仮面ライダージオウ~Crossover Stories~ 作:壱肆陸
ビルド編ラストです。まずはあらすじコントからどうぞ。
あ、最後グロ注意です。本当に最後読まなくてもいいので。
天介「天才科学者、羽沢天介は!仮面ライダービルドとなって日々スマッシュと戦っていた。そんな中現れた未来人の日寺壮間。戦う理由を見出した彼に、俺は仮面ライダービルドの力を託すのだった!」
壮間「俺は王になる!王になれば、誰がなんと言おうが俺が主人公だ!」
天介「すっごいエゴなのはもうこの際いいとして、王になってどうすんの?色々大変よ?政治とか分かんの?」
壮間「いや…それはアレですよ、比例代表制とか官房長官とかあと…」
天介「助手君、さては社会苦手だろ?どーしよっかなー、頭悪い奴にビルドを託すのもなー」
壮間「今このタイミングでやめてくださいよ!?もうホラ、アナザービルドそこ来てますし!それじゃビルド編ラストどうぞ!」
__________________
「「勝利の法則は決まった!」」
咆哮するアナザービルドに対する、2人の戦士の勝利宣言。アナザービルドにそれを理解するだけの理性があったのかは分からないが、それを聞くや否やジオウに飛び掛かる。
相対するは、仮面ライダージオウ ビルドアーマー。飛び掛かってくるアナザービルドに、右手のドリル武器「ドリルクラッシャークラッシャー」で反撃。
「グガァ!」
更に左足でアナザービルドに蹴撃を叩き込む。ビルドアーマーの肩部「タンクサイド」で威力が跳ね上がっているため、アナザービルドの体は軽々と吹っ飛び、壁にクレーターを作った。
「凄い…これがビルドの力!それならジャンプも!」
「あ、おい。ちょっと待て!」
ラビットタンクの跳躍力も継いでいるのでは?と思い、ジオウは吹っ飛んだアナザービルドに向かってジャンプ。
が、勢い余って天井に激突。無様な声を出して格好悪く落下した。
「痛い……」
「あちゃー…まぁ、調子に乗んなってことだ。ビルドの力だからな、ちゃんと考えて使え」
その隙にアナザービルドが体制を戻す。攻撃に備えるジオウだが、どうやら様子がおかしい。
アナザービルドは警戒している。この数回の攻防で、アナザービルドの方が劣っていることに気付いたようだ。
アナザービルドは背中を向け、階段で下の階に逃亡した。
「あ、待て!天介さんはそこに!」
「おい、上で何が起こってるんだ?まさか四谷、ここに仮面ライダーを入れたのか!?」
「ふざけんな!何やってんだあの無能!」
「いいから早く逃げるぞ!このままじゃ俺達まで!」
「上で戦ってるのにどこに逃げろってんだ!」
作戦前、余裕そうに話していた研究員2人が、防護服を着たまま大慌てで右往左往している。他の研究員たちも動揺しており、この地下フロアは大パニックに陥っていた。
そして、そこに現れるのは、上階から逃げてきたアナザービルド。
「うわぁぁぁぁぁ!!なんだコイツ、スマッシュか!?」
「やめろ押すな!あ…あぁ……来るな…来るなぁぁあぁぁッ!!」
アナザービルドは朧げな記憶を辿る。
この研究所で自分への陰口と共に聞こえてきた、彼らの自慢話。そして、その才能への嫉妬を。
「オマエタチノサイノウ…ヨコセ…」
2人の研究員にアナザービルドはエンプティボトルを向ける。
身体は瞬時に粒子へと分解され、その断末魔と共にボトルへと吸い込まれていった。
「はぁっ!」
そこに追ってきたジオウが乱入。しかし、ボトルは完成してしまっている。
アナザービルドは2本のボトルを口に投げ入れ、ドライバーのレバーを回した。
《水泳選手…、弓道…、ベストマ~ッチ…!》
能力の発動を警戒したジオウは、即座にドリルクラッシャークラッシャーで攻撃を仕掛ける。しかしその瞬間、アナザービルドの体が消失した。
「えっ!?」
と思いきや、今度は背後に現れ、手元に生成した弓で矢を発射。ジオウに攻撃が突き刺さる。
振り返ると、またしても姿が消えた。しかし、今度はそのカラクリを確認できた。
(今アイツ、地面に潜った。水泳選手ってそういうことか!)
そう、アナザービルドの得た能力は弓矢の射出能力と、地中を泳ぐ能力。死角に現れ遠距離攻撃し、瞬時に消えるヒットアンドアウェイ戦法を可能にする、非常に厄介な組み合わせだ。
なんて考えているうちにも攻撃を受け続けるジオウ。一発は軽いが、そう何度も喰らってはいられない。
「クッソ…一体どうすれば!」
「我が王、随分と苦戦しているじゃないか」
そんな時、この地下フロアにウィルが現れる。攻撃を喰らわないよう、少し離れて安全エリアにいるのがちょっと腹立つが。
「ライダーの力を受け継ぐ…その意味がまだよく分かっていないようだね。
そんな君にこの言葉を贈ろう。“たまたま勝つな。勝つべくして勝て”」
「勝つべくして…?それは一体…うおっ!」
また背後から一発喰らった。ジオウはとにかく思考を落ち着かせる。
さっきのはどういう意味だ?たまたま勝つなって?考えろ!
その時、さっきの天介の言葉が脳裏によぎる。
『ちゃんと考えて使え』
「そうだ…考えるんだ、俺!さっき言ったじゃないか、勝利の法則って!」
そう。仮面ライダービルドは“智”の戦士。
状況を俯瞰し、問題解決に向けて思考する。そして得られるのは、撃破までの道筋。その白星を当然のものに変える“勝利の法則”。
それこそが、ビルドの真の力。
(考えろ!まだ攻撃は受けられる。まず地面に潜られないのが絶対条件。アイツが沈んでから出てくるまで5秒前後、遠くには行かない。地上に出てきて撃って戻るまで2秒弱。そんで俺の死角に出てくるってことは、逆に出てくる場所は予想できる。でも瞬発力の調整が…いやそうか、それなら…)
考えること十数秒。今のジオウの頭には、その道筋がクッキリと見えている。今この瞬間に、“勝利の法則は決まった”。
矢の攻撃を喰らい、カウントを始める。今の自分の座標を踏まえ、わざと分かりやすい死角を作る。当然、奴はそこに食らいつく。
「そこだ!」
ラビットの聴覚で、予想した場所の近くにアナザービルドが出現したのを確認。瞬時に床を蹴って距離を詰めるが、細かい場所を確認できなかったため、向かう先がズレてしまう。
それを見て不気味に笑うアナザービルド。
しかし、そこまでが想定内だった。
「はぁっ!」
過剰なジャンプ力は壁にまで届く。ジオウはその前に空中で一回転し、壁を足場にして反射するように方向転換。相手が水泳を使うなら、こちらも水泳。いわゆるクイックターンのモーションだ。
そのままジオウは突っ込んでいき、弓矢を構えて空中で待ち構えていたアナザービルドにドリルが突き刺さった。
「グアァッ!!」
アナザービルドの体が空中で放物線を描く。
そして空中にいる今なら、
《フィニッシュタイム!》
《ビルド!》
ジオウ、ビルドの順でウォッチのボタンを押し、必殺技待機状態に。
ビルドアーマーの能力で空間に数式が具現化、ただし円の公式だったり波の位置を求める式だったりと、高校レベルの数式ではあるが。
「あれ、なんか違う?まぁいいや」
さらに、アナザービルドの真下を原点とし、x軸とy軸の平面グラフが出現。そこに描かれているのはx軸y軸両方に漸近する分数関数。
ジオウは具現化されたグラフに飛び乗り、分数関数をレールのように滑り、なぞりながら重力に逆らって昇る。
そして、グラフによって空中に固定されたアナザービルドに到達。そのまま推進力は止まらず、ドリルクラッシャークラッシャーでアナザービルドを押し上げていき、天井までも貫いていく。
地面に垂直に伸びる漸近線は、ついに研究所の屋根をも突き抜けた。
「ハァッ!」
外の世界に出たところでグラフは途切れ、アナザービルドが放り出された。
太陽は半分ほど沈み、雲一つないオレンジ色の空が広がる。
グラフから外れたタイミングを見計らい、ジクウドライバーを一回転。
地平線に消えゆく太陽を背に、ジオウはドリルクラッシャークラッシャーを構え、その右腕をアナザービルドに突き出した!
「貴方は今までの俺と同じだ。だから……
俺は…貴方を越えて行く!」
《ボルテックタイムブレーク!!》
渦巻く光刃がアナザービルドの装甲を抉り、体を貫く。
火花を散らして地面に落下し、理性の消え失せた叫び声と共にその体は爆散した。
元の姿に戻った四谷西哉は気を失っている。
そして、それと同時に排出されたアナザーウォッチは、木端微塵に崩れ落ちたのだった。
____________
アナザービルドを倒し、全ての戦いが終わった。
天介も地上に戻り、太陽が沈むさまを笑って眺めている。
「これで助手君の目的は達成。アナザービルドに蘭たちが襲われる未来も変わったはずだ」
「ですけど……」
「だったら早く行け。
王になるんだろ?だったら、こんな所に留まっている暇なんてない」
天介の言う通り、当初の目的も果たし、ビルドの力も手に入れた。もう2017年にいる意味はない。ただ…少し名残惜しいというのも事実だ。
そんな壮間の心とは裏腹に、タイムマジーンが自動操縦で降りてくる。これはウィルの仕業だろうか。何にせよ、早く戻れということだろう。
「迎えが来たみたいだな。それじゃ最後に
お前が王様を目指すのは勝手だ。でも、これだけは忘れるな。
理不尽な悪から、人々の自由を守る戦士。それが“仮面ライダー”だ」
「はい。……この時代で貴方に出会えて、本当によかった」
タイムマジーンの入り口ハッチが開き、壮間はそこに足をかける。
「壮間!」
その時、天介の口からこの言葉が溢れる。
「……つぐみを。アイツらをよろしくな」
その言葉を聞き届けると、ハッチが閉まった。
タイムマジーンが飛び立ち、2018年へのトンネルの中へと消えていく。
「さよならだ」
それが、正真正銘最後の…別れの言葉だった。
___________
2018
壮間は2018年に帰還。時間的には、2017年に飛び立った直後に戻ってきたのだが、白いアナザービルドによる破壊の痕は見る影もない。
そして、壮間には一つ気になっていたことがあった。
スマッシュ騒動といい、ビルドといい、結構近所であるはずなのに壮間は全く知らなかったということだ。
「時系列的には一昨年…じゃない去年のことなのに…」
そして、それは歴史を変えた今でもそうだ。インターネットで検索しても、不自然なくらいビルドの情報は出ない。戦いの場になった研究所にも行ったが、ごく普通の研究施設だった。それも、何年も前から。
そんなことを考えているうちに、目の前に見覚えのある店構えがそびえ立つ。
天介の最後の一言が気になり、つい足を運んでしまった。
そう、羽沢珈琲店だ。
「いらっしゃいませ!」
扉を開けると、珈琲の香りよりも先に彼女の挨拶が耳に届く。
羽沢つぐみだ。そして、奥にはAfterglowの皆も揃っている。当然、美竹蘭も。
「よかった…ちゃんと、変えられた」
「どうかされました?」
「いや、なんでも…」
壮間はこのやり取りに少し違和感を感じる。
そこまで深い関りは無かったのだが、それでも気になってしまう。まるで、初対面の相手に対する態度だということに。
気になりはしたが、とりあえず席に座る。
そして、気になっていた事をつぐみに尋ねた。
「天介さん、元気ですか?」
時を越えたといっても一年。ここに来れば、羽沢天介にも出会えるはず。そう壮間は考えていた。
しかし、つぐみから帰ってきた言葉は予想もしてないものだった。
「すいません…どなたの話ですか?」
「え……?」
その反応は、紛れもなく天介を知らない反応だった。
その時、壮間は気付いてしまった。この時代では“仮面ライダービルド”が存在した歴史が消えてしまっている。
いや、敵勢力も騒動も全部。あの物語自体が無かったことになっている。
原因はウォッチを継承したから?アナザービルドを倒したから?
詳しいことは分からない。
恐らく、天介が記憶を失うプロセスに敵が絡んでいたんだろう。その敵まで歴史から消えたため、天介は記憶を失わず、羽沢家に引き取られることは無くなった。
(俺が力を受け継いだから、天介さんは…あんなに大切だって言ってた人達に出会えなかった。そんなのって……)
「あの…お客様?」
つぐみに声をかけられ、壮間は我に返る。
彼女の顔を見ているうちに、少し考えてしまう。血は繋がってないのだから、やはり似ていない。それでも……
いや、違う。天介は分かっていた。こうして忘れられることも、忘れることも。傍にいられないことも。だから最後に、壮間に託したんだ。
「託されるには、ちょっと重いですよ…」
「…?」
「い…いや、なんでもないです。
来たばかりでこれ言うのも変ですけど、今言っておきたくて…」
お盆を持って困惑顔をするつぐみに、壮間は少し深呼吸して言った。
「また来てもいいですか?つぐみさん」
名前を知られていることには驚いてなさそうだが、やはり困惑している。よく分からない様子でお辞儀をし、Afterglowの皆の方へ行ってしまった。
2017年で、消えた物語の中で、色々な事を教えてもらった。
だから壮間も変わらなければいけない。これは、その一歩目。
(女子に名前呼びキッツ……)
内心死ぬほど恥ずかしがってはいるが。
珈琲を飲み、壮間は店を出た。
そこには、嫌というほど見た顔が立っていた。
「あれ?ソウマ。なんで?」
「香奈……」
会いに行くのが怖かった。救えてなかったらと思うと、どうしても。
分かってはいた。それでも、彼女が目の前に変わらずいるということが、たまらなく嬉しい。
「香奈!」
つい感情的になってしまい、壮間は香奈へ駆け寄り、そのまま──
抱きつこうとしたところを華麗に避けられ、壮間は顔から地面に激突した。
「何やってんの!キモイよ!?」
「あ、そっか…こっちもあの戦い覚えてないのか」
危うく変質者になる所だった。いや、もう十分目立ってはいるが。
「いや…そうか、やっぱ俺のいつも通りはこうだよな」
「なんで笑ってんの?受験勉強でおかしくなっちゃった!?
おーい!ソウマ?聞いてる?」
壮間の顔の前で腕をブンブン振る香奈を見て、また笑いが止まらない。
そんなやり取りを楽しそうに重ねる2人の後ろで、一人の男が羽沢珈琲店の前を横切った。
その男は少しクセのある髪型で、左右別の靴を履いており──
誰も覚えていない、あの約束。
それが果たされる日はきっと、「おかえり」の一言と共に。
____________
「かくして、我が王は仮面ライダービルドの力を手に入れた。しかし、これは大いなる覇道の一歩目に過ぎません。次なる物語との出会い。そして、新たな来訪者はすぐそこに……」
暗闇の中、赤い装甲と黄色い複眼が輝く。
顔に刻まれたその文字は──「らいだー」。
そして、次なる物語のページが開く。
ヨーロッパの雰囲気を感じさせる街並み。木組みの家と石畳、そして賑やかな人々。
一匹のウサギが河川敷に飛び出し、そこで寝ていた男の顔にチョコンと座る。
男はウサギを顔から下ろし、そっと膝上に乗せると体を起こした。
警察の制服を着崩したその男は、大きくあくびをし、白いアメを口に放って呟いた。
「今日も平和だ…」
NEXT>>2014
____________
次回予告
「「木組みの街!?」」
「歓迎しますよ。ですが、十分にお気を付けて」
壮間&香奈は木組みの街へ!しかし…?
「仮面ライダーは悪の象徴。人類の敵だ」
「俺は仮面ライダーゲイツ。全てのライダーは…俺が倒す!」
2068年から襲来、仮面ライダーゲイツ!そして次なるレジェンドは!
「Start my engine!トップギアで行くぜ!」
「ドライブ…車の仮面ライダー!?」
この男、刑事で…
「嘘つかないでください」
この男、交番勤務で仮面ライダー!
次回、ラビットハウス2068
「ひとっ走り付き合えよ!」
ビルド編決着+エピローグでした。バンドリ勢は多分準レギュラーポジになると思います。
歴史改変の仕組みとか色々ツッコミどころはありますが、把握できる限りは補完計画で順次説明していきますので…
そんで、次のクロスオーバーは…もう先人様がやってるとか気にしない!ごちうさ×ドライブです!性懲りもなくまた日常系です!エグゼイド?知らんな。
感想、評価等よろしくお願いします!
今回の名言
「たまたま勝つな。勝つべくして勝ち獲れ」
「BLUE LOCK」より、絵心甚八。
「あぁ、まだ見てるのか。
そうだな…折角だ、少し見て行ってくれないか」
黒いジャケットを着た翠眼の男__あの時、蘭の前に現れた青年は、片手をポケットに突っ込み、右手でライドウォッチをお手玉のように遊ばせる。
龍のライダーやワニのライダー…全部で五つのライドウォッチが宙で回っている。
「贋作に有終の美なんて要らない。クソみたいな理不尽に塗りつぶされ、意味もなく消えてしまえばいい」
青年の前には、吊るされた体が。
脚を切り落とされ、血が床に滴り落ちる。顔が潰され、誰なのかも分からない。
そこにある意味すら失った、残酷なアート。
「そうだ…この作品のタイトルは__“蛇足”」
青年は死体の傷に指を入れ、血の赤色でその文字を壁に描く。
fin.