仮面ライダー×仮面ライダー斬月〜緑の仮面〜   作:メタカイザー

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1話

遠くない場所、どこかの国…

その地下に作られた不気味な基地(アジト)の三つの手術台の上に、三人の男たちが横たわっていた。

その三つの手術台の中心にいた男が、ゆっくりと目を開き、半裸の体を起こす。

 

「目覚めたか…?」

 

暗がりから聞こえるがらついた声の主は、ゆっくりとその白銀の体を現し、起き上がった男をその異形の目でしな定めるように見つめた。

 

「どうだ?生まれ変わった気分は?」

「…ああ、最高さ。あんた達には感謝してるよ。」

「その体を与えた対価のために、これから貴様は我々のために働くのだ!」

 

白銀の異形はジュラルミンケースを男に手渡し、男はロックを解いてケースを開く。

そこには…ストローに似たチューブとコップに似た装飾が目を惹く真紅のベルトと、メロンを象ったような翡翠の錠前が収められていた…

男は嫉妬心を抱いた瞳で、ケースを強く握りしめる。

 

「これで…これで貴様に勝てる…目にもの見せてやる…首を洗って待っていろ…!」

 

ここは沢芽市と呼ばれる、何度もとても大きな戦いの舞台となったとある小さな街…

 

そこに自らの罪の贖罪のため、力を取り戻し戦い続ける一人の翡翠の戦士と、全てを救うために禁断の果実を手に入れ、始まりの男となって地球去った戦士の大切な姉である女性が、街一番のケーキショップで話し合う姿があった

 

「温泉旅行…ですか?」

「ええ!商店街の福引きで偶然!しかもペアなんですよ!…でも迷惑ですよね…貴虎さん、外国から帰ってきたばかりで、またいつ日本を発つかわからないのに…」

「…いえ、構いませんよ。実は少し、休養を取ろうと思っていたところだったんです。私でよければ、是非。」

「本当ですか!?よかった〜!じゃあ、今日からもう支度しちゃいますね!」

 

女性は心躍っていた。

翡翠の戦士もまた、自らが属していた組織の犠牲となった国で起きた戦いの疲れと傷を癒し、ほんの少しでも安らげる時間を得ることができるという安堵と、また自分を助けてくれた彼への感謝…そしてこの女性と楽しい時間を共有できる喜びを感じていたのだ。

 

しかし翡翠の戦士はまだ知らなかったのである。

自分たちを待ち受けている偶然という名の悪夢に…

 

そしてここはとあるまだ寒さの残るとある町…一人の男の姿がそこにあった。

年齢は五十代から60代に達しているように見えるが、しっかりとした力強いその姿と気迫が、男が並の人間ではないことを示している。

男はその鋭い戦士の眼差しで周囲を見回すと、ただならぬ気配を感じ取る。

 

「やはり…ここに奴等が…」

 

その時、子供達の遊ぶ声が耳に届いた。

男は警戒を解き、声がした方を向いてみると、高い石垣の上に登っている兄を心配そうに見ている弟の姿が

 

「兄ちゃん危ないよ〜!」

「平気平気〜…あっ!?」

 

しかし、兄は足を滑らせてしまい、石垣から落下してしまう。

 

「ああああっ!?」

「兄ちゃーーーん!!」

 

頭から落ちていく兄と、泣きそうな声で叫ぶ弟…

男はまるで空を跳ねるバッタのように素早くジャンプし、間一髪受け止める。

そして兄を降ろすと、兄弟は抱き合って泣き始めた。

 

「ええーん!怖かったよー!」

「ええーん!兄ちゃーん!」

 

大泣きする兄弟の姿を微笑ましく見守りながら、男はその大きく、優しい両手で二人の頭を撫でる。

そして…まるで全てを青く包み込む大空のような笑顔と優しさで、二人に警告するのであった。

 

「こら君達、高いところから飛んだり、危ないことするなよ!」

 

 

全ての糸が絡み合い、新しい戦いの幕が開く。

 

これは世界を絶えず蝕む悪意に導かれるようにして集った、二人の緑の仮面を纏いし戦士の物語…

 

 

第1話

 

これは、呉島貴虎がトルキア共和国から帰国し、2ヶ月ほどの時間が経った頃の出来事である。

 

かつてユグドラシルコーポレーションが行なった大規模な実験の場となり、全てを焦土と化された悲劇の国で行われた因縁の戦いで、精神的にも肉体的にも疲労がピークに達していた貴虎は、禁断の果実を手に地球を去った仮面ライダー鎧武・葛葉絋太の姉であり、自身の心許せる相談相手でもある女性、葛葉晶と共に、大型連休を過ごすために東北地方にある有名な温泉街へと向かうバスの中にいた。

 

「わぁ〜!みてください貴虎さん!温泉宿があんなにたくさん!」

 

晶はまるで子供のように目を輝かせながら、温泉独特の匂いと、懐かしい気配漂うたくさんの温泉宿の姿に興奮している様子だった。

 

貴虎はそんな晶の様子に苦笑しながら、嗜めるように口を開く。

 

「晶さん、あまり大きな声を出すと、悪目立ちしてしまいますよ。」

「あっ…ごめんなさい…つい興奮しすぎちゃうの…悪い癖ですよね。」

「はは、でも確かに、中々見ることができない、落ち着いた景色だ。」

 

禁断の果実を巡る戦い、メガヘクスの侵略、狗道供界による歪んだ人類救済計画と言った三度もの巨大な戦いの舞台となり、未だ復興の目処も立たない沢芽市…

そして先日八年ぶりに訪れた、焦土と化した国家の地下において、貴族達のおぞましい野望と、最も哀しい形で「変わらない」まま「変わって」しまった親友との決着の場となってしまったトルキア共和国…

 

豊かな自然の緑に囲まれたこの東北の温泉街の大地は、世界を蝕む悪意と歪んだ人間達の欲望と戦い続ける貴虎の心に安らぎをもたらしていた。

プロジェクト・アークという大罪を犯しかけた罪の贖罪のため、世界中の復興計画を担う中心人物として、そして未だ世界に暗躍するユグドラシルの残党や人々の自由と平和を脅かす者たちと戦い続けるアーマードライダー…仮面ライダー斬月として世界を駆ける貴虎は、安息など自分には必要ないし、相応しくもないと考えていた。

しかし、トルキアの…鎮宮雅仁の一件は流石に応えた。

だから晶の誘いに素直に応え、東北の大地に足を運んだのである。

 

「ところで、もうすぐ私達が泊まる旅館に着きますね!」

「ええ、予定だと、あと二十分ほどで。」

「着いたら荷物を置いて、すぐ温泉行きましょうね!ああ…早く温泉入りたいなぁ♪」

「ふう、晶さん。」

「あらいけない、また私ったら…」

「ははは。」

 

二人を運ぶバスは雄大な大地の下に敷かれたアスファルトの上をディーゼルエンジンの音とともに進んでいく。

その影で見つめる、殺意を込めた眼差しに気づかずに…

 

「…本来ならば計画が成功し、万全の準備が出来次第始末に向かう予定だった…だがまさか…まさか貴様の方から、よりによってこの地にで向いてくるとはな!」

 

軍服にも似たアーミーグリーンの衣服に身を包んだその男は、黒い革手袋に隠れた右手を強く握りしめる。

手からは鋼を握り締めたような音がミシミシと鳴り響いた。

 

「待っていろ…あらゆる手を使い…必ず貴様を料理してやる…!」

 

やがて温泉旅館についた貴虎と晶は、指定された部屋に荷物を置き、早速温泉へと向かった。

もう三十代近いのに、無邪気さを失わず温泉を楽しみにする晶の姿にどこか微笑ましさを感じながら、それぞれ男湯、女湯に分かれると、マナーに沿って身体を洗い流してから、ゆったりと温泉特有のいい香りが漂う湯に浸かる。

 

「ああ…………あっ。」

 

貴虎は湯に浸かった途端、自分が身体に染み入る気持ち良さのあまり大きな声を出してしまった事に気がつき、我に帰る。

行楽シーズンで他に入っている客達も同じように温泉の気持ち良さに声を上げたりもしているので周囲は気にしていなかったが。

 

「はは、これでは確かに「おっさん」扱いされても文句は言えんかもな。」

 

ふと、トルキアで出会った少年達の姿が思い浮かぶ。

あの国の未来はあの子達がこれから築き上げるものであり、雪叢・ベリアル ・グランスタインにも彼らの助けを任せてきたが、やはり心配せずにはいられない。

心配性なのはやはり歳をとってしまったからと、三十代の若さでまた自虐してしまう。

 

「…しかし、私はどこまで罪作りなんだろうな。」

 

熱い湯船で体が癒えていく中で、自分の記憶の中に息づいている人達の姿が蘇ってくる。

 

「凌馬…藤果…雅仁…」

 

黄金の果実に興味を示さない自分に呆れ果てて裏切ったまま死別し、メガヘクスの侵略の際に機械生命体として蘇った際は、まるで憑き物が落ちたかのような安らかな笑顔で自分を賞賛し、戦うための力を遺していった戦極凌馬

 

呉島家の使用人として幼少時代を過ごし、呉島によって全てを壊され、狂わされた憎しみの刃を向け、自分の優しさから結局トドメを刺すことはできず、凌馬の凶刃…というより凶弓によって死んでいった朱月藤果

 

…そして、運命と苦しみを共にするはずだった親友、鎮宮雅仁

 

「みんな…みんな私の…俺の手からこぼれ落ちていく。」

 

下手をすれば弟である呉島光実ですら、禁断の果実を巡る戦いの中で、この手でこぼれ落とすところだったかもしれない。

…余談だが光実にはペアチケットなので三人目は実費にはなるが、お前もくるか?と誘ったところ、「兄さん、本気…ううん、正気で言っているの?」とかなり落胆と呆れが込められた眼差しで見られ、断られてしまった。

 

 

罪を償い、戦っていく思いが鈍っている訳ではないが、こんなことが3回も続けばいかに貴虎の精神をもってしても疲弊してしまうのは仕方がないことであるかもしれない。

 

失ったもの達への想いにうつむき、憂いていたその時、一人の男性が貴虎の隣に座りら湯船に浸かった。

 

「失礼青年、隣に入らせてもらうよ。」

「…あ、ああ、はい。」

 

湯船はすこし混んでいるのだ、隣が狭くなっても仕方がない。

そう考えながら、貴虎はふと男性の持つ雰囲気が気になった。

…年齢は五十代後半から六十代最初辺りだろうか?外見ではそれくらい壮年の男性だとわかるのに、佇まいが凛々しく、その眼光は豊富な人生経験の中に青く輝くような情熱が宿っているようで、数々の戦いをくぐり抜けてきた自分にすらたくましい男性だと感じさせる。

歳を取っても「おっさん」などと呼ばれたりからかわれたりしないのはきっとこういう男性なのだなと、貴虎はまた心の中で自嘲してしまった。

 

「…青年。」

「あ…はい?」

 

突然語りかけてきた男性に、思わず返事を返す。

男はそのまっすぐな瞳で、貴虎を見つめながら口を開いた。

 

「随分…疲れ切った顔をしているな。」

「…ええ、まあ…働きづめなんですよ。今日は久しぶりの休暇で、友人と一緒にきているんです。」

「そういう意味の疲れたではないなぁ。」

「…はい?」

「なにか、いろんなものを失ってきた。そんな顔をしているよ。」

 

…貴虎はすこし不快に感じた。

この男性が自分の内面まで見抜いたのは驚いたが、干渉して欲しくない部分に触れられるのは貴虎の性格としては面白くない。

 

「…すみませんが、見ず知らずの人間に干渉して欲しくないところに触れられるのは、面白くありませんし、不愉快です。」

「それはすまなかったね。」

 

貴虎はさらにしまったと思った。

普段ならば赤の他人にこんな感情的な物言いはしない。

 

「…ふう、やはり、疲れているのか。」

 

貴虎は大きくため息をついた後、男性にすこしだけ頭を下げた。

 

「すみません、疲れすぎてどうかしているようです。」

「いいさ、東北の湯がきっと、体の疲れは癒してくれる。だけどね。」

 

男性は貴虎に優しく微笑みながら、静かに告げた。

 

「失った物があるならば、これから得ていく物だってきっとある。心の疲れはそうやってゆっくり癒すといい。」

「…」

 

釈然としない貴虎を残し、男性は湯船から立ち上がると、ゆっくりとその場を去って言った。

片手を軽くあげ、こんな言葉を残しながら…

 

「ここの料理はとても美味しいし、体にもいい。規則正しくモリモリ食べて、体を鍛えるんだぞ!」

 

「ふう…美味いな。」

 

ある程度長い入浴を終えた貴虎は、旅館の浴衣を身につけ、部屋に戻り、コーヒー牛乳の瓶を片手に、晶を待っていた。

コーヒー牛乳など、高級なものばかり食卓に出していた呉島家での生活では飲んだことなどないに等しかったが、湯上りの熱い体にはほろ苦さと甘さの塩梅が丁度いい冷たい喉越しが染み入るように美味しい。

この旅館も正直言えば自分が今まで宿泊した施設に比べれば足元にも及ばないくらい安い場所だが、人々が何気なく過ごす日常の中で、友人とともに旅行を楽しむということはどんなに高級な場所に宿泊し、豪華な料理を食べようと決して得ることのできない満足感を与えてくれた。

 

「…藤果のアップルパイも、だから私にとってはご馳走だったのか…?」

 

藤果が作ってくれた、全然美味しくないアップルパイ。

だけどあの時の自分にはどんな料理よりご馳走で、彼女と再会した時も味は変わらなかったものの、心の底から安心できたあのアップルパイ。

…アーマードライダーイドゥンとなって狂気の復讐に走る彼女との辛い戦いの中で、彼女と傷つけあった悲しみと苦しみは思い出すと胸が痛む。

 

ノブレスオブリージュ…力を持つ者はそれに伴う責任を背負い、自らが犠牲とならなければない。

結局最後まで理解し合うこともできなかった父、呉島天樹から教えられた思想であり、自らが貫く揺るぎない信念…

 

自分にとって大切な者達と傷つけあってもなお揺るがず、信念のために命を捧げ続ける貴虎の強さの源でもあるが、改めて彼らの姿を返してみると、その信念を貫くばかりに命をかけるばかりで、彼らを救えなかった自分の余裕の無さを痛感せずにはいられなかった。

 

「俺は…弱くなっているのか?」

 

少なくとも過ちを犯そうとしていたあの時期、こんな想いに沈むようなことはあまりなかったと思う。

今は葛葉絋太と理解しあい、沢芽市には凰蓮や城乃内、ザック達といった同士がおり、光実とも心を通わせることができるようになり、トルキア共和国で出来た新しい仲間であるアイムやベリアル達との交流で、自分は大切なものを贅沢なほど手に入れることができたと思っている。

だからこんな幸福を、彼らと分け合えなかったことが悲しくなってしまう。

たとえ彼らが、自分達から人としての幸せを捨て去る道を選んだ人間だとしてもである。

 

「…いかんな、せっかく戦いや仕事の疲れを癒しにきているのに…ん?」

 

ふと貴虎は、座卓の上に置かれていた一枚のチラシのようなものを見つける。

眉間に少しシワを寄せて見ながら、手にとって顔を近づけた。

 

「秘湯…か。」

 

どうやら近くの山奥に、景色のいい露天風呂があるらしい。

秘湯というくらいなので、添付してある地図を見てみると少し険しい道のようであり、無理はなさらずとの忠告が書いてある。

 

「…私はまだ、おっさんではない。」

 

…トルキア共和国での少しカチンときた一件を思い出し、チラシを少し強く握りしめると、部屋の鍵が開き、同じように浴衣を身につけた晶がタイミングよく入ってきた。

 

「ごめんなさい貴虎さん!つい長風呂しすぎ…どうしたんですか?」

「あ、ああ!いえ!…ところで、少し休んで昼食を取ったら、運動がてら秘湯に行って見ませんか?このチラシに、面白い露天風呂があると。」

「ええ?秘湯!いいですね!行って見ましょう!」

 

さっきまでの重苦しい雰囲気が、晶の無邪気さで少し中和される。

今はこの時間を楽しみ、体を癒し、また戦いと復興の日々に励もう。

それが彼らへの手向けにもなるはずだ。

貴虎はそう考えていた。

 

昼食を終え、私服に着替えた貴虎と晶は、険しい山道に挑んでいた。

 

確かに道は険しいが、山の緑が目に眩しく、空気が美味しいので心と体が喜んでいるのがわかる。

 

晶は貴虎の緑と黒が基調のコートの下に黒のタンクトップを身につけ、動きやすいズボンを穿いて、靴もスニーカーという、普段スーツがほとんどな彼の意外な私服に驚いていた。

 

「なんか、ちょっと意外です。いつも貴虎さん、スーツだから。」

「ああ、トルキアでできた友人達がくれた、土産なんですよ。険しい山道に登るには、この方が動きやすいかと思って…変ですか?」

「いえ!あんまり目にしない服だから驚いてますけど、貴虎さんは何を着てもお似合い…きゃっ!?」

「晶さん!」

 

晶は足を滑らせ、体勢を崩す。

貴虎は鍛え上げられた反射神経と運動能力でとっさに手を伸ばし、晶の手を掴んだ。

 

「…大丈夫ですか?」

「え、ええ!ごめんなさい!」

「…地図によると、もうすぐみたいです。よければお支えしますので、頑張りましょう。」

「はいっ!」

 

貴虎は晶を支え、地図に示された秘湯まで再び歩き始めた。

自分達を見つめる、憎しみの眼差しにも気付かずに…

 

「…くくく…まんまとかかったな…これからが地獄の一丁目だ…覚悟しろ…!」

 

「この辺…ですよね?」

「ええ、そのはずなんですが…」

 

地図に示された場所は、滝のある大きな河川で、周りは岩ばかり。

露天風呂などどこにも見当たりはしなかった。

もう一度貴虎はチラシを確認し、地図を見てみるが、やはり場所は間違っていないようだ。

 

「道を間違えちゃったんでしょうか?」

「いえ、場所はあっているみたいです…!?」

 

その時、貴虎の仮面ライダーとしての戦士の勘がおぞましい気配を捉えた。

自分達を付け狙う悪意が、表に現れでる瞬間を。

 

『キキィーー!!』

 

その直後、地面から複数の黒い影が現れる。

頭に触覚のような装飾のついた、まるでアリのような黒い戦闘員の軍団が。

 

「きゃああ!?」

「なんだ貴様ら!?」

『キィーー!!』

 

黒い軍団は問答無用で、貴虎と晶に襲いかかる。

貴虎は晶に、視線で近くの岩陰を指した。

 

「晶さん!隠れて!」

「は、はいっ!」

「…はあああああっ!!」

 

貴虎は凄まじいシャウトとともに、戦闘員達に格闘戦を挑んだ。

貴虎は戦士としての鍛錬も経験も、十分に積んで来た戦士である。

アーマードライダー達の中で言えば、禁断の果実やオーバーロードインベスとしての能力を利用できる者達を除けば間違いなく最強であろう。

敵の攻撃を正しい判断で回避し、鋭い拳や蹴りを次々に敵に叩き込んでいく。

たちまちに複数人の戦闘員達は地面に次々と倒されてしまった。

 

『ケィーーー!?』

「…これで全部か。」

「さすがは仮面ライダー、変身せずともこれだけのアリコマンドなら余裕のようだな。」

「なに!?」

 

貴虎の前に、上空から白銀色のワシの怪人が降り立ち、その翼を広げた。

手には武器である大鎌が握られ、鋭い緑色の異形の目が貴虎を睨みつけていた。

 

「貴様は…インベスではないな…!?」

「俺の名前は白銀(しろがね)イーグル!ネオショッカーの誇る大空の死神だ!」

「ネオショッカー…あのバダンとかいう連中と同系統の組織か?」

 

かつて地下帝国バダンが復活し、死者と生者の世界を逆転させようとした計画の中で、平成仮面ライダーと昭和仮面ライダーが激突し、火花を散らした際の戦いに貴虎も僅かながら参戦した経験がある。

あまり詳しい事情には立ち入らなかったのでわからないことの方が多いが、あのアリコマンドという戦闘員達とこの怪人の姿、似たような組織と捉えるのも当然であろう。

 

「まさか…あの地図とチラシは罠か!?」

「女連れで気づくのが遅かったようだな!その通りだ!貴様をおびき出し、始末するのが目的だったのだ!」

「…残念だったな。死神は地獄に還してやる…!」

 

貴虎は変身ベルト・ゲネシスドライバーを取り出して装着し、メロンエナジーロックシードを構える。

白銀イーグルはそれをみると、片手を突き出して制するように叫んだ。

 

「まて呉島貴虎!貴様の相手は俺ではない!」

「なんだと!?」

「どうしても貴様の首が欲しいと言って、我々に魂と肉体を捧げた者がおるのだ!さあ

、出てこい!!」

 

白銀イーグルの雄叫びとともに、一人の男が陰から姿を現した。

深緑のアーミージャケット…ネオショッカーに所属する証である専用の軍服を身につけたその男は…憎しみと嫉妬が詰まった瞳で、貴虎を睨む。

 

「久しぶりだな…呉島。」

「お前…!?」

 

男の腰には貴虎と同じゲネシスドライバーが巻かれ、手には貴虎のものとは違い、オレンジ色の部分が緑色になったメロンエナジーロックシードが握られていた。

貴虎はその男の姿を思い出していた…学生時代、勉強やスポーツ、全ての競争ごとで自分との成績や結果を競っていた者達の一人で、もっとも自分に肉薄しようとしていた、その男を…

 

「お前は…剣城刹那(つるぎ・せつな)!?」

 

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