仮面ライダージオウ~Crossover Stories~ 作:壱肆陸
特になんやかんや無かったにも関わらず遅くなりました。何故なら本来入れる予定の無かった話だから。それがこんなに長引くなんて思ってなかった。
あ、質問コーナー作ったんで何かあれば是非!
今回は壮間とシャロメイン回です!
「これより!木組みの街捜査本部、定例会議を始める!!」
ココアや壮間たちの前で、走大は声を張り上げる。
学校の終わった夕方、何故か皆が集められていた。
「走大くん!」
「どうしたココア!」
「なんで私たちまで集められたんですか!」
「なんやかんやあって、外部から応援が来れない状況!よって人手が足りない!
それより千夜はどうした!」
「千夜ちゃんはいつになくお店が忙しいから来れないって!」
「そうか!」
元気ハツラツで仕切る走大。なんとなく気味が悪かった壮間は、小声でリゼに尋ねる。
「理世さん、走大さんテンション高くないですか?」
「さっきコーヒー3杯飲んでたからな。ホントは捜査で徹夜したらしいぞ」
「あぁ…だから目が充血してるしフラフラなんですね。ミカドは?」
「流石に連れてこれないからな…ティッピーと一緒に店番頼んだ」
「律義ですね」
「そこ!私語しない!」
注意する走大の目の下には、クマもくっきり付いていた。一晩中頭をフル回転させたのだろう、今にも倒れそうだった。
「俺の徹夜の甲斐なく、殺人事件も逃亡犯もあの偽ドライブも何も分かってないわけだが…何か分かり次第お前たちにも手伝って貰いたい。
それより、駆の奴はどうしたんだ?この大変な時に……」
その一言に壮間はギクっとなる。走大がこちらを見てきたので、即座に目を離した。
というのも、壮間は津川駆の居場所を知っており、なおかつ誰にも話せないからだ。
昨日の夜、駆はアナザードライブに殺されかけた。そこで得たヒントで、アナザードライブがコピーした人物の候補を絞った。
そう、ちょうど今ここに居るメンバーは全員含まれている。
というわけで壮間は先程から、その一挙一動に目を光らせている。が、見れば見るほど怪しくも見えるし、そうでないようにも見える。早い話、全く目星は付いていなかった。
「えっと…ちょっと用事あるから私はここで……」
遠慮気に立ち上がったのは、シャロだった。
「シャロちゃん!タイムセールは戦争だよ!」
「違うわよっ!?」
ココアの天然失礼発言を振り切って、シャロは行ってしまった。
その外見から溢れ出る気品オーラとは対照的に、シャロが貧乏なのは事実であるが。
それを見た壮間、思わず立ち上がる。
「あ…すいません!俺もえっと…トイレ!」
「おい、トイレは中に…って」
走大の言葉が終わる前に、壮間はシャロを追って出て行ってしまった。
_________
「つい追いかけちゃったけど…」
身を隠しながらシャロの後をつける壮間。隠れ方も上手ではないため、傍から見れば完全にストーカーである。
シャロが商店に入った。本当にタイムセールだったのだろうか。
しばらくすると出てきた。
金が無いにしては、随分とたくさん物を買い込んでいる。
「怪しい…」
シャロもその視線を若干怪しみながらも、家まで帰ってきた。
改めて見ると、シャロの家は小さい。隣の和菓子屋、甘兎庵はココアたちの友人である宇治松千夜の実家。ココアの言う通り繁盛していた。
壮間はシャロの家の敷地に入り、窓を覗こうとする。
普通にカーテンが閉まっている。
壮間の中ではシャロは既に怪しさの塊。ここまで来たらと、壮間は木の外壁に耳をつけ、室内の音に聞き耳を立てる。
中から会話が聞こえる。
「本当に遠慮せずに食べるわね…」
「大食いの人間だったようだ。…おかわりを寄越せ」
「変な感じね、だってアンタ……」
(誰かと話してる…?千夜さんかな?いや、でも口調が…)
そこまで考えて、ふと壮間は我に返った。
独り暮らしの女子高生の後をつけ、家での会話を盗み聞きする。つまり
(ひょっとしなくても今の俺って…変質者なのでは?)
_______
「で、帰ってきちゃったんだ」
「…はい」
街の片隅にある小屋。まず偶然ではやってこれないような場所にある、まさに隠れ家。
山にある小屋はアナザードライブに知られたため、駆はここに拠点を移した。こんなこともあろうかと、彼は誰にも教えていない拠点を複数持っていた。
「情けないな!俺なら何時間だろうがやれるけど?」
「通報されますよ?」
「まぁ、とにかく現時点ではシャロちゃんが一番怪しいってことね。会話ってことは、アナザードライブを匿ってるのかもね。何か訳アリで」
「それだと紗路さんがチクったってことになりますけど。なんか恨まれることしたんですか?」
「心当たりが在り過ぎる」
「駄目だこりゃ…」
ちなみに、アナザードライブが誰の記憶もコピーしてない可能性も考えた。しかし、あんな短時間で駆の昔の事や、家の場所を特定するのはほぼ不可能。
加えて、アナザードライブは変身前の姿を見せている。記憶をコピーしたのなら、姿もコピーした方が動きやすくなるはずだ。
「よし。明日からはシャロちゃんの件は俺に任せて」
「いやいや、駆さんは休んでましょうよ!3か所も撃たれてるんですから…」
「シャロちゃん見れば治るから、マジで。
大丈夫、四六時中シャロちゃん観察して一挙一動を写真に収めればいいんでしょ?余裕余裕!」
「通報しますよ??」
結局、駆は体が痛すぎて外には出られなかった。
__________
それからほとんど捜査も進展することなく数日。
逃亡犯の居場所も分からず、アナザードライブの件も同様。シャロのことは怪しまれず、社会的に問題のない程度で調べているが、中々ガードが堅い。
というわけで、壮間はシャロの家の隣にある甘兎庵にいた。
「んー!おいしいね!」
何故かばったり会ってしまったココアと一緒に。
「聞いて…ココアちゃん…壮間くん……」
ついでに意気消沈している千夜を添えて。
「千夜さん…仕事しなくていいんですか?」
「あのね……最近シャロちゃんが……」
「あ、話聞いてない」
壮間は早々に諦め、ココアと一緒に千夜の愚痴を聞くことにした。
少し話したことがある程度だが、宇治松千夜という少女はかなり自分本位。基本的にはお淑やかな大和撫子なのだが、物凄いマイペースで天然なのだ。
彼女が命名しているこの店のメニュー名からも、彼女の性格が見て取れる。
今ココアが食べているのが、特盛りフルーツ白玉ぜんざい「兵どもが夢の跡」。壮間の食べている桜餅は「黒曜を抱く桜花」である。初見に厳しすぎるメニュー名だ。きっと彼女は大物になるだろう。
「ってあれ、紗路さんの話ですか?」
「そういえば…シャロちゃん最近忙しそうだよね」
「そうなの……ウチにも全然来てくれないし、遊びに行っても家に入れてくれないし…
毎朝玄関先に牛乳置いても、怒るどころかツッコんですらくれないの!」
「嫌がらせが地味に陰湿!」
内容はどうあれ、シャロの様子がおかしいのは皆も感じているようだ。
「シャロちゃんのツッコミが無いと…私…私……!」
「論点そこですか?」
「大丈夫だよ!チノちゃんに壮間くん、ツッコミの若い芽は強く育ってるよ!」
「そう…そうね!諦めるのは早計だわ、ココアちゃん!
ツッコミ界の新世代、ニュージェネレーションズが必ずシャロちゃんを連れ戻してくれるわ!」
「何の話でしたっけ!?」
ココアと千夜を放置しておくと、元の話題や目的が跡形もなくなるのは珍しくない。放置しておくとどこまでも暴走を続ける、混ぜるな危険コンビなのだ。
「話を戻しますよ。とにかく、紗路さんの事が気がかりなのは俺も同じです。ここは一つ…探りを入れてみませんか?」
「黒曜を抱く桜花」を平らげ、壮間は指を立てて2人に提案する。
この二人のどちらかがアナザードライブの可能性もある。が、今この流れならシャロのことを調べるのは自然。怪しまれないはず、というのが壮間の考えだった。
そして数分後。
「だからって正面突破は無いでしょう!?」
「そんな弱腰じゃダメよ!人生、時には真正面からぶつからないと壊せない壁もあるの!」
「千夜ちゃんの言う通りだよ!スクープは己の足と、熱い魂でつかみ取るもの!
おーい、シャーローちゃーん!あーそーぼー!」
隠密どころか、ドアを叩いてシャロを呼ぶココアと千夜。
この2人なら情報収集もノリノリで手伝ってくれると思っていたが、誤算だった。今の2人の気分的に、そういうのは面倒だったらしい。壮間はこのコンビに相談したことを即座に後悔した。
シャロはなかなか出てこない。だが、中では何やらバタバタしているようで、留守という訳ではないようだ。
「アンタは早く隠れて……」「まずはその恰好を……」のようなシャロの小声が聞こえる。やはり、もう1人別に誰かいる。それも、壮間たちに隠しておきたい誰かが。
(今すぐ中を確認したいけど…鍵かかってるし、ドア壊すわけにも…)
そんな中、
千夜が普通にドアを開けた。
「そういえば、合鍵持ってたわ♪」
ずっこけそうになるが、壮間は急いで中を確認する。
そこにいたのは何かをクローゼットに押し込もうとするシャロと、
青い首元の蜘蛛怪人。
ロイミュードだった。
__________
「なるほど、それでこの状況と……ハァ……」
走大は深いため息を吐いた。
余りに抵抗が無かったため、そのロイミュードを走大のいる交番まで連れて来てしまったからだ。
シャロといたロイミュードは女性の姿になり、取り調べのように椅子に座っている。
茶髪のロングで、スレンダーな女性な姿をしており、表情はどこか鋭い。
「えっと…これはその…違うの!彼女はその……」
「シャロちゃん、正直に全部吐いたら楽になるよ」
「疲れたでしょう?コーヒーでもどう?」
「カフェインで吐かせようとしない!」
完全に取り調べテンションの2人、千夜は笑顔で缶コーヒーを差し出した。
走大と似ていて、シャロはカフェインでベロンベロンに酔う体質なのだ。
そんな中、ロイミュードが口を開いた。
「殺すなら殺せ。仮面ライダードライブ、お前もこのナンバーには見覚えがあるはずだ」
女性の姿からロイミュード態に変化、すぐに人間態に戻る。
その時一瞬だけ見えたナンバーは、「018」だった。
「018…ミカドの奴と会った時に暴れてた奴か。コアが残ってたのか…」
「そうか、なら話は早いな」
その場にいる誰のものでも無い声が聞こえた。
壮間がその存在に気付き、声を上げる。
「ミカド!?お前…ラビットハウスで働いてるんじゃ」
「俺がいつまでも女に後れを取ると思うか?
ドライブを倒しに来たが、これはこれで好都合だ。ロイミュード、今度こそ俺が殺す」
ミカドが018に殺意のある鋭い視線を向ける。018も同様だ。火花が散って爆発しそうな雰囲気に
「ちょっと待ってください!」
焦った様子のシャロが間に入った。
「確かに彼女はロイミュードだけど、一度も暴れてないし…実際襲われなかったし…
とにかく、私の話を聞いて!」
話は数日前に遡る。
「あの…大丈夫で……きゃっ!?」
夕方、木陰に倒れた女性を見つけたシャロ。
その女性は近づいてきたシャロに鋭い視線を向け、辛そうな様子を崩さないままシャロの肩を掴んだ。そして立ち上がり、シャロを木の幹に抑えつける。
女性の姿が変わった。
骸骨頭の蜘蛛のような姿、スパイダー型ロイミュード。
悲鳴が溢れそうになるシャロ。
しかし、そのロイミュードはすぐに倒れてしまい、人間態へと戻った。
全身に深い傷がある。血は出ていない代わりに火花が散っており、傷口から見える配線が人間との違いを訴えている。
思わず息をつくシャロ。彼女はロイミュード、言うまでもなく危険のはずだ。ならばすぐにここから離れるべき。
しかし、シャロは今にも消えそうな吐息の彼女を、見捨てることはできなかった。
翌日。
「ここ…は……」
018は目を覚ました。
記憶情報を探る。芸術家のような男が現れ、追っていくうちに仮面ライダードライブと対峙。019と082と共に撃破された。そこからの記憶は定かではない。かろうじてボディも残っているようだが、損傷が激しい。
辺りを見渡し、位置情報を検索する。
四方が木の壁に囲まれ、窓もある。
「どこかの小屋か…?もしくは物置」
「家よ。狭くて悪かったわね」
後方に生体反応を感知。食事を持ったシャロだった。
018は彼女に見覚えがあった。仮面ライダーとの関りが疑われる人物の一人だ。
「…私を拉致したところで、バーンは気にも留めないぞ」
「拉致って…違うわよ。なんとなく放っておけなかっただけ。
誰にも言ってないから、安心しなさい」
自分の身体を見ると、傷の手当てがしてあった。機械の身体であるため人間の治療は意味を成さないが、それでも治そうとしている気持ちは事実のようだ。
「私が敵意を持っているとは思わないのか?今ここで、お前を始末してしまってもいいんだぞ?」
「それを考えなかった…ってのは嘘だけど。ウサギに比べればちっとも怖くないわよ」
「……変わった人間だな。そして運が良い。
このままバーンから逃げられるなら好都合だ、私はしばらくここで身を隠す。
だが勘違いするな。私はいつでもお前を殺せる。全ての主導権は私にある」
「とまぁ、こんな感じで…」
「いや、シンプルに脅されてません?」
壮間が冷静なツッコミを入れる。
「まぁ、そうなんですけど。この数日で良いところも色々見えたというか…」
「安い食い物と狭い建物、すぐ大声でツッコミを入れる変な貧乳女に目をつむれば、まぁまぁな隠れ蓑だった」
「早速意見食い違ってますけど。DV夫と嫁みたいになってますけど」
「何の問題も無いな。今すぐ殺す」
「ちょ…ちょっと待って!」
「そうだよ!なんでお前はそうやってすぐに…」
ドライバーを装着したミカドを慌てて止めるシャロと壮間。
そんな2人に乱雑な視線を向け、ミカドは言い捨てる。
「逆に生かしておく理由が無い。ロイミュードは人の悪意を遂行する、そういうモノだ。人が死んでからでは遅いのが分からないのか?」
「それは……」
「この子は誰も襲わない!ロイミュードと人間だって…友達になれるって信じてる!」
言い淀む壮間とは逆に、シャロははっきりと言い放った。
ミカドの眼が今までに無いほど鋭くなる。思わず震えてしまうほどに。
「シャロちゃんが素直……!?」
「ココアちゃん!これはウサギの雨が降るに違いないわ!」
「そこの二人うるさい!」
空気を読まないココアと千夜。そんなカオスな雰囲気に、思わず走大が吹き出す。
「ハハ……そうだな、どっちも正しい。
お前はどうなんだ?ロイミュード018」
「……別に死にたいわけでは無い。生かしてくれるなら勝手にしろ」
「最後に。お前は“前”の戦いで、人を殺したか?」
「……殺してない。私の力は戦闘向きではないからな、戦いは好きじゃない。
だが、人を殺すことに抵抗はない。命じられれば殺すだけだ」
その言葉は、必然的に空気を凍らせた。
ミカドはゲイツのウォッチを取り出すが、そこを走大が止める。
「正直な奴だ!よし、彼女の処遇は…壮間が決めろ」
「はい!?俺ですか?!」
「そーいうこと。じゃあ俺は捜査に戻るから」
「え、ちょま…走大さん!」
壮間の叫びは届かず、走大はスタスタと何処かへ行ってしまった。
シャロの慈悲を求める視線と、ミカドの鋭すぎる殺意を一身に浴び、壮間は肩を落とすのだった。
________
一先ず保留となった、018の処分。シャロは帰り道で一人安堵に浸る。
「…何をそんなに緊張したんだ」
「あんたはもう少し緊張しなさいよ…ほんと馬鹿正直というかなんというか…」
「私がコピーした人間がそうだったからな。ロイミュードの人格など、所詮はその程度。
そんなロイミュードと友達など、お前はいつもそんな妄言を吐くのか」
018は特に感情を乗せない口調で言う。
シャロもまた、淡々と答える。
「なれるわよ。私だって昔は千夜くらいしか、友達って言える人いなかったもの」
「だろうな。食器に興奮する変態だからな」
相変わらず歯に衣着せぬ018の言葉に、シャロはむくれて小突く。
「でも今は、ココアやリゼ先輩、チノちゃんやカケル…たくさんの友達ができた。
本当は優しいあんたなら、みんなと同じように友達になれるわ」
「優しい?」
その言葉は、018にとってあまり触れたことのないものだった。
018はコピー元の人間の記憶を探る。遡る事数年前、腹部を刺され、死ぬ寸前だった女性を018はコピーした。同種に殺されるほどの経緯や感情に興味があったからだ。結果として得たのは、つまらないものだったが。
この桐間紗路という女は、コピー元の記憶にある人間のどれとも違う。彼女が知る人間は、同胞で騙し、殺し合い、ロイミュードですら嫌悪感を覚えるような、もっと醜いものだった。
(少し、興味があるな)
018はシャロの頭にそっと触れる。
その一瞬で、おおまかな彼女の記憶と感情を読み取った。
記憶回路に流れる温かい感情は、全身を流れる血液のように、彼女の体に熱を持たせた。
「……ガイストが焦がれる訳だ」
018は道端のウサギに怯えるシャロを見て、彼女に見えないように小さく微笑んだ。
_______
一方で、人目の付かない裏路地で電話で話をする壮間。
もちろん相手は駆だ。
『とりま、シャロちゃんの疑いは晴れたってことね』
「まぁ…でもアナザードライブを探す以外に、こんな難題が来るなんて…」
いつもの通り悩む壮間。相手はロイミュード、当然倒した方がいいに決まっている。しかし、018は悪い奴には見えなかっただけ、倒すべきなのかが悩ましい。
「駆さんなら…どうします?」
『倒すね。ソッコーで』
ミカド、シャロ同様、駆も即決だった。
『善人をコピーしたって、ロイミュードが善人になるわけじゃない。その辺の確率とシャロちゃんの命を天秤に掛ければ、もちろんシャロちゃんの方が大事さ』
「確かにそうなんですけど…それでも……」
『迷いすぎ。一分一秒迷った分だけ、取り返しのつかない“遅れ”になる。だから俺は…速さを求めたんだ』
「駆さん…?」
『…あぁ、ゴメン。ま、俺は全身ズッキズキだからね。ソイツの事とアナザードライブ、任せるよ』
それだけ言って通話を切ろうとする駆を、壮間が引き留める。
「あちょっと!俺、走大さんに言われたんです。“お前は他人の正義に縛られてる”って……駆さんは、正義って…何だと思います?」
『さぁ?』
悩みを打ち明けたつもりだったのだが、帰ってきたのは拍子抜けな返事だった。
『ソウさんが何を言いたいかは、何となく分かるけどね。はっきり言えるのは、ソウさんは“正義”って言葉を使いたがらなかった…ってとこかな?』
その意味を聞き返す前に、駆は通話を切ってしまった。
壮間はまた、深くため息をついた。
_________
また時間が経って翌日。
018にアナザードライブ、まずは心を落ち着かせるため、ラビットハウスへと足を運んだ。
「さぁ、どっちが本物のシャロちゃんでしょうか!」
「こっちです。気品オーラを感じます」
「コーヒー飲ませれば分かるんじゃないか?」
店内では、2人のシャロがいて、ココアが取り仕切る「シャロ当て大会」なる酔狂な何かが開催されていた。まぁ、言うまでもなく片方が018だというのは、壮間にも分かった。
「馴染み過ぎじゃないですか!?」
「あ、壮間くん!018ちゃんがシャロちゃんになれるっていうから、ちょっとやってみたくて!そうだ、次私になってみて!」
「コピーもそれなりに時間と力を使う。そう何人も同時にはできない。その点、この女の記憶は容量の無駄だったな。メロンパンと食器とそこの女だけが生きがいの、つまらん記憶だった」
「え…私か?」
「おバカー!」
シャロの姿のままリゼを指さす018、それに激しく動揺するシャロ。
なんというか、既に018はこの空気と一体になっているようだった。
困惑する壮間は、平静にコーヒーを淹れているチノを見つけ、尋ねる。
「あの…これは何が?」
「朝からずっとこんな感じです。みんな働かなくて困ったものです」
「問題そこですか?」
「彼女は良い人です。コーヒーおいしいって言ってくれたから、ミカドさんよりも優しいです」
「あれ…そういえばミカドは」
いた。一人だけ離れた席に座っている。
話によると、最初は物凄い衝突したらしいが、皆の説得で一先ず落ち着いたという。それでも凄まじい眼光で018を見ているが。
しかし、呆れて放り出さず、しっかり監視しているあたりは流石だ。
「正直…俺はまだ疑ってます。ミカドの居た未来では、仮面ライダーと怪人が人々を虐げている。それが俺や彼女の本質なんじゃないか…って」
「壮間さんは、王様になりたいんですよね。王様になって、どんなことがしたいですか」
「俺は……決して褒められる人間じゃない。でも、認めて欲しい。この世界の主人公は俺だって。こんなこと言いながら、ずっと迷ってばかり。俺がどうするべきなのかも…」
シャロたちの方から歓声が上がった。
どっちの手にコインが入っているか、という遊びを、018が百発百中で当てている。
「触れたものの思念をある程度読み取れる。私の力だ」
「すごいな、どんな捕虜の尋問でもイチコロじゃないか!」
リゼが物騒なことを言って、また笑いが起こった。
和やかだった。ロイミュードと人間が笑いあう、そんな世界が、数平方メートルの中で実現している。
そんな光景を見て、チノは口元に手を当て、笑う。
「私は…みんなが友達になって、コーヒーを飲んで笑える。そんな世界がいいです。
誰でも友達になれるって、ココアさんに教えてもらいましたから」
ココアのモットーは「会って3秒で友達」。壮間と打ち解けるのも早かった。
「いっそみんながココアさんみたいな人なら……
いや、それは大変そうですね」
「……ですね」
少し想像して、壮間もつられて笑う。
「温いな」
会話を聞いていたミカドは、そう吐き捨てた。
「そんな理想論で片が付くなら、俺はこんな時代に来てはいない」
________
一度外に出て、018はその姿をシャロ以前にコピーしていた女性の姿に戻す。
大きく息を吸った。淀んでいたとも思えた空気が、嫌に澄んで感じた。
「変な人間ばかりだ。いや、変なのは私もか」
彼女たちは018を受け入れた。まるで人間の友のように。
きっとそれは理屈や時間がそうさせるのではない。ただ親しくなれると信じているだけだ。甘ったるい、それでいて居心地は悪くない感情だった。
これはシャロをコピーしたせいだろうか。
いや、きっと違う。
「美しい街だ…考えたことも無かった。この世界で、私達も普通に生きることが出来るなら……」
叶うなら、もっとあの場所に居たい。
そんな感情が、彼女の中には芽生えていた。
「夢は覚めたか、018」
そんなエソラゴトは、触れた途端に瓦解する。
希望の残骸は、一瞬で彼女の足を奪い、絶望へと叩き落す。
突然現れた男が、018の首を握った。
服装や気配を変えているが、間違いない。
何よりその眼光を間違うはずがない。
「バーン……!」
幹部ロイミュード、バーン。
018の知りうる中で、最も残酷なロイミュード。018の直属の上官。
「2つ驚いたぞ。貴様が生きていたこと、そして人間どもと慣れ合っていたことだ。
誉れ高き我らロイミュードが、人間と並んでいる光景は見るに堪えなかったぞ。恥知らずもここまで来るとコメディだな」
「か…ハッ…!」
バーンの腕に力が込められる。そしてそれは、018の喉を焼くほどの激しい熱となる。
「だが、これは好機だ。貴様のその芥に等しい数刻を、我らが戦火の種火としてやろう。
貴様がコピーしたあの女を、今すぐ殺して成り代われ」
「なっ……!?」
シャロを殺して、スパイとして潜入しろ。そういう意味だ。
018には、その言葉が理解できなかった。たった数日、それでも掛け替えのない施しをくれた。そんな彼女を、なぜ殺さなくてはならないのか。
だが、そんな意思は暴君が関することではない。
「選べ。今すぐ焼け死ぬか、女を殺すか」
_________
「あ、どこ行ってたのよ」
ラビットハウスを出たシャロは、そこで立ち尽くしていた018を見つけた。
「一旦帰るわよ。その前に買い物しなきゃ、歓迎会するってココアたち張り切ってたし。
あんたの歓迎会なんだから、手伝いなさいよね」
彼女の声が聞こえるたびに、バーンの声が反響する。
018は部下で唯一、バーンの処刑を知っている。筆舌に尽くしがたい痛みと絶望を文字通り全身に焼き付け、死の実感を味わわせながら朽ちさせる。
彼女を苦しめるのは死の恐怖ではない。バーンは彼女にとって、死よりも遥かに恐ろしい存在だ。
「って、聞いてる?」
「…あぁ」
シャロの言葉など、すでに耳を通過するだけ。息をする度、瞬きをする度、人間らしい動きをする度にその恐怖の中に沈んでいく。
彼女がバーンを忘れられなかったように、彼も018を忘れない。死んだと思わせても、人間と時間を過ごしても、逃げる場所など最初から無かった。
018の視界には、背中を向けたシャロが居る。
018は人の姿を捨て、機械仕掛けの肉体を見せる。
「…死んでくれ」
その怪物は、揚々と歩みを進めるシャロに、腕を伸ばした。
「本性を見せたな、ロイミュード」
018の腕が届く寸前、その腕を掴んだのはミカドだった。
ミカドは018をシャロから引き離し、蹴りを入れる。シャロはその状況に驚きを隠せないが、それでもシャロはミカドの前に立ちふさがる。
「ま、待ってください!これは……そう、きっと何か理由があるはずです!」
「理由がどうあれ、このロイミュードがお前達の厚意を裏切ったのは事実だ。
これ以上、奴を生かしておくわけにはいかない」
ミカドはジクウドライバーを装着し、ゲイツライドウォッチをホルダーから外す。
そこに現れたのは、騒ぎを聞きつけた壮間だった。
「ミカド!これは…」
「018が桐間紗路を殺そうとした。もう貴様のような愚図の判断など、聞くまでも無い」
《ゲイツ!》
「変身!」
ドライバーにウォッチをセットし、ミカドが仮面ライダーゲイツに変身。
倒れた018の腕を持ち、胴体に膝蹴りを叩き込む。
「俺としたことが甘かった。このツケは今すぐ返させてもらう」
ジカンザックスを装備し、おのモードで次々に無抵抗な018を斬り付ける。
止めるように叫ぶシャロだが、ミカドがそれを聞き入れることはない。
壮間もジオウウォッチを構える。
だが、そこから動くことが出来ない。
「無理なのか…?怪人と人間、仮面ライダーが分かり合うなんて……」
今ここに居る者の中で、壮間だけが迷いの渦中にいる。
チノたちに教わったその理想は、目の前で崩れ去った。何を信じればいいのか、何が正しいのか。
正しくあるために、殺すべきなのか。
本当にそれしかないのか。
018はゲイツに抵抗しない。死を望んでいるようにも見えた。
ゲイツがとどめを刺そうとしたその瞬間。
018とゲイツの間に爆発が起こった。
「何だ!?」
018は爆発の正体を知っている。これはバーンの能力。
これはバーンからの、「このまま死なせはしない」というメッセージ。
「私は…お前を殺そうとした。殺さなければならない」
「待って!千夜やココアたちは、あんたを受け入れてくれる!私だって!
本当に…一緒にはいられないの!?」
018が一瞬だけ、人間態に戻った気がした。
その口から出た言葉は
「無理だ」
018の姿は、2度目の爆発に紛れて消えた。
_________
夜になっても、炎に消えた018の影が頭から離れない。
そんな壮間は交番で走大の代わりに番をしていた。
「紗路さんを狙って、彼女はまた来る。その時は…戦わなきゃいけないのかな」
交番には誰もいない。机には、走大が好きなミルク飴の箱が置いてあった。
一つ頂戴して、壮間は天井を仰ぐ。
「走大さんは、なんで俺に委ねたんだろう。あの人なら…いや、天介さんやAfterglowの皆なら、ミカドや紗路さんみたいに答えを出せるんだろうな」
分からなければ空欄で済ませてはくれない。制限時間は長くはないだけで不確定。選択肢は2つのようで無数にある。一問でもミスれば自分も他人もきっと許してはくれない。机に向かって過ごした夜の方が、何十倍も楽だ。
考え込む壮間の頭に、外から帰ってきたシフトカーのランブルダンプがタックルをかます。
「痛った!でも、ダンプが帰ってきたってことは」
シフトカーはそれぞれ意思を持つ。壮間はダンプがクラクション音で伝えんとすることを、なんとなく理解していた。
「見つかったんだな…018が」
________
「なァ…姉ちゃん、金貸してくれよ…」
裏路地で女性を抑えつけ、平和な街には不似合いな台詞を吐く中年の男。
男は更にナイフを持ち、女性の首にその刃を密着させた。
そんな状況でも、辟易したような表情で男を見る女性。
ロイミュード018の人間態だ。今の彼女にとっては、この男など周囲を飛びまわる蠅程度の存在だった。
「もうルパンの宝なんて知ったことか!最初からこうすりゃ良かったんだ、適当に誰か殺せば金なんて手に入る。藤川の奴も殺されたんだ、俺が誰殺したってバレるもんか!」
この男は、この街に逃げ込んだ3人の指名手配犯の一人、木嶋。彼は力を込め、刃を018の首に立てる。
痛みが走る中、018は木嶋の腕に触れ、能力を使う。
(ついさっき一人殺してるな、顔も知らない女を)
立てた刃は皮膚を切り裂けど、ロイミュードの体から血は流れない。
「人間が皆、お前のようなクズなら…まだ楽だったのだろうな」
「おい、誰が声出していいって……」
018はロイミュード態に姿を変え、木嶋を跳ね飛ばす。
突如目の前に現れた人外に、木嶋の感情は一瞬で塗り替えられた。
「バ…バケモノぉぉぉッ!?」
「そうだ。もっと罵れ。もっと人間に失望させろ!」
018が吐いた糸が、木嶋の首を強く締め付ける。
糸を握る腕に力を込める。すぐに抵抗はしなくなり、呼吸が消えていくのが糸から伝わってくる。
『本当は優しいあんたなら』
「……!?」
その命を奪う寸前、シャロの声がフラッシュバックする。瞬きをする瞼の裏には、彼女の姿がハッキリと映っている気さえした。
018は首を絞める糸から手を放し、怪人態から人間態に姿を戻す。
「こんな人間さえ、殺せないというのか…」
近付いてくる早い足音が聞こえた。シフトカーが近くにいることにも気付いていた。
「私を殺しに来たのか?」
「…それは……」
日寺壮間だ。018も知っていた。バーンからも知らされた、コア・ドライビアを搭載しない仮面ライダーの一人。
「戦闘が始まればバーンにも伝わる仕組みだ。私を殺したいなら暗殺を薦める。
あの女を殺されたくなければ、手早くすることだな」
「……死にたいのか?」
「死にたい…か、そうだな。
人間の中では生きられず、ロイミュードとしては人ひとりも殺せない。こんな中途半端に苦しむくらいなら、死んだ方が楽だろうな」
018は右手で頭を抱え、そんな自嘲を吐く。
握り固められた左手、酷い悲しみでその整った顔が崩れそうになる。
壮間が生きてきた普通以下の人生で、こんな悲しみや絶望は見たことが無かった。
ただの機械人形が、こんな顔をするのか?殺人マシーンが、こんな人間みたいに悩むのか?人類の敵が、こんなにも優しいのか?
(なんで気付かなかったんだ…こんな単純な事に!)
壮間は気付いた。
ロイミュードとか、人間とか、仮面ライダーとか、どれが正しいとか間違ってるとか。そんなの最初から違った。
「お前は…ロイミュードだよ」
壮間がそんな言葉を口にした。
018がそれを聞いて笑う。彼女の口から自嘲が飛び出す前に、壮間は力強い口調で続ける。
「ロイミュードだから、人を殺さなきゃいけない?そんなわけない!どうしようもなくクソみたいな人間だっている。仮面ライダーのくせに人を苦しめる奴らや、いつまでもウジウジ悩んでる奴だっている!だったら…!優しいロイミュードがいたっていいだろ!」
壮間は項垂れる018に手を差し伸べた。もう迷いは無い。
握り固めていた左手が開く。だが、その腕は上がらない。
「お前は人間の中で生きたっていいんだ!ミカドの事は…俺に任せろ!アイツも悪い奴じゃない!」
「やめろ…そんな夢を私に見せるな!例え誰が許しても、バーンがそれを許すわけない!」
「じゃあ俺達がそのバーンって奴を倒してやる!俺は…ちょっと弱いけど、ミカドは俺よりずっと強いし、走大さんはその何倍も強いから!まぁミカドが協力するかは…頑張る!」
壮間は精一杯の言葉で018に呼びかける。地味に地に足付いた考えなのが実に彼らしい。だからこそ、その迷いのない声は彼女に伝わった。
「ロイミュードだろうと…関係ないというのか。お前達は。
馬鹿げた理想論だ。でも、
そんな世界なら、きっと……」
018はその手を伸ばす。彼女の顔は、皆に負けないくらいの笑顔で…笑っていた。
耳を劈く銃声が、その身体を貫くまでは。
「018!」
闇に隠れた銃手の弾丸が、018の身体の中央、すなわち胸を射抜いた。
倒れる彼女を壮間が抱える。
影を踏んで迫るは、軋んで醜い機械音。聞き覚えのある、嫌な音。
壮間の中で、今まで希薄だった感情が、一気に限界まで達したのを感じた。
それは言うまでもない、「怒り」だ。
「アナザードライブッッ……!!」
銃口から煙を上げたアナザードライブが、そこには立っていた。
倒れた木嶋を見つけたアナザードライブは、冷たい鉄の眼を向け、
「死ね」
何の躊躇もなく木嶋の脳天を銃で撃ちぬいた。確かめるまでもなく、即死だ。
「お前…そんな簡単に人を…!」
「正義のためだ。悪の存在は、世界から一つ残らず消さなければいけない」
「018もかよ…彼女は誰も、傷つけてないんだぞ!」
「当然だ。正義は全て、俺にある」
018は消えかける意識で、アナザードライブの姿を見据えた。
視界の片隅に映る壮間の顔は、怒りに満ちている。
(怒っているのか、私のために…そうか、こんな死に方が…出来るなんて……)
銃弾は018のコアを貫いている。例えどんな治療を施しても、復元は不可能なのは分かっていた。
018は壮間に触れ、能力を使い、壮間の頭に浮かんでいるアナザードライブの情報を把握する。
そして壮間の腕を振りほどき、アナザードライブに向けて駆け出した。
「うあぁぁぁぁぁっ!!」
そんな捨て身の攻撃だろうと、アナザードライブは感情を持たない拳で彼女を振り払った。コアが消えかけ、ボディを維持できない。
だが、018はさっきの一瞬で、アナザードライブに「触った」。
彼女の能力がアナザードライブの思念を読み取り、彼の扮する姿、その正体を、彼女の記憶に焼き付かせた。
「最期に…伝える……奴がコピーしたのは───!」
その状況に焦りも見せず、ただ作業をするかのように再び銃声が響く。
次に貫いたのは、彼女の喉。
018の発声機能が、完全に消失した。
最期の言葉すらも、その「正義」は許しはしない。
彼女はロイミュードだ。それでも、「最期に思い残した事」なんて、人間のようなことを考えてしまう。
(最期に…一言、謝りたかった、礼を言いたかった…ただ一度だけでも、お前の名前を呼びたかった……)
壮間は018に駆け寄る。しかし、運命はそれを待たない。
消える腕と指先で、018は地面にある“文字”を描く。
アルファベットの「R」。
「待てよ…死ぬな!死ぬな!!」
018の指先がRの上に運ばれた瞬間、
3度目の銃声が、彼女の頭を貫く。
涙で濡れた視界。壮間が瞬きした後の世界で、
018の身体とコアは、何も残すことなく消え去っていた。
壮間は無念を叫ぶ。
今になってようやく理解した。迷いとは、罪だ。
もっと早く、答えを出していたら。もっと早く、彼女を信じられたら。もっと早く、アナザードライブの正体を掴めていたら。
存在し得ないイフだとしても、存在できたはずの可能性だ。それを奪ったのは、彼女の処遇を決めることのできた、アナザードライブの思惑を知っていた、壮間自身だ。
「何を嘆いているんだ?そいつは怪物だ。存在そのものが悪、死んで当然だ」
アナザードライブの声だ。
怪人だろうが、人間だろうが、仮面ライダーだろうが、そんなカテゴライズに意味は無い。ただ力を持った「悪意」が、誰かを傷つけるだけ。
「悪?人間じゃないのに、あんなに優しかった彼女が…?
だったら俺も、彼女を殺したお前も!!救いようもない極悪人だ!!」
《ジオウ!》
壮間はジクウドライバーにジオウウォッチをセットし、装着。
「変身ッ!!」
《ライダータイム!》
《仮面ライダー!ジオウ!!》
「俺が悪…?その言葉、撤回しろ!」
ジオウに変身し、アナザードライブに殴り掛かる。
怒りの込められた拳で、赤い装甲を殴りつけ、さらに顔面を殴打。
アナザードライブは炎の纏ったタイヤを放ち、さらに銃撃で牽制。
ジオウは両腕で防ぐも、勢いを殺しきれない。
「お前は絶対に…許さない!!」
《ビルド!》
ビルドウォッチを起動し、ドライバーにセット。
出現したビルドアーマーを蹴飛ばし、飛散した装甲を装着する。
《アーマータイム!》
《ベストマッチ!》
《ビ・ル・ドー!》
複眼に文字が刻まれ、ドリルクラッシャークラッシャーが炎のタイヤを弾く。
高速回転する光刃が生み出した波動はジオウを加速させ、敵の攻撃を受け付けない。
脚のキャタピラー機能をフル稼働させ、アナザードライブにドリルを突き出して突進する。
「俺の邪魔をするお前も…裁かれるべき悪だ!」
アナザードライブのドアを模した盾は、その攻撃を寄せ付けない硬さを見せつける。
空いた右手に生成された手裏剣のようなタイヤは、軌道を変えながらジオウを何度も斬り付けた。
強い。アナザービルドよりも確実に。
とてもじゃないが、ドライブの力を持たないジオウの手に余る相手だった。
「でも…引き下がれるか!絶対に!」
「正義を理解できない子供風情が!」
戦いに再びが火が付き、激しくぶつかり合う両者。
空間を暴れるような闘気が支配するようだった。
両者が気付いていなかった。そこに現れた“彼”に。
「静かにしてくれねぇか」
一言で、ジオウとアナザードライブの身体が止まった。まるで土の中にいる感覚。
威圧感か、恐怖か。どちらも正解だった。ただ、「本当に身体が静止している」のも、また事実。
(重加速!?シフトカーを装備してるのに?)
現れたのは、青いコートの大男。彼は018が消えた場所にしゃがみ込み、その地にそっと触れ、目を閉じた。
「すまねぇな、もう一度会ってやれなくて。ただ一言、生きていてくれたことに礼を言わせてくれ」
その男、ガイストは噛みしめるように息を吸い込むと、立ち上がった。
「018を殺したのは、テメェか?」
その眼光が向けられたのは、アナザードライブ。
一瞥で死んだとさえ錯覚してしまうほどの迫力が、アナザードライブを刺し貫いた。
その威圧は、ジオウにすら伝わっていた。
少なくとも、壮間はこれほどに強い生命体を、他に知らない。視線だけでそう断言できる。
その空気の中で動いたのは、アナザードライブの口だった。
「貴様もロイミュードか…!平和を乱す悪の因子、世界を汚す存在!正義のために、お前達の存在なんか…」
「もういい」
辺りを覆っていた超重加速が解除される。
その瞬間、ガイストの手から放たれた衝撃波が、アナザードライブの全身を砕いた。
「死ぬ前に心に刻め、“正義”は何よりも重い言葉だ。貰った紛い物の玩具に喜ぶだけの男が、世界の代弁者にでもなったつもりか?笑止千万!!」
ガイストの姿が、怪人態へと変化する。
発達した四肢に燃え上がる蒼い炎。植物の枝のように、背中から突き出た鉄骨。機械的な肉体には、背骨や肋骨といった人体のモールドが刻まれている。半透明な頭部に目は存在せず、鬼を想起させる二本の角が伸びる。
まさしく「霊」や「魂」の具現化。それは「ガイスト」を名乗るに相応しい姿。
「その姿も不快だな、栗夢走大は…一度として己を“正義”と名乗ったことは無い!」
ガイストの胸の空洞から蒼い炎が噴出し、彼の手の中で戦斧を形作る。
燃え上がる戦斧がアナザードライブの盾を軽々と破壊。大地を割るような一撃は、鉄槌にも似た斬撃。
たった一撃でアナザードライブの体は地に叩きつけられ、ナパーム弾の炸裂の如き爆発を起こした。
アナザードライブの変身が解け、相場連二の姿が地を転がる。
ガイストロイミュード。今のジオウの力では全く手の届かない領域の力。その差はまさに天地。
戦う気すら起きない圧倒的な力を目の当たりにし、壮間はただ立ち尽くしていた。
「018の最期を看取ったのは、お前か?」
ガイストがそう声をかける。
壮間は萎縮しながらも、頷いた。
「優しい奴だっただろう。018は…人間の中で、どんな顔をしてた」
「……笑ってた」
「そうか。それを覚えておいてくれねぇか。
最期まで、俺達には見せてくれなかった笑顔だ」
視線を落とすと、相場の姿は無かった。逃げたのなら、ガイストが見逃すはずがない。
まるで、「時間を止めて逃げ出した」ような。
ガイストも去っていった。敵と言えど、壮間はそれを追いはしなかった。
「忘れられないさ…例え、歴史が消えても」
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カフェのテラスで、ハーブティーを嗜む青年。
分厚い本を持った預言者ウィルは、カップを置いて本を開いた。
「誰かが言った、“勇気とは怖さを知ること、恐怖を我が物とすること”。私と同じく、ウィルの名を持つ者の言葉です。
我が王はこの一件で、理想と命が持つ優しさを知った。また同じく、迷うこと、失うことへの恐怖を、溢れ出す怒りを、届かない絶対的な力を知った。それらは必ず、我が王を強くする」
本を閉じた。
「ただ…このまま我が王が、ドライブの力を受け継ぐことが出来れば良いのですが……」
まぁ、ドライブ編だし必要かなって思って。
次回はミカドメインで、アナザードライブの正体を明かします。ドライブ編は残り3話の予定!最後までどうかひとっ走りお願いします!
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名言提供は名もなきAさんでした!ありがとうございました!
今回の名言
「“勇気”とは“怖さ”を知ることッ!“恐怖”を我が物とすることじゃあッ!」
「ジョジョの奇妙な冒険」より、ウィル・A・ツェペリ。