ガーリー・エアフォース-カラフルアロウズ-   作:鞍月しめじ

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ALT.17『蒼空の覇者』

「Su-35ぉ?」

 

 日本についたソレイユ、ステラのアニマたち。そして遂に独飛のアニマとも合流し、リーダーとしてルフィナが名乗った直後だった。金髪碧眼の少女が、ルフィナを眺めつつ眉をひそめる。

 はん、と心底馬鹿にしたように鼻で笑いつつ。

 

「ロシアって本当に成功したものを大事にするよね。スホーイ27ベースだけで何機あるのかわかんない。どれもこれも同じでしょ? 低速機動性がすごいって、実戦で使えもしない曲芸用じゃん」

「アンタはF-15Jか。アメリカに買わされた戦闘機の改良型でしかない。オリジナリティは無いのかよ」

 

 F-15J-ANMイーグルの売り言葉に買い言葉で口論が始まる。頭を悩ませるソレイユ隊。独飛もまた、一部は同じようだった。代表の一人として出てきていた青年が、イーグルとルフィナの間に割って入る。

 

「よせよ。こんなことしてる場合じゃないだろ? すまん、えっとルフィナか」

「アンタは?」

 

 ルフィナはイーグルに向けていた視線をそのまま青年へ向ける。睨むような視線を受けつつ、青年は名乗る。

 

「鳴谷慧。バービー01、グリペンのパイロットだ」

「前に話したでしょ、グリペンの彼氏よ、彼氏」

 

 ビゲンはからかうような笑みを見せながら、慧を指した。もちろん、話には聞いていた。だがルフィナには、まさか自分と大して年の変わらない見た目の男だとは思っていなかった。

 

「お、おいビゲン!」

「本当のことでしょー」

 

 慧がビゲンに抗議しようとするが、それもまたのらりくらりとかわされる。事実なのだから、とはいっても気恥ずかしいものがあるようで、慧は耳まで真っ赤に染まっていた。

 おい、と声を上げたのはルフィナだった。まだ納得がいっていない。出迎えの挨拶が挑発とはどういう了見なのか、と。

 

「それに関しては、うちのイーグルがすまない。俺は八代通遥、特別技術研究室室長だ。PMCの手も借りたいって依頼を出したのは、他でもない俺だ。突然の無礼を謝罪させてくれ」

「お父様は謝ること無いよ! 次の作戦だって、イーグルがいれば全然問題無いんだから!」 

「前に説明しただろ、手が足りないんだ。お前の実力は理解してるが、それだけじゃ足りん」

 

 とはいえ、と八代通は切り返す。

 

「君たちPMC飛行隊の実力がわからないのも事実だ。実機による戦闘訓練の予定を入れてある、ソレイユ01、どうだ? イーグルとやりあってみる気はないか? さっきの話もあるしな、今回は特別にタイマンで」

 

 八代通の提案は渡りに船だった。上等、とルフィナは答える。

 

「アタシはいつでもいけるぜ。そっちはどうよ、F-15J」

「イーグルだってすぐに行けるよ! どかーんとやっちゃうから!」

「どかーんとやられたら困るんだがな……」

 

 船戸が苦笑しつつ額を掻いた。

 ビゲンもクフィルも、ただただそれに同情するしかない。だが自分のリーダーが嘗められて黙っていられるほど、彼女たちは優しくできていない。ビゲンはルフィナの耳元に口を寄せ、ささやいた。

 

「ステラで機体直してから調子いいんでしょ? 久々に全力でやんなよ」

「全力なんざ出さねーよ。本気で相手にしたら、それこそアイツの実力を認めることになる」

 

 ビゲンにそう吐き捨てて、燃料補給中のSu-35SK-ANMへとルフィナは向かう。イーグルもまた、格納庫からトーイングカーで引き出されようとしていたF-15J-ANMに乗り込んで、準備を始めていた。

 着陸後のままだったこともあって、スカイグレイの輝きはF-15J-ANMより先に発せられた。

 

視覚接続(アイリンク)

 

 ルフィナの言葉に反応して、キャノピーのカメラが一斉に作動する。高解像度カメラは閉鎖空間のコックピットでも、外と然して変わらない綺麗さに映っていた。問題なし。視界の端に、エンジン始動を開始するサンライトイエローのF-15Jが見えた。アニマは能天気な雰囲気でしかなかったが。

 ただ、ルフィナには一種の勘のような、何かがあった。独飛、という名前は何度か耳にしたことがあった。ザイの最終防衛ラインを守り続ける守護者たち。自分たちもそうであるのは間違いないが、V字型に変更され、通常機とは異質な雰囲気を醸し出すテールも、何もかもが只者ではないように見せていた。

 機動はアニマに依らない。いや、飛ばすアニマの性格は出るが、戦闘モードと通常モードでは性質も異なってくるだろう。ルフィナはモニターに表示されたエンジン回転計を確認しつつ、イーグルから、先ほどの態度とは一転して強敵のオーラを感じていた。

 本気など出さない、と宣ったはいいが、もしかするとそうはいかないかもしれない。

 モードをシミュレーションへ。 突貫ではあるが、そのデータを技本のデータベースにつないでおく。

 

「暫く抑えつけられてたからな。相手が強敵なら、それはそれで好都合だ」

 

 タキシング開始。イーグルの到着を待って、離陸する。

 サンライトイエローのドーターはすぐに追いついてきた。パワーはある。ルフィナはまずエンジンパワーを目測で測っていた。

 回すだけ回す、というような飛び方はまるで昔の自分を見ているようだった。いや、もしかすると今も自分はそうなのかもしれない。

 モニターに表示された、自身を囲うような円形の地平線マーカーをぐるりと見まわして、戦闘開始が告げられた。

 

 F-15J-ANMが急激に上昇、視界から消えていく。今日は雲が多く、サンライトイエローの輝きは雲に隠れてすぐに見えなくなった。

 ロックオンアラート、ルフィナは冷静に機体を左バンクさせ、旋回する。続いてミサイルアラートが鳴り響いた。モニターに機体図が表示され、上空から左前方に向かって飛翔していると知らされる。方向が変わり、次は左真横に接近している。

 

「オーケー、ビゲン。わかったよ。全力見せた方が、あのオッサンもわかりやすいだろ!!」

 

 ルフィナは刹那、機体を上下反転させ、高度を落とす。ミサイルアラートは限界まで脅威の接近を知らせている。時間はない。

 チャフフレアを展開、ミサイルがレーダーから逸れていく。続く行動でルフィナはドーターの機首を上げ、その先にいるF-15J-ANMを狙った。その間も上昇を続けていく。

 雲海に飛び込み、さらにその先へ。途中、仮想敵機であるF-15J-ANMとすれ違ったらしい。方向を変え、ルフィナの後を追ってきているようだった。

 すぐさま、今まで封印してきたシステムを開放する。EPCMの応用である電子戦装備。イーグルの周波数やリンクコードはすでに解析できている。あとは、発動するだけだ。

 

「ジャミング開始」

 

 ディセプション・ジャミングが開始される。ドーターのHUDにも『Jamming Start』の表示が出ていた。イーグルの向きが、欺瞞方向へと変わっていく。視界不良の雲の中、レーダーに映っていたところから少し離れた位置に自機を表示すれば、疑いようはない。

 多少手練れでも、見極めるのは簡単ではないだろう。だが、ルフィナはそれで決着することを望んではいなかった。雲海を突き抜け、ジャミングを解く。レーダーの敵機はルフィナを見つけると、瞬く間に高度を上げてくる。

 

「さあ、雲の上なら邪魔者はいねーし……やるか」

 

 前方に現れたサンライトイエローの猛禽へ、スカイグレイのドーターはまっすぐ向かっていく。ヘッドオン、イーグルもそれに応じるかのように真正面から突っ込んでくる。

 交錯する機影、稲妻のようにF-15J-ANMが方向転換すると、Su-35SK-ANMはスケードボードのトリックめいたフラットスピンで転進、正面にF-15特有のインテーク類を捉える。双方が同時にロックオンを開始、ミサイル発射。

 イーグル側は発射してすぐに離脱したが、ルフィナはそのまま直進する。ミサイルは瞬く間に彼我の距離を詰めてくる。金髪のアニマが勝ち誇った顔で鼻を鳴らしているのが目に浮かぶようだった。

 機体をロールさせ、機関砲を放つ。シミュレーション結果はエラー。ルフィナには命中せず、ミサイルは途中で爆発したことになっていた。

 

 呆気にとられたように緩慢な機動を描いたF-15J-ANMへ、Su-35SK-ANMが急速接近する。逃げるイーグル、追うルフィナ――否、彼女は空ではフランカーだ。

 高鳴るエンジン音が共鳴し、左右に揺さぶろうとルフィナは速度を合わせ、オーバーシュートなどしなかった。さらに出力を上げ、今度はあえてF-15J-ANMをオーバーシュート。その前方で一気に機首を上げる。

 コブラ・マニューバ。ロシア機のお家芸。更にクルビットの寸前まで機体を倒し180度反転状態へ、続く機動でロール。一瞬にして再びヘッドオンの状況を作り出したルフィナは、機関砲のトリガーに指をかけた。

 

〈バービー02、戦闘継続不能。状況終了、帰還せよ〉

 

 機体接触寸前で交差する中、事務的な無線が飛んだ。今回はソレイユ01――ルフィナの勝利だった。

 

「手は出し尽くしたからな……。これで負けてたら、仲間に会わす顔がねーよ」

 

 小松基地へ転進しつつ、ルフィナは深いため息をついた。ただ、久々に楽しめた。彼女は妙な高揚感と共に、地上を目指していた。不機嫌そうなサンライトイエローの光を引き連れて。

 

 □

 

 地上で、さっそくルフィナはイーグルに絡まれていた。ズルだとか、イーグルが負けるはずがないだとか、機体から降りるなり詰め寄られていた。

 

「まー今回はアンタの負けだって。ただ、アンタ――強いな。なんとなくそれはわかったよ」

「え? イーグルが? 強い?」

 

 オウム返しに訊き返すイーグル。ルフィナは黙ったまま頷いた。

 ぴくりとイーグルの鼻が動いた。むふふ、と押し殺すように笑っているようだ。

 

「イーグルが強いのは当然だもんね! そっちももっと無駄のない機動をすれば、イーグルまでとはいかなくても強くなれるよ!」

「む……」

「あっはははははは! 図星突かれてやんの、ルフィナ! 空じゃ勝っても、地上じゃ負けたみたいね」

 

 気付けばビゲンがいて、会話を聞いていたらしい彼女はけらけらと大笑いしている。

 ルフィナは半目気味にビゲンを睨みながら。

 

「普段着もしねースーツをかっこつけて着てるやつに、何言われても悔しくねーな」

「あらら? 無関係なところ攻めるのは敗者のやり方よ? あんたもスーツの似合う女になりなさいな、とっととね」

「るっせー。そんな動きにくそうな服着たくもねーよ!」

 

 小松基地に、少女たちの声が響く。それは小松に集う守護者たちの声で、その声はどこか楽しげだった。

 夕暮れに染まる町で、PMC隊の一日は終わりを迎えようとしている。残すはもう一度、しっかりと顔合わせをするだけだ。




今回は二次での定番、オリジナルキャラと原作キャラとのバトルでした。
ただイーグルって弱いわけじゃないんですよね。能天気ってだけで。
実際彼女普通に強い……。

もう一回ルフィナと戦っていたら、おそらく彼女が勝っていたと思います。

ルフィナのコックピットモニターに関してはACE3のCOFFINをそれこそ意識してもらえれば……。あんな感じです。
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