥かに上のようだった。戦闘能力しかり、防御力しかり。このまま戦っても埒が明かないのはもはや明白。

 

「となると……エムさんのリプログラミングとやらを叩き込むしかありませんね」

 

 言いながら、シェインは栞を裏返してタチアナから酒呑童子へと切り替える。作戦通り、クロノスのポーズを抑えながら、エグゼイドによる攻撃をクロノスに喰らわせるしか方法がない。その為にも、隙を作る必要があった。

 

 どのように攻めるべきか、エグゼイドたちは思案する。しかし、そんな彼らに向けてクロノスはくぐもった笑い声を上げた。

 

「君たちがどのように動くかは興味があるが……それよりも、のんびりしている暇はないぞ?」

 

「何?」

 

 どういう意味だと、レヴォルが問おうとする前に、クロノスは指を指す。その先には、囚われたシンデレラの姿。

 

 と、カチリと長針を一分進める、巨大な時計。12時まで、残り10分となった。

 

「あの時計が示す意味……君たちは考えはしなかったか?」

 

「それって……」

 

 囚われのシンデレラ。進む時計。左右の槍を持った悪魔の像……それらが意味する物。

 

「……まさか!?」

 

 エグゼイドが当たりをつけ、そして驚愕する。すでにそれが正解だとばかりに、クロノスは高らかに笑った。

 

「ハハハハハ! その通り! あの時計が12時を指す前に私を倒さなければ、左右の槍が彼女の身体を刺し貫く。その結果どうなるか……わかるだろう?」

 

 残虐なまでの発想に思い至ったクロノスの思考回路に、一同は慄く。そして同時に、より怒りの炎に油を注いだ。

 

「この、外道! 何でそこまでして!!」

 

 激昂するアリシア。対しクロノスは、しれっと返す。

 

「ゲームには刺激が必要だ。こうしてただ戦い続けるだけでは、プレイヤーはマンネリ感を抱いてしまうのでね」

 

「人の命を天秤にかけてまで、刺激を求めるというのか! お前は!!」

 

 人の命を何とも思っていないとばかりのクロノスに、レヴォルが咆哮する。そして手に剣を握り直す。

 

「クロノス……! お前だけは、絶対に許さない!!」

 

 人の命をかけてまでゲームを盛り上げようとするクロノスに、エグゼイドの怒りのボルテージが上がる。拳を構え、クロノスと再び向かい合った。

 

「フフフ……許せないのならば、早く私を倒すことだな。早くしないと、君たちのプリンセスが串刺しになってしまうぞ?」

 

 観客席から飛び降り、エグゼイドたちの前に立つクロノスは、手首を差し出し、クイクイと動かしてエグゼイドたちを挑発する。だが、無暗に攻めたところで時間を浪費するだけだ。シンデレラの命のタイムリミットは、長くはない。

 

「……一か八か、ですね」

 

「そうだな……行くぞ、シェイン!」

 

「はい!」

 

 駆け出したのは、シェインとパーン。大きく膨れるような形で曲線を描きながら、左右から挟み込む形でクロノスへ肉薄する。

 

「せやぁぁぁぁっ!!」

 

「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

 飛び上がり、炎を纏わせた飛び蹴りを放つシェイン。そして斧に雷のエネルギーを蓄えたまま斧を振りかぶるパーン。どれも喰らえば一たまりもない威力を秘めている。

 

「……愚かな」

 

 呆れたように、クロノスがため息をつく。そして、

 

 

 

≪PAUSE≫

 

 

 

 バグルドライバーⅡのA、Bボタンを押した。

 

 時が止まる。時に捉われたシェインとパーンは、今まさにクロノスに一撃を喰らわせるために互いに宙を飛び上がったまま動きを停止させた。

 

「クロノスの力の前に、君たち“やられ役”は所詮無力」

 

 言って、クロノスはその場で身を翻し、

 

「フンッ!!」

 

≪HIT!≫

 

≪HIT!≫

 

 高速の回転蹴りを、左右から迫る二人に叩き込んだ。

 

 エフェクトが飛び出す中、僅かに動いた二人は再び制止する。

 

「無力な存在は無力なりに、地に這いつくばっているがいい」

 

返答がないことを承知の上で、二人を嘲る。そして、再びA、Bボタンを押した。

 

 

 

≪RE:START≫

 

 

 

「がぁぁぁぁっ!!」

 

「うぁぁぁっ!」

 

 制止の世界が、元に戻る。その瞬間、二人に与えられた回り蹴りの衝撃が襲う。

 

「先生!!」

 

「姐さんっ!!」

 

 アリシアとティムが叫ぶ。そんな中、二人は闘技場の中に聳え立っている石柱へ突っ込んでいき、根本から破壊。二人は瓦礫の山へと沈んでいった。

 

「さて……次は誰が来るのかね?」

 

「んの野郎!!」

 

 ルパンの姿からヴァルト王子へチェンジしたティムが再び駆け出す。さらに、エグゼイドとパラド、レヴォルも追従した。

 

「エレナちゃん、援護よ!」

 

「う、うん!」

 

 アリシアが大砲を、エレナは赤い靴のカーレンへコネクトチェンジし、魔導書を構える。

 

「「うぉぉぉぉぉっ!!」」

 

「「おらぁっ!!」」

 

 ティムとレヴォルの同時突きがクロノスへと吸い込まれるように迫るが、それをクロノスは身を捻って回避。そこへエグゼイドの拳とパラドの斧がすかさず追撃する。

 

「はっ!!」

 

≪ガッチャーン≫

 

 が、身を翻した勢いそのままに、クロノスの回し蹴りが拳と斧を弾き返す。そしてすかさず右手に付け替えたビームガンモードにしたバグルドライバーⅡの銃口を、エグゼイドとパラドへ向けたまま引き金を引いた。

 

「「ぐぁっ……!」」

 

 強い衝撃と痛みが、エグゼイドとパラドを襲い、たまらず二人は吹き飛ばされる。

 

「そこっ!」

 

「いっけぇ!」

 

 そこを着いて、アリシアと砲弾とエレナの魔法陣の光がクロノスを狙う。が、クロノスは右手を軽く掲げ、砲弾と魔法陣を撃ち抜いた。

 

 砲弾が爆炎を上げ、煙幕となる。そして、

 

「「はぁぁぁぁぁっ!!」」

 

 レヴォルとティムが、得物を持って煙幕を突っ切り、疾風のようにクロノスに飛び掛かる!

 

「バカめ!」

 

 が、クロノスはそれを見越して再び身を翻した。

 

「フンッ!」

 

「ガッ!?」

 

「くぅっ!?」

 

 鋭い回し蹴りが二人を襲い、エグゼイドとパラドのように吹き飛ばす。

 

「レヴォル! ティム!」

 

 エレナたちの下へ転がってくるレヴォルとティムを、エレナが助け起こす。エグゼイドとパラドもまた、度重なるダメージを受けて満身創痍の状態になりつつも、どうにか立ち上がった。

 

「く……強い……!」

 

 隙がないばかりか、苛烈な攻撃を繰り出してくる仮面ライダークロノスを前に、悔し気に歯を食いしばるレヴォル。エグゼイドとパラドも同様の仮面ライダーではあるが、相手の方が圧倒的なまでにアドバンテージは上だ。

 

 このままでは、勝てない。誰もがそう思っていた。

 

「さぁ……そろそろ終わりにしてあげよう」

 

 遊びは終わりだと、クロノスは暗にそう言う。そして、そのままポーズをするために、ゆっくりと両手をバグルドライバーⅡへと持って行った。

 

 と、その瞬間、

 

 

 

「「うおおおおおおおおおおおおっ!!!」」

 

「なにっ?」

 

 

 

 瓦礫が吹き飛ぶと同時、雄叫びと共にクロノス目掛けて駆ける二つの影。唐突のことで戸惑うクロノスだったが、それが決定的な隙となった。

 

まず影の一人、酒呑童子のシェインがクロノスの右腕を、左腕をもう一人の影、ラ・ベットのパーンが掴む。そして地に足を着け、力の限り踏ん張った。

 

「シェインちゃん! パーンさん!」

 

「二人とも、無事だったのか!」

 

 エレナとエグゼイドが、喜色の声を上げる。二人ともそこかしこが傷だらけだったが、目の闘志はいまだ消えず、燃えている。

 

「バカなことを……!」

 

 自らの動きを封じたつもりだろうが、クロノスの力の前ではそのようなことは無駄に等しい。そう内心毒づきながら、クロノスは二人を振り払おうとする。

 

 が、動かない。鬼の力をフルに使ったシェインと、ラ・ベットの強靭な獣の力。全神経を、クロノスの動きを止めることだけに使った二人の力は、頑丈な鎖の如し。いかに仮面ライダーの力といえども、ちっとやそっとではびくともしない。

 

「バカな。あれだけのダメージを受けてまで、私の動きを封じたというのか……!」

 

 予想外だとばかりにクロノスの慌てる声を聞き、シェインがしてやったりとばかりにニヤリと笑う。

 

「残念でしたね。あなたは鬼の力を舐めすぎたんですよ」

 

「あなたは窮地に立たされた人間が振り絞る力の強さを、身をもって覚えた方がいい!」

 

 シェインと酒呑童子の鬼の尋常ならざる耐久力、そしてヒーラーにコネクトが可能なパーンの咄嗟の判断による回復。シェインとパーンの、自らを犠牲にしてまでのクロノスへの特攻。そして相手を侮りすぎていたクロノスの迂闊さ。全てが合わさり、こうしてクロノスの動きを完全に封じることに成功した。

 

「今だ、エム君!」

 

「私たちが抑えている間に、あなたの攻撃を!」

 

 抑えながら、二人がエグゼイドに向けて叫ぶ。いまだ藻掻くクロノスと、抑え込むために力むシェインとパーン。いずれ二人の拘束は解かれ、クロノスは解放されるだろう。

 

「わかった!」

 

 故に、エグゼイドは躊躇わない。二人が傷ついてまで作ってくれた隙を、エグゼイドは絶対に逃すつもりはなかった。

 

≪ガッシューン≫

 

 ゲーマドライバーからガシャットを抜く。そして、召喚したガシャコンキースラッシャーのD-ガシャットスロットへ装填。

 

≪マキシマム・ガシャット!≫

 

≪キメワザ!≫

 

 必殺技発動音声が鳴る。そしてエネルギーが、カラフルな稲妻のように視覚化され、ガシャコンキースラッシャーの銃口へ集っていく。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ……!」

 

 真っ直ぐ、拘束されて藻掻くクロノスへ銃口を向ける。照準、タイミング、共によし。

 

「行けぇ! 永夢!」

 

「僕たちの思いを!」

 

「やっちゃえー!」

 

「頼むぜ、お医者さん!」

 

「ぶちかましちゃってぇ!」

 

 パラドが、レヴォルが、エレナが、ティムが、アリシアが、エグゼイドへ声援を送る。皆の思いを、全てをこの一撃に乗せて、

 

「クロノス! これで終わりだ!!」

 

 ガシャコンキースラッシャーの、引き金を引く!

 

 

 

≪MAXIMUM MIGHTY CRITICAL FINISH!!≫

 

 

 

「リプログラミング!!」

 

 ガシャコンキースラッシャーの銃口から、一筋のマゼンタ色の極太の光線。螺旋状の細いエネルギーを纏わせながら、真っ直ぐ、クロノスへ!

 

「ぬぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

 呻き、藻掻くクロノス。絶対に離さないシェインとパーン。その間にも、エグゼイドのリプログラミング光線はクロノスに食いつかんと飛んでいく。

 

(これで……!)

 

 エグゼイドは確信する。避けようがない。今拘束を解かれても、間に合わない。ビームは確実にクロノスに命中する。

 

 勝った――――エグゼイドだけでなく、誰もが、確実な勝利を信じて疑わなかった。

 

 

 

 

「フッ」

 

 

 

 

 その筈だった。

 

 

 

 

 ビームは、寸分違わず命中し、爆発した。そして四散する。

 

 

 

 

「なっ……!?」

 

「な……なん、で……?」

 

 

 

 

 突如として地面から現れた、身の丈以上の巨大な氷の壁が。

 

 

 

 

 当然、クロノスは無傷。五体満足のまま立っている。

 

 

 

 

「今のは、一体……!?」

 

「あれは……」

 

 シェインとパーンが驚愕する。そして、その瞬間に僅かに拘束が緩んだ。

 

 クロノスには、それで十分すぎた。

 

「むぅんっ!!」

 

「ぐぁっ!」

 

「っ……!」

 

 両腕を振り払い、自由になった左右の腕によるワンツーパンチが、シェインとパーンの腹部を襲う。禄にガードもできず、たまらず二人は吹き飛ばされた。

 

「シェインさん! パーンさん!」

 

「なんだ、今のは……あんな技、クロノスは今まで使ってこなかったぞ!?」

 

 レヴォルが駆け寄り、二人を助け起こす。その横で、パラドがありえない事象に狼狽える。

 

 だが、エグゼイドは見覚えがある。今の氷の壁を。それも、つい最近目にしたばかり。

 

「何で、お前が……その力を!?」

 

「クックックック……」

 

 リプログラミングが失敗に終わり、クロノスは心底愉快だとばかりに笑う。両手を後ろに組み、威圧するように、エグゼイドたちを仮面越しから見据える。

 

「まさか、この力を使う羽目になるとはな……諸君の力を侮っていたようだ」

 

 両手を広げ、語り出す。

 

「あの時、私は王妃をバグヴァイザーに吸収した。そして彼女の力をデータ化し、分解し……自分の身に融合させた」

 

「な……何だと!?」

 

 王妃の力を、クロノスは自らの物とした……それが意味することは、ただ一つ。

 

「そうか……だから……!」

 

 合点がいったと、アリシアが叫んだ。そして、懐から愛用している感知計を取り出す。

 

 その針は、カオステラーに反応する針は、真っ直ぐクロノスを指し示していた。

 

「間違いないわ……あいつから、カオステラーの反応がある!!」

 

「そんな……!」

 

 王妃の力……それはカオステラーの力に他ならない。そして、その力と融合したということは、クロノス自身がカオステラーと化しているということに他ならない。

 

「何ということを……まるで、あの人と同じじゃないですか……!」

 

 100年前、数多の人々の運命を奪ってきた、かつてシェインが戦った魔女……彼女と、目の前の男が重なる。

 

「エグゼイド……かつてゲムデウスと一つとなった私を知る君ならば、理解できるだろう?」

 

「……!」

 

 かつての戦いで、クロノスはゲムデウスを自らの身体に取り込み、そしてクロノスとゲムデウス、二つの力でエグゼイドたちを翻弄した。その力は凄まじく、ハイパームテキをもってしても苦戦を強いられた程。

 

 今のクロノスからは、それと似た力が発せられている。そしてその力の意味を悟ると、エグゼイドは仮面の下で顔を強張らせた。

 

「今の私はかつてのあの時とほぼ同等の力を手にしている。君たちの言うカオステラーとやらの力と、クロノスの力……言うなれば、今の私は」

 

 一呼吸。ゆっくりと、右手を掲げていき、

 

 

 

「『カオス・クロノス』……と、呼んでもらおうか」

 

 

 

 そして、エグゼイドたち目掛け、突き出した。

 

「むんっ!!」

 

 呼気と共に何もないクロノスの周囲の空間に、人の頭ほどの大きさの氷の槍がいくつも召喚される。それらは意思を持つように、エグゼイドたち目掛けて飛ぶ!

 

「まずい!」

 

「くっ!」

 

 咄嗟にエグゼイドとパラド、そして盾を持ったティムとパーンが前へ飛び出す。そして、

 

「ぐあああああああああっ!」

 

「あ、ぐ、あぁぁっ……!」

 

「ク、ソッタレェェェェ!」

 

「ぐぅ……!」

 

 仁王立ちとなって頑丈なアーマーで槍を受けるエグゼイドとパラド、そして盾に身を隠しながら防ぐティムとパーン。しかし、凄まじい威力の槍の嵐に、四人の口から苦痛の声が漏れ出る。

 

 やがて嵐が止む。しかし、エグゼイドたちに休憩の時間を与えない。

 

「こういうこともできるぞ?」

 

 再び右手を、エグゼイドたちの頭上へ突き出すように掲げる。すると、エグゼイドたちの頭上を冷気と青い光が集っていく。やがてそれは一瞬光ったかと思うと、3m程の巨大な氷塊となり、エグゼイドたちの上を浮かぶ形で停滞する。

 

「くそっ!」

 

 あの氷塊を落とすつもりかと、エグゼイドは両腕で顔を覆う。が、その瞬間、

 

 

 

≪PAUSE≫

 

 

 

 クロノスがバグルドライバーⅡのボタンを押し、時間を停止させた。

 

「思い知るがいい……」

 

≪ガッチャーン≫

 

 バグルドライバーⅡを右手に装着、ビームガンモードにし、さらにBボタンを押す。

 

≪キメワザ≫

 

「これが世界の支配者の力だ」

 

 必殺技待機音が鳴り響く中、停止した世界の中に囚われているエグゼイドたちへ向けて言い、そして、

 

 

 

≪CRITICAL JUDGMENT≫

 

 

 

 Aボタンを押し、必殺技発動の準備を終える。

 

「はぁっ!」

 

 ビームガンを振るいながら、超威力の光弾を射出。扇状に放たれた光弾は、エグゼイドたちへ、そして宙の氷塊に命中。エグゼイドたちは吹き飛ばされる体勢となり、氷塊は粉々に砕け散る瞬間のまま再び制止。

 

≪ガッチャーン≫

 

「フン……」

 

 嘲笑しつつ、バグルドライバーⅡをベルトに戻し、再びボタンを押した。

 

 

 

≪RE:START≫

 

 

 

 時間が、動き出す。その瞬間、エグゼイドたちはクロノスの必殺技を喰らい、さらには、

 

「うわああああああっ!!」

 

「きゃぁぁぁっ!?」

 

 頭上から、散弾銃の如く降り注ぐ氷の雨。砕け散った氷は鋭利な刃となり、エグゼイドを、パラドを、レヴォルたちを、八つ裂きにせんと襲い掛かった。

 

 光弾と、氷の刃。両方を喰らっては、さすがの仮面ライダーもただでは済まない。たまらず、その場に倒れ込んでしまう。

 

≪ガッシューン≫

 

「うあ、ぁ……」

 

≪ガッシューン≫

 

「くぅっ……クソ……!」

 

 マキシマムゲーマが粒子となって消え、エグゼイドは永夢へ、パラドもまた変身を強制解除された。

 

「く……みんな、大丈夫か……?」

 

 レヴォルたちもまた、コネクトを強制的に解かれてしまい、倒れ伏す。どうにか顔を上げたレヴォルが、仲間たちの安否を確かめるために見回すが……。

 

「うぅ……もう、立てない……」

 

「大丈夫……て、言いてえところだが、よ……」

 

「さすがに……これは、まずいかも、ですね……」

 

「そんな……ここまでだって言うの……?」

 

「クッ……!」

 

 エレナも、ティムも、シェインも、アリシアも、パーンも……全員が、すでに全身傷だらけの満身創痍の状態。手をついて起き上がるのがやっとの、悲惨な状態となっていた。

 

「ククク……これで、詰み、だな」

 

「ク……ロノ、ス……!」

 

 勝者の余裕とばかりに、クロノスが歩み寄ってくる。永夢は地面に手をつき、口から血を流しながらでも立ち上がろうとした。

 

 そんな永夢に、クロノスは両手を広げる。すると、その手に青い光が集っていき、やがて光は物体となってクロノスの手に収まる。

 

 クロノスの両手に現れたのは、水晶のように透き通った剣と盾……それはカオステラーが、永夢たちと対峙した際に使っていた得物そのものであった。

 

「エグゼイド……確かに君は天才ゲーマーとして確かな実力を持っている。そして今、その力を遺憾なく発揮して、こうして私の前に再び立ち塞がった」

 

 剣を永夢へ突き出し、クロノスは語り掛ける。鼻先に冷気を放つ冷たい剣を突きつけられて尚、永夢はクロノスを睨むのをやめない。

 

「だが結局は無駄だった。君の商品価値は、今この瞬間、私に敗れ去る時にある。君が倒れ、そして新たな挑戦者が私の前に現れ、そしてまた次に、また次に……そうして連鎖していくことで、仮面ライダークロニクルは永遠に続いていく……そうして私は、この世界の運命の支配者となる」

 

 クロノスは笑う。立ち向かってきた戦士(永夢)たちを嘲りながら、勝ち誇る。

 

「この世界は、私の手で生まれ変わる。君たちはその礎となるがいい……」

 

 トドメを刺すべく、剣を永夢により突き出す。そして永夢を刺し貫こうとした。

 

 

 

「……ふざ、けるな……!」

 

 

 

「……ふむ?」

 

 が、横からの声にその手は止まる。視線を向ければ、地面を削り取らんばかりに手に力を込め、震えながら立ち上がろうとしているレヴォルの姿。

 

「レ……レヴォル……?」

 

 エレナが、レヴォルの名を呼ぶ。しかし、レヴォルは応えない。

 

「お前が笑った、人魚姫も、マッチ売りの少女も……彼女たちが、どんな思いでその運命を全うしたのか、何も知らないくせに……!」

 

 レヴォルは、我慢ならなかった。最愛の人を思いながら死んだ人魚姫を、寒い空の中で凍えたマッチ売りの少女を、この男は笑った。

 

 意味のない……商品価値のない命だと、笑った。

 

「彼女たちにそんな運命を課した人が、どんな思いで物語を紡いだのか知らないくせに……!」

 

 そして……その運命を綴り、レヴォルを理想の読者と言って消えて行った()の信念を、この男は笑った。

 

 悲劇を紡ぐ意味を知る人の気持ちを、平然と踏みにじった。

 

「お前なんかが……運命の管理者を、名乗るな……!」

 

 震える足で、レヴォルは膝を着く。額から滴り落ちる血が左目に入ろうとも気にしない。ただただ、クロノスを睨みつける。

 

「フン」

 

 そんな彼を、クロノスは鼻で笑った。そして、永夢に突きつけていた剣を放し、踵を返してレヴォルへ歩み寄る。そして、レヴォルの前に立って彼を見下ろした。

 

「どうやら君は、自らが置かれた状況を理解していないようだ……いいだろう」

 

 剣を、レヴォルへ向ける。そして、

 

「君から絶版になるがいい」

 

 死刑宣告を、その場で告げた。

 

「レヴォル……!」

 

「やめ、なさい……!」

 

 エレナが、レヴォルへ手を伸ばす。シェインも苦し気に呻きながら立ち上がろうとするが、身体が言うことを聞かない。

 

「やめ、ろ……!」

 

 永夢が、苦痛に喘ぐ身体を圧して這って進む。レヴォルの前に立とうと、その身を削って前に進む。

 

 そんな彼らを嘲笑うように……実際に嘲笑いながら、クロノスは剣を振り上げる。天に向けて高く掲げられたその美しくも鋭利な刃にかかれば、レヴォルの命は草のように呆気なく刈り取られるだろう。

 

 レヴォルは、逃げない。逃げられないというのもあるが、クロノスに恐れを為していない。自らの命が、彼によって奪われることを覚悟の上で。

 

 永夢は認めない。目の前で、命が奪われることなど、絶対に許容しない。だが、事態は無情にも進んでいく。

 

 ユラリ。クロノスの剣の切っ先が揺れる。今まさに、剣が振り下ろされようとした。

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 永夢は叫ぶ。力のあらん限り、無駄だとわかっていながらも。剣は止まることなく、レヴォルへと吸い込まれていく。

 

 

 

 

「すすすすすすーぱーめが、キュキュキュキュベリエぱわーーーーーー!!」

 

 

 

 

 瞬間、声と轟音が鳴り響いた。

 

「何っ!?」

 

 クロノスの眼前が炸裂。振り下ろされかけた剣は弾かれ、クロノスはレヴォルから一歩後退る。

 

 何が起きたのか、誰もわからない。しかし、それだけで終わらない。

 

 観客席から、何かがでかい音を鳴らしながら駆け下りてくる。その音は耳を劈くような轟音で、何かを吹かすような物だった。

 

「よいしょっとぉい!!」

 

 そして、観客席から何かが飛び出す。縦に長い巨体、それはレヴォルを通り越し、真っ直ぐクロノスへ。

 

「ぐぉっ!?」

 

 凄まじい衝撃、衝突音。たまらずクロノスは弾き飛ばされ、先ほどのシェインとパーンのように石柱へと突っ込んでいき、瓦礫に埋もれてしまった。

 

「な……何だ……!?」

 

 レヴォルが突然の展開についていけず、思わず叫んだ。それはレヴォルだけでなく、永夢たちも同様だった。

 

 クロノスを吹き飛ばした巨体は、甲高い音を鳴らしながら停止。巨体の正体は、前と後ろにタイヤが付けられた、黄色い車体と顔のようなヘッドが特徴の物。

 

 永夢とパラドは、それを知っている。それは永夢たちの世界で言う、『バイク』であると。そのバイク自体も、永夢は何度も世話になった。

 

 そしてそれは、バイクだけではない。

 

「よぉ。随分とノリノリじゃねぇの? 永夢」

 

 バイクに跨り、被っていたヘルメットを外してこちらをニヤリと、悪戯っぽく笑う一人の男。白衣を纏い、胸元には彼のトレードマークでもあるサングラスをかけているその人の名を、永夢は驚愕に彩られた顔で叫んだ。

 

 

 

「き……貴利矢さん!?」

 

 

 

「あ、あれ? もしかして、キュベリエちゃん!?」

 

「あわわわわわわわわわわ」

 

 因みに、貴利矢の後ろで必死に彼の腰にしがみつく形で横座りする女神のような恰好をした女性ことキュベリエの姿を見て、エレナもまた驚愕するも、当のキュベリエはそれどころじゃなく、目から大量の涙を流しながらガクガク震えていた。

 




うーん、正宗さんが外道すぎる……いやでも本家でも飛彩さんの彼女のデータ人質に取って利用したり、パンデミック引き起こしたりしてるからあながち間違いでもないかな。よし、これでいこう!(適当)

あとカオステラーの特性をバグヴァイザーを経由して吸収するというのも独自設定というかありえるかなーと思っての展開。無茶がすぎたらホントすいません。

次回、助っ人参上。ブェーハハハハハハハハハハハ!!!!

追記:あとキュベリエ様のラストの顔、大体こんなん→((((((〇Д〇))))))

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