仮面ライダージオウ~Crossover Stories~   作:壱肆陸

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遅くなりました146です。
何をしてたかと言いますと…

ピクミン2してましたぁ(前科2犯)

今回は仮面ライダー蛮鬼登場です。正直言って丸々カットしてもいい15000字ですが、このキャラ書きたくて書きました。反省はしてるけど後悔はしてません。


EP08 カサネル、ジカン2005
叫ぶ蛮鬼


「この本によれば…普通の青年、日寺壮間。彼は2018年にタイムリープし、王となる使命を得た。3つ目のライダーの力を手に入れるため、我が王は響鬼の歴史に降り立った。強敵、アナザー響鬼を前に無力感を募らせていた我が王は、仮面ライダー響鬼ことヒビキに弟子入りを志願し……ですがこの男、なかなか曲者のようで…」

 

 

 

______

 

 

魔化魍「オオクビ」を撃破した響鬼。ヒビキと卍里はキャンプを撤収し、下山。夜も遅かったため、麓の宿で一泊することにした。

 

 

「よかったんですか?俺達まで泊まらせてもらって」

 

「いいんだよ。ここは俺の顔がきくからな」

 

 

宿から出た壮間の言葉に、ヒビキは軽く答えた。

寝泊まりする場所が無かったミカドと壮間だったが、ヒビキのお陰で宿に入れてもらえることになった。

 

それでは悪いと財布を開ける壮間だが、入ってたお札が全て2005年以降に作られた可能性もあるため、そっと財布を閉じた。もしそうなら、この時代では出来の悪い偽札以下の価値しかない。バレることはまずないとは思うが。

 

 

「オマエらは妖館に行きたいんだろ?俺と卍里も今から帰るつもりだし、送ってやるよ」

 

「本当にすいません…何から何まで。それにしても驚きましたよ、卍里さんが妖館の住人だったなんて」

 

「妖館は全国各地に点在する、先祖返りのマンションだからな。凶暴だったり力を持て余した先祖返りを護衛にして、卍里みたいな弱い妖怪を守らせる…悟ヶ原が上手いこと考えたもんだ」

 

「それが妖館…この時代の事情も教えてくれて有難いです。

それで、俺達を弟子にして…」

「嫌だ」

 

 

話の流れに乗って話題を出したつもりの壮間だったが、ヒビキに食い気味に拒絶された。

 

昨日、決意して弟子入りを志願した壮間だったが、今と同じく「嫌だ」の一言で突っぱねられてしまった。その後も猛アタックを続けるが、頑なに考えてすらくれない。

 

メンタルは人並の壮間。もう挫けそうだが、その度にアナザー響鬼の記憶が現実を叩きつける。アナザー響鬼は今までのアナザーライダーとは一線を画する強さだった。

だが、それは響鬼も同じだ。恐らく、今までに出会ったビルド、ドライブ、マッハと比べても、響鬼は頭一つ抜けて最強。アナザー響鬼を倒すには、響鬼に弟子入りするしかない。

 

 

「お願いします!ヒビキさんしかいないんです!」

 

「そんな事言われても俺はなぁ…」

 

 

ヒビキのポケットから流れる着信音が会話を中断させた。

壮間も黙り、ヒビキは二つ折りの携帯を開いて着信に応じた。

 

 

「もしもし…どうしたんですか、サバキさん。はい…アイツが?はい…はい……え、俺ですか?今から…?嫌ですけど。俺昨日オオクビ倒したばっかで……いやだから、嫌だって……いやそんなこと言われても……えぇ……」

 

 

通話が終わり、ヒビキは物凄く大きなため息を吐き出した。

心底面倒くさそうに髪をかき乱すと、壮間に決定してしまった次の行き先を伝えた。

 

 

「…今から栃木に行く」

 

 

 

_______

 

 

 

“霊障相談”。所謂、怪奇現象を鎮めたりする仕事。

この現代社会において、それを副業とする女性が存在する。

 

 

「今回限りはアンタを呼んで良かったわ。あたしだと子供相手出来ないから。礼を言ってあげる」

 

 

雪小路野ばら。22歳。グラマーな体型な眼鏡美女。

「野薔薇霊障相談所」の仕事で幼稚園に出るという妖怪の調査を終えたところだ。

 

 

「おー、そりゃどうも」

 

 

反ノ塚連勝。19歳。褐色肌の青年。左目から首にかけて刺青が入っていることもあり、カタギには見えないが、実際は気のいい男だ。

 

 

「てゆか、子供苦手なの治ってなかったんだ」

 

「治るも何も、うるさいし汚すから苦手って言ったじゃない。ただし幼女は除く」

 

「あ、そ」

 

「何よ。あの未発達な小さな身体が秘めた無限の可能性に興奮しない方がおかしいわ!メニアックよ!」

 

「理解したいのは山々だけどさ、この面でロリコンはマズいでしょ」

 

「それもそうね。通報しておくわ」

 

「可能性の話な」

 

 

本当に電話を取り出した野ばらを止める反ノ塚。

誤解が無いように述べておくが、彼女はロリコンではない。彼女は女性をこよなく変態的に愛する女体ソムリエである。その反動か、男性、主に反ノ塚には非常に手厳しい。

 

 

「今回は本当に妖怪だったからよかったけどさ、そろそろ霊障相談も控えた方が良いんじゃないか?」

 

 

反ノ塚が歩きながら言う。その口調は棒読みのようだが、そこには確かに感情が込められている。それは野ばらも分かっていた。

 

 

「…そうね。最近は魔化魍絡みの相談も増えてる。魔化魍にはあたし達じゃ何もできないわ」

 

「そうじゃなくてさ。藍にも再三言われてるように、あんまり危ないことには出向かない方がいいんじゃないかって」

 

「何、あたしを心配してるの?」

 

「そりゃ心配するよ。野ばらのことは大事だしさ」

 

「黙れ連敗」

 

 

優しさに対して暴力が返ってきた。

なんて話しているうちに、二人はメゾン・ド・章樫の扉をくぐる。

 

野ばらは「雪女」、反ノ塚は「一反木綿」。

二人とも先祖返りであり、三号室のシークレットサービスと住人の関係である。

 

 

 

「お帰りなさいませぇぇぇぇ!!ご主人様ぁぁぁぁぁ!!」

 

 

帰ってきた二人を迎えたのは、その元気に満ち溢れた声だった。

聞き馴染みの無い声だ。さらに見覚えのない女子が、メイド服を着て立っていた。

 

 

「誰」

 

「ここでメイドとして働くことになりました、片平香奈と申します!不束者ですが、よろしくお願いします!」

 

 

「あー」と驚いているのかよく分からない表情をする反ノ塚だが、隣の野ばらは内心穏やかではないようで、掴んでいた反ノ塚の腕を叩きつけ、香奈に駆け寄った。

 

 

「メニアーック!!元気健康系美少女かと思わせておいて出るとこは出た抜群スタイル、スリーサイズは上から83・59・80ね!それでいてメイド服が奇跡的相性!あなたヤバいわよ!?」

 

「え…えぇ!?」

 

「あたしは雪小路野ばら。そこのダメ男のSSをしてるわ。仲良くしましょ、性的な意味で」

 

「性的な意味で!?」

 

 

ハァハァ言いながら手を握って語りかけてくる。変態美女という知らないジャンルの人物と出会い、香奈も相当困惑しているようだ。

 

話が進まないため、野ばらが落ち着くのを待つと、反ノ塚が話を切り出した。

 

 

「それで、どうしてまた急に新しいメイドなんて…」

 

「それなんですけど…すごーく言いにくいんですが…」

 

「え、何。なんかやらかした?」

 

「い…いえ、そうではなく。それがその……」

 

 

「もういい、埒が明かない。僕から話そう」

 

 

話に入ってきたのは階段を下りてきた凜々蝶。その後ろには、彼女のSSである御狐神双熾もついている。

 

 

「ごめんね、凜々蝶ちゃん」

 

「ふん、気にすることは無い。君はここに来たばかりなんだからな。

僕もとても驚いたが…彼女は未来から来たらしい」

 

 

「未来」。その単語に二人は大層驚いているように見える。だが、それは非現実を突き付けられた顔ではなく、何か心当たりが在る故の驚きに見えた。

 

無言が続いた後、反ノ塚が恐る恐る口を開く。

 

 

「千年桜を…使ったのか?」

「そんなわけないでしょう?アレはあたしと悟ヶ原家で厳重に管理してるわ」

「わかってるけどさ…タイムスリップって聞くと、やっぱ思い出すよ」

 

「僕もそう思った。でも蜻蛉と彼女が言うには、片平さんは乗り物に乗っていたらしい。所謂、タイムマシーンという奴だろう」

 

「僕が先程、蜻蛉さまの案内で拝見しましたが、確かにそれらしい乗り物がありました。何か作動しているようでしたが動く様子は無く、我々ではどうすることもできないかと」

 

 

双熾が言うなら間違いないだろう。とにかく千年桜を使ったわけではないようで、反ノ塚は安心したようだった。あれは危険な妖怪だ。あの力で起こってしまった悲劇を、妖館の仲間はよく知っている。

 

 

「そこで僕が、帰る方法が見つかるまでここに滞在してはどうか、と提案した次第だ」

 

「それなら普通に客として住めばいいじゃない。あたしの部屋なら大歓迎よ!嫌なら反ノ塚を追い出すからその部屋を使って頂戴」

 

「やだ野ばら姉さん冷たい」

 

 

本人にそのつもりが無く時間を超えてしまったのなら、それは事故だ。いわば被害者である。そんな彼女に寝泊まりを提供することくらい、広さは有り余っているこのマンションなら容易い。だが、香奈は凜々蝶からも受けたその誘いを強く断った。

 

 

「いえ!どんな状況であろうと、働かざる者食うべからず!ですっ!

というわけで、本日よりメイドとなりました片平香奈です!改めてよろしくお願いします!」

 

 

胸を張ってそう宣言する香奈と、横で呆けている反ノ塚を交互に見る野ばら。

 

 

「どっかの家事手伝いという名のニートに聞かせたいわ」

 

「家業な」

 

 

_______

 

 

早朝からかかってきた電話により、ヒビキは次の仕事に直行。

卍里とヒビキを乗せた車は、栃木の山地に到着した。

 

 

「なんでオマエらも来てるの…」

 

「ウチのバイク担当、ミカドですよ。妖館に着くわけないじゃないですか」

「黙れ」

 

 

ヒビキは別れたつもりだったのだが、バイクに乗ったミカドとその後ろに壮間も付いて来ていた。ちなみにミカドもこの時代の免許は持っていないのだが、それを壮間が知るのはまた後の話。

 

 

「弟子にしてください。俺達じゃアナザー響鬼に勝てません。このままじゃ、ヒビキさんも死んじゃうし卍里さんだって…」

 

「じゃあ俺じゃない奴に頼むんだな。俺は鍛えるのが趣味なだけだ、弟子なんて絶対にいらないんだよ」

 

「それなら、なんで卍里さんは…」

 

「勘違いしてそうだから言っておくけど、アイツは弟子じゃないぞ。毎度毎度、勝手に魔化魍退治に付いて来てるだけ」

 

「えっ!?」

 

 

壮間とミカドの視線が、車から降りてきた卍里に向く。

その言葉に卍里も驚いている。本気で弟子になったつもりだったようだ。卍里はしばらく黙っていたが、突然自信満々になって言い張る。

 

 

「ヒビキさんは俺の『心の』師匠だ!」

 

「何を言ってるんだ」

「さぁ…?あ、じゃあ俺もそれでいいですか?」

 

「そうそれそれ…とはならないだろ。

仕方ないな…そこまで言うなら、これでどうだ」

 

 

鞄を開けて音撃棒を持つと、ヒビキは木の少ない開けた場所に出た。

ついてきた壮間とミカドに音撃棒を向け、ヒビキは少し気だるそうに話す。

 

 

「こうしよう。オマエらは変身して二人がかりでいい。オマエたちの攻撃が俺にかすりでもしたら、弟子入りを認める。無理だったら弟子入りは諦めるんだな」

 

「え…かすりでもいいんですか?どうするミカド」

 

「仮面ライダーに弟子入りなど御免だ。だが勝負するというのなら、俺はただ響鬼をここで殺す」

 

「お前なぁ…今はそれでいいや。よし、行くぞ!」

 

 

《ジオウ!》

《ゲイツ!》

 

 

ドライバーを装着し、ジオウとゲイツに変身。

しかし、ヒビキは音撃棒を手に慣らすように回すだけで、音叉に手を伸ばそうとしない。

 

 

「変身…しないんですか?」

 

「ん?あぁ、服が無駄になるからな」

 

 

舐めるなと言わんばかりに、一切の躊躇なくゲイツがヒビキに殴り掛かった。しかし、体を傾ける程度の動作で避けられ、二撃目、三撃目も完全に見切られてしまう。

 

 

「何をしている貴様も攻撃しろ!」

「え、でも生身だし…」

「力量差も分からないのか!本気で行かなければ返り討ちに遭うぞ!」

 

 

遠慮がちにジオウが攻撃するも、そんなものが当たるはずも無く、隙だらけのジオウに音撃棒が叩きつけられる。ヒビキの攻撃の隙にゲイツが攻め入るが、背後に目が付いているように死角からの攻撃も難なく躱されてしまった。

 

 

「そんなもんか?」

 

 

炎を帯びた音撃棒がゲイツを薙ぎ払った。ジオウの蹴りも音撃棒で受け止められ、体勢を直す前にヒビキのカウンターがジオウに決まる。生身とは思えないパワーだ。下手な怪人より腕力があるのではないかとすら思ってしまう。

 

 

《You!Me!》

 

 

徐々に焦りを見せるゲイツ。もう手段を選ぶ段階ではない。

ジカンザックスゆみモードの照準がヒビキに合わされ、矢が放たれた。

 

 

「ちょ、ミカド!?武器はダメだろ死ぬって!」

 

「最初からそのつもりだ。

大体、武器を使っただけで倒せるなら苦労はしない」

 

 

常人の眼では捉えることすらできない速度の矢を、ヒビキは軽々と音撃棒で叩き落した。さらに距離を取るどころか、挑発するように猛スピードで接近してくる。

 

 

「とはいえ…これは規格外だ…!」

 

 

矢を連射しても、生身とは思えない俊敏な体捌きで全て躱され、髪の毛すら射抜くことが出来ない。あっという間に肉薄され、おのモードに切り替える隙すら与えず、ゲイツの胴体に音撃棒が打ち込まれた。

 

 

「ミカド!」

 

 

ダウンしたゲイツを気に掛けているうちに、ジオウにもヒビキが接近。慌ててジカンギレードを構え、生身のヒビキに向けて振り下ろした。

 

 

「剣で勝負か?いいぜ」

 

 

ヒビキは音撃棒の片方を投げ捨て、ジオウの剣戟を一本で完璧に捌いて見せた。その動きは棍棒を振り回すというより、まるで「剣術」のように洗練された動きだった。

 

ヒビキの攻撃が速まり、押され始めたジオウの重心が後ろに傾く。それを見たヒビキが足元を狙うと、思惑通りにジオウの姿勢が崩壊し、倒れてしまった。

 

 

「やっべ……ッ…!?」

 

 

倒れたジオウの首元に音撃棒が突き付けられた。

勝負は決した。ヒビキの圧勝だ。

 

 

「強すぎる…この人、本当に人間…?」

 

「鍛えてるからな。とりあえず、これで約束通り弟子入りは無しってことで」

 

 

満足そうな安心したようなヒビキだが、約束は約束。

しかし、そんな彼に突っかかったのは壮間ではなく、ミカドだった。

 

 

「ふざけるな…ここまで一方的に打ちのめされて、黙って引き下がると思うか!このままでは終わらせない。覚悟しておけ響鬼!」

 

「え…えぇ…?」

 

 

力の差を見せつけて諦めさせるつもりが、ミカドには逆に火を着けてしまったようだ。引き気味に戸惑うヒビキを見て、壮間も何か思いついたようだった。

 

 

「ヒビキさん。さっき、攻撃が当たったら弟子にするとは言ったけど、『いつまで』かは言ってないですよね」

 

「あ…」

 

「また引き続きヒビキさんを狙います。攻撃が当たったら弟子にしてください」

 

 

正直自分で言っててもクソみたいな屁理屈だとは思うが、間違ったことは言ってない。そもそも、あんな強さを見せられたら、より弟子入りしたくなるに決まっている。

 

 

「そんなのアリかよ…」

 

「割と悪知恵は働く方なんで。よろしくお願いします」

 

 

根負けしたヒビキは一旦諦めたようだ。それも、攻撃を当てられない自信があるからなのかもしれないが。

 

そんなやり取りをしていると、ここに来た目的を思い出した。

わざわざ栃木まで、こんなことをしに来たのではない。

 

 

「そうだった!えーっと…でも話だとこの辺だって…」

 

「ちょーぉっと待ったァァァっ!!」

 

 

急接近する足音が草むらをかき分け、戦いを見ていた卍里の後ろから、その男は現れた。

金髪に編み込みを入れたチャラチャラした頭に、首から下は地味なジャージ姿。腕に鬼の顔を模したブレスを着けた青年。

 

 

「見つけたぜ魔化魍!ここで会ったが百年目、耐えに耐えたこの山籠もりの鬱憤!ここで晴らしてやるぜ…ってヒビキさんに狸!?ナンデ?」

 

「おー、バンキ。元気してるか」

 

さっきの戦いを魔化魍と勘違いしたのか、その男―――バンキは顔をキョロキョロさせ、ヒビキと卍里の姿に大きなリアクションで驚いていた。

 

その後ろから、また別の人物が顔を出す。

赤みがかったふわふわした髪の、ぼんやりとした雰囲気な可憐な少女。そんな彼女を見て、バンキ以上の驚きを顕わにしたのは卍里だった。

 

 

「カルタ!?」

 

「渡狸……食べる…?」

 

 

その少女、妖館2号室のSS 髏々宮カルタは、卍里にメロンパンを差し出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでヒビキさんがここに…あ、もしかして助けに来てくれたんですか!?」

 

「違うよ。サバキさんに、バンキがサボってないか監視しろって言われてな。

それがどうしてカルタちゃんがいるのか聞かせてもらおうか」

 

 

彼はバンキ。ヒビキと同じ鬼で、大学に通いながら魔化魍退治をしているという。

 

バンキのキャンプに合流し、問い詰められたバンキが目を泳がせる。

一方、バンキと一緒にいたカルタは卍里に問い詰められていた。

 

 

「カルタ、あいつに変なことされてないか!?」

 

「変なこと…?宇都宮餃子なら…くれた」

 

「宇都宮餃子!?おまえまたカルタを食べ物で釣ったのか!このチャラ男ヤロー!」

 

「うれせぇ狸!女の子いないとやってらんないのこんな修行!カルタちゃんも餃子食べれたし、俺も可愛い子いて嬉しいし最悪危ないときに助けてくれるからウィンウィンなんだよ!勝ち&勝ちなんだよ!かちかち山なんだよぉぉぉぉ!!」

 

 

バンキが泣きそうな勢いで喚き散らす。山籠もりが長くストレスが溜まっているのだろうが、それにしても成人男性とは思えない光景である。とりあえずこの限界状態を放っておくわけにもいかないので、壮間は少しでもバンキの機嫌を直そうと話題を探ることにした。

 

 

「えーと…バンキさん?ヒビキさんは“響く”に“鬼”だったけど、バンキさんはどんな字なんですか?数字の万?」

 

「いい質問だよ!ヒビキさんの弟子志望の…誰くんだっけ」

 

「壮間です。こっちはミカド」

 

「気に入った!いいぜ教えてやる。俺、バンキのロックな漢字を!

“野蛮”の“蛮”、即ちワイルド!“南蛮”の“蛮”、即ちオシャレ!“蛮勇”の“蛮”、それ即ちロック!!それがこの俺、『蛮鬼』だ!」

 

 

エアギターでノリノリな自己紹介をするバンキ。その後ろでは、カルタが「チキン南蛮ー!」と声と腕を上げている。一発で機嫌が直るどころか、最大にまで跳ね上がった気がする。チャラくてチョロいとはこれいかに。

 

 

「いい子じゃないですかー!ヒビキさん、弟子にしてあげましょーよ」

 

「何言ってんだよ。俺は弟子なんて御免だ。

そうだ、オマエがやればいいじゃん。弟子取れよ、バンキ」

 

「えぇっ?俺ですか?いやでも、俺って独立したばっかっていうか…でも弟子かー。バンキ師匠……あれ、カッコいいぞ。いいっすね弟子!」

 

「冗談だよ。そんな事言ってるとサバキさんに怒られるぞ」

 

「いやいや!弟子取って立派に師匠すれば、師匠も認めてくれるはずですよ!そうすれば休日返上毎日シフトも虫だらけの山籠もりにもおさらば!単位も取って留年回避!完璧!完璧すぎてマジ完璧!よーし少年たち、俺についてこい!!」

 

 

ここまでのバンキの会話で、既にヒビキのような頼もしさは全く感じない。ミカドは「誰が貴様なんかに」と割と大きな声でぼやいているが、壮間とて余りこの人の弟子になりたいとは思わない。

 

高笑いしているバンキだが、そんな彼を叱るように、草むらから飛び出たカエルが頭に衝突した。

 

 

「あたっ!?…っと、お帰りか」

 

 

カエルにしては鈍い音だと思ったが、そのカエルはバンキの手元で円盤に変形。

これは鬼が探索に使用する「ディスクアニマル」。バンキはディスクとなった「セイジガエル」をブレスに乗せ、回し、ディスクアニマルに保存された記憶を聴き取る。

 

 

「……来た。来た来た来たぁ!アタリだ!」

 

「お、丁度いいな。どっちだ?」

 

「童子と姫は倒したんで、バケモンの方です。

よっしゃ見とけよ二人とも!俺のシビれる戦いっぷりをな!ヒャッハー!」

 

 

カルタが火打石を鳴らし、「切り火」で魔除けを行う。バンキはテントからギターを取り、駆け足でディスクアニマルの案内する方へ消えてしまった。壮間とミカドも仕方なくそれを追う。

 

 

「オマエらは留守番な」

 

「なんでっスか!俺も行きますよ、今度こそ俺が魔化魍を倒してやる!」

 

 

ヒビキの言葉にカルタは黙って頷くが、卍里は反発する。

いつもの反応だ。説教をするのも何か嫌だし絶対聞いてくれない。だが、カルタがいるならこの少年の扱いはとても楽なのだ。

 

 

「卍里。カルタちゃんを任せた」

 

「っ…!俺が…カルタを…!

分かりました!絶対何があってもカルタは俺が守ります!」

 

 

目をキラキラさせて諦めてくれた。

渡狸卍里と髏々宮カルタは幼馴染。卍里はカルタのことになると、死ぬほどチョロい。

 

 

 

______

 

 

 

「そろそろ昼飯の時間かー。じゃ俺…」

「お昼ご飯ですね!私、注文してきます!」

「お…おぅ。カレーうどんで」

「承知しました!」

 

 

反ノ塚の呟きに瞬時に反応し、即座に調理場へ向かう香奈。さっきからずっとこんな感じで、オーバー気味に気合を入れて働いている。

 

 

「元気だなー、あいつ」

 

「君が相手だと使いっぱしりのようだがな」

 

 

凜々蝶は皮肉ついでに感心していた。

過去に来た驚きで卒倒したにも拘らず、もう完全に溶け込んでいる。凄い順応力だ。

 

 

「凜々蝶ちゃん!水無くなってるね、持って行くよ!」

 

 

香奈はグラスに水を注ぎ、凜々蝶のテーブルまでダッシュ。見るからに気合が入り過ぎている動きだ。住人たちが心配するも先に、香奈の足がもつれ、手から放られたグラスが―――

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

グラスは水を抱えたままキャッチされ、香奈の体も地面に伏す前に受け止められていた。オッドアイの双眸が、優しく香奈に微笑みかける。

 

 

「す…すいません。御狐神さん…」

 

「凜々蝶さんの身の回りのお世話は僕がしますので、片平さんはお気になさらず」

 

「いや、でも…」

「お気になさらず」

 

 

凜々蝶の専属シークレットサービスである双熾は、その一言を焼き付けるように繰り返し、にこりと笑いかけた。その笑みと声に、思わず香奈の背筋が凍る。悪意はないのだろうが、とてつもない圧を感じた。

 

 

 

そんなことがあり、時間は昼過ぎに。

香奈は箒を持ったまま廊下で立ち、何かを考えているのか、さっきの気合いから一転して上の空のようだ。

 

 

「その…さっきはすまなかった。御狐神くんの言ったことが気に障ったのなら、僕が謝ろう」

 

 

少し気恥ずかしそうな凜々蝶の声が、香奈の意識を現実へと引き戻した。こんな事でもわざわざ謝りに来る辺り、素の彼女の律義さが見て取れる。

 

 

「自分で言うのも変だが…彼は僕に尽くす事を生きがいにしているような男なんだ。自分の場所を君に取られたくなかったんだろう。大目に見てやって欲しい」

 

「あ…そうなんだ。それ聞いて安心したかな。御狐神さんってちょっと怖い感じだったから、可愛いところもあるんだ…って。でも大丈夫だよ。悩んでたのはそれじゃないんだ。

私、これからどうしよう…って」

 

 

凜々蝶は香奈の本音に少しドキッとした。

なんともないように振る舞っていたように見えたが、そんなわけがない。家にも帰れず、心を許せる人がいない。そんなの不安に決まっている。

 

 

「それは…無責任な事は言いたくないが、僕らも片平さんが帰れるように善処する。だから…」

 

「これからどうやって、みんなと仲良くなればいいと思う?」

 

「は?」

 

 

思わず雑に聞き返してしまった。だが、その真剣な眼差しに、つい凜々蝶は吹き出す。

彼女は真面目なんだ。不安なのは本当だろうが、こんな状況でも被害者ぶるのではなく、周りに馴染もうとしている。

 

自分ならきっと、周りを傷つけないように距離を取ろうとするだろう。

そんな凜々蝶には、香奈が少しだけ羨ましかった。

 

 

「あ、今笑ったでしょ!ひどいよ私だって真面目に悩んでるのに!」

 

「…変わった人だな、君は。

そうだな…君には言っておいた方がいいだろう。僕らのことについて」

 

 

凜々蝶は香奈に、「先祖返り」の事を話した。

凜々蝶は正直な性格だ。自分達が人でもなく、妖怪でもない、歪な存在であることを何一つ包み隠さずに話した。

 

 

「……すごい。妖怪のご先祖さま!?なにそれ!カッコいいじゃん!え、しかも生まれ変われるってすごい!うん、すごいよ!野ばらさん雪女なんだ!綺麗な人だもんね、ちょっと変だけど!」

 

 

帰ってきたのは、この上なく前向きなリアクションだった。

正直なところ、この話をするのは怖かった。どんなにいい人でも、自分とは違う存在であることに変わりはない。だから、拒絶される気がして。

 

 

「はっ。君は思った以上に酔狂だな。これを普通の人に話せば、決まって気味悪がられるんだが」

 

「そうかな?本当は凜々蝶ちゃん、あんまりそれ話したことないでしょ。

みんな羨ましがると思うよ。“特別”って、すっごくすごいことだもん!」

 

 

楽しそうに香奈はそう胸を張って言い切った。

こんな存在を受け入れる自分が特別だなんて、思ってもいないように。彼女は子供のように無邪気で、純粋で、大人びた優しさも持っている。

 

 

まるで、物語の主人公のような人だ。

凜々蝶は、そう思った。

 

 

 

______

 

 

バンキとヒビキ、壮間とミカドも森の中を進んでいき、テントに残されたのはカルタと卍里。

二人きりの時間というのは、あまり珍しいことではない。珍しくは無いのだが、甘酸っぱいとも言い難い淡い空気が充満して、卍里はどうにもむず痒かった。

 

 

「なぁ、本当に何もされてないんだよな。あのチャラ男ヤローに」

 

「渡狸……ヤキモチ?」

 

「ち…ちげーし!」

 

 

カルタは感情の薄い表情で、ポテトチップスを少しずつかじって小首を傾げた。

 

 

「ご飯は…好きな人といっしょに食べた方がおいしい…

だから今度は…渡狸も一緒に餃子食べよ…?」

 

「なっ…!?カルタ!?」

 

「ちよちゃんや御狐神もいっしょに…」

 

「あ…お、おう!そういうことならヨユーだぜ!」

 

 

友達以上恋人未満。そんな二人の関係を意識しているのは卍里だけなので、何の気なしに放たれるカルタの言葉は、その都度卍里の心を刺激する。

 

動揺した卍里の腕が、バンキの荷物に当たり、何かが倒れた。

倒れたソレは、ここにあってはいけないモノだという事は、二人も知っていた。

 

 

「バンキ…忘れものしてる…」

 

「あのアホぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃぁァァァァ!!忘れてきたァァァァ!!無理無理無理!!」

 

 

魔化魍を見つけるや否や、「俺の背中見てな!」と壮間とミカドに息巻いたアホ(バンキ)。そこまでは良かったが、忘れ物をした事に気付き彼の威勢は霧散した。

 

今は顔を真っ青にして全速力で逃走中である。

 

バンキを追う魔化魍は、「ヌリカベ」。カタツムリに似た頭部が伸びる貝殻のような壁が、のしのしとバンキに迫る。速さは大したことはないが、足元から太い根の触手が容赦なくバンキを襲う。

 

 

「っとあぁぁぁっ!?俺、生身!分かる!?いや生身の人間ボリボリ食ってんだったな!そうでしたそうでした!だぁクソ!もうやってやらぁ!!」

 

 

バンキはヤケクソ気味に腕に巻いた「音錠」を開き、弦を弾く。額に鬼の貌が浮かび上がり、黒い雷がバンキの体を貫いた。

 

闇に包まれたその姿は、鬼の体に変質する。

黒い肉体に、胸部の羽織るような弦の装飾は、右は五本で左は四本。響鬼だと赤かった顔の紋様は黄色で、額の二本角と合わせると四本角だが、左角だけが長く伸びる。この左右非対称な姿は、彼の言うところの「オシャレ」なのだろうか。

 

ギターの音撃装備「音撃弦」を使って戦う、弦の鬼。

 

 

蛮鬼

 

 

 

「しゃあらぁ!」

 

 

伸ばされた根を音撃弦の刃で一刀両断。

音撃弦の戦い方は、中距離での剣戟。大きく分けて三つある音撃の中で、最も力に優れた流派だ。

 

しかし、どうにも蛮鬼の動きが鈍い。

慣れていないようなぎこちなさを感じる。慌てる壮間の横でヒビキは苦笑い。ミカドは呆れたのか興味が無いのか、真顔で帰ろうとしている。

 

 

「おーいバンキ、助けに入ろうか?」

「あ、はい!お願いします!」

 

「即答かよ…」

 

 

必死にヌリカベの攻撃を凌ぐ蛮鬼。ヒビキの言葉を遮る勢いで助けを求めた。

「俺の背中を見てな!」とは何だったのか。プライドを一切感じさせない清々しさだ。

 

やれやれと息を吐き、ヒビキは音叉に手を伸ばす。

 

その時、木が騒めいた。

風ではない。だが、本当に木々をかき分けて巨大な何かが近づいてきている。

 

 

「ヒ…ヒビキさん!?あ、あれ…あれなんすか!」

 

「巨大な骸骨だと?新手の魔化魍か!」

 

 

魔化魍と同じくらい、それか一回り大きいほどの全身骸骨が、壮間たちの前に出現した。身構える壮間とミカドだが、ヒビキは少し表情を動かす程度。蛮鬼に至っては動きが嬉しそうだ。

 

ヒビキは頭を掻いて、その骸骨に自然に声を掛けた。

 

 

「どーした、カルタちゃん」

 

 

「カルタ」と聞き、壮間とミカドの頭の中で可愛らしい少女と目の前の骸骨の比較が始まった。即座に有り得ないと断じたかったが、肩に卍里が乗っていたのでどうやら真実のようだ。

 

蛮鬼を襲うヌリカベを骨の腕で薙ぎ払った骸骨は、その姿を小柄な少女に戻した。

 

髏々宮カルタは「がしゃどくろ」の先祖返り。変化すれば、元の人型は原型を無くす。雪小路野ばらやバンキ曰く、ギャップ萌えらしい。

 

 

「バンキ…これ」

 

 

起き上がったヌリカベが、再び蛮鬼を狙う。これまで以上の根を伸ばし、圧倒的手数で一気に勝負を決めるつもりだ。

 

余りの驚きに動きが停止しているミカドと壮間を素通りし、カルタは蛮鬼に「忘れ物」を投げ渡す。蛮鬼はそれを受け止めると、逃げるのをやめた。

 

 

「グッジョブ、カルタちゃん!」

 

 

空気が変わった音がした。

次の瞬間。ヌリカベの根は全て切り落とされ、抜刀した蛮鬼が大地を堂々と踏みしめる。

 

その右手には音撃弦。左手にもまた、カルタが届けた「もう一本の音撃弦」。

 

 

「やっぱしっくり来るぜ!俺の武器は唯一無二!それ即ちロック!!

二本で一つ!二刀流!二本揃って…刀・弦・響っ!!」

 

 

音撃弦「刀弦響(とうげんきょう)」を両手に、蛮鬼の猛攻が始まった。

一切勢いを止めず、根を切り倒し続け、本体へと接近。ヌリカベがその巨体を倒し、蛮鬼を圧し潰そうとするが、蛮鬼は倒れかかったヌリカベの体に刀弦響を突き刺し、その体重を完璧に受け止め支えて見せた。

 

 

「重い重い重い!が、今の俺は超・無敵!一気に決めるぜ、あんま動くなよ壁!

喰らいやがれ、二本で二倍!俺の音撃!」

 

 

音撃弦の先端に埋め込まれた鬼石は、ヌリカベの体にしっかりと刺さっている。条件は整った。

蛮鬼はもう一本の刀弦響を、刺さった刀弦響の上に合体させ、ダブルネックギター型の武器を完成させる。バックルの「音撃震 地獄」を刀弦響に取り付け、蛮鬼の爪が弦に掛かった。

 

 

「音撃斬!冥府魔道(めいふまどう)!」

 

 

蛮鬼の激しく動く腕が、派手な音を掻き鳴らす。

それは敵を奈落へと叩き墜とす、冥府からの騒音。それは悪魔が奏でる、喚き声にも似たサウンド。

それは二つの音撃弦が織りなす、美しささえ帯びた不協和音。

 

それが、それこそが、蛮鬼の十八番

 

 

冥府

  魔道

 

 

「ゴー・トゥ・ヘル!!」

 

 

鬼石から響く黒い波動が、ヌリカベの体を粉々に粉砕した。

刀弦響を突き立てた蛮鬼が、腕を高く上げる。

 

天を指した悪魔の角(コルナ)。そのウイニングポーズで、彼は己の勝利を掲げた。

 

 

 

______

 

 

「今日の俺!満点!どーよ俺のロックン・ロール!」

 

 

顔だけ変身を解除し、この上ないドヤ顔を見せつけるバンキ。

確かに、刀弦響が二本揃ってからの彼は強かった。あの巨大な魔化魍を余裕で下す程の力に、二刀流を完璧に操る才覚。しかし…

 

 

「条件付きの強さなど本物と言えない。そもそもが戦場に武器を忘れる間抜けが自慢出来たことか」

 

「ヒビキさーん、ミカドだっけ?この子全然可愛くないんですけど。サバキさんみたいな事言うんですけど。じゃ、壮間くんどうよ!俺の弟子、やってみる気ない?」

 

「いや…でもやっぱり、ヒビキさんの方が強いかなー…と」

 

「そりゃな!猛士最強の鬼に勝てるわけねぇし!?」

 

 

正論でバンキがノックアウトされた。バンキが弟子を取る話は無になったようで、ヒビキも少し残念そうだった。

 

思った以上に早くバンキの仕事が終わり、栃木に来たのがほぼ無駄足になってしまった。そんな事を憂いていると、カルタの携帯電話がメールを受信した。

 

 

「蜻さまから…今、帰ってきてるって…」

 

「蜻蛉が帰ったのか!?」

 

 

その声は、ヒビキのものだった。

普段の冷めた口調からは想像できない、飛びつくような声。カルタの携帯を覗くと、ヒビキは急いで荷物を車に積み始めた。

 

 

「大至急帰るぞ。妖館に」

 

 

 

______

 

 

 

場所は埼玉県。そこにもまた、仕事を終えた鬼が一人。

 

 

「いやぁ、意外とあっさり片付いちまったな。もう一体行っとくか?」

 

 

人の少ない山地の河原で、昼からビールをのどに流し込む中年の大男。

音撃戦士 闘鬼。銃撃による遠距離戦を専門とする、「管」の鬼。

 

 

「強者とのバトルが出来るのなら、(わたくし)どこまでもお供いたします♡」

 

「ダメダメ~早く帰らないと。蜻たんすねちゃうよ?」

 

 

トウキの隣に座る、少し虚ろな目をした黒髪の女性。

腰からは黒い翼が生えている。彼女は蜻蛉の旅の同行人である、鴉丸クロエ。「烏天狗」の先祖返りであり、生粋のバトルフリークである。

 

読めない笑顔で帰路に促すのは、この時間の夏目残夏。

彼もまた、蜻蛉の旅の道連れである。

 

 

「では、またトウキさまにお手合わせ願いたいです。ここのところ強い魔化魍と出会えず、欲求不満ですので」

 

「いやクロエたん。そもそも魔化魍と先祖返りが戦うもんじゃないからね?」

 

「おーおー、酔っ払い相手に大人げねぇなぁ。

んでも、昔は東のヒビキ、西のトウキなんて呼ばれた男だ。こんなおっさんで良ければ相手するぜ?」

 

「わー乗り気だ。もういいや、やれやれ~☆」

 

 

暴走気味なこの二人。残夏が目付け役を放棄するのも、珍しくない光景だ。

しかし、そんないつもの空気にやって来る、招かれざる来客。

 

姿を見ずとも解った。

その一瞬で、空気の色が変わったようだった。まるで、この世界が、時間が、風が川が全てが「彼」を拒絶しているようで。

 

 

「画になるね。夏目残夏に鴉丸クロエ、物語の延長線…嫌いではないな」

 

 

翠眼の男。これまでの物語にも現れた、芸術家のようなその男は、彼らに絵の具が付いた筆先を向ける。

しかし、その目がトウキに向けられた瞬間、雰囲気が肌を貫くような冷たさに一変した。

 

 

「お前だよ。完成された世界に沸く蛆虫。お前達がいるせいで、この物語は『駄作』となってしまった。だから塗り潰すのさ。腐った林檎は箱ごと捨てる」

 

 

残夏の「百目」の力が、彼の内側を覗いた。

幾度となく覗いた人間の記憶、心。その百色眼鏡は人の醜い部分も、飽きる程見てきた。

 

だが、彼の中にあったものは違う。

例えるなら「黒」。ただの黒ではなく、あらゆる色が重なり、混ざり合った混沌とした黒。

 

底知れない心の闇が、残夏の意識を飲み込もうとしている。

眩む意識の中で、残夏がその一言を絞り出した。

 

 

「何者なのかな…キミは…!?」

 

「ペンネームは決めてないな…敬愛する天才、レオナルドダヴィンチから名前を取ろうか。

 

私は令央(レオ)。世界の終わりを描く、さすらいの芸術家だ」

 

 

 

筆が落ちた。

物語に、彼の色が零れた。

 

 

 

______

 

 

 

「いた」

 

 

タイムジャッカーの少女、オゼ。

街中に降り立った彼女は、ぼんやりとそこに立つ人物に目を向ける。

 

服の下から出した手帳とその人物を見比べ、オゼは短く裏返った笑い声を上げた。

 

 

「いた…見つけた!御狐神双熾に勝るとも劣らない力響鬼への感情鬼の力への適性不確定要素を孕んだ進化の可能性!素晴らしいすばらしいスバラシイ完璧ッ!!必ず成れる出来るして見せる!ハイクラスアナザー!貴女こそ君こそ、アナザー響鬼に相応しい!」

 

 

我に返ったように声を止めたオゼは、アナザー響鬼ウォッチを差し出す。

 

 

「ごめんよ。でもね、わたしは嬉しいんだよ。

あなたはただ、感情のままに動けばいい。成りたかった鬼になって、響鬼に復讐するんだ」

 

 

その人物は、オゼの手からウォッチを受け取る。

 

 

《ヒビキィ…》

 

 

ウォッチを己の体に埋め込み、体が炎に包まれた。

火炎から出ずる妖鬼。異の響鬼。

 

 

「あなたの“願い”が叶いますように。

仮面ライダー…響鬼」

 

 

 

 

 




蛮鬼のキャラは原点を把握したうえでのキャラ造形なので、悪しからず。
文字演出入れてみましたが…どうですかね。次回から無くなってるかもしれません。

そして、ようやく名前を出せた芸術家の男、令央。(名前決まってなかったとは言えない)
本名ではないです。タイムジャッカーでもないです。彼の正体については、響鬼編の後に触れるかと。

アナザー響鬼誕生で、次回から動きます。

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