ゲーガー
「追撃が止んだ、、、?」
小さくとも少しずつ累積する機体の損傷とエネルギーの消費具合から限界が近づきつつあったゲーガーは、先程まで自身を襲っていたグリフィンの愛玩人形どもが唐突に姿を眩ませた事に訝しんだ。
「振り切れた、何て都合のいい話ではあるまい、、、。」
実際銃撃音で分からなかったが、ヘリのローター音が聞こえているところを考えると敵に増援が来たとみて間違いない。
「まずい、な、、、。」
電子メールの一件から新型砲製造工場に敵が来ると踏んでエージェントから付けられていた配下と共に現地へ向かい、案の定現れたグリフィンの人形部隊との戦闘。
苦労して撃破した敵の残党の中に居ると思われる差出人を狩り出してデストロイヤーの居場所を聞き出す筈が、残党を救出に来たと思われる部隊とかち合って交戦。
疲弊していた私と下級人形達は碌に反撃もできず蹴散らされ、散り散りとなった。
度重なる被弾によって機体の稼働率が落ち込み、多くのシステムがerrorを吐き出すだけの状態。
自らの武装に蓄えられた粒子エネルギーも枯渇寸前、刀身の形成は1秒持つかどうかで射撃兵装に至っては牽制できる程の弾薬すら無い有様。
ここに来て冷静になりつつある自身に、機体側に取り付けられた自己診断AIが自爆して仕切り直すという選択肢を提示してきた。
「っ!」
それを即座に棄却、万が一そんな事をして私を誘き寄せた相手がデストロイヤーに何をするか予測がつかない。
とにかく足を動かす、歩く、遮蔽物を最大限に利用して此処からの離脱を図る。
あの屋上での出来事以来何度もやって来ては私に話しかけて来るデストロイヤー、大方ドリーマーが私を揶揄うために嗾けて来たのだろうと初めはまともに取り合わなかった。
「もう少しだ、もう少しなんだ、、、!」
彼女がドリーマーとつるんでいたのは以前から知っていたし、そういった関係でアレはデストロイヤー共々私を玩具にするつもりなのではと疑っていたから。
だがデストロイヤーと触れ合うにつれ、そんなものはどうでも良くなった。
「頼む、持ってくれ私の身体っ!!」
あの子の向日葵の様な笑顔が脳裏を過ぎる。
手首に巻いた彼女の髪留めに触れる。
触れ合って数日、漸く立ち直りつつあった私に長期の潜入任務で暫く会えないと告げられた時、少し前から彼女への感謝の気持ちにと作っていたネックレスを手渡し、貰うだけじゃ悪いからと彼女から貰った物。
「帰って来たらちゃんとしたの用意するから。」
そう言って任地へと向かった彼女が、程なくグリフィンの大部隊に捕捉され交戦、損傷の為回収を要請して来たのだがその後突然信号が途絶えたとの連絡を受けた。
付近に居たアルケミスト率いる部隊とドリーマーの操るドローンが駆けつけた時には、破壊された彼女の武装以外発見できず、彼女の素体がある工場にバックアップが起動したか確認を取ったがそれも無し。
彼女が何らかの理由でバックアップ起動出来ない状態にあると判断した私は、彼女を探すべく各地を転戦していたところに来たのがあの電子メールだった。
「づぅっ!?」
背後からの衝撃で前のめりに倒れ込む。
発砲音は無かった、自己診断AIが被弾時の衝撃から7.62㎜ライフル弾による狙撃と推定、遮蔽物への即時退避を推奨する。
「こんな森の中どうやってっ!?」
自身の眼前に着弾、即座に転がって側の木の陰に隠れるが幹の反対側から聞こえる弾丸のめり込む音が止まない。
「くそっ、一気に決めにくる気か!」
くぐもった発砲音にハッキリとした発砲音が増え、それに紛れて微かに雪を踏む音を聴覚センサーが捉える、この森に積もる雪質は荒く若干硬い為、辛うじて聞く事ができた。
踏む音の間隔の速さから走って向かって来ていると確信し、背にした木に向き直って武装を構える。
「チャンスは一度きり、、、。」
ブレード形成用のエネルギーは僅少、多少の被弾は覚悟してその瞬間を待つ。
眼前の樹木越しに聴こえていた発砲音が途切れる。
右か左か、狙撃の優位性を捨てて態々突っ込んで来てくれた馬鹿が出て来る瞬間を待つ。
「私の勝ちだっ、
幹の左から飛び出した人影、セーラー服にフード付きのコートを着込み、黒い長髪を靡かせたライフル持ちの人形がナイフと副武装のハンドガンを構えるのを視界に捉える。
「っ!」
ライフル人形ことSuper SASSは走る勢いを殺すのとこちらからの攻撃を回避する為に半ば屈んだような状態で目標の眼前に文字通り滑り込んだのだ、そこへゲーガーは今出せる最速で自身の武装を突き出す。
横に転がったところでブレードを薙ぐだげ、ゲーガーに飛び掛かるにしても遅過ぎる。
ゲーガーの武装に取り付けられたブレード発振器の根元から高エネルギーの刃が形成され、Super SASSの上半身を消し飛ばさんと迫った。
仕事の合間にチョビチョビ投稿。