ガーリー・エアフォース-カラフルアロウズ-   作:鞍月しめじ

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ALT.37『デュアルバード』

 小松駅前。決して少なくない人通りの中に、藤色の輝きを持った髪色の少女がそわそわと落ち着かない様子で腕時計を確認していた。

 

「待ち合わせ五分前……お姉さま遅いなぁ」

 

 待ち合わせは正午。小松基地もちょうど昼食の時間帯に差し掛かる辺りに二人は約束をしていた。

 目立つ髪色に、目立つ服装。本人にそのつもりが無くとも、事情を知らぬ一般人が見れば()()()()()ようにも見えるだろう。

 しかし好奇の視線もファルクラムは気にすることなく、ただただ“有象無象”である人間には目もくれずに銀色の輝きが射し込むのを待つ。

 

「わりー……! ま……迷っちまった……!」

 

 声が聴こえたのは背後からだった。

 ファルクラムが振り返ると、膝に手をつき、息を切らせたルフィナがいた。

 相当走ったのか、普通に話をするのも苦しそうだ。

 

「良かった! まだ五分前ですし私はいいですけど、そちらこそ大丈夫ですか?」

 

 心配する一方、悩みに曇っていたファルクラムの表情がどこか晴れやかに変わる。

 

「も、問題ねー――いや、どっか喫茶店とかないか? ファーストフードでもいい。や、休みたい……」

 

 ルフィナは一瞬強がるも、すぐにギブアップしてしまった。

 今にも崩れ落ちそうな彼女へ、ファルクラムは笑顔で右手を差し出す。

 純粋な――今までのように裏を感じさせない、本物の笑顔がそこにはあった。

 

「ありがと、ファルクラム」

 

 しっかりとその手を取り、疲労にぐらつく身体を支えるルフィナ。彼女もまた、同じような明るい笑顔で応える。

 

「……!」

 

 意外な反応に、ファルクラムが目を丸くしつつ頬を染めた。

 

(ずるくないですか、お姉さま。絶対イヤイヤ来ると思ってたのに、なんでそんな眩しい笑顔見せるんですか。ヤバい、私ヤバい……!)

 

 思いがけない反応、右手に感じる感触と温もりにファルクラムの思考が乱れた。

 表情を取り繕うのに必死になる。

 すぐ目の前で、ルフィナは固まってしまったファルクラムに手を振っている。

 

「ハッ! ご、ごめんなさい! どこかお店探しましょうか! たしか近くに何軒かありますよ」

「わりーな。てか、調べてんのか?」

「昨日のうちに、幾つかは。私もここの地理はありませんから、今日はスマホのナビに頼りきりですね」

 

 行きましょう、とファルクラム。

 二人は並んで小松駅から離れた。まだ正午を回って何分も経たない。デートとしてなら、まだまだ時間は充分に残されていた。

 

 □

 

「そういやファルクラム、次の作戦――」

 

 喫茶店で休み始めてすぐ。ルフィナがビジネスな話を持ち出すと、ファルクラムは彼女の口へ人差し指を当てて言葉を遮った。

 

「今はデート中ですよ。仕事の話は禁句です」

「む……悪い。空気読めなかったな」

 

 素直なルフィナ。ファルクラムはそこに違和感を覚えた。

 いつもなら何かしら口では反抗する彼女が、妙に素直だと。

 

「いやに素直ですね? 何かありました?」

 

 少しだけ怪訝そうにファルクラムはルフィナを見つめる。

 

「え? あ、いや……。てか、お前はアタシをなんだと思ってんだよ」

「素直じゃない、優しいリーダーです」

「一言余計だ! バカ!」

 

 ふてくされてそっぽを向いたルフィナ。

 対面に座るファルクラムはその頬へ手を伸ばし、人差し指でつついた。

 

「なんだよ」

 

 ルフィナがファルクラムへ向き直る。頬杖をついて、微笑むファルクラムがそこにいる。

 ロシアではやはり見られなかった、心の底からの笑顔だった。

 

「いーえ! やっぱりお姉さまだなって」

「なんだ、気持ちわりー。アタシはアタシだぞ?」

 

 周囲から刺さる視線は一部察したような目もありつつ、端から見れば仲の良い友人同士か。暖かい視線がいくつか注がれていた。

 

 それから喫茶店を後にした二人。ルフィナは横にいるファルクラムへ視線を配らせると、彼女へ問う。

 

「何処にいく?」

「んー……よかったら、少し見て回りませんか? 次日本にくるの、いつになるか分かりませんし」

「お前、仕事的な話NGじゃなかったの? ……まあ、確かにそうだな。行くか」

「はい!」

 

 二人、再び足並みを揃えたところで着信音がそれを崩した。

 

「わり、アタシだ」

 

 片手を挙げて謝罪しつつ、ルフィナはポケットに入れたスマートフォンの端末を引っ張り出す。

 

(やっぱりお姉さま、スカートよりパンツルック似合うなぁ! でもちゃんと女の子させてみたいし……そうだ、洋服屋行こう!)

 

 じっと手を揃えて待つファルクラム。思考は全く健全的ではないが外から見る分には、にこやかに連れ人を待つ少女だった。充分に。

 

「またかよ……」

 

 ふと憎々しげに画面を見つめるルフィナが呟いた。

 

「何がです?」

「えっ? あ、いや……単なるイタズラだよ。前も来ててさ」

 

 問い掛けに慌てて取り繕ったルフィナへ、懐疑的な視線を投げ掛けるファルクラム。

 しかし、指示がある以外に個人的な部分には意外と触れないファルクラムは言う。

 

「まあ、それなら良いですけど……。メアドとか考えた方がいいですよ?」

「そうだな。……で、どこ行く?」

 

 ルフィナに問われて、藤色の髪色が輝きを気持ち程度に増す。ファルクラムは「待ってました」と言いたげに、前のめり気味にルフィナへ詰め寄って叫ぶ。

 

「服屋に行きましょう。洋服屋です!」

「服ぅ? 替えならあるだろ?」

「いいから行きますよ!」

 

 ぐいぐいとルフィナの腕を引きながら、ファルクラムは鼻息も荒く歩き出す。

 困り果てるルフィナも、仕方なしに付いていく他無かった。

 

 □

 

「なあ、オイ」

 

 心底機嫌悪そうに目を細めたルフィナが、地の底の底から響く唸りのような声色と共に睨む。

 彼女の眼前にいるのはルフィナとは正反対に、目をキラキラと輝かせるファルクラムだ。彼女の目に映るルフィナは今やファルクラムの思う通りにヒラヒラとしたスカートに、あれやこれやと合わされ続けた挙げ句に着せられたきらびやかでカジュアルなジャケットで身を包んでいる。

 普段ルフィナが好む、暗い色で性別を感じさせないものとは真逆だった。

 

「やめてくれって言ったよな、アタシ」

「やーですって返しましたよ? 私」

 

 秒速の反論に、ルフィナが舌を打つ。

 

「着替える」

 

 すっかりいじけたルフィナが、試着室のカーテンを乱暴にひっつかむとファルクラムがそれを止めた。

 

「待って! せめて写真、写真を……!」

「その辺のポップ見てこいよタコ。『写真の撮影はご遠慮ください』だ、ボケナスビ」

 

 ルフィナの罵倒がいよいよ妙な方向に舵を切っていた。

 

「私こんな色の髪ですけど、ナスビはあんまりじゃないです!?」

「うるせーよ。あっち行ってろ、少し怒った」

「素材良いのにぃ……」

「だーから、アタシみたいなガサツなヤツの着る服じゃねーよ。こういうの、ビゲンとかシュペルエタンダールとか……あと、あのヴィゴラスだっけ? ああいうのに似合うヤツだよ」

 

「一回だけもダメですか?」ファルクラムが祈るように懇願するも、問答無用で閉められたカーテンによってそれは拒絶された。

 

「まあ、あんなお姉さまめったに見れないし役得といえば役得よね。あー、でもやっぱり写真くらいは……」

 

 帰る為と店の前で待つファルクラム。日本の風にはまだ慣れない。

 見知らぬ土地に彼女たちはそこそこ長く滞在していた。見知らぬ車が走り、見知らぬ人種が行き交い、そして見知らぬ街と建物がある。

 

(私は、お姉さまが居なかったらどうなってたんだろ)

 

 ファルクラムが夕暮れ時の空を見上げる。楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、気付けばそんな時間だった。

 小松の街が対ザイの最前線だとは微塵も気付かない。ファルクラムは改めて、技本の人間たちの能力に驚かされていた。

 だからこそか、気になっていた。ルフィナという、Su-35SK-ANMのアニマ――フランカーがいなければどうなっていたのか。

 

(そもそも、私は生まれていないか。私は彼女の影、彼女のデータ的バックアップに過ぎなかった。絶えず経験を積んだ“オリジナル”とは違う)

 

 右手を眺め、それを空へ翳す。

 オレンジ色の光が指の間をすり抜けて、ファルクラムの目を突く。

 

(ジュラーヴリクの言うことは多分正しい。あの人はきっと、本当に灯火になれる人)

 

 目を細めて、思案に暮れるファルクラム。

 そんな彼女を再び背後からルフィナが呼んだ。

 

「お、おい。もう行くぞ」

「あ。すみません、少し考えご……と……」

 

 振り返ったファルクラムの語尾が消えていく。

 そこにいたのは、拒絶した筈のスカートルックのルフィナだった。見間違えじゃないか? ファルクラムが頭を振っても、それは変わらなかった。

 

「外なら……写真も撮れるだろ。とにかく行くぞ」

 

 心なしかルフィナの頬が紅い。夕日のイタズラではないとファルクラムには思えている。

 とにかく、想い人からのサプライズにファルクラムの思案は一気に吹き飛んでいた。

 

「お姉さま……わざわざ、買ってきたんですか」

「文句あんのか? 返品してもいいんだぞ?」

「いえ! 着てしまったのでタグも切られて無効です! いえ、無効ということにしてください! ここじゃアレだな……この先にちょっと静かなエリアがあるんですよ、住宅街ですけど……行きましょう!」

「はあ!? いや、ファルクラム手を離して……引っ張るな! 痛い痛い! いてて!」

 

 またテンション最高潮のファルクラムに、半ば無理矢理腕を引かれルフィナは歩き出す。

 着なれないスカートが風にはためく度に、ルフィナは年頃の少女らしい見た目相応に気にする素振りを見せていた。

 

 それから場所を移動して、散々ファルクラムに写真を撮影されたルフィナ。ポーズの指定などもあったが、何一つ応えはしなかった。

 ただでさえ慣れない服装で恥ずかしいのに、ファルクラムを抑えなければ彼女はいよいよレフ板だのと調達しかねない勢いだった。

 

「んー……」

「あんだよ……まだなんかあんのか?」

 

 ちらちらとルフィナを見やるファルクラム。言おうとして言えないという考えが透けるどころか丸見えな様子を見ては、訊ねない訳にはいかなかった。

 

「お姉さま……」

「あ?」

「キスしません?」

 

 後悔した。ルフィナは彼女の発言直後にそう考えると共に、せめてもっと雰囲気のある場所でと考える自分がいることに苛立った。

 そんな自分を殴り倒してやりたいとまで思った。とはいえ、眼前にいる少女――ファルクラムは珍しく真面目だった。からかっている雰囲気ではない。

 前も時折垣間見えた、真面目な想いを告げる彼女の雰囲気があるように見えるのは夕日のイタズラだろうか? それとも、少なからずロシアで散々な目に遭ってから楽しい時間を過ごせていることで、気分が浮わついているのか。

 

「……わかった」

 

 気付いた時には、ルフィナは既にそう答えてしまっていた。

 

「ふえ?」

 

 意外な返答に、ファルクラムが間抜けな声を上げて固まった。

 よもや了承が返ってくるとは、彼女も思っていなかった。

 

(あああ! 私のバカ! こうなるなら、もっと雰囲気のある……てかドラマチックな場所選べよ! やっぱり私ボケナスビなのでは? いやいや、待て落ち着け私)

「行くぞ」

「は?」

 

 ファルクラムが思考を巡らせるよりも早く、ルフィナは唯一ロシアで切ることの無かった横髪を左手でかき上げて顔を近付けていた。

 一瞬。ファルクラムが感じたのは、想い人の吐息とすぐに触れあった唇の感触。夕日に伸ばされた二人の影は、一つに重なりあっていた。

 

「……もうワガママには付き合わねーからな」

「あ、え? はい?」

 

 余韻を感じさせるように薄目を開け、静かに離れるルフィナ。

 混乱するファルクラムが自身の唇に触れる。

 そうする間に、ルフィナは完全にそっぽを向いていた。

 

「あれ? お前ら……」

 

 余韻らしい余韻ではないが浸るファルクラムといじけたように視線を逸らすルフィナを、不意に少年が呼んだ。

 

「あ? お前、鳴谷……」

 

 声に気付いたルフィナが答え、すぐに自身の格好に気が付いてファルクラムの後ろに隠れた。

 

「見るな鳴谷! アタシを見るな!」

「な、なんだ? 何が……」

「そうだ鳴谷! 家! 家、少し貸してくれ!」

「はあ!? 何でだよ!?」

 

 突飛な懇願に、少年――鳴谷慧が叫ぶ。

 全く意味がわからない、と。

 

「頼む! このままじゃ帰れねー!」

「い、いや……なあファルクラム。コイツ一体……」

「あー、そうですねー」

「お前もダメなのかよ……どうしたんだ、お前ら……」

 

 完全に心ここに在らずなファルクラムに必死にしがみつくルフィナ。

 とにかく、理由を訊こう。慧は視線を合わせようとしないルフィナへ問いを投げる。

 

「なんで着替えたいんだよ? 汚れてる訳でもないだろ?」

「この格好が問題なんだ!」

「格好? なにも変じゃないだろ?」

 

 慧が見る上で、ルフィナの見た目には何ら異変はない。むしろ正常も正常だった。

 

「アタシには大問題だ! 頼む! 口裏とか、そういうのはなんでも合わせるよ! なんだったら着替えたらすぐ出てくから!」

 

 ファルクラムの肩越しに手を合わせてまで懇願する女性を見捨てるほど、慧も外道ではなかった。

 幸い、ファルクラムが洋服店の名前が入った袋を持ったままだった。着替えがあるのは事実だと確認するには充分だ。

 

「わかったよ。ただ、もしかすると親戚がいるかもしれないから、その時は頼むぞ」

「任せろ! アタシだって、伊達にずっとカバーネームなんて名乗ってねーからな! 偽装はそこそこ得意だ!」

 

 ファルクラムの肩からサムズアップを見せるルフィナに一抹の不安こそ抱いたものの、慧はルフィナ達を連れて案内を始めた。

 夕日も沈みかけ、辺りの電灯が点り出していた。

 

 □

 

「ふー! やっぱいつもの服が落ち着くよ、サンキューな鳴谷」

「いや、それなら良いけど。そんなにああいう服装しないのか? ルフィナは」

「しないしない! アタシにゃ似合わねーからな」

 

 慧の親戚の家だという民家に、人の気配は無かった。

 皆都合よく出払っていたようで、かなり余裕をもってルフィナは着替えを行えた。

 

「そうだよ。お姉さまのあの格好拝めるなんて、多分ソレイユの本隊にも居ないから」

「そ、そんなにか……あんなに似合ってたのに」

「そりゃあ、お姉さまの為に私がお姉さまに似合い且つお姉さまの良さを最大限に引き出し、そしてお姉さまの良さを打ち消さない服装を選んだんだから」

 

 気付けばファルクラムも帰ってきていた。

 さも当然のように出された麦茶を飲みつつ、彼女は得意気に胸を張る。

 

「それってどうなんだ……」

「暗に『アタシが服に着られるようなのは避けた』って言いてーように聴こえるよ」

 

 麦茶をゆっくり飲みながら、憮然とファルクラムを睨むルフィナ。

 

「あ、あはは。しかし、PMCなんていうから最初身構えてたけどな。お前達も、やっぱり女の子なんだな」

「よせよ鳴谷、戦闘機相手に」

「ま、彼はグリペンと深い関係みたいだし常識で語るだけムダですよ」

「変人みたいに言うなよ……ずっと同じ戦場を潜り抜けて、アイツの良いところも悪いところも見つけて……なんていうか、お前らアニマも人間と同じだって分かってるんだ」

「ほーかい。まあ、アタシらはいっちまえば渡り鳥さ。他のヤツらとはそこが違う。この依頼が終わればさよならだし、次は敵かもしれない。覚えときなよ、ジャパニーズ」

 

 コップの中の麦茶を飲み干すと、ルフィナは立ち上がる。

 そろそろ家を出ようとしたまさにその時、玄関の開く音がした。

 

『ただいまー。慧、帰ってるの? なんか靴多いんだけどー?』

 

 慧の顔が見る見るうちに青ざめる。

 

明華(ミンホア)だ! ヤバイ、もう上がってきた! 頼むぞ、ルフィナ!」

「最初の言い訳はそっちから切り出しな。アンタのキャスティングに合わせて切り替えてやる。ファルクラムも、麦茶の礼だ……乗ってやれよ」

「勿論です、お姉さま」

 

 どすどすと床を踏みつける音がする。

 次第に近寄ってきたそれは、扉をやや乱暴に開いた。

 

「けーいー? 話は聞いたからあたしも諦めたんだけど。また知らない女の子を連れ込むなんて、いーい度胸よねぇ?」

「違うんだよ、明華! バイト先の後輩でさ、色々仕事で悩んでたらしくて……」

 

 訝しげにルフィナ達を見つめる少女。明華というらしいその少女に、ルフィナは語った。

 

「ごめんなさい。あまり長居するつもりじゃなかったんですけど、最近色々失敗が多くて……」

「センパイ、職場だとスゴく頼れるんです。けど、気付いたら世間話の方に行っちゃって……」

 

 あはは、と苦笑交じりにファルクラムが語る。

 あまりの変わり様に、慧はその心中で驚いていた。今まで渦巻いていた雰囲気が消えていた。

 ルフィナの強気な口調も、ファルクラムのルフィナへ抱く熱も全て消え失せている。

 

「へー。……慧に変なことされなかった?」

「は!? 流石にそれはあんまりだろう!?」

「はい、慧は黙ってる!」

 

 びしり、と明華に指差される慧。

 ルフィナは慌てたように両手を振って否定した。

 

「とんでもないです! 私の話をこんなに聴いてもらえるなんて思わなかったので、凄く助かりました!」

「本当ですね。私たち、もう帰りますから大丈夫ですよ。あまりセンパイを責めないでくださいね」

 

 買い物袋を手に、ファルクラムはルフィナを連れ立って玄関へ向かう。

 

「玄関先まで見送ってくる! すぐ戻る!」

「夕飯の支度しちゃうから、戻ったら手伝ってよ?」

「おう!」

 

 慧が駆け足ぎみに居間を出る。

 ルフィナたちはもう靴を履いて挨拶を済ませた所だった。

 

「……驚いたよ。キャラ、ガラッと変わるな」

 

 明華が食事の支度を始めた音を聞きつつ、慧は背後を気にしながら囁いた。

 

「まーな。言ったろ? 慣れてるって。ビゲンはもっとスゲーけどな」

「そういうこと。明日もよろしく、鳴谷慧センパイ」

「おう。明日な、二人とも」

 

 慧が見送る中で、二人は手を振りつつ扉を閉める。

 外はすっかり夜の帳が下りていた。確かに長居し過ぎたかもしれない、とルフィナたちは考える。

 

「帰るぞ、ファルクラム」

「ええ。なんだかあっという間でしたし、あの姿のお姉さまを独占出来なかったのは悔しいですが……」

 

 夜の小松の空を見上げ、ファルクラムが呟く。

 

「まあ、また忙しくなるんですからアリでした」

「そうだな……。頼んだぜ、ファルクラム」

 

 肩に手を載せ微笑むルフィナ。ファルクラムは街灯の灯りなど比にならない明るさで応える。

 

「はい! お姉さまの命とあらば、どこまでもっ!」




デュアルバード、戦闘機を鳥に例えたタイトルです。
決して某オンラインゲームの武器でも武器迷彩でもないですよ?

今回で、平和は見納めかな……しばらくは。

文中に『深い関係』という文が出てきますが、スマホのイタズラから『不快感慧』というミスを同じ場所で三回やらかしました。
慧に恨みでもあるのかしら、この機種。
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