ALT16『最前線へ』
小松駅。
アメリカでの騒動からまた二週間ほどが経過し、ソレイユ隊とステラ隊の新たな依頼はザイ最終防衛ラインである日本で発生しつつある、新たなザイの前線基地および確認された空中空母型の撃墜。
特に空中空母を見失えば、ザイの攻撃はアジア圏から更に広がることになる。なんとしても阻止しなければ。
前線基地も以前ルフィナがかく乱し、破壊したものとは比べものにならない規模のものが作られているのだという。
そのブリーフィングを、ビゲンは一足先に日本で聞いていた。ビデオ通話が終わったのを確認し、スマートなスーツ姿に身を包んだビゲンはレストルームへ向かう。
「久々の日本かぁ。グリペン元気かなー?」
鏡を眺めて、跳ねた髪を指でちょいちょいと直しつつ意気揚々と呟く。
髪色をごまかしたりは特にしてない。青藤色の髪は注目を浴びるが、少し特殊な髪色をした輩程度にしか思われていない。最近の髪色事情は、アニマの固有色程度には複雑らしい。
黒いスーツに少しばかり浮く、輝くような色を湛えたロングヘアー。その姿を暫し見つめて、ビゲンはその場を立ち去った。
グリペンの調子を気にかけてはいるが、JA-37-ANMはすでに小松基地入りを果たしている。さすがにドーターを置いてこんな極東には来ない。ただ、基地では検査関係で時間も合わず、更にはブリーフィングを別に行うとあってはグリペンを探す暇もなかった。
全機揃い次第、再び最終確認を行うらしい。
スラックスのポケットから、車のキーを取り出して握る。先に日本に来た幾つかの理由の一つがこれだ。
ロシアで半分乗り捨て同然だった彼女の愛車は、制圧されたソレイユ社からアメリカへ空輸され、修理。どうしても自分の車に乗りたがったビゲンが無理を言って、ドーターと共に日本へ持ち込んだ。
車検は通過、ナンバー取得済み。といっても、任務が終わればまた次の国でライセンスプレートは取得しなおしなのだが。
駐車場に停めた、愛車であるケーニグセグのドアを遠隔で開けてやると周囲からは少なからず驚きの声が漏れた。颯爽と運転席へ乗り込んでエンジン始動。ライノの一件で乗った車とは、一味違った咆哮が周囲に響き、車はゆっくりと走り出した。目指すは航空自衛隊小松基地だ。
□
入構許可証を受け取って車を乗り入れると、滑走路にアプローチを始める四つの機影が少しだけ見えた。ちょうどよく、仲間たちも到着したようだった。
半回転するように開いたドアから降車して、再び自動でドアを閉める。セキュリティもかけて、ビゲンはさも自分のテリトリーであるかのように颯爽とエプロンを目指した。
見慣れたスカイグレイ、カメリアレッドのドーターにバレヌ・ブルー、マリーヌ・ディヴェールのドーターが着陸していくと、小松基地は次々に色彩豊かになっていくようだった。
腕を組みつつ、タキシングする四機を眺めるビゲン。
「お前さんのお仲間を見るのは初めてだな」
気づけば、横にはなまず髭の整備員が立っていて、ビゲンと同じようにドーターを眺めていた。船戸整備員――ほぼドーター専門の整備員だ。通称『フナさん』で、互いに知る顔であるビゲンも『フナ』と呼んでいる。
「なかなか良い奴らよ。リーダーはまだ、安心して任せられないけど」
「オイオイ、そりゃ大丈夫なのか。リーダーに不安があるとか、あり得んだろう」
「ロシアに出来たザイの前線基地に、ほぼ単機で攻め入るような馬鹿よ? 不安にもなるでしょうに」
船戸はその話を聞いて少し髭をいじり、「あの話か」と悩ましげに語った。
日本、特に小松の技術研究本部特別技術研究室、通称『技本』ではザイの最新情報は毎日のように飛び込んでくる。ロシアの前線基地も、もちろん警戒対象に入っていたのだが。
「どこぞの民間軍事企業が、ザイで遊んだ挙句に前線基地を吹き飛ばすとはな。室長も驚いてたぞ。だからこそ、お前さん方にも声がかかったのかもな」
「ま、仕事になるのなら断る理由もないしね。問題は……」
タキシングを終え、駐機されるドーターから視線を移して、ビゲンは格納庫に収められた別なドーターへ振り返った。クリムゾンレッドのグリペンはともかくにして、サンライトイエローのF-15J、エメラルドグリーンのRF-4EJ。彼女にはここのアニマがどれだけの曲者揃いか理解できている。
クフィルはともかく、ルフィナがどう出るか。それは全くの未知数だった。
極東の島国、そして最終防衛ラインに揃うアニマたち。ビゲンのシミュレーションに、ルフィナの制止が加わるまでさして時間はかからなかった。
かなり短いのですが、日本編導入としてこのまま掲載いたします。
今度はレゲーラに乗ってるビゲンさん、しかもスーツ!珍しい!
と、独飛のアニマたち登場はまた次回に持ち越しです。本当にすいません。
また次回もどうかよろしくお願いします。