仮面ライダージオウ~Crossover Stories~ 作:壱肆陸
天介「仮面ライダービルドの羽沢天介は!可愛い妹に言われて嫌々、仕方なーく!ピンクのクマさん遊園地、夢の国ミッシェルランドにやって来た!そこで現れたスマッシュで大ピンチ!さぁどうなる!?」
東馬「おい、お嬢の誘いを嫌とか言うな」
天介「お前がいるから嫌なの。なんで休日にこんな筋肉と遊ばなきゃなんないの」
東馬「筋肉の何が悪い。重いの持ち上げるやつとか楽しいぞ」
天介「人類誰もがムキムキ至上主義じゃないの。世の女性はな、俺みたいな細マッチョインテリ系男子を求めてるんだよ。むさくるしいゴリラ野郎は帰った帰った」
東馬「お前モテないだろ。何を言ってるんだ?」
天介「ウルセーよ!!余計なお世話だよ!ただいまガーディアンにボコボコにされて絶賛気絶中の経堂くんの癖に!」
東馬「?俺、気絶してるのか?」
天介「ほら、どうやら何かスヤスヤ夢見てるみたいだぞ?それではゴリラの自分語りから始まる最新話!どぞ!」
_______
ガキの頃から、気持ちを顔に出すのが苦手だった。
笑わない、怒らない、泣かない、喜ばない。
学校の奴らからも、母さんからも気味悪がられた。俺は頭が悪いから、この気持ちを言葉にもできない。
だから、喧嘩でしかこの気持ちを伝えられなくて、
気付けば俺は、いつも一人になっていた。
『可哀想に…まだ若かったのに…』
『気の毒よね。女手一つで頑張ってたのに、息子があんなのじゃ……』
『気色悪い…親が死んだってのに、何とも無いみたいな顔してるぜ』
母さんが死んだ。
違う。俺は見たんだ。母さんは誰かに殺された。
こんなに怒っているのに、悲しくて仕方ないのに、
叩き割った鏡の中の俺は、いつまで経っても同じ顔だ。
この感情の赴くままに、俺は外れ者の中で拳を振るう。
外せない鉄仮面を被り、涙だけを流しながら。
「あなた、なんでそんなに悲しそうなの?」
…あれ、これいつの話だ。
確かアレだ。死ぬ寸前に昔のことを思い出すっていう。
そうま…いや、おうま?
「と…まさん!」
とうま?いや、違う。それ俺の名前だ。
なんだ、えっと…
「東馬さん!」
美咲の声で目を覚ます。
そんな彼女の背後には、腕を振り上げたガーディアンが。
東馬はすぐさま立ち上がり、ガーディアンに蹴りを叩き込んだ。
思い出した。飲み物を買っている時に、ガーディアン軍団が襲ってきて、不意に一発喰らって気を失っていたのだ。
「さっき何か考えてたような…忘れた」
東馬はポケットから出したボトルを振って、ガーディアンを殴りつける。
おおよそ人間離れしたその威力は、ガーディアンを一撃で粉砕した。
以前から護身用として天介に持たされていた、ゴリラボトルの力だ。
だが、東馬と美咲の前には未だ多くのガーディアンが立ちふさがる。
「どけ。お嬢のところまで戻らせてもらう」
_______
ビルドはドライバーのレバーを回す。
出現したグラフ型の固定装置がストレッチスマッシュの動きを完全に封じ込め、ビルドはラビットの左足で高く跳躍。
《Ready go!》
《ボルテックフィニッシュ!》
《イエーイ!!》
グラフをなぞって加速したビルドのキックが炸裂し、キャタピラーの起動で防御が抉り取られる。
爆発と共にストレッチは地に伏してその活動を止めたのだった。
「…よし、っと。これで終わってくれりゃいいんだが…」
ストレッチの成分をボトルに回収するが、嫌な予感はまだ消えない。
理論的にもそうだ。目的は天介の抹殺と考えても、このスマッシュ一体では戦力が半端過ぎる。
そして、その予感はまたも見事に的中した。
「仮面ライダービルド…発見」
隕石でも落ちたかのような衝撃で、その巨躯が豪快に降り立つ。
全身がプロテクターで覆われており、他のスマッシュと比べても圧倒的な迫力。共通点として目や口に当たる部分は見られないが、額から伸びるのは大きな一本角。
特に右腕は肥大化し、重装備が施されている。掴まれたら数秒後にはミンチだろう。
明らかに異質。そのスマッシュの名は、「ブレイクスマッシュ」。
「…なんかメカメカしてんな。こーいうデザインは好みじゃないんだよなぁ」
「標的を…捕捉。攻撃を開始」
「うあっと!」
振り下ろされた剛腕が足元を叩き割る。
見た目に違わぬパワーだ。いや、それよりも…
(このスマッシュ…喋った?)
スマッシュは普通、意識を持たない。喋ることも無い。
だが、ブレイクはカタコトではあるが言葉を発している。
「一味違うってことだよな。あの硬そうな体にはやっぱりゴリラモンドで…」
そこまで言ってビルドは気付く。東馬に渡しているため、手元にゴリラボトルが無い。
「あぁークソ!後で文句言ってやる経堂の奴!
今は…コイツだ。ミッシェルランドだから折角だし!」
半ば理不尽に文句を吐き、ビルドはまた別のボトルを取り出し、振り始めた。
蓋を正面に合わせ、ラビットとタンクのボトルとチェンジ。
《クマ!》《テレビ!》
《ベストマッチ!》
「ビルドアップ!」
《ハチミツハイビジョン!クマテレビ!!》
《イエェイ!》
腕を振り上げた熊とブラウン管テレビの形の複眼に入れ替わり、左肩や胸部、左腕には複数の黒いテレビ。黄金の右腕には大きな爪が備わっている。
美咲がスマッシュにされた際に採取した、クマボトルのベストマッチ。それがこの姿、クマテレビフォーム。
「フォームチェンジを確認。照合…クマテレビフォームと一致」
「おしゃべりさんだな!」
クマの爪がブレイクの装甲を斬り付ける。
だが、やはり一撃では傷も入らない。その上、ブレイクは動きも俊敏だ。
パワーはゴリラモンドに次ぐクマテレビだ。攻撃が決まれば勝てるはず。
ブレイクの攻撃は園内を破壊しながらビルドを狙う。そんな猛攻を躱しつつ、ビルドもそのパワークローで反撃。
(ここまで散々パワープレーを見せつけてきた。決まる!)
ビルドは右の手のひらに、黄金に輝く球体を作り出した。
粘性のある液体の球体。「ジャイアントハニーアーム」に蓄えられたハチミツだ。
このハチミツはすぐに硬化し、敵の動きを妨げる。
ビルドはそのハチミツ球を、ブレイクに向けて放った。
しかし、
「戦闘データと…一致。対抗…開始」
ブレイクの腕から発射された熱光線が、ハチミツ球を焼却した。
ビルドは驚くが、怯まず右足をブレイクに押し付ける。
クマテレビの右足「チャージスタンシューズ」は、テレビボトルの力で高圧電流を発生させることが出来る。
ブレイクの体に電流が流れる確かな感覚。だが、その電流は体を通って右腕に収束し、ビルドへと跳ね返されてしまった。
「どうなってんだ…?完全に手の内を知られてる。いや、知ってるなんてレベルじゃない。それならこっちも…」
ブレイクの右腕の攻撃は躱しつつ、弱い方の左腕の攻撃が来た瞬間に、それをビルドは左腕で受け止めた。
「リポートグローブ」は、接触した相手の情報を取得する能力を持つ。
ブレイクスマッシュの情報がビルドへと流入する。その概要を把握してしまったビルドは、言葉を失った。
「なん…だよ、それ…!」
_______
「あっ!こころ、そっちは…」
「お嬢。怪我とか大丈夫ですか」
ガーディアン達を退け、東馬と美咲はこころと合流。
こころを見つけた美咲を押しのけ、東馬は猛スピードでこころの元へと駆け寄った。
「平気よ!天介が助けてくれたもの」
「あ、ならよかった。それで、その天介さんは?」
「プールの方に行ったわ」
「わかりました。あっちですね」
「東馬さん、逆方向」
3人はこころが案内する方向へと走っていく。
東馬はともかく、こころはこの非常事態でもいつもと変わらない様子だ。美咲は取り乱しまくっているというのに。
(そう思うと、この子ちょっと怖いんだよね…)
しばらく走ると、激しい戦いの音が聞こえてきた。
火花を散らして戦っているのは、ビルドと重装備のスマッシュ。
だが、素人目にすら分かるほど、ビルドは押されていた。
「クソっ…!ビルドアップ!」
《彷徨える超引力!マグゴースト!!》
マグゴーストフォームにチェンジしたビルドは、磁力を帯びた人魂を飛ばす。
しかし、ブレイクが放ったエネルギー波により、人魂は全て消滅。
ビルドの攻撃全てに対し、最も有効な対策が為されている。トライアルフォームも全く通用しない。
さっき取得したブレイクの情報は、信じたくはないが真実と断定せざるを得ないようだ。
このブレイクスマッシュは、ビルドのあらゆる形態を完封できるよう、事前にシュミレーションされている。文句のつけようが無い対ビルド決戦兵器だ。
ビルド最大の武器である、戦法の多様さが完全に死んだ。
こうなれば、火力で押し切るしか勝機は無い。
「やるしか…ねぇよな」
ホルダーから外したのは、ドラゴンボトルとロックボトル。
何度目のチェンジか、ドライバーのボトルを入れ替えた。
《ドラゴン!》《ロック!》
《ベストマッチ!》
「ビルドアップ!」
《封印のファンタジスタ!キードラゴン!!》
《イェイ!》
有機物側は濃紺、無機物側は金。龍の半身に、鍵型装備を左腕に備えた形態、キードラゴンフォーム。変身と同時にドラゴン側が燃え上がり、その拳をブレイクへと叩きつけた。
「効かねぇ…それなら!」
ビルドはエネルギーを開放する。
50%
ブレイクの攻撃を躱す速度は出るが、攻撃はその防壁を貫かない。
70%
炎の出力が上がり、ビルドの肉体が軋み始める。
75%
ここが限界点。攻撃は勢いを増すが、それでもブレイクは倒れない。
「出力の…上昇…許容範囲…内」
「なめんなァっ!」
ビルドはロックボトルの抑制機能を完全に解除した。
その瞬間に、ドラゴンハーフボディの全てが解放される。
100%
身体を纏った青い炎が収束し、球体を形成。
超高密度で圧縮された炎球は着弾と同時に爆裂し、ブレイクの姿を跡形もなく吹き飛ばした。
「想定内…100%の出力…観測…」
「効いて…ねぇのかよ…!」
100%の力でも、ブレイクは煙を裂いて現れた。
天介はその状況を論理的に捉えてしまう。ビルドでは、このスマッシュを倒すことは不可能だ。
結果はどうあれ、行使した力の反動は無慈悲に襲い掛かる。
「ぐ…あ゛ぁッ!ああ゛ぁァあぁ!!」
「天介さん!」
ドラゴンの力がビルドへと逆流し、体を内側から燃やすような痛みが走った。
ロックハーフボディの力で、暴走する前に変身が強制解除。エネルギーが弾け、ドライバーとドラゴンボトルが地に転がる。
天介は力なく倒れながらも、震える腕でビルドドライバーへと手を伸ばす。
駆け寄った美咲は、思わず天介の腕を握って彼を止めようとする。
腕を握った美咲の手が血で濡れる。彼女の手を振り払えない程に疲弊しているはずなのに、その手と目は戦う事を諦めていない。
「手…離してくれ…!」
「正気じゃないですって…逃げましょう!あんなの勝てっこない!」
「だから言ってるんだ……俺が戦ってる間に……!」
その時、天介と美咲の前に飛び出したのは
ボトルを握りしめた東馬だった。
「美咲、お嬢と天介を連れて逃げろ」
東馬はゴリラボトルを振り、ブレイクを殴った。
だが、生身の人間がダメージを入れられるわけもない。
それだけじゃない。これまでの戦闘で、ゴリラボトルの力が弱まっている。
「燃料切れか…?」
東馬は咄嗟に落ちていたドラゴンボトルを拾い、攻撃を再開。
そんな東馬を、天介が黙って観ているはずがない。
「バカ、よせ!お前が勝てる相手じゃない!逃げろ!」
「俺はバカだ。でも、お前よりは強い」
東馬がボトルを激しく振り、青い衝撃を纏った拳を繰り出す。
当然、ブレイクにとってそんな攻撃は回避の必要も無い。一撃で葬れる虫に等しい存在だから。
しかし、不意に頭部に入ったその一撃が、
ブレイクの体勢を一瞬だけ崩した。
「効いた…!?ドラゴンボトルと経堂が共鳴して、相乗効果を起こしているのか…?でも無理だ。アイツを早く止めないと…!!」
「ねぇ天介」
立ち上がろうとする天介。経堂を見捨てられず、立ち止まってしまう美咲。
そんな2人の前に、普段と変わらない様子でこころが立つ。
「天介って、頭があんまりよくないのかしら?」
・・・・・?
「「はい?」」
すごくいい笑顔で、この状況で、出てきたのは爽やかな罵倒。思わず2人の口から素っ頓狂な声が漏れる。
「こころ?何言って…」
「天介が変身できなくて、戦えないのよね。それなら簡単だわ!東馬が仮面ライダーになればいいのよ!」
こころの提案は、闇に落ちかけていた皆の意識に響いた。東馬のハザードレベルが3.0を超えていることは分かっている。理論上は変身が可能。
それが唯一の光だ。少なくとも、美咲はそう思った。
「駄目だ」
だが、天介はそれを拒絶する。
「どうして?東馬はとっても強いわよ?」
「強さの問題じゃない!俺にはスマッシュを作った責任がある!戦う義務がある!ライダーシステムを使えば最後、そいつはもう兵器だ…そんなものをアイツが背負う必要は無い!」
「だから天介は辛くてもいいの?それは困るわ。だって、あたしはみんなに笑顔になって欲しいんですもの!」
こころは、血だらけの天介の手を握る。
戦いの最中だろうが、絶望の中だろうが、彼女の笑顔は色褪せない。
そんな彼女を見て、美咲も動かずにはいられなかった。
美咲も天介の手を取る。恐怖を感じないわけもなく、その手は震えている。それでもこの決意に、蓋をしてはいけない。そう思ったから。
「……隣で、ずっと重そうに苦しんでるのを、見て見ぬふりなんてできない。皆あたしより優しいから、きっとそう言うと思いますよ。だから…背負わせてくださいよ!戦うのは…まぁ、東馬さんなんですけど。でも、あたし達にだって!」
「辛い事や苦しい事は、みんなで分け合えばいいのよ!分け合っても大きいなら、みんなで楽しい事をすればいいわ!」
「それだよ、こころ!折れそうなときは、あたし達が支えになる。笑顔にする!
だってあたし達、“ハロー、ハッピーワールド!”なんだから!」
…やっぱり、彼女は…弦巻こころは苦手だ。
彼女の言葉と笑顔は人に伝播する。ほんの少しでも、それに救われてしまった自分がいる。
天介はそんな思いを悔しそうに飲み込み、ビルドドライバーを手に取る。
そして、その声を張り上げた。
「経堂!お前が口下手だろうが、知ったこっちゃねぇ!お前の言葉で聞かせろ!お前の…戦う理由はなんだ!!」
その声は、ブレイクと死闘を繰り広げる東馬に届いた。
走馬燈だろうか。呼び起されるのは8年前、こころと出会ったときの記憶。
彼女だけが、この感情に気付いてくれた。それだけで救われた。
笑えないこんな自分でも、暴れるしか能がない自分でも、
認めてくれた。全てを与えてくれた。ならば、戦う理由は一言で十分だ。
「俺は……お嬢のために戦う」
「あぁ…最っ悪だ!」
今日見せたどの笑顔よりも自然に、天介は笑って見せた。そして、天介はビルドドライバーを東馬に思いっきり投げ飛ばす。
ブレイクもその状況を把握し、東馬に攻撃照準を合わせる。
その瞬間、飛来した小さな自律行動ユニット。
青い龍のような姿のソレは、炎を吐いてブレイクの攻撃を妨げる。
「ボトルをそいつに入れて、ドライバーに叩き込め!」
その小さな龍───クローズドラゴンを掴んだ東馬は、天介の指示通りドラゴンボトルをクローズドラゴンのスロットに装填。
《ウェイクアップ!》
受け取ったビルドドライバーを腰に装着し、首と尻尾パーツを畳んだクローズドラゴンを、2本分のボトルスロットへと力強くセットした。
《クローズドラゴン!》
天介が変身した時の記憶を頼りに、まずはドライバーのレバーを回す。
スナップライドビルダーが展開され、両サイドにドラゴンのアーマーが現れる。
天介はここでポーズをしていた気がするが、よく思い出せない。
とりあえず肩を回し、右の拳を左手で受け止める。こんな感じだった気がする。だが、その言葉だけはハッキリと覚えていた。
《Are you ready?》
「…変身!」
その掛け声で、アーマーが東馬に覆い被さる。
両ハーフボディがドラゴンの、紺一色のビルド。そこに翼を広げたドラゴンのような追加アーマーが、胸部と頭部に加わり、その姿を別の戦士へと変えた。
《Wake up burning! Get CROSS-Z DORAGON!!》
《Yeah!》
ビルドとは異なり、各所に刻まれたオレンジの炎の意匠。龍の複眼が蒼く輝き、誕生したのは2人目の仮面ライダー。
「おぉ…変わった。すげぇな」
「データと照合…該当なし……殲滅を開始…」
ビルドではないその戦士に動きを止めたブレイクだが、すぐさま再起動し、剛腕を振り上げた。
超速で振り下ろされたその拳を、その戦士は完璧に受け止める。
更に、噴き出した青い炎で攻撃力を飛躍させ、そのパンチはブレイクの装甲を爆砕した。
「いいか経堂!そいつはドラゴンボトルのトランジェルソリッドを倍加させ、単独ボトルで変身を維持してる。ロックボトルみたいなファクターでの抑制を度外視し、ポテンシャルを最大化して…つまり発散させるって寸法だ。ブレイズアップモードでトランジェルソリッドをリミットバーストする機能を搭載してるから、その瞬間最大火力はビルド使用時の150%をオーバーする!」
「全く分からん。要するになんだ」
「超強いってことだ!
思いっきりブチかませ!仮面ライダークローズ!」
ブレイクが立ち上がる。エラーを起こしたように揺らぐその巨躯に、仮面ライダークローズは拳を突き出し、言い放った。
「覚悟しろバケモノ。今の俺は…負ける気がしねぇ」
ブレイクの肩に搭載された砲台が、クローズへと向けられる。
鋼鉄だろうが容易く削ぎ落す砲撃の連射を前に、クローズは避ける動作を見せずに直進。
自身へ向けられる攻撃は全て拳で叩き落し、本体へと辿り着いた瞬間から、怒涛のラッシュが文字通り火を吹く。
データに無い火力の攻撃。ブレイクは一度距離を置こうとする。しかし、クローズはその隙を与えない。どんな攻撃を受けても次の瞬間には肉薄し、無尽蔵の体力で拳を振るい続ける。
「測定不可…許容上限…超過……」
完全にガードが消えた胴体を捉え、クローズは蒼炎で爆発的に強化した一撃を叩き込んだ。
上へと吹き飛ばされたブレイクは、ジェットコースターのレールに激突し、遂にダウンした。
天介は驚きを隠せない。
クローズシステムは天介がドラゴンボトルを使うために設計したものだが、想定よりも遥かに強い。
「100%を超えている…やっぱり、経堂とドラゴンボトルの共鳴…」
「ほら、東馬はすごいでしょう!あたしの友達だもの!」
こころは自信満々に言うが、彼が凄いのは事実だ。
凄まじいエネルギーを閉じ込めて使おうとした天介に対し、東馬はドラゴンの力を己と一体化させ、どこまでも広がる炎のように、その力を存分に発揮している。
しかし、それで倒せるほど話は簡単ではない。
持ち直したブレイクは、肥大化した右腕にエネルギーを溜め、攻撃に転換。クローズは野性的勘か、咄嗟に回避。園内にインパクトの轟音が響く。
「デカ腕…これ喰らったらヤバいな」
地割れが起こるパワー。鋼鉄の剛腕から繰り出される一撃は、加えてスピードもあると来た。東馬も声には出せないが、内心焦る。
「ビートクローザーを使え!」
「ビー…なんだそれ」
天介の声に反応し、ドライバーから武器が転送される。
銀色の刀身を持つ、クローズ専用の剣。それがビートクローザー。
クローズはブレイクの二撃目を間一髪で回避し、生まれた隙に鋭く強烈な斬撃をお見舞いした。
「これいいな…なんつーか、そう。カッコいい」
更に剣を振り回し、ダメージを蓄積させる。剣は素人で型も何もあったものではないが、そのスピードとパワーにドラゴンの力も加わり、ただぶん回すだけでも強い。
《ヒッパレー!》
《スマッシュヒット!》
「…ッらぁ!」
斬れば斬るほど刀身の温度が上昇し、切れ味と攻撃の精度が増す。
予測から外れた状況において、パワーで制圧するしかなくなったブレイクに、もうクローズは止められない。
《スペシャルチューン!》
《ヒッパレー!》《ヒッパレー!》《ヒッパレー!》
《メガスラッシュ!》
ゴリラボトルをビートクローザーに装填。グリップエンドを3回引き、クローズから放たれた蒼炎とエネルギーが、宙に巨大な拳を練り上げる。
ビートクローザーの動きに合わせ、その拳はブレイクに叩きつけられた。
受け止めようとした両腕は破砕され、プロテクターも防御としての意味を失う。
「決めろ、経堂!」
「東馬さん!」
「頑張れー!東馬!」
声援に小さく頷いたクローズは、ドライバーのレバーを激しく回す。
活性化した蒼炎は、蒼い龍のエネルギー体「クローズドラゴン・ブレイズ」を形成。
両腕を広げたクローズは身をかがめ、ブレイクへと飛び掛かった。
クローズドラゴン・ブレイズの息吹がクローズの右足に収束。更には推進力へと変わり、加速したクローズが放つボレーキックが全てを焼き払う。
《Ready go!》
《ドラゴニックフィニッシュ!》
燃え上がる思いが、何よりも熱い蒼き炎となって力へと変わる。
激しく火を放った龍の一撃は、蹴りと言うよりもはや斬撃。
蒼炎に焼かれたブレイクスマッシュの体は、緑の爆炎を上げて爆砕した。
「…ッし!」
「東馬ー!」
変身を解除した東馬に、こころが元気よく飛びついた。
結構ダメージを負ったはずだが、その素振りを見せないのは仕事ゆえか、ただのバカなのか。
「やりました、お嬢」
「すごいわ東馬!それに…くろーず…だったかしら?」
「そうだ、仮面ライダークローズ。CROSS-Zと書いてクローズだ」
「それクロスズなんじゃ…」
「いいんだよ、細かいとこは勢いで発音!」
美咲に肩を貸してもらい、天介も戦いを終えた東馬に言葉をかける。
「やるじゃねぇか。80点ってとこだな」
「80点満点だな」
「100点満点だ何の自信だよ。いいか、変身したからって思い上がるんじゃねぇぞ。こっから俺がビシバシ鍛えてやるから覚悟しとけ」
「あぁ、わかった。あと天介…
ありがとう、俺にも戦わせてくれて」
東馬は真顔でそんな一言を口にする。
目を丸くした天介だったが、思わず吹き出してしまう。体が痛む。それでも、笑わずにいられなかった。
「言葉足らずなんだよ、お前は。一緒に戦いたいならそう言え」
「言っていたが?」
「言ってねぇよ。ったく…礼を言うのはこっちだってのに……」
「やっぱり仲良しね!」と笑顔で喜ぶこころに、美咲も微笑む。
楽しげに会話をする2人の横顔。戦友となったこの2人は、これからも笑いあい、励まし合って戦うのだろう。
「あれ…?」
「どうしたの、美咲?」
「いや…今、東馬さんが笑って……いや、無いね。無い無い」
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「仮面ライダークローズ…これでやっと2人目かァ、苦労するよ…っと」
蛇柄スカーフの少年は、駅の改札を抜けてプラットホームに降り立つ。
その手に持っているのは、ブレイクスマッシュから採取した成分を浄化したボトル。
ロボットのレリーフが入った、鈍色のフルボトル。
ブレイクスマッシュでビルドを殺すことは出来なかったが、仮面ライダーが新たに誕生したのなら話は別だ。“計画”は順調に進んでいる。
獰猛に口角を上げる少年の視界に、ある人物が映る。
少年はボトルをポケットに仕舞い、嬉しそうにその人物へとスキップして近寄った。
「だーれだっ!」
背後から目を覆い、まるで子供のような声でその人物に声をかけた。
淡い髪色をした長髪の少女。物静かな雰囲気で、同時に近寄りがたい冷たさを放っている。
そんな彼女もその声を聞くと、少しだけ明るい声で振り向いた。
「あら、大地じゃない」
「やっほ。久しぶり、友希那お姉ちゃん」
その少女は湊友希那。ガールズバンド「Roselia」のリーダーにしてボーカルの少女。
そんな彼女に対し、その少年“赤羽大地”は邪悪さを見せず、まさしく無邪気に接する。
「また歌の練習?」
「えぇ、私たちは頂点を目指しているもの。貴方はどうなの?確か、来年で高校生だったわね」
「“私たち”ねぇ…オレのこと覚えてくれてるし、丸くなったね。オレ、嬉しいよ」
「…そうかしら」
大地は友希那の前までスキップし、歯を見せてニカっと笑った。
これは偽りの姿なのか、それともスタークとしての姿が偽りなのか。コインの表と裏ともとれる彼の2つの顔は、一体何を意味するのか。それはきっと、“彼自身”も知りえない。
「ねぇ、友希那お姉ちゃん。もし、この平和な世界が一つだけ…何かが違ったら。例えば、“この世界を大きな壁が隔てたら”…人はどうなっちゃうと思う?」
大地は不自然なほど明るく、彼女にそう問いかけた。
友希那は何の話か分かっていないようだが、これだけは、自信を持って声にできる。
「関係ないわ。どんな世界でも、私たちは最高の音楽を届ける。それだけよ」
「…そっか」
大地は線路前の白線を踏み、
人間離れした跳躍で、反対側の乗り場に飛び乗った。
列車がやって来る。大地と友希那を隔てる壁のように。
「期待してるよ」
列車が過ぎ去った後、大地の姿はそこには無かった。
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