ガーリー・エアフォース-カラフルアロウズ-   作:鞍月しめじ

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ALT.39『ヘリオス』

 しっかりと色付き、人の行き交う格納庫。

 そこにSu-35SK-ANMフランカーこと、ルフィナの姿があった。

 見渡してみれば見覚えのない場所。だが、行き交う整備員のジャケットには自身の所属するPMC『ソレイユ』のロゴがあった。

 

「なんだ、こりゃ……」

 

 出入りした記憶の無い場所。どれだけ首を捻り考えたところで、答えなど出なかった。

 先程から視界に入り込む異形の戦闘機へ意識を向ける。上反角付きのカナード翼が良く見えた。

 角張った前進翼にも見覚えがある。先程まで空にあった機体、YR-29――その原型だろう。

 シトロンミストの塗装はなく、通常のロービジ塗装。垂直尾翼はNASAトリコロール風で、カラフルに塗られている。

 

「これがアイツか……」

 

 まだドーターではないのだろう。柔らかな曲線を描く機首から胴体を遡ると、クリアキャノピーが後部ヒンジで開かれている。

 

(イマイチすっきりしねーが、要するにここは過去のソレイユ本社か?)

 

 順応が早いのも困りもの。しかし格納庫にいる関係者は、明らかに場から浮いているルフィナに目もくれず通過していく。まるで彼女などいないかのように。

 ルフィナの見ているものがヘリオスのデータならば、それもまだ納得は出来た。

 アニマとは戦闘機の魂である。ならば、『Y-1』時代の記憶があってもおかしいものではない。

 

『よう、聞いたか。カールのヤツ』

『ああ。コイツのテストパイロット、名乗り出たってな。こんな訳の分かんない機体になぁ……死ぬかもしれんぜ、いよいよ』

 

 整備員の会話が聴こえてきた。Y-1の評判はあまりいいものではなかったらしい。

 ルフィナは腕を組みつつ、談笑する整備員の話に耳を傾けた。

 

『そういやよ、肝心のアニマは? スホイの35SKで作れそうなんだろ?』

 

 自身の話だ。ルフィナの身体がぴくりと震えた。

 

『いんや、あまり芳しくないらしい。だからY-1も平行なんだ』

『アニマなんかに頼り出したら終わりだぜ……』

『あの米軍でも上手く行ってないらしいからな。民間で成功なんてしたら、国から圧かかって俺たちゃ食いっぱぐれちまうかもしれねぇ』

『再就職先探さなきゃかもなぁ』

 

 大きな笑い声と反対に、ルフィナは唇を噛み締める。

 何年前かなど知る由もないが、元々のアニマに対する反応などこんなものだ。分かってはいたが、悔しかった。

 

「結局、上手くいったのはアタシの方だったのか」

 

 誰一人気付かない、単なる過去の映像を見るだけ。だが、ルフィナの記憶には残される。

 

「他になんか無いのか」

 

 格納庫の扉は開いている。だが景色がない。本来そこから見えるであろうものは無く、白いもやのようなものが視界を塞いでいた。

『出るな』というものにも見えたが、ルフィナはゆっくりと、もやに手を伸ばす。

 

「うわ……気味悪いな……」

 

 ずず、ともやに手が飲み込まれていく。もしその先が無ければ? 何かに巻き込まれば、現実の自分は目が覚めるのか?

 過る不安は、今も戦っている味方の姿がかき消してくれた。早く何かを探さなければ。なんでもいい、ヘリオスを止める手段を見つけなければと。ルフィナはもやの中へ進んでいった。

 

「ん?」

 

 もやの先は、慌ただしい滑走路だった。

 先程格納庫にあった筈のY-1試作戦闘機が滑走路にあって、救急車が停まっている。

 ソレイユのジャケットを着た人間たちが機体の周りに集まって騒いでいた。

 

「……」

 

 担架に載せられた人物には、すでに生気はなかった。状況に反して、救急隊員の仕事もゆっくりとしている。

 既にその主が死んでいる、と理解するのに然して時間は要さなかった。

 

『オートパイロット無かったら墜落だったって?』

 

 スタッフの一人が口を開いた。

 

『機動試験で一気にとんでもないGが掛かったらしい。一回目は応答あったが、二回目にはな……』

『ひでえ……』

『いくら対ザイ用って言っても、限度があるだろ。限度が……』

『こんなの見せられるくらいなら、アニマに賭けるぜ俺は』

 

 また日が進んだらしい。Y-1は飛行試験中に事故を起こし、それは瞬く間に本社中に広まった。

 少なくとも、ルフィナにはそう思えた。

 

「キツいな……こりゃあ」

 

 ぽつりと呟き、機体を取り巻く人々から離れる。

 Y-1はスタッフらの反応とは正反対に、威風堂々と鎮座している。まるで自らのすさまじさを見せつけるように。

 

 ぱきり。

 不意に“世界”が妙な音を立てて止まった。

 空も風も、人も。時ですら止まった。

 

「なんだ?」

 

 出口など無い。ただルフィナはその世界に取り残される。

 頭を締め付けるような痛みが不意に走り、彼女は地面に崩れ落ちた。

 耳鳴りに似た音の中に、囁くような言葉が入っていた。

 

『勝手に見ないで』

「くっ……ヘリオスか……? お前がやったのか!?」

 

 叫んでも反応はない。頭痛が収まってきたのを見計らって立ち上がるが、やはり覚醒する手段がない。

 足掻こうにも何も出来ない。先程可能だったような移動も出来そうに無い。

 

(くそっ! ヘリオスの方にアクセスがバレたな……。プロテクトか何か掛けられたんだ、このままじゃ多分こっちが潰される)

 

 何もかもが止まった世界で足掻くルフィナ。

 次第に焦りが出始める。絶望感が自身を塗り潰し始めた。

 

「何が『任せな』だよ……。ちくしょう、こんなとこで――」

「なーに諦めてんの、バカ娘」

 

 ルフィナの弱音を、聞き覚えのある声が遮った。

 何も動いていない世界で、暖かな手が肩に乗せられた。

 停止した世界に、ヘルメスブルーの輝きが射し込む。

 

「ビゲン、お前……!?」

「ついさっき目が覚めたの。ハルカに頼んでドーターにだけ繋がったわ」

 

 ヘルメスブルーのアニマ、JA-37-ANMビゲンは自らの手を握り締めつつ語る。

 調子を確かめるように動くと、彼女は「うん」と一人納得したように頷いた。

 

「どうやってここに?」

「分かんない。ルフィナへ通信を繋いだら、ここに飛ばされたわ。でも何となく分かった、これがアンタの見る“世界”ね」

「……そうだったんだけどな」

 

 ルフィナは後ろへ振り返る。

 止まっていた筈の人々は動いていて、いつの間にか散り散りになっていた。

 

「あれ……?」

「今なら分かる。二人分の演算に増えて、ヘリオス側のプロテクトも超えられたんじゃない? 要するに、アンタ一人いい格好は出来ないってこと」

「……都合いいな」

 

 呆れたように笑うルフィナへ、ビゲンは笑顔で返す。

 

「そうよ。心象空間なんて、常に都合良く出来てるの。とにかく、もっと進むわよルフィナ」

 

 手を差し伸べるビゲン。その手を、ルフィナはしっかりと握り締めた。

 世界は闇に染まり、そして再び光に包まれる。

 

 

 今度はビゲンと揃って格納庫に戻されていた。

 Y-1のある格納庫だが、整備員たちの距離は気持ち程度に離れて見えた。まるで忌避するかのように、誰もそこにある戦闘機には触ろうとしない。

 

『そういや、JA-37はどうなんだ。フランカーなんかより、よっぽど上手くいきそうなんだろ』

『フランカーもいい感じらしい。このまま行けば、この死神ともおさらばできるぜ』

 

 整備員の一人が、Y-1を親指で指し示した。

 

『やめて』

『全くだ……もう二人死んだ。次の“死刑”は誰になるんだろうな。賭けねーか?』

『やめて……』

『バカ! 流石にそんなゲス野郎じゃないぞ、俺は』

 

 整備員の話の合間に、少女の声が紛れていた。

 ビゲンへ振り返るルフィナ。ビゲンも頷いて返す。

 

「今アタシがいるのは、ヘリオスの記憶だよな」

「そうね。私もスウェーデンにいた記憶はあるつもりだし、もしこれが正しいデータなら……」

 

 二人は佇むY-1の機首を見上げる。

 照明に照らされる機体は、どこか塗装がくすんでいるようだった。

 

「存在が否定されるのを、無理矢理聴かされる気分か……」

「いい気分じゃないわね」

 

 ため息を漏らすルフィナ。そのまま天井を見上げるが、照明が消えていく。

 闇が降り注いでくる。世界がまた黒に染まった。

 

「どうだったかしら」

 

 少女の声に、ルフィナとビゲンが反応する。慌てて振り返った先には、シトロンミストのロングヘアーを揺らす少女がいた。

 

「見るなって言ったのに。見ちゃったのね」

 

 哀しげに笑う少女――YR-29-ANMヘリオス。

 真っ暗な世界で、小さな灯りが揺れる。

 

「貴方には分からないでしょう。作っておいて『死神』だと、乗るのを『死刑』だと言われる気持ち」

 

 ルフィナはヘリオスを睨みつつ、はっきりと頷く。『分かるわけはない』と告げる。

 

「わかんねーよ。アタシはアンタじゃないからな。けどよ、アンタがアタシに見せなかった記憶――カールってパイロットは、そうだったのか?」

「……!」

 

 ヘリオスの視線が動揺に揺れ動いた。

 ビゲンはひとまず場を静観しつつ、腕を組む。

 

「最初から不気味がられるのは分かる。アタシもそうだろうしな。だけど、最初に死んだパイロット……カールって人間は、そうだったのか? 最初から『嫌い』って感情はないだろ」

「関係ない。人間はみんな自分勝手で――」

 

 闇に染まっていた景色に、Y-1のコックピットが映し出された。映写機で壁を映したように、フィルムめいて再生されるのは明らかに過去の記憶のそれだった。

 

『明日は飛行試験だとさ。頼むぜ、Y-1。良いトコ見せて、皆の評判変えてやらなきゃな』

「やめて……」

『今はみーんなボロカスに言ってやがる。だから、明日着陸した時には拍手喝采で出迎えさせてやろう』

「やめろ」

 

 ヘリオスの制止も無視して、記憶は再生され続ける。

 パイロットとおぼしき男は計器を軽く撫でると、シートに深く腰掛け直した。

 

『お前なら人間でもザイを倒せるんだろ。手伝ってくれよな、Y-1』

「やめろッ!」

 

 ヘリオスの怒声が映像をようやく止めた。それからは、まるで溢れる水のようにヘリオスは叫び続けた。

 

「都合のいい映像に差し替えるな! この男だって、突然乗せられただけのなんでも無いパイロット! 最後には恨んで死んでいった!」

「恨み言なんて言う前に死んでるさッ! みんな、コックピットで死んでいった。そうだろ?」

「そうよ。みんな死んだわ。誰一人不平不満言わずに、みんな『ザイを倒せる』と信じて死んだの!」

 

「チェック」ビゲンが不意に言葉を挟んだ。

 かつん、と彼女の靴が鳴る。

 

「不満を吐かないで死にたがる人間なんて、自殺志願者だけでしょうに。ソレイユのスタッフデータには何回も触ったけれど、そんなヤバイ人間雇うようには見えなかったわ。金にならないしね、そんなの」

「データなんて、改竄できるわ。幾らでも」

 

 ビゲンを睨み、ヘリオスは語る。

 

「みんなそう、都合良く書き換えるのよ。自分が操りやすいように、弱いところを狙って」

「お前はどうなんだ」

 

「私?」ルフィナの問いに、ヘリオスが返す。

 スカートを揺らし、一転して楽しそうに笑っていた。

 

「私は人間を利用しているの。同じ目標を提示し、同じ目標へ向いたと思わせて」

「じゃあ訊くぞ。アンタの雇い主、なんて言ってたんだ」

「ソレイユを乗っ取る。近い内に、本社の襲撃も――」

 

「いいや」ルフィナがかぶりを振った。

 

「奴等は金の事しか考えてない。突き詰めて人間の単純な欲求さ」

「関係ない。私は奴等と一緒にソレイユを破壊する! ああ、Su-35SK-ANM……今貴方がアクセスしているのは私の記憶。なら、これを見せてあげる」

 

 再び、記憶の再生が始まる。

 今度はルフィナにもビゲンにも見覚えのある建物の中だった。

 暗闇に激しい銃火がちらつく。血が流れ、オペレーターたちは亡骸に銃弾を叩き込んでいった。

 

(ソレイユ、ロシア飛行場……。あの襲撃にヘリオスも居たのね)

 

 映像を眺めつつ、ビゲンは苦虫を噛み潰したような表情を見せる。

 

『ヘリオス、コイツだ。あの整備員……間違いない』

 

 映像に向けて、バラクラバに暗視ゴーグルという不気味な出で立ちの男がピストルを差し出しながら語る。

 口元が塞がっているためか、声も籠っていて余計に気味が悪く映る。

 

『お前の悪口を叩いたのはまずコイツだ、好きなだけ撃ち込め』

 

 驚愕に染まる表情に、ヘリオスは静かに銃口を向ける。

 

『まっ――』

 

 整備員は声を上げようとした。助けを求めようとして、16発分の銃弾を受けて絶命した。

 

『何名かは退社したが、中にまだいるぞ。楽しみにしとけよ』

 

 弾切れのピストルを眺めるように視界が動く。それから整備員の亡骸を一瞥し、クーデター軍の背中をゆっくりと歩いて追っていく。

 

「私も復讐したわ。たくさん」

「……悪趣味だな」

「意外と驚かないのね。私が見られるデータとしては、精神崩壊級のダメージを受けたようだったと……そうあった気がしたのに」

「まあ……気分は良くない。でも、アタシはもう背負ってくって決めた。過去に縛られたアンタとは違う、引き摺ってでも前に進むと決めた」

 

 つかつかとルフィナはヘリオスへ詰め寄り、右手を振り上げた。

 頬を張るつもりの一撃は、何処からか聴こえた声に止められる。

 

『ヘリオスではこんなものか……。まさか日本のエアフォースと、現用機体ベースのドーターにここまで時間が掛かるとは』

「なに? なんの声?」

 

 戸惑うヘリオス。ルフィナも辺りを見渡して、だがすぐに気づいた。

 

「ああ。機体に繋がったままではあるから、無線そのまま入ってくるのか……」

「そういうシステムだったの? アンタ……」

「いや、だってアニマって機体のアビオニクスそのものだろ。これがアニマの精神の中――つまり、システム上での話なら理論的に有り得なくはない。……締まらねーけど」

 

 肩を竦めるルフィナに、呆れぎみのビゲン。だが、ヘリオスだけは深刻そうに虚空を睨む。

 

『ソレイユ隊、驚いたよ。まさかヘリオスのデータにアクセスしてくるとは』

「これ、アタシのことか」

「当たり前でしょ。返事できないの?」

「現実じゃ意識無いからな。データとして受ける分にはいいが、返すのはムリだよ」

「文字データは!?」

「そこまでリソース回せるか! 今はヘリオスに弾き出されないようにするだけで精一杯だっつーの!」

 

「つっ――かえねぇ!」ビゲンが珍しく声を張り上げたところで、ヘリオスの姿がかき消えた。

 周囲をくまなく探しても、その姿はない。

 

『どういうこと?』

 

 今度は虚空からヘリオスの声が聴こえる。どうやらルフィナへの対抗を止めたらしい。

 

『要するに、ソレイユ01を雇い入れたいってことだよ。ヘリオス』

「なんか勝手に雇われる事になってるわよ、アンタ」

 

 ビゲンが呆れきったようなため息と共にルフィナへ問うが、今度はルフィナの姿がない。

 

「あー、そう。分かったわよ。私も上がるから待ってなさいよ!」

 

 ビゲンの叫びと共に、世界は光の奔流に呑み込まれて消えた。

 

 □

 

「あぶねー。燃料は……よし」

 

 覚醒したルフィナ。すぐさまレーダーチェック、燃料チェックを行い異状が無いかを確認した。

 幸い、ハック前と状況は変わっていない。ルフィナ含め12機のアニマたちと、ヘリオスという敵対アニマとドーターの一機。

 

〈ヘリオスのFCSをロックした。ソレイユ01、彼女を撃墜してくれないか。勿論、金は払おう〉

 

 先程の空間で聴こえた声が、今度はちゃんとした無線としてルフィナの鼓膜を叩く。

 

「なんで撃墜する必要がある。ヘリオスも連れて帰ればいい」

〈UAVが……〉

 

 グリペンの声が割り込む。

 ルフィナがモニターを見渡せば、まるで揚力を失った紙飛行機のようにひらひらと落ちていくUAVが視界に入る。

 ヘリオスも攻撃を仕掛けてこなかった。

 

〈出資者が納得しないんだよ。また新しくアニマを雇いました、では〉

「……なるほどな」

〈01? 何をするつもりですか、フランカー〉

 

 クフィルのその前方を飛んでいたSu-35SK-ANMが急激に速度を増していく。

 すぐさまに反転し、翼下に吊り下げた使わずじまいのミサイルを打ち出す。

 

〈……!〉

「わりーな、ヘリオス……!」

 

 空中で炸裂したミサイル。被弾したヘリオスの機体は煙を上げ、高度を下げていく。

 空がざわめいた。だが、間違った判断ではない。ヘリオスは敵勢力にある『兵器』であり、無力化することはミスではない。

 問題なのは、ソレイユの総意として『撃墜しない』としていたルフィナ本人が撃墜したこと。

 しかし、ミサイルが残した爆炎を掻き分けてシトロンミストの前進翼機はほぼそのままの状態で姿を見せる。

 

〈いや、待って! まだ飛んでる! お姉さまは彼女を殺してない!〉

 

 MiG-35-ANMが機体を翻し、ゆらゆらと飛行するYR-29-ANMの傍へ下降する。

 自動消火などは行われたらしい。煙の帯を引きながらも、異形の機体はまだその空に在った。

 

「オイ、ヘリオスは落としたぞ。暫く悪さは出来ない」

〈ああ……それが君だったな、ソレイユ01。まあいい、ヘリオスが活動不能になればな。近い内に連絡する、いい返事を期待するよ〉

 

 無線が切られる。

 ルフィナもまたヘリオスの傍へ機体を寄せ、操縦の一部を受け持った。

 

「どうして落とさなかったの……。途中でミサイルを自爆させなければ、致命弾だったのに」

 

 ヘリオスは疲れきった表情で、傍らを飛行するスカイグレイのドーターに視線を配らせる。

 FCSはロックされたまま。ここで転じて攻撃することは出来ないし、今まで抑え込んでいた記憶を無理に引き出され、精神的にもヘリオスは限界だった。

 

〈お前を連れて帰るってそう決めたからだよ。異論は許さない。仮にあるなら――〉

 

 前方からヘルメスブルーのドーターが接近し、機体を反転させた。続いてカメリアレッドのクフィルが並ぶ。

 さらにアイリスのMiG-35-ANM、レイヴンブラックのF-4X-ANMにコメットブルーのJ-10-ANMが周囲を囲む。

 そこへステラのF-14D-ANM、そしてシュペルエタンダールまでも加わり、9機もの大編隊が瞬く間に完成した。

 それを先導するのは航空自衛隊、小松基地のアニマたち。後ろを受け持ったのは、米海軍の誇るアニマ、F/A-18E-ANMだ。

 

〈――文句があるなら、コイツら全員今すぐ納得させろ。異論は?〉

「……無理よ。――今の私には、それを行う気力すらないわ。操縦を預ける……撃墜するなら、お好きに」

 

 意識を失うヘリオス。操縦はオートパイロットに切り替わり、揺れたYR-29-ANMをルフィナたちが支えた。

 

 小松基地に降り立つ13機もの戦闘機は瞬く間に地域の噂に持ち上がり、その中心で輝くシトロンミストの異形の戦闘機はソーシャルネットを一晩中騒がせることになるが、それは別な話である。




まさかめでたしではあるまいな?

って、まだ話あるし、第二幕もあるのでご安心下さい。
ちょっと書いてるうちにずれちゃったせいで、ライノ問題少し引きずりそうですがまだまだ続きます。
そう簡単にガリエアからは手を引かんぜ……。
かわいい! かっこいい!
こんないい世界があるものか。
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