鉄拳作戦区域近辺 作戦終了から1時間32分
ゲパードM1
鉄拳作戦終了の報せから30分足らずで回収部隊が目標を追撃する鉄血の部隊と交戦状態に突入、追撃部隊を蹴散らす事自体20分も掛からないだろうが目的はあくまで回収である。
I.O.P.本社で試作品の受領を終えて帰還の途についていた自身に送られて来た残存戦力の回収要請に やっぱ来た。と思わず口から漏れ出た声と白い吐息はしかし自らの乗り込むヘリ<<UH-60>>のローターから叩き出される爆音に掻き消され、吐かれた白い息はたった今自身が開けたハッチの外へ、そして瞬く間に機体後部へと流れていった。
傍から見たら降って湧いた厄介ごとに巻き込まれたよと言わんばかりに心底大義そうにしている様に見えるがしかし、彼女自身や彼女の主人とその同志達には既定路線であり、初めからそうなる様に仕組まれていたのだから大義いも何も無いのだが。
機体の床に腰掛け、落下防止のフックを腰のベルトに装着して眼下一面に広がる森林地帯を眺める、どんよりとした曇り空に雪を少々被った木々ばかりの世界はしかし五分もしないうちに途切れ、雪の白と土の茶色に僅かに生える雑草の緑色が混じり合う平原が現れる。
平原上空に入って10分程で眼下に二つの黒い人影を捉えた。
「目標発見!」
頭に着けたヘッドホン型の無線機からのパイロットの声が聞こえるや即座に下がり始める高度にゲパードは内心溜息の出る思いだった、目標周囲に隠れる場所が無いとはいえ碌に確認もせずいきなり降下してどうする。と文句の一つでも言ってやろうかと思ったがやめた、副機長が機長の頭に軽くチョップを入れつつ注意していたのもあるが目標周囲は視界に入った瞬間から自身と、両サイドのドアガンのガンナーが周囲に目を光らせているからだ。
目標周囲は所々雪が積もっているとはいえ精々1〜3㎝、雪を被って潜むには無理がある上に地面に至っては戦車の装甲板並みに硬い永久凍土で、掘って隠れる等まず不可能だろう。
ヘリの高度が1mになろうかというところでフックを腰のベルトから外して飛び降り、手にしていた自身の
ウィリアム アッカーソン ゲパードが目標と接触して5分程
起動した新しい仲間、ブルートの情報をサーバーに登録しドラグーンとブルートにさぁこれからどうしようかとあれこれ意見を言い合っていたのだが自身の端末から響いた着信音で2人に ちょっと失礼。と断りを入れて離れ、端末を開き内容を確認する。
「えぇ、、、。」
なんじゃそりゃ、と言いたげな声に興味を持ったブルートとドラグーンはウィリアムの両側から勝手に端末を覗き込んだ。
ウィリアム アッカーソン ブルート両名は至急司令室へ向かわれたし。
「こりゃ珍しい、アタシらの時にはこんな事無かったっすよね?」
「確かになってコラ、勝手に見るんじゃぁないっ!」
ドラグーンからの言葉に頷いて直ぐにハッとなり、両側から覗き込む2体を叱りつけるとドラグーンは イヤイヤモーシワケナイ。 と欠片も反省の態度も見せず、むしろ戯けつつパッと離れ、逆にブルートは申し訳なさそうにシュンと項垂れる。
「あー、とりあえずドーラは好きにしててくれ、じゃあ行こうか<<ブルー>>。」
ウィリアムの言葉と差し出された手にブルートはキョトンと小首を傾げ、それが自身の名前である事に気づくや上機嫌になり。
「はいっ、マスター!」
しおらしく項垂れていたのは何処へやら、ウィリアムの手を取って2人トコトコと倉庫から出ていくのを見送ったドラグーンはやれやれと肩を竦めて一言こぼした。
「旦那ぁ、、、もうちょっといい名前はなかったんすかねぇ。」
はてさてどうしよう、、、。