もしゲーガーがエージェントからの撤退命令を無視していたら、そんなifから来るお話。
ゲパードM1
MG3と試作人形をヘリに収容後(MG3は同行を希望したが、そんな状態では無理だと半ば強引にヘリに押し込んだ。)、ヘリには乗らず未だ抵抗を続ける敵ハイエンドモデル鹵獲の為に最終目撃地点を目指して進んでいた。
そんな彼女の現在の心境を表すならば、ハイエンドモデルに挑む事への緊張や恐怖など微塵も無い、寧ろ喜びに満たされていた。
そう、ゲパードM1は心の底から喜んでいたのだ、同志達や主人は試作された使い捨て前提の人形を用いた鉄血の重要施設に対する攻勢作戦を行った場合のデータを収集する傍ら敵側が投入してくる可能性があるハイエンドモデルを可能ならば残存戦力と回収部隊で釣り出し、自身がI.O.P.より受領した試作品を持ってそれと交戦、試作品を使用して目標を無力化するこの計画。
とはいえ来るかどうかも分からない、来たところで釣り出せる確証も無し、そもそも攻撃部隊の生存率も絶望視されていた作戦である(よしんば生き残ってもMG3くらいなものだろうと思われていた)、周囲はあくまで副次的な計画として考えていたのだがそれをゲパードは利用した。
キッカケは数日前単独での反グリフィン組織の幹部暗殺任務、娼婦になりすまして誘惑しホテルに誘い込んで口に仕込んでいた胃液にのみ反応して即座に溶ける筋弛緩剤を口付けしてきた際に飲ませて無力化、大量の酒を飲ませ風呂に沈めて殺害後の帰り道でのこと。
休憩がてら立ち寄った廃都市で偶然遭遇したハイエンドモデル、デストロイヤーを見た瞬間に湧き上がってきた自分のモノにしたい衝動を抑え切れず余っていた筋弛緩剤を飲ませ<<捕獲した>>(何やら通信相手と酷く言い争っていて隙だらけだった)。
何故か自壊どころか自爆すらしないのをいい事にその場で所持していたハッキングツールを使って機体の制御権を全て奪い無力化、同志達や主人にも報告せずにセーフハウスの一つに運び込み尚も抵抗する彼女に何とか自分の気持ちを伝えてモノにするべく全身傷だらけの身体を治療しつつ並行して互いの電脳を首の端子からケーブルで繋ぎ、自身の想いを伝えていたのだが、加減を間違えてデストロイヤーの自我を壊してしまう。
幸い完全に破壊されずに済んだものの、意識を失う直前に漏らしたゲーガーという名前から彼女に家族又は友人か恋人の類がいるのを悟り、調べたところそれが彼女と同じ鉄血人形と知るやどうにかしてゲーガーも手に入れたいと考え、この鉄拳作戦の副次的な計画を聞くや即座にこれを利用して誘い出す事を思いついたのだった。
そして彼女は自身の誘いに乗って来たのだ。
ちゃんと招待状に応じて来てくれてありがとう。
諦めずに抵抗していてくれてありがとう。
その調子で頑張って逃げ続けてね。
今、君に逢いに行くから。
『目標は依然として健在当方残弾僅少により一旦追撃を中断、目標の包囲内への封じ込めに注力します。』
回収任務から敵追撃部隊の足止め、更に掃討戦へと移行していた別部隊がハイエンドモデルとの戦闘に関する経過を無線で伝えて来る。
ライフルは背にしたまま
ゲーガー
「くそっ、こんな奴らに拘っている暇なんかないというのに、、、いったい何処にいるんだ!」
彼女は雪深い森の中、グリフィンの人形部隊に追い詰められつつありながらも、諦める事無く応戦し何とか現状の打破を試みていた。
どう足掻いても詰みな状況、従来のハイエンドモデルならとっくに自爆し、新しい機体に自身を移し替えているだろうにも関わらず戦い続けるのはそれすら考えられない程彼女は内から湧く焦燥に駆られていたからだ。
数日前にゲーガー宛に送られて来た差出人不明の映像付きの電子メール、記されていた数字は位置座標、鉄血の新型砲製造工場の一つであった。
更に添付されていた映像、最初は椅子に座らされている少女のぼんやりとした姿が映っているのみだったそれが、次第にハッキリするにつれてゲーガーの表情から血の気が失われて行った。
映っていたそれ、白いワンピースと<<かつてゲーガーが自作してプレゼントした>>ネックレスを身につけたデストロイヤーの姿だった。
彼女との関わりは先代の自身と上官であるアーキテクトが仕出かした失態に端を発する。
新型砲のテスト運用をしていた際、偶然にもAR小隊を乗せた輸送機を撃墜、期せずして鉄血テリトリー内に憎きグリフィンのエリート小隊を叩き落として孤立化させるという状況を作り出して以降発生した一連の戦闘。
こちらは複数の新型砲に多数の防衛部隊、負ける要素など皆無であった。
にも関わらずAR小隊には逃げ回られた上に多くの新型砲を破壊され、挙句グリフィンに救援要請の通信を発信された事で大規模な救出部隊に介入される始末。
戦力差を埋められた事で事態は大規模戦闘へと発展、乱戦の様相を呈しつつあった状況はしかしグリフィンの一部部隊によって行われた発電施設への破壊工作でもって加速度的に悪化、遂にはAR小隊を取り逃がし電源を破壊された事で無力化された新型砲は敵の手に落ちていった。
アーキテクトは鹵獲され先代ゲーガーもエージェントからの撤退命令を無視してアーキテクト救出のため残存部隊を纏め上げ、彼女のいる司令部に突撃したのを最期に行方不明となった。
未曾有の大失態、そして何より下級人形の無線記録を中心とした解析調査の結果が後にバックアップとして起動させられた今代のゲーガーに対する周囲からの風当たりを強くする事になる。
内容は様々であったが、特に注目されたのはアーキテクトと合流したゲーガーがなんらかの遣り取りをした後突如グリフィンの人形と共に自分達に攻撃してきたという内容だった。
既にアーキテクトに関しては以前からの言動とその思考パターンからいずれ鉄血から離反する危険性が指摘されていたのだが(後の調査でグリフィンに積極的に協力している事が判明している)、今回の一件はそれを決定的なものとした事でバックアップは凍結される事が決定された。
ゲーガーに対しても同様の措置を取るべきとの動きもあったが、問題の通信にしても混乱の最中の遣り取りで決定的な証拠とはなり得ず、普段の鉄血に対する姿勢から問題無しとされたが、念の為新型砲テスト前のメモリーからのバックアップの起動となったのであった。
とはいえそれで周囲が納得する筈もなく、一部のハイエンドモデルからは公然と罵倒され、自身に付けられた下級人形は彼女の護衛というより監視の意味合いが強かった。
先代の失態と裏切りの疑惑、周囲からの疎外感に徐々にすり減っていく彼女。そんな中気さくに話しかけてきたのがデストロイヤーだった。
予想より長くなったのでカットします。