仮面ライダージオウ~Crossover Stories~   作:壱肆陸

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ういっす146です。響鬼×いぬぼく編2話です。
今回も短めで、いぬぼくの方を掘り下げる感じになってます。

注意が2つありまして、
①前回重大ミスったので、しれっと書き替えた部分があります。
②今回の話はいぬぼく本編のネタバレが含まれております。




在りし日の僕ら

「んヴォードッ!!怨敵に対し挨拶は愚か、顔も見せぬとは実に怠慢ッ!」

 

「うるさいなぁ、アヴニル。別にいいじゃんか、気乗りしなかったし…」

 

 

洋館の扉を蹴破って嘆く、紳士のような姿の青年。

ガムを噛みながら、ウンザリした様子で少年は突っ伏している。

 

彼らこそ、アナザーライダーを生み出すタイムジャッカー。アヴニルとヴォードである。

 

 

「あーそうだ。“オゼ”が怒ってたよ。例の重加速エネルギー圧縮機能…グローバルフリーズの再現?できるアナザードライブウォッチ、無駄にしちゃってさ」

 

「知らぬわ!吾輩ではなく、あんな出来損ないを寄越した彼奴が悪いッ!

大体、あの半端な王の器…ウィルが選んだ王とやらが邪魔をしなければ、万事!上手くいっていたのだ!違うか?オゼの奴にもそう伝えておけ!」

 

「えー…嫌だ。僕あの子苦手だし。お前も苦手だけど…」

 

「ふはははッ!心外ッ!」

 

 

アヴニルは楽しそうに机に脚を乗せ笑うが、ヴォードは疲れた様子でガムを吐き捨てる。

 

 

「…オゼと言えば、貴公でなければ響鬼はあの小娘が選んだのか。実に悪く…ないっ!強さだけは吾輩が認めてやっても良い!」

 

「そだね。ホント、これで終わってくれればいいんだけど…」

 

 

 

_______

 

 

「よし。片平、ここ答えろ」

 

「はいっ!酢酸ナトリウムです!」

 

「片平、今数学な」

 

 

 

 

 

「ダメだぁぁぁぁ~……!」

 

 

放課後。チャイムが鳴ったとたんに壮間に泣きつく香奈。なんというか、今日は香奈のポンコツ具合が輪をかけて酷かった気がする。

 

 

「香奈、今日あんまり寝てないでしょ」

 

「ギクッ」

 

「声に出しちゃったよ。無理は良くないって、しかも空回りしてるし」

 

「そんなこと言ったってさぁ…」

 

 

香奈は行動が分かりやすい。思い立ったら本当に行動までが早いのだ。

今回のように恥をかくことも多いが、その点は壮間も深く尊敬しているし、見習うべきだと思っている。

 

 

「じゃあさ、今日の夜にウチで勉強教えてよ!」

 

「えぇ…両親に教えてもらえよ」

 

「今日はどっちもいないの!ね、お願い!ご飯作るからさ!」

 

 

若干距離が近すぎる気もするが、幼馴染らしい会話が続く。そんな普段通りのやり取りの中でも、香奈の中の違和感がやっと堰を切った。

 

 

「で、ソウマ。その怪我なに?」

 

 

香奈が指さすのは壮間の体。日常に支障が出るほどでは無いが、打撲や擦り傷が多く、湿布や包帯まで付けている。

 

 

「……転んだ」

 

「はい嘘」

 

 

秒でバレる。しかし、正直に言う訳にもいかない。

昨日アナザー響鬼に一方的にボコボコにされました、なんて例によって言えないのだ。

 

壮間はミカドの方をチラリと見る。

同じくボコされたはずだが、ミカドは平気そうに見えるのは何故だろう。

そして、今日も今日とてミカドの席には人だかりが生じていた。

 

 

「転校生くんと喧嘩した…わけないよね、ソウマだもんね!」

 

「悪かったよ、貧弱で」

 

 

ミカドは昨日と同じように人の手を振り払い、教室から出ていこうとする。

咄嗟に立ち上がり、ついて行こうとする壮間。しかし…

 

 

「来るな日寺、足手まといだ」

 

 

切れ味の鋭い言葉が壮間を刺し、ミカドは冷たく去っていく。アナザー響鬼を探りに行ったのは間違いないが、壮間とてここでじっとしている程、落ちぶれてはいなかった。

 

 

「転校生くんとソウマって、どーいう関係…?

って、ソウマ。どこ行くの?」

 

「え…っと、部活!そう、部活だから!」

 

 

急いで立ち上がった壮間は、それだけ香奈に答えて、駆け足で教室から出ていった。

 

 

「珍し。ソウマが部活サボるなんて…」

 

 

 

________

 

 

 

そして、壮間が向かった先は

 

 

「調べものといったら、やっぱここだよな」

 

 

図書館だった。この学校の図書館は中々に充実していて、ネットで調べるよりも深い情報が出てくる…らしい。実際のところ分からないが。

 

壮間が机に積み上げるのは、「妖怪図鑑」や「怪談」といった本。探してみると案外多くの本が見つかった。

 

 

「えっと…塗り壁、お歯黒べったり、河童…袖引き貉?これは初めて見たな。お、あった。といっても色々種類があるのか……」

 

 

壮間は「鬼」のページを開いた。

 

アナザー響鬼は確かに「鬼」のような見た目をしていた。現状、壮間はあのアナザーライダーの正体に見当もつかないし、目的も分からない。しかし仮に「鬼」の能力を持つなら、弱点や力の詳細が分かるかもしれない。

 

突飛な発想だが、何もしないよりマシだと信じたい。そんな思いで壮間はページをめくり、読み進めていく。

 

 

(赤鬼、青鬼、酒吞童子、鬼童丸、大嶽丸……鬼ってこんなにいるのか。あのアナザーライダーはどの鬼だ?あとは…)

 

 

壮間は紙に思い当たる情報を書き出す。戦闘中、アナザー響鬼が使っていた能力は「火炎」と「棍棒」。これは鬼から連想しやすいものだ。

 

しかし、解せないのは「腕の鱗」と「爪」。

奴が手に入れたライダーの力は、一体どんな力だ?

 

 

「中々に慧眼だ。流石は我が王」

 

 

音もなく、生えてくるように耳元から声が聞こえた。

つい大声を上げそうになるが、ここが図書館だと思い出し、なんとか大声を飲み込んで小声で返した。

 

 

「なんか久しぶりな気がする…ウィル」

 

「そんなことはないさ。私はいつだって君を見守っているよ。それはそうとして、“鬼”という観点は実に的を得ている」

 

 

どこにでも現れる男、ウィルは本を開きページをめくり始めた。

 

 

「奴が奪った歴史は“仮面ライダー響鬼”。“響く鬼”と書いて“響鬼”だ。この本によれば、響鬼は鍛えた人間が鬼の力を得た戦士であり、音を使って敵を倒す……とある」

 

「音…そういえば、太鼓みたいな技を使ってた」

 

「それだけではない、アナザー響鬼はある幼い少女を守っていた。その少女の名は“白鬼院凜々蝶”。その名前には“鬼”が刻まれている」

 

 

苗字はその家の発祥に深く関連づいている、という話はよく聞く。“白鬼院”。珍しい苗字だ。その可能性は高い。

 

 

「つまり、白鬼院っていう子の家と響鬼に関連がある…ってこと?例えば、響鬼と血縁とか」

 

「悪くない考えだね。しかし、どうやってそれを調べるつもりだい?響鬼の歴史は既に消えてしまっているというのに」

 

「……うん、きっと記録も記憶にも残ってない。でも、手掛かりは一つだけある」

 

 

壮間は図鑑を閉じ、立ち上がった。

響鬼と白鬼院に関連があるのなら、それを調べるしかない。それも、より確かで、濃い手掛かりを探る方法が、壮間にはある。

 

 

「過去に…2005年に行くしかない。歴史が変わった時間でも、事が起きる前に行けば、アナザー響鬼の正体も分かるかも」

 

 

ビルドの時、天介の存在が消えてなかったように、歴史改竄のバグが生じている可能性もある。そう思い、壮間は図書館を出ようとするが、ウィルの言葉がそれを引き留めた。

 

 

「誰かが言った。“嘆いて強くなれるなら苦労はない”。今の君に必要なものは何か、努々忘れないことだ」

 

 

 

 

その言葉を心の片隅に置き、壮間はタイムマジーンに搭乗。時空転移システムを起動させ、年代を設定する。

 

 

「2005年…いや、その年のいつかまでは分からない…

もしかしたら2005年の正月ってことも!?」

 

 

変なところで注意深い男だ。

 

 

「それなら確実に、2004年の12月31日!」

 

 

プロトウォッチ無しでの初めてのタイムジャンプ。少しだけ緊張する心を抑え、壮間はタイムトンネルを潜り抜けた。

 

 

_______

 

 

 

放課のチャイムが鳴る。

小学生は騒がしく群れ始める中、彼女はいつも独りだった。

 

白鬼院凜々蝶、彼女の家はいわゆる名家だ。教養のある大人なら誰でも知っているような、栄えた金持ちの家。

 

 

「……」

 

 

凜々蝶は顔に貼られた絆創膏に触れる。

今日はクラスメイトに殴られた。昨日は水をかけられた。当然だ、自分は人より多くのものを持っているから。持っている分は傷付けられても文句を言えない。

 

大人はいつも守ってくれた。当然だ、彼女は人より多くのものを持っているのだから。その寵愛を向けた分だけ、大きなものが返ってくると知っているから。

 

皮膚の近くで傷だけがジンジンと痛み、その手が触れた絆創膏は冷たい。

 

 

生まれて十二年しか経っていないのに、虚しくて淋しくて仕方がない。

持っているモノしか見られない人生も、それ以外何も持ってない(自分)自身も。

 

 

憂いながら彼女は廊下を歩む。

その時、曲がり角から伸びた手が凜々蝶を捕らえた。

 

 

「声を出すな」

 

 

その言葉だけが聞こえ、彼女の意識は暗転した。

 

 

 

_______

 

 

 

2004

 

 

14年前の12月31日。壮間はその日に降り立った。

過去に飛ぶのは4度目だが、今回は一気に昔の時間。壮間がまだ5歳の頃だ。これまで希薄だったタイムスリップの実感というものを感じざるを得ない。

 

時刻は日が落ちてすぐ。この夜を過ぎれば年が明け、2005年が幕を開けようとしている。

 

 

(まずは…ウィルの言ってた“白鬼院”って子を探そう。

いや、待って。でもおかしくないか?)

 

 

ウィルは確かに「幼い少女」と言っていた。14年前のこの時間に、果たして「2018年で幼い少女」は生まれているのか?

 

 

(もしかしたら直接の関係は無いのかもしれない。じゃあ行くべきは、“鬼”と関係あるかもしれない白鬼院の家!)

 

 

壮間は目的地を定め、走り出した。壮間が持つスマホはこの時代では使えない。家の場所は人に聞くしかない。

 

 

現在地は山。まずは街に出なければ話にならない。

タイムマジーンで移動する距離でもない。だから走った。夜道を走った。

 

 

「疲れた…確か、ウォッチの中に“バイク”って書いてあるヤツあったけど…俺、免許持ってないし…」

 

 

落ち着いたタイミングで免許を取るのもアリか、なんて考えながら走る。こんなことなら、予め白鬼院家の場所くらい調べておけばよかった。

 

 

 

 

―――いる。

 

 

 

山道で足を動かしながら、壮間はその気配を確かに感じ取った。

後ろから何かが迫ってくる。いや、違う。ピタリとすぐ後ろを付いて来ている。

 

直感的に、振り返ってはいけないと思った。

 

全速力で走っても、背後にいるだけ。振り切ることも、追いつかれることもない。

 

 

恐怖と焦り。そして山道は足場が悪い。

壮間の足が何かに引っかかり、滑るように転んだ。

 

 

「っ……!?」

 

 

慌てて振り返った壮間の目に映る、その()()

人ではない。動物だが、そんな有り触れたモノではないと語り掛けてくる。

 

口は裂け、無数の牙を向けて涎を垂らす、灰色の狼。

痩せているが、その体格はまるで人間のよう。

 

 

「っがァッ!」

 

 

唸りを上げ、狼は壮間に襲い掛かった。

咄嗟になんとか躱すが、完全に壮間を喰いに来ている。事態は理解できないものの、壮間はポケットのジオウウォッチに手を…

 

 

「あれ…!?嘘だろ!ウォッチ忘れた!!?」

 

 

タイムマジーンに落としてきたか、2018年に置いてきたか。なんにせよ、この狼を退ける手段は無くなってしまった。

 

そんな都合も知らず、狼は壮間に飛び掛かる。

手元にあった木の棒で応戦しようとするが、一瞬で噛み千切られた。

 

 

冷や汗が止まらない。心臓が五月蠅い。こんなところで死にたくない。でもコイツを組み伏せる腕力は無いし、逃げ切れるほど足は速くない。

 

 

変身できないと、己の命も守れない。

 

 

狼は一心不乱に、壮間へと再び襲い掛かる。

 

 

(あ、死———)

 

 

 

どこが喰われた。頭か、脚か、体か。

でも痛くない。死んでない。

 

眼を開けると、狼は遠くに。

 

壮間と狼の間には、人が二人立っていた。

長身の茶色がかった白髪の男と、小柄な黒髪ロングの少女。

 

 

「犬…あれが“犬神”でしょうか?」

 

「いや、あれは“送り狼”。夜道で転んだ人間を喰う妖怪だ」

 

 

そう話す二人の姿が変わっていく。

白い桜の花びらが外套に変わっていくように、着物姿へ。

少女の方は羊のような角が、男には獣の耳と九本の尾が現れる。

 

 

(何が起こってるんだ…?)

 

 

仮面ライダーの歴史は消えているはず。

ならばこの狼と、“変身”した彼女らは何者なのか。

 

 

「こんな雑魚に構っている暇は無い。

早く片付けて髏々宮さんのもとへ急ぐぞ」

 

「承知しました。では、凜々蝶さまは僕の後ろに」

 

「守ってくれなくて結構だ。腕には自信があると、何度も言っているだろう」

 

 

壮間は聞き逃さなかった。今確かに、少女は「凜々蝶」と呼ばれた。

この凜々蝶がウィルの言う人物と同一ならば、2018年では大人になっているはずだ。

同名の別人?こんな珍しい名前で?

 

 

「そうですか。では凜々蝶さまは、僕に存在価値など無いとおっしゃるのですね…」

 

「なっ…!?そうは言ってない!そもそも、護衛だけがシークレットサービスの仕事では…」

 

「ご安心ください。命に代えても僕が凜々蝶さまをお守りします。髪の毛一本でも傷つければ、即座に死ぬつもりですので…」

 

「だから死なんでいい!」

 

 

二人はそんな言い争いをするが、それを悠長に見ている獣ではない。送り狼は牙を剥き、二人に喰らいかかり…

 

 

少女の薙刀、男の刀の斬撃が、

送り狼を一瞬で切り刻んだ。

 

 

「間もなく頃合いです。急いだほうがよろしいかと」

 

「うん、分かっている。百鬼夜行は必ず、僕たちが止める…!」

 

 

壮間が声をかける前に、二人は飛び去って行ってしまった。

 

目の前で起こったあの超常は、必ずアナザー響鬼と関係があるはずだ。何より、凜々蝶と呼ばれていた少女の“角”。嫌でも鬼を想起させる。

 

 

「やっぱり今のは、白鬼院凜々蝶…?でもなんでこの時代に……」

「あっれ~?君、ちよたんのこと知ってるんだ~☆」

 

 

呆然としていた壮間の前に、その人物はひょっこり現れた。ウィルみたいな登場で、壮間は今度は派手に声を上げる。

 

赤毛の男性。スーツを着て、右目は包帯で隠れている。

そして何故か頭に着けた黒いうさ耳。端的に不審者だった。

 

 

「今見たことは忘れた方がいいかもね~♡妖怪は怖~い存在だか…ら……」

 

 

パニックになっている壮間の顔を見つめ、その男の言葉が止まった。表情も変わる。読めない笑顔から、一瞬だけ驚いたような、悲しいような顔に。

 

しかし、すぐに笑顔へと戻し、明るく壮間に告げた。

 

 

「ボクは夏目残夏、みんな仲良くがモットーの優しいおにーさんだよ☆ もし君がまた、ボクらに会いたいなら…“妖館”に行くといい。ボクらは()()()()、そこにいるからね~♬」

 

 

それは誰が聞いても分かるような、明らかな“アドバイス”。全てを見通したようにそう言い残した残夏は、もう一度笑って軽やかに去っていく。

 

手を振りながら遠のく背中を、壮間はただ眺めていた。

 

 

 

______

 

 

2018

 

 

2004年での不可思議な経験を経て、壮間は2018年へと戻って来た。過去で得たのは、死の恐怖と、無力の自覚と、幾つもの謎。そして確かなアドバイス。

 

 

「反省してたって始まらない。動かなきゃ。

まずはミカドに連絡を…」

 

 

連絡用にと、なんとか手に入れたミカドの電話番号にかける。すぐに通話が繋がった。

 

 

「あ、ミカド!さっき過去に行って、アナザー響鬼の手がかりを見つけた。まずはこの時代にいる、白鬼院凜々蝶って女の子なんだけど…」

 

『白鬼院…それなら話が早い。たった今、その女を

 

 

 

 

誘拐したところだ」

 

 

倉庫で椅子に括り付けられた凜々蝶。それを片目で見ながら通話するミカド。

「はぁ!?」という声が携帯から聞こえるが、ミカドはそれを聞く前に通話を切ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




ミカド、ロリコン疑惑浮上。

とりあえず、今回の2004年の話は原作漫画の38話直前に当たるものです。
原作未読の方も、次回に詳しい解説入れるので。

そんで、次回は遂にタイムスリップする(と思います)。ただ、今回は今までとは一味違うパターンに……

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今回の名言
「嘆いて強くなれるなら苦労はねぇな」
「双星の陰陽師」より、神威。
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