仮面ライダーエグゼイド ~M in Maerchen World~   作:コッコリリン

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番外編3です。これにて番外編、完結です。最後までどうぞ、お付き合いくださいませ。


番外編3 神と女神と監察医 ~さらばキュベリエ~

 世界を超え、宝生永夢を救うために女神キュベリエの協力の下、童話の世界を旅することとなった檀黎斗と九条貴利矢の二人は、童話を元とした想区を巡り続けていた。

 

 その旅は決して楽ではなく、苦難の連続であり、

 

 

 

 

 

「き、貴様、一体何者だ!?」

 

「私か? 私はぁ……神だぁぁぁぁぁっ!!」

 

≪マ~イティアクショ~ン・X!!≫

 

≪アガッチャ!≫

 

≪デンジャラスゾンビ!!≫

 

「神ぃ! 急に飛び出したと思ったら何やってんだよおい!?」

 

「きゃぁぁぁっ! クロトさんのせいでまたヴィランがぁっ!?」

 

「ヴェハハハハハハ! この世で神は私一人だぁぁぁぁっ!!」

 

「か、神を名乗る不届き者だ! 捕えろぉ!!」

 

「あぁぁぁもう逃げるぞ!」

 

「どうして私がこんな目にぃぃぃ!」

 

「……ジル・ド・レ。あれが、神と呼ばれる存在なのでしょうか」

 

「ジャンヌ、違う。あれは絶対違うぞ」

 

 オルレアンの聖女と呼ばれるジャンヌ・ダルクの想区では、自らを神と名乗ったせいで大混乱になったせいでジャンヌの処刑が滅茶苦茶になってしまったり、

 

 

 

 

 

「いいか君たち。これから私が話すことを一言一句聞き逃さないように。そうすれば君たちは、神に近い頭脳、神の勇気、そして神の心を手に入れられるだろう! 神である私の教えをぉ……ありがたく聴くがいい!!」

 

「はい! 是非とも教えてください!」

 

「ホ、ホントに大丈夫かなぁ……?」

 

『ワタシとしては、神の心というモノがどのようなモノか、かなり興味がアリマス』

 

「ねぇお願い! あの人止めて! このままじゃカカシとライオンとブリキがあの人みたいになっちゃう!」

 

「クロトさーん! お願いですから三人に変なこと教えないでください!!」

 

「なんかもう、ホントごめんな……?」

 

 オズの魔法使いの想区において、想区の主役とされている三人に黎斗が神の教えという名の洗脳を施そうとして危機感を覚えたドロシーが涙ながらに止めようとしたり、

 

 

 

 

 

「へぇ……お前たち、ここが鬼の縄張りだと知って乗り込んできたのかい?」

 

「あぁ、いや、自分ら単なる旅行者なんで。たまたま通りがかっただけですから」

 

「……お前、胡散臭いねぇ……鬼に対してそんな嘘が通用するとでも?」

 

「ちょっとぉぉぉぉ! やばいですよやばいですよ! よりにもよって酒呑童子さんと出くわしちゃいましたよぉ!?」

 

「あ、そうなの? じゃすんません! すぐ出て行くんで!」

 

「逃がすと思っているのかい? 人間風情が」

 

「ほぉ……頭に角生やした程度で粋がってるだけの輩が、神である私を人間風情と呼ぶか……上等ではないかぁ!」

 

「ハッハッハ! 人間が自分を神と呼ぶとは、滑稽だねぇ……けど、喧嘩売ってるってのはハッキリわかったよ……!」

 

「神の力を思い知るがいいッ!」

 

「いやぁぁぁ喧嘩売っちゃったぁぁぁぁそして買っちゃったぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「ったく、悪乗りがすぎるぜ!」

 

 御伽草子の想区において最強の鬼と称される酒呑童子VS仮面ライダーの戦いが繰り広げられたり、

 

 

 

 

 

「さささささ寒っ! 寒すぎんぞこれ!?」

 

「キュ、キュベリエ……早く、なんとかしろ……!」

 

「ごごごごごめめめめめめんなささささささ……」

 

「め、女神ちゃん、歯と歯がかみ合ってなくて言葉んなってねぇぞ……!」

 

「さ、寒い、寒すぎる……このままでは私の貴重な残りライフが無くなってしまう……!」

 

「やべぇ……なんかすっげぇ眠ぃ。ごめん、五分後に起こしてくんない?」

 

「キキキキキキリヤさん寝ちゃダメメメメメメ……!」

 

「あ……母さんが、手招きしている……わかった、今そっちに行くから……」

 

「クロトさささささんまでででででで……!」

 

「ちょっと!? あなたたちなんでそんな薄着でこんな場所にいるの!?」

 

「……ひょっとしなくても、バカなのか?」

 

「バカではない、神だぁぁぁぁぁぁ……!」

 

「そそそそこは譲れないんですねねねねねね……」

 

 雪の女王の想区で吹雪の雪原の真っただ中に投げ出される形となった挙句に凍死しかけていたところを、たまたま通りがかった主人公の少女ゲルダと少年カイの手によって救助されたり、

 

 

 

 

 

「……なぁ」

 

「んー? 何、ルート君?」

 

「何、じゃないだろ。わかってるだろ、あれ」

 

 

 

「ほぉ、学園かぁ……学園ときたら学生の青春、青春といえば恋愛、部活、勉強……そうだ、ときめきクライシスのデータを使って学園物にスポットを当てた作品はどうだろうか? 名づけるとしたら『ときめきハイスクール』! いい、いいぞぉ! これは確実に盛り上がる筈! やはり私の才能は……神だぁぁぁぁぁぁぁっ!! ブェハハハハハハハハハハ!!」

 

 

 

「お前、番長だろ? あれ何とかしろよ。あれのせいで写生、できないんだけど」

 

「メ、メェ~……ファム、あの人怖いのです……」

 

「ってか何だよあいつ、気持ち悪ぃ……矢でも一発撃ち込んでやろうか?」

 

「あ~もう、あの声ウザい、すこぶるウザい……私も一発殴っちゃおうか」

 

「そうね……私も呪い、かけちゃおうかしら……」

 

「だ、ダメだよカオス・赤ずきん! カオス・アリスちゃんも! シャクナさんもやめて!?」

 

「いや~、三人の気持ちは私だってわかるよ? 私だって番長としては何とかしたいなぁって思うよ? いや、ホントに……でもねぇ……」

 

 

 

「あの、風紀委員として不法侵入はホントに見過ごせないんですけれど……」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいホントにごめんなさいすぐ出て行きますから!」

 

「神ぃ!! 行くぞコラぁ!!」

 

「離せぇぇぇぇぇぇ!! 私のクリエイティブな時間を邪魔するなぁぁぁぁぁぁ!! ブゥゥゥゥゥィ!!」

 

 

 

「……あれは流石に関わりたくないわぁ……」

 

 時には想区というよりも全くの別世界にも迷い込んでしまい、童話の登場人物たちが学生となっている学園で黎斗が暴走して周囲がそれを見てドン引きしたり、

 

 

 

 

 その後も、砂漠広がる想区で遭難しかけたり、ハーメルンという街でネズミに追いかけまわされたり、宝島の想区で海賊に襲われたり、

 

 

 

 

 それでも三人は、想区を巡り続けた。

 

 

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……!」

 

「ふぅ……ふぅ……ふぅ……!」

 

「はぁ……はぁ……はぁ……!」

 

 もはや数えるのも面倒になる程、想区を巡りに巡ってきた三人。息も絶え絶え、疲労困憊、体力ボロボロ。動く気力を無くした三人は、地面に座り込んでしまった。

 

「なぁ……女神ちゃん……自分ら、ホントに、永夢のとこっていうか、シンデレラの想区へ辿り着けんのかよ……?」

 

「わ……わかんないです……念じてるんですけど、なんか、辿り着ける気が、しなくなってきちゃいました……」

 

「キュベリエェェェェ……このまま永遠に彷徨い続けるなど、私は御免だぞ……!」

 

「うぅ、すみません……」

 

 もはや怒鳴り散らす余裕すらなくなってしまっても尚、睨めつく視線を送る力はまだある黎斗の文句にも、キュベリエは反論しなくなった。

 

 キュベリエとしても、だんだん自信が無くなってきた。大体、キュベリエとしてもこんな事態は予測していなかった。無論、彼女とて例えこんな事になったとしても、諦めるつもりはなかった……のだが、こうも目的地へ辿り着けないとなると、いよいよ決意が揺らぎそうになってしまう。

 

 大人しく祠で待っていた方がよかったのではないかと思い始めたが、いやそれでは女神としての役割を放棄することになってしまうという、元々責任感の強い彼女の中で葛藤が起き始めていた。

 

「……ところでここはどこだよ」

 

 貴利矢が周りを見回す。今いる場所は、石造りの建築物の中の壁際。東京ドームがすっぽり収まる程の広さと、円状に広がる小さな段がいくつも縦に連なっている。天井は無く、空は曇天に覆われており、太陽の光はない。

 

 見た感じ、イタリアにあるコロッセオを彷彿とさせる闘技場のようにも見える。とすると、あの段はローマ王朝時代にあった剣闘士の殺し合いを見物する観客席、ということか。貴利矢たちがいる場所も、その観客席の一番上の通路だった。

 

 一体全体、ここはどんな想区なのか……貴利矢がキュベリエに聞こうとした。

 

 

 

――――ドォォォォン!

 

 

 

「うぉ!? 何だぁ!?」

 

「ひゃあ!?」

 

 突如轟く爆音。驚愕し、思わず声を上げるキュベリエ。疲労も忘れ、三人は立ち上がって爆音がした方へ、闘技場の中央を見下ろす位置まで走る。

 

 そして……その光景に、三人は絶句する。

 

「あれは!」

 

 まず貴利矢が目に入ったのは、闘技場の中央で機敏に動く巨体。見慣れたマゼンタの頭部と、巨体に描かれた鋭い瞳。その拳を振るう相手は、貴利矢にとっても宿敵とも呼べる、最強にして最悪の敵。

 

 巨体はエグゼイド。敵はクロノス。そしてエグゼイドに加勢するようにして、赤と青の仮面ライダーと、見慣れない六人。合計八人を相手に、クロノスは圧倒的な力をもってあしらっている光景だった。

 

 そして、エグゼイドに変身できるのは、貴利矢が知っている中ではただ一人。

 

「永夢!」

 

「ようやく見つけたぞぉ、永夢ぅぅぅ!!」

 

「あ、もしかしてあれってエレナさん!? エレナさんたちもいたんだ!」

 

 ようやく探し求めていた人物を発見し、歓喜と解放感、安堵によって、思わず顔が綻ぶ三人。だがその顔は、一瞬で焦燥へと変わる。

 

「って、あぁ!? 皆さんが!」

 

 キュベリエが叫ぶ。クロノスがキメワザを放つと同時、頭上にあった氷塊が砕け散ち、エグゼイドたちを襲った故だった。凄まじいダメージを受けたエグゼイドたちは、あまりのダメージで変身を解除されてしまう。

 

「やべぇぞ、おい神!」

 

「わかっている! ここで永夢を失う訳にはいかない!」

 

 見たところ、クロノスは新たな力を手に入れた様子。ただでさえ強大なクロノスがさらに力をつけては、ハイパームテキがない限り勝ち目はない。黎斗はメンテナンスを終えたばかりのハイパームテキを手渡すために、貴利矢と共に駆け出そうとした。

 

「ま、待ってください!」

 

 が、それに待ったをかけるキュベリエ。急ブレーキをかけて軽くつんのめる二人は、何事かとキュベリエに問う前に、キュベリエはある方を指さした。

 

「あれ、見てください!」

 

 指さすその先、クロノスが変身する際に現れる、独特な機構を持つ巨大な時計。その前に聳え立つ三本の柱の中央に、両手を鎖で繋がれて俯く青い髪の少女。そして左右の柱には、処刑人の如く少女へ向けて槍を突きつける悪魔の石像。

 

 時計の長針が一分、重々しい音をたてて進む。もうじき12時ジャストになる……ただそれだけの筈なのに、あの悪魔の石像が何とも嫌な雰囲気を醸し出している。

 

「あの時計と、この状況……もしかして、あの時計が12時を指したら……!」

 

「……そうだとしたら、やべぇな」

 

 キュベリエの憶測は、恐らく間違っていない。何の理由でクロノスはあの少女を磔のように捕えているのかは知らないが、クロノスのことだ、ゲーム関連に決まっている。ゲームを盛り上げるためならば、どのような非道をもやってのける……それがクロノス、檀正宗だ。

 

 そうすると、あの少女をこのままにはしておけない。しかしこのままでは、永夢たちもクロノスの手にかかってしまう。が、どちらを選ぶにしても、どちらかが犠牲になってしまう。

 

 緊迫した状況での、究極の選択……貴利矢がどうすべきか悩んでいる時だった。

 

「あの娘は、私に任せておけ」

 

 そう、黎斗が申し出たことで、貴利矢の目が丸くなる。

 

「……どういう風の吹き回しだ? 神」

 

 黎斗は、決して善人ではない。倫理観が欠如している、悪人と評されるに値する人間だ。そんな彼が、一人の少女を助けようと自ら言い出したのは、貴利矢としても予想外もいいところだった。

 

「フッ、何。奴の思い通りにさせたくないだけだ」

 

 黎斗は、何てことのないように言う。黎斗の言葉は本心で、少女の命は二の次。己が開発したゲームを悪用し、さらにはまたも仮面ライダークロニクルを再開させようとしている父親の思惑通りに行くのが我慢ならない……ならば、少しくらい鼻を明かしたって構わないだろうというのが、黎斗の考えだった。

 

 貴利矢は、黎斗の考えが全てわかる訳ではない……が、黎斗の言葉は本心であるということだけは見抜いた。

 

「……ったく、相変わらずだな」

 

 だが今は、その反発心がありがたかった。ならば少女の件は黎斗に任せる方がいいだろう。

 

「け、けどどうやって……あんなの、すぐには解除できませんよ!?」

 

 鎖は遠目から見ても頑丈そうだ。そんなのをどうするというのか。が、黎斗は涼しい顔を崩さない。

 

「ここはもう、ゲームエリアの中枢だ。ここからならば、私がチートコードを打ち込めば、奴の仕掛けを止められる」

 

 言って、その場に屈み込んでノートPCを取り出し、キーボードを打ち込んでいく。その指の速さはすさまじく、タイピング音が途切れることがない。

 

「……信じてますよ、クロトさん」

 

「愚問だ。私は神だ。神の才能に……不可能はない!」

 

 画面から目を離すことなく、キュベリエにそう答える黎斗。彼ならばやってのける……ここまで来るのに散々振り回されてきたキュベリエだったが、そのおかげで黎斗自身が神の才能と豪語するに値する頭脳を持っていると、キュベリエも理解していた。

 

 ならばキュベリエが今すべきことは、

 

「行くぜ、女神ちゃん!」

 

「はい!」

 

 彼女の友人たちを、救うことだ。

 

≪BAKUSOU BIKE!!≫

 

 貴利矢はガシャットを起動させると、その場にレーザーの姿を模したバイクが光と共に召喚される。貴利矢は素早くバイクのシートに跨った。

 

「女神ちゃん、乗れ!」

 

「はい!」

 

 キュベリエも最早迷わない。貴利矢の腰にしがみつく形で、バイクのシートの後ろ側に飛び乗った。

 

 そして、

 

「うーし、そんじゃこのまま……」

 

「……あれ?」

 

 ふと、キュベリエは疑問に思う。バイクに乗ったのはいいが、ここからどうやって戦場まで行くつもりなのだろうと。

 

 ここで迂回して、どこかで回り込むのだろうか? そう考えた……だが、キュベリエは失念していた。

 

「飛ばすぜぇ!!」

 

 

 

 貴利矢も大概、思い切りがよすぎるということを。

 

 

 

「ちょ、キリヤさん待っ」

 

 嫌な予感がしたキュベリエが呼び止める間もなく、エンジンが煙を上げ、ガスが吹き上がる。そしてタイヤが高速回転し始めると、

 

「ってってばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 キュベリエの悲鳴を残し、観客席を駆け下りていったのであった。

 

 

 

 その後の事は……キュベリエはあまりよく覚えていない。

 

 

 

 

 

――――――

――――

―――

 

 

 

 

 

「ってな感じで、自分らはようやく永夢と合流できたってわけよ」

 

 現在地、CRの医局。貴利矢は回転椅子に座りくつろぎながら、ポッピーピポパポにゲームの世界に入り込んでから永夢を見つけるまでの話をしていた。そして、その苦労の末にこうして無事に永夢を連れて戻って来れた……という形で、話を締めくくる。

 

「へ~、すっごく大変だったんだねぇ」

 

 物語の世界を渡り、たくさん苦労を重ねつつ、やっとの思いで辿り着いた……聞くだけならその旅はどのようなものだったのか実感できないにしても、貴利矢と黎斗、そしてそこで出会った女神キュベリエの苦労は計り知れないということだけは理解できた。

 

「ホンット大変だったんだぜ~? 行く先々で神の野郎が揉め事起こしやがってよ?」

 

 言って、恨みがましい目で黎斗をジロリと見やる。当の黎斗はテーブルに置いたPCを操作し、我関せずと言った風に話を聞き流している。

 

「それは私も同じだ。全く、神である私を囮にするなどと……」

 

「まぁだそのこと根に持ってやがんのかよ……謝ったじゃねぇか」

 

 赤ずきんの想区でのことを持ち出す黎斗に、貴利矢は悪いと思いつつもげんなりした顔で回転椅子の背もたれに顎を乗せた。

 

 そんな貴利矢のことは一切眼中に入れることなく、黎斗はPCを操作しながら考え込む。

 

(しかし……再編というのは凄まじいな。世界そのものを作り替える能力か……)

 

 グリムノーツの世界から脱出する際に使われた、エレナという少女が使った再編の力。その強大さは、黎斗にもわかる程の力だった。

 

(……再編の力……世界を作り替える、ということは、世界を作ることも可能ということか……ん? だとしたら……)

 

 ふと、黎斗の脳にある仮設が思い浮かぶ。

 

(檀正宗が私のゲームを利用して復活するために開発したゲーム……そのゲームが発動した瞬間に合わせ、天文学的確率で、あの再編の力が発揮されたのだとしたら……)

 

 ゲームと世界の融合。それは正宗の意図によるものではなく、全くの偶然で、それこそ奇跡と呼ぶに相応しい程のタイミングで再編の力が発動し、それが合わさったのだとしたら……。

 

(…………まさかな)

 

 バカバカしい、と黎斗はその考えを切り捨てた。荒唐無稽にも程がある。大体、再編の力がどのような物かもわからないし、仮にこの仮説が合っていたところでどうするというのか。すでに正宗のゲームは消滅しており、データの欠片すら残されていない。

 

 もうこの件は、すでに終わっている……故に思考を別に切り替えた。

 

(世界を紡ぎ直し、再編する……つまり作り直すということ。言い換えれば、世界一つを作り出したとも言えるのでは?)

 

 世界という大きな物語を、たった一人の力で書き換える……それこそまさに、神と呼べる所業ではないのか?

 

(……そうか……世界か……!)

 

 そして、黎斗の脳裏にある考えが浮かんだ。

 

 

 

(再編の仕組みを応用すれば、世界を……世界(ゲーム)を自由に作り出すことだって可能なのではないだろうか……!?)

 

 

 

 

 黎斗はゲームクリエイターだ。ゲームを作り出すことが、彼の使命であり、喜びでもあった。そういう意味では、黎斗もまた一人の創造主であるとも言える。

 

 しかし、黎斗の探求心、好奇心、自己顕示欲は底が無い。些細な切っ掛け一つで、彼はゲームを生み出す。

 

 複雑に絡み合うように浮いては消え、消えては浮く発想の数々……やがて、黎斗の脳は導き出した。

 

 

 

 ゲームの中で、世界(ゲーム)(クリエイトす)るという発想を。

 

 

 

(そうだ……ゲームだ。ゲームの中でゲームを作る! そしてやがては、ゲームのように世界を作り直すことだって可能な筈!)

 

 黎斗は歓喜した。そして改めて惚れ惚れした。

 

 己の、神の才能に。

 

「完璧だ……やはり私は……神だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 椅子を蹴って立ち上がり、叫び、狂喜した。このゲームならば、誰もが楽しめる。誰もが夢中になる……そう確信して。

 

「くーろと?」

 

 と、そんな黎斗の湧き上がる熱を冷ますように、ポッピーが黎斗の肩をポンポンと叩く。黎斗もポッピーの声に気付き、軽く咳払いした。

 

「何だ? 私はこれから神聖な時間のための準備を始めるんだ。手短に頼むぞ」

 

 神聖な時間、即ちゲーム作りのこと。黎斗にとってゲーム開発は何よりも大事であり、かつ神聖そのものである。それを邪魔する者は、誰であろうと許しはしないのが黎斗の信条だ。

 

「んーん、すぐ済む話! 永夢のために頑張ってくれて、お疲れ様って言いたくて!」

 

「なんだ、そんなことか。気にすることは無い。この神の才能をもってすれば、天才ゲーマーの一人や二人、朝飯前だ」

 

 天真爛漫なポッピーの笑顔を前に、黎斗は得意げな顔で鼻を鳴らした。

 

「……け・ど」

 

「……あ?」

 

 ぴょんと飛び跳ねるように黎斗の前に立つ。何の意図がわからず、黎斗が眉を上げると、

 

 

 

「ポピペピペナルティー。退場」

 

 

 

 真顔の低い声で、そう告げられた。

 

「……は?」

 

 どういう意味か……それを聞くことはできなかった。何故ならば、

 

「ヴァアアアアアアアアアアアァァァァァァァ……ッ!?」

 

 突き出されたバグヴァイザーⅡの銃口に、黎斗はバグスター粒子となりながら吸い込まれていったせいであった。

 

 シュポン。そんな軽い音をたてて、黎斗はバグヴァイザーⅡに完全吸収される。そして0と1が流れ続けるモニターに黎斗の姿が映し出された。

 

『おい! 何の真似だ!』

 

 黎斗がモニターを叩きながら抗議する。ポッピーはそれを見て、プンプンという擬音がつきそうな怒り顔を黎斗へ向けた。

 

「貴利矢から聞いたよ! あっちで色んな人に迷惑かけた上に、女の子何回も泣かしたんでしょ!? だからお仕置き!」

 

『ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁっ!! 第一、私がいたからこそ永夢は助けられたんだろうがぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

「あぁ、確かにお前の功績はでかいな」

 

 叫ぶ黎斗に、貴利矢が返す。永夢を救助するのに必要なガシャットを作り上げたのも、ゲームエリアによる弊害を突破できたのも、檀正宗の策略を覆すことができたのも、黎斗の力があってこそ。その功績は確かに大きい……が、

 

「けど、それとこれとは話は別~っと」

 

 黎斗が自由になれるのは、永夢を救助するまでの間のみ。それ以上の自由は与えられていない。

 

「とゆーわけで……神は退場! お疲れさ~ん」

 

『九条貴利矢ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 元はと言えばお前がポッピーに告げ口したからだろう!! 出せ!! 私をここから出せぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』

 

 バグヴァイザーⅡの中で喚き、絶叫する黎斗。笑う貴利矢に、呆れるポッピー。哀れ、こうして黎斗は再び監獄へと連れ戻されることとなった。

 

 この場にいる誰もが知らない。顔面崩壊する程に叫ぶ彼が、あの世界で間近で見たエレナの再編をヒントに、新たなゲームを生み出すことを。

 

 そのゲームをさらに発展させ、やがて神の才能を暴走させ、一大事件を巻き起こすことを。

 

 だが、その話は

 

 

 

『出ぁぁぁぁぁせぇぇぇぇぇぇぇぇ!! ブァァァァァァァァァァァァ!!』

 

 

 

 まだずっと……先のお話。

 

 

 

 

 

 

 ―――――See You NEXT GAME

 




番外編、完結です。そしてこれにて、当作品は本当の意味で完結となります。

当作品におけるグリムノーツの裏設定というか真実としては、黎斗の考えが正解です。そしてグリムノーツというタイトルが生まれた原因は、エレナが再編したことでゲームの本質が変化し、そしてタイトルもエレナにとって馴染みのあるグリムノーツに変化した……って、ちょっと無理矢理すぎたかもしれません。けどそんな感じです。



ここまで来るのに、本当に長かった……これもひとえに、多くの読者の皆様が読んでくださったおかげです。

無論、番外編も駆け足すぎたかもしれない等と反省すべき点は多くありますが、これもまた次回に活かして、より精進してまいります。

物語としては終了しましたが、後日おまけとして作品内で書くことのなかった没シーンをいくつか、それと次回作予告を投稿させていただきます。

最後に。仮面ライダーエグゼイドとグリムノーツは、本当に素晴らしい作品です。その両作品をクロスオーバーさせていただいた上、この作品を完結まで書き続けられたことは、私にとっても誇りです。

皆様、本当に長い間ありがとうございました。構想もまだ何も出来ていない企画段階ではありますが、次回作を書くまで、しばしの休息を取らせていただきます。その時、またお会いできればと願いまして……

See You!!
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