仮面ライダージオウ~Crossover Stories~   作:壱肆陸

44 / 112
デュエマのデッキ作ったら3500円消滅してた146です。
最近カードゲーム再燃してましてねー、相手がいない事だけが難点です。

今回は響鬼×いぬぼく編クライマックス!
いぬぼく本編ありきの台詞多いので、ネタバレと解説多め注意です。


百物語を越えて

昔々、ずっと昔、あるところに。とても凶暴な人食い鬼がいました。

その鬼は人里に出ては暴れ回り、人に化けては人を騙し、村人たちからは大層嫌われていました。

 

 

ある日、鬼はある弱い妖怪と出会いました。

 

人間に捕まっていたその蛇の妖怪は、鬼を見ても怖がりませんでした。

面白がった鬼は、人を襲う代わりに、毎日その妖怪に会いに行くようにしました。

 

 

怖い鬼とも仲良くなって、妖怪が言いました。

「いつか鬼さんといっしょに、自由になれたらいいのに」と。

 

そんな優しい妖怪に心を動かされ、鬼は力の限り暴れ、人間たちから妖怪を逃がしてあげました。

 

しかし、一緒に逃げた鬼は、真っ赤な血を流し始めます。

今まで自分のために生きてきた鬼は知りませんでしたが、鬼は人助けをすると死んでしまうのです。

 

妖怪はまた人間に捕まってしまいます。

ずっと悪さをしてきた鬼は、結局何もできずに死んでしまうのでした。

 

 

 

 

 

「―――罪を犯した者は決して救われない。随分と残酷な昔話ですね。

もし、この話の続きがあるとしたら…貴方なら、どんな物語を綴りますか?」

 

 

 

_____

 

 

 

「アナザー響鬼が…!?」

 

「はい、ヒビキさまを襲いに来ました。もう幾許の猶予も無いかと」

 

 

双熾の口から語られた事実に、妖館は騒然とする。

妖館には鬼も壮間たちも全員が集合していた。壮間がこれまで二度見た光景、物語の終わりの予感だ。

 

双熾が語った事実は二つ、

一つはアナザー響鬼がヒビキを明確に恨み、殺そうとしていること。

もう一つは、ヒビキの本名。そして、彼が「牛鬼」の先祖返りであることだ。

 

近くにいながら何も知らなかった卍里は、その事実に沈む。

 

 

「俺、何も知らなかった…前に弟子がいたってことも…

残夏は知ってたのかよ…?」

 

「まぁね~でも詳しい過去までは視えなかったよ。

知ってたのは、そーたんが言ったように、彼が飛牛坂家の先祖返りだってことだけ」

 

 

飛牛坂家と言えば、不動産業で莫大な富を築いた家だ。名前は割と知れ渡っているのだが、飛牛坂が先祖返りを擁した家だというのは、双熾が調べなければ分からなかった。

 

しかし先祖返りの面々が気になっていたのは、サバキと壮間が証言した、アナザー響鬼の正体の名前だった。

 

彼女の名は「槌口九十九」。双熾によると、彼女も先祖返りだという。

 

 

「槌口家か…」

 

「…ご存じなのですか、凛々蝶さん」

 

「軟禁されていた君が知らないのも無理はないな。槌口家と言えば、先祖返りのコミュニティの中でも指折りで異端な家だ。表向きは至って普通なバイオ企業だが、昔から何かと黒い噂が絶えない」

 

「妖怪の力を軍事に悪用しようとしてる、なんて話はあたし達の中では常識よ。本当に虫酸が走るわ」

 

「私も…よく言われてた。槌口家だけには…絶対近づいちゃダメって…」

 

 

野ばらとカルタの言う通り、槌口家は先祖返りの中では悪名高い存在だ。

 

しかし、そうなると何故先祖返りであるヒビキが、そんな槌口家の先祖返りを弟子にしたのか。そして一方的に突き放した理由は何なのか。あそこまで動揺した理由は。

 

思いつくのは、ヒビキが槌口家の危険性を後から知り、彼女を拒絶したという可能性だ。これなら全ての辻褄が合ってしまう。

だが、壮間には信じられなかった。少なくともヒビキが、そんな自分勝手な人間だとは思いたくない。

 

 

「貴様らの界隈の話など、どうでもいい。問題はアナザー響鬼の居場所だ。

響鬼を見張っていれば直ぐにでも来るはずだ。響鬼はどこにいる」

 

 

苛立つミカドの問いかけに、双熾は首を横に振る。

ヒビキほどの手練れだと、一度気付かれれば最後ということだろう。

 

完全に手詰まりだ。刻一刻と不安が募る。

 

 

ピピピピピピ

 

 

質素な着信音が鳴った。

ポケットの振動に気付いたのはサバキだった。

 

 

「……猛士本部からだ」

 

 

このタイミングで、鬼の本部から連絡。

嫌な予感が走った。目を閉じ、歯を食いしばるサバキの口から、その予感は事実として語られる。

 

 

「鬼が二人……トドロキとザンキが…重体で発見された」

 

「嘘だろ…!?ザンキさんと…トドロキ先輩が…!?」

 

 

バンキは驚きを口にして、気付く。

まだ何かを言い残している。サバキはアマキを視界の中心に据え、迷いながらも言葉を作った。

 

 

「こっちに向かっていたイブキが……消息を絶った。恐らく……」

 

「…そんな…っ……イブキさん……っ…!!…」

 

 

痛々しく泣き崩れるアマキ。バンキに抱えられながら、彼女は声を上げて泣いた。

 

これがアナザー響鬼の仕業だとするなら、もう一秒とて放っておくわけにはいかない。しかしその焦燥に反して、アナザー響鬼もヒビキも、行方を探る方法が存在しない。

 

いずれ、ウォッチを奪いに壮間のもとへ現れるだろう。

しかし、それは何人もの鬼やヒビキが犠牲になった後だ。今の彼らには、それを黙って待つことしか出来ない。

 

 

「贋作にしては画になる表情だ。タイトルを付けるなら…“泣いた青鬼”かな?」

 

 

泣き叫ぶアマキを侮蔑するように、彼女の眼前にその男は現れた。

残夏の目に再び映る、「醜い黒」。残夏とクロエは彼の事を知っている。

 

 

「君は…令央、だったかな~?」

 

「記憶に留めてくれて光栄だ、先祖返りの皆様方」

 

「令央…あいつが……!」

 

 

令央は凛々蝶たちに向かって首を垂れる。

壮間も残夏から聞いていた。トウキの前に現れたという、芸術家気取りの男。正体は分からないが、少なくとも「仲間」や「味方」という言葉で表現してはいけない相手、そう聞いている。

 

 

「さて、私が皆様方の前に馳せ参じた理由は他でもない。アナザー響鬼が現れる場所を、伝えに来たんだ。

 

私もあの芸術が失われるのは心が痛む。それはこの物語で最も美しく、儚い光景…貴方らもよくご存じのはずさ」

 

 

身構えていた一同に飛び込んで来た、アナザー響鬼の居場所という朗報。令央の言い回しは変に抽象的だが、凛々蝶の頭には「その場所」しか浮かばなかった。

 

 

「まさか……千年桜…!?」

 

 

「千年桜」。先祖返りの頭目、悟ヶ原家が管理する時間を司る妖怪。凛々蝶たちは過去にこの妖怪を巡り、激闘を繰り広げた。

 

その名を聞いた令央は、満足そうに背を向けた。

消えようとしているのは分かった。壮間は直感的に、投げつけるように言葉を発した。

 

 

「待って!あんたは一体…」

「贋作が私に話しかけるな」

 

 

首筋に牙を立てられたような。もしくは、心臓を掴まれたような恐怖。

一歩でも食い下がれば、ただ「壊れされる」。そんな感覚が壮間の声を止めた。

 

令央の姿が、ぼやけるように消えた。

 

 

 

_____

 

 

「…ねぇ、オゼ。まだ?」

 

「異なる物語の接合性を加味し能力の性質を同化かつ部分的に異化この仮説が立証されれば更なる拡張を見込むことができ同一の器の可能性を最大限以上に…これだっ!これだよ!」

 

「ダメだ聞いてない。どーするアヴニル?」

 

「ウィルの差し金で妨害は入ったが、なればこれを利用するのが得策ッ!ここに王たるハイクラスアナザーが誕生するのは必然だ!そう!まさに!今こそ!吾輩は感動に震えているッ!」

 

「こっちも聞いてないや」

 

 

2005年、埃っぽい洋館に揃った三人のタイムジャッカー。

ヴォード、オゼ、アヴニル。

 

 

「気乗りしないなぁ…もうやめで良くない?この作戦」

 

「たわけ者!我々は同じ時間に二度と存在出来ないのだ。後の未来からの妨害を防ぐため、千年桜は破壊しなければならないッ!」

 

「時間を奪う存在、千年桜。確かな“存在”がある妖怪は珍しいし、わたしはとっても興味があるんだよ。何でやめるとか言うの?絶無僅有の度し難い馬鹿なの?」

 

「こういう時だけ会話成り立つのやめて欲しいんだけど」

 

 

ヴォードは煩わしそうに、チューイングキャンディを噛み千切る。

作戦が始まろうとしている中、オゼはぼんやりと、霧に惑うように天井を見上げていた。

 

 

_____

 

 

アナザー響鬼の目的が千年桜だと判明した今、いち早く悟ヶ原家に向かい、敵を迎え撃つのが上策だ。それはつまり、最終決戦の到来を意味していた。

 

 

「この時間は危険だ。片平さん、君は未来に帰った方がいい」

 

 

凛々蝶は香奈にそう忠告する。

壮間とミカドのタイムマジーンの修復は完了している。もう未来に帰ることが出来る以上、巻き込まれただけの香奈は避難するのが筋だ。しかし、

 

 

「嫌だよ。そりゃ私はソウマみたいに戦えないけど…友達見捨てて逃げたくない!」

 

 

香奈はそう言って譲らなかった。

「友達」、その言葉が心の底から出てきたものだというのは、凛々蝶も感じた。

壮間も香奈には避難してほしい。だがそれを聞いてくれるほど素直なら、壮間は何も苦労していない。

 

 

なんとか香奈を留守番させる形で落ち着き、悟ヶ原家に行くのは妖館のSSと住人+クロエ、鬼の三人、壮間とミカドの14人となった。

 

 

「千年桜…か。あの時以来だな…あの時より、俺は強くなれてるのか…?」

 

「あの時…百鬼夜行。俺も聞きました、卍里さん」

 

 

卍里が目を閉じると、今でも思い出すあの終局の刹那。

 

大勢の先祖返りが自我を失い、暴走する事件。それが「百鬼夜行」と呼ばれる事件で、それを引き起こしていたのが、「犬神」の先祖返りの「犬神命」。千年桜の代償で不老となった彼は、千年桜で過去に戻って、何十、何百、何千回と同じ時間を繰り返し、その度に百鬼夜行を起こしていた。

 

しかし、彼の気まぐれで、彼は百鬼夜行が起きた後の23年間を時間を遡らずに生きた。その時間の中で出会ったのが、来世の卍里だったらしい。

 

来世の卍里から「手紙」を受け取った卍里は、犬神を止めようとした。

 

結果として、犬神は死に、百鬼夜行は阻止された。

卍里の声が届いたのは、最期の一瞬だけだった。

 

 

『また 会えるのか…』

 

 

その言葉と流した涙が、犬神の最期だった。

長い時間を生きた「あの」犬神は、最期に救われたのかもしれない。だが、もっとしてやれることがあったんじゃないのか、卍里がそう思うのだって、自然だ。

 

もっと強くなれれば。だから卍里は、その後に出会ったヒビキに憧れたのだ。

 

 

「行くぞ。今度も、僕らの未来は僕らで勝ち取るんだ!」

 

 

不安や迷いで足を止める暇はない。

凛々蝶の言葉で、最終決戦への一歩目は踏み出された。

 

しかし、その一歩先に、彼は立ちはだかった。

 

 

 

「待て」

 

 

一行の前を塞いだのは、ヒビキだった。

 

 

「ヒビキさん…あんた今までどこ行ってたんだよ!」

 

「落ち着け渡狸。が、俺も言いたいことは大体同じだ。

言い方が悪いが、元はと言えばお前が撒いた種なんじゃないのか?」

 

 

誰もヒビキに責任を押し付けようとしているわけではないが、サバキの言う事も最もだ。何より、彼が居なかった事で手をこまねくことになったのは事実。

 

極論、イブキ達が犠牲にならずに済んだ可能性もある。それが分かっているアマキは、歯を食いしばり、自分が下手をしないようバンキに抑えてもらっている。

 

 

「お前達を行かせない。ウォッチを俺に渡してくれ」

 

 

だが、ヒビキは会話をする気が無いように、一方的に腕を伸ばしてウォッチを要求する。

妖怪に取り憑かれている、とは考えなかったわけではない。だが、まだ逢魔が時には遠い。それに、彼の濁っていながらも強い眼差しが、ヒビキ本人の意思だと確証づけている。

 

 

「お前らじゃツクモには勝てない。全員死ぬだけだ。

ツクモは俺を恨んでいるだけだ。俺が死ねば、あいつだって無暗に襲ったりしない」

 

「自分は生まれ変わるし、歴史が消えて忘れるから平気☆それで先祖返り(ボクら)が納得すると思う?」

 

 

心を視た残夏の言葉の通り、誰一人としてヒビキにウォッチを渡す気は無い。

しかし、ヒビキも退く気はない。彼も、本気で『死ぬつもり』だ。

 

 

ヒビキの声も顔も、全てが冷めていた。

ただ、壮間の頭に焼き付いて離れないのは、響鬼の戦いに染み付いた、体を内から焦がすような確かな「熱」。

 

それを確かめなければいけない。

だから壮間は、一歩前に出た。

 

 

「ウィル!」

 

 

名を呼ばれ、虚空から現れたウィル。

彼は壮間の考えを読み、伸びるマフラーで壮間とヒビキを包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

「どこだここ…」

 

 

ヒビキと壮間が転送された場所は、森を抜けた崖の上。

どうやら、妖館からそこまで距離は離れていないようだ。

 

 

「足止めのつもりか?」

 

 

顔を合わせるヒビキと壮間。

威圧感に委縮しそうになるが、壮間は地面を強く踏み、響鬼ウォッチを取り出した。

 

 

「聞かせてください。ヒビキさん、あなたの話を」

 

 

 

_____

 

 

 

先祖返りの中で最も力を持つ、悟ヶ原家。

しかし「サトリ」の先祖返りである悟ヶ原思紋は死去し、現時点でこの家に力は皆無。

 

そんな悟ヶ原家に攻め込む者がいるなんて、誰が予測できただろう。

 

 

「千年桜を…壊す…」

 

 

アナザー響鬼が正面から現れ、千年桜の塚へと突き進む。

護衛だったクロエが不在ということもあり、誰もがアナザー響鬼を前に薙ぎ倒されることしか出来ない。

 

障害を全て破壊し、アナザー響鬼は千年桜の塚に辿り着いてしまった。

 

 

「そこまでだ!」

 

 

振り下ろされた棍棒を、凛々蝶の薙刀が受け止めた。

更に先祖返り達と鬼の猛攻、最後にゲイツの一撃がアナザー響鬼に決まる。

 

危機一髪の瞬間で、凛々蝶たちも千年桜へと到着した。

 

 

「うわー、なんでバレてんの」

 

「逆に僥倖!展開が早まってくれるだけだ、違うか?」

 

「いやラッキーではないでしょ。別に」

 

 

アナザー響鬼の隣に降り立った、二人の男。

ゲイツはその片方に見覚えがある。彼らの正体は、容易に推理出来た。

 

 

「タイムジャッカー…」

 

「また会ったか生半可な正義論者よ!吾輩の前に再び立つとは、実にッ!不愉快なり!」

 

「あーそういや会ってないか。僕はヴォードだけど…まぁ自己紹介いらないよね」

 

 

ヴォードが手を伸ばし、敵の時間を停止させる。

だが、動きが止まったのはたったの一瞬。すぐに束縛は消失した。

 

 

「桜の変な力場のせいで時間が止まらない…これ面倒だね」

 

 

だからと言って、タイムジャッカーが無力化されるわけではない。

ヴォードとアヴニルが放った衝撃波が、ゲイツたちの陣形を散らす。

 

 

「珍妙な術だが不発に終わったな!そして格好もまた珍妙!この羞恥プレイ好きのMは私に任せるがいい!」

 

「それなら私もお供致します。Mでもお強い方なら大歓迎です♡」

 

「高貴な吾輩を貴様如きの世界で語るなッ!」

 

 

アヴニルに斬りかかる蜻蛉と、それに続くクロエ。

また、ヴォードには野ばらの氷結攻撃が容赦なく浴びせられる。

 

 

「こいつはあたしが受け持つわ。覚悟しなさいクソガキ」

 

「だから気乗りしないって言ったのに…」

 

 

残った人員は、壮間が来るまでアナザー響鬼から千年桜を守り、足止めする。沸き立つ殺意を向けるアナザー響鬼に、双熾と凛々蝶は剣先を向け返した。

 

 

「下がれ、とは言わないんだな」

 

「言っても聞き入れては下さらないでしょう?」

 

「安心しろ、僕は絶対に君を置いてはいかない。約束する」

 

「違えることは許されませんよ?嘘ついたら針千本…」

 

「君が飲むんだろう?望む所だ、君を死なせはしない」

 

 

双熾と凛々蝶の、契約を超えた固い結束。

アナザー響鬼の頭に滲む嫌悪感が、咆哮となって解き放たれた。

 

衝撃波が直撃して一人離れてしまったゲイツも、戦線復帰を図る。

そんなゲイツの頭を悪戯するように踏み付け、残されたタイムジャッカーが軽く着地した。

 

 

「貴様もタイムジャッカーか!」

 

「うん。わたしは三番目の想像主、タイムジャッカーのオゼ。君は…そうだ、仮面ライダーゲイツ。聞きたいことがあるんだよ」

 

 

手帳を取り出し、ゲイツの名前を確認するオゼ。彼女の問いかけに耳を貸す気は無く、ゲイツは躊躇なくオゼに殴りかかる。

 

だが、オゼはゲイツの体に触れると、一秒間だけ腕の関節の時間が止まった。

千年桜の影響ですぐに解除されるが、その一瞬でオゼはゲイツの背後に。

 

 

「使命ともいえる目的と、衝動的な欲望…わたしにとって、どっちも『願い』なわけだけど、どっちを優先すればいいのかな」

 

「貴様らの願望など知ったことか!」

 

 

オゼに攻撃を仕掛けるも、同じ手法で何度も躱される。

しかし、オゼはゲイツが吐き捨てた台詞に対し、何か考え込んでいるようだった。

 

 

「なるほど…わたしの欲望は第三者は愚か第二者にすら価値を見出されない。つまり、わたしの中でしか欲望は成立し得ないわけで、わたし自身がそれを尊重すべき…そうか!そうだ!その通りッ!ありがとう仮面ライダーゲイツ!わたしに大事なことを教えてくれて!」

 

 

ゲイツが振り返った先でオゼが消えたかと思うと、瞬きの後にはその顔が目の前に。虚ろな眼は語りかけるように、その願望を吐き出す。

 

 

「人間の三大欲求って知ってる?食欲・性欲・睡眠欲。違うよ、食べて盛って寝て、それは『動物』でしかない。わたしたちが『ヒト』であるならば!そう!一に知欲!二に知欲!三も四も五も六も!知欲!知欲!知欲!知欲ッ!わたしは全てを見たい!知りたい!明かしたい!試したい!」

 

 

オゼの口から氾濫するように言葉が溢れた。その少女は、実に楽しそうに狂う。

その時、辺りに異変が起きた。地面が隆起し、木が激しく揺れ、風が暴れる。

 

その異変の中心はアナザー響鬼。彼女の咆哮に呼応するように、地の底から数多の化け物が唸り声を上げる。

 

そして、千年桜を囲うように生じたのは、

巨大なものから等身大まで入り混じった、魔化魍の群れだった。

 

 

「アナザー響鬼ウォッチにはある現象を術式に変換し、使用者の感情をトリガーに起動するように組み込んだ!その名も『オロチ現象』!!半永久的に自然発生する魔化魍があらゆる生命を蹂躙し大地へ還す!わたしは嬉しいよこれが見たかった!この物語で言うところの…そう、『百鬼夜行』の再来だッ!」

 

 

ヌリカベ、ヤマビコ、オトロシ、カシャ、カッパ…

あらゆる魔化魍が戦況を一瞬で地獄へと塗り潰す。魔化魍を倒せる鬼が対処するも、圧倒的に戦力が足りない。

 

 

「百鬼夜行…?ふざけんな!」

 

 

地獄の中心で、オゼが発した言葉に、卍里が牙を向けた。

 

半年前に犬神が起こそうとした、もしくは繰り返した「百鬼夜行」。それは絶対に許されるべきではない。

 

だが、あれは幼少期より自由を与えられなかった悟ヶ原思紋が、「他人の人生の記憶」を欲しがったが故の行動だ。「サトリ」の先祖返りである彼女は、死人からその人生の全てを読み取れる。

 

犬神は彼女を愛したからこそ、その歪んだ願望に何千回と応えたのだ。

それが、彼の繰り返した「百鬼夜行」。

 

 

だが、目の前で起こっているこれは何だ。

醜い化け物たちが命を踏みにじろうとしている。その中心にあるのは、狂った少女の愉悦だけ。

 

 

「命を…あいつを…お前なんかと一緒にするな!」

 

 

卍里の叫びは、オゼには届かない。

怒りをぶつける卍里を歯牙にもかけず、混沌の坩堝の中で、オゼは舞う。

 

 

「わたしは触れたい!味わいたい!感じたい!

物語の終焉の……その、先を!!」

 

 

 

 

_____

 

 

 

「俺の話…?急になんだよ、オマエ」

 

「俺たちは、誰もヒビキさんの事を知らなかった。納得できないままヒビキさんを行かせて、死なせて…そんなバッドエンド、俺たちは絶対認めません」

 

 

壮間は響鬼ウォッチを握った腕を崖に伸ばし、投げ捨てるような所作を見せる。手が震えているが、こけおどしでも無さそうだった。ヒビキの眼は冷たく、壮間を貫く。

 

 

「教えてくださいヒビキさん。五年前、槌口九十九との間に、何があったのか」

 

 

ヒビキの記憶が呼び起こされる。あの時に目の当たりにした、梃子でも動かない厄介な馬鹿の顔だ。ヒビキが最も好きで、最も嫌いな奴の眼に似ている。

 

もう怒りも焦りも沸いてこない常温の心から、深い溜息と共に、真実が吐き出された。

 

 

「五年前じゃない。俺がツクモと出会ったのは遠い昔。

記憶にある限りじゃ……四百年も前の話だ」

 

 

 

 

 

 

遡る時は、江戸時代と戦国時代の間。

妖怪「牛鬼」の先祖返りを擁することで、貴族にまで成り上がった家。それが飛牛坂家。

 

だが、伝承での悪名高さを継いだのか、飛牛坂の先祖返りは気性が荒く、子供でありながら誰もが手を焼いていたという。

 

 

「何が友好関係だよ。糞でも食ってろ木偶の坊共が」

 

 

牛鬼の先祖返り、飛牛坂彦匡。先祖返りの家同士の交流をしに来たのだが、退屈に耐えかねてすぐさま抜け出し、盗んだ果実を片手に喰らう。

 

この家、槌口家の先祖返りは女だという。家の力を強めるため、政略結婚しろとでも言わんばかりの交流会。彦匡はそんな家に辟易していた。

 

 

「冗談じゃねぇ。いっそもうあんな家捨てて、自由にでもなってやる」

 

 

食いかけの果実を投げ捨て、この家もついでに潰してやろうかなんて事も考える。実際、彦匡にはその力がある。「牛鬼」とは、それ程の力を持つ妖怪なのだ。

 

 

「おい、何してんだオマエ」

 

「……っ」

 

 

彦匡は視界の隅に入り込んだ、その影の腕を掴んだ。

とても長い髪は顔どころか全身を覆う程で、肌も汚れて黒ずんでいる。よく見なければ、人間と分からないくらいだ。

 

驚いたのは、そのやせ細った腕に掛けられていた、妙な腕輪だった。

気になって触れてみると、彦匡の体が力が抜けていく。

 

 

「封魔の呪い?こんなの付けてるってことは…嘘だろ、オマエがここの先祖返りか!?」

 

「あ…あなた……は……え…っと……」

 

 

彦匡がその髪をかき分けると、痩せた少女の顔が見えた。

顔を見られた彼女は酷く動揺し、弱弱しくも強引に、彦匡を引き離そうとする。

 

 

「み…見ちゃ…駄目……!」

 

「は?聞こえねぇよ」

 

「わ…私のご先祖様の……妖怪は…見るだけで……病気になる…って…母様が……だから…私も……」

 

 

「腫物のように扱われている」。その言葉の続きは、容易に想像できた。

彼女は彦匡が捨てた果実に手を伸ばしていた。きっとその伝承のせいで誰からも距離を置かれ、ろくに世話もされていないのだろう。

 

彦匡にも、理解は出来た。「触らぬ神に祟りなし」とはよく言ったものだ。そんな気味の悪い物と関わりたいのは、熱心な宗教論者くらいだろう。

 

しかし、彦匡には彼女の気持ちも、よく知っていた。

 

自分が何をしたわけでも無いのに勝手に期待され、恐れられ、疎まれ、自由を奪われる。神が考えたのか知らないが、先祖の化け物の尻拭いをさせられるなんて、随分と迷惑千万な仕組みだ。その仕組みも、鵜呑みにする人間共も、苛立たしくて仕方が無い。

 

 

「オマエ、名前」

 

「…え……?」

 

「名前言え。次聞き返したら強めにはたく。声小さくてもはたくぞ」

 

「え…!?あ……あの…私は…槌口……九十九…です。『野槌』の…先祖返り……」

 

 

『野槌』。口だけの蛇の妖怪。牛鬼と同じく、人食いの伝承も残る妖怪だ。彦匡とは境遇が近い少女とも言えた。

 

だが、それよりも脳髄に反響するのは、「野槌」という名前。その刹那、衝動的な感情が彦匡を動かした。

 

 

「逃げんぞ」

 

 

九十九の腕を強く握り、彦匡は駆け出した。

牛鬼に変化した彦匡は、立ち塞がるものを全て跳ね飛ばす。九十九を縛っていたものも、力づくで引きちぎった。

 

 

出会ったばかりの少女のために、馬鹿としか言いようがない。

彦匡を突き動かしたのは、その体に流れる忌々しい化け物の血。

 

 

「手前を恨むぞ、御先祖様…!」

 

 

その日を境に、二人は槌口と飛牛坂から姿を消した。

 

当然、それを家が黙認するわけがない。その噂は先祖返りのコミュニティに広がり、二人は先祖返りの家全体に追われることとなってしまった。

 

人間の追手など、彦匡の敵ではない。

しかし、そんな彼の自信を揺るがす怪物が、彼らの前に現れた。

 

 

魔化魍。妖怪の名を冠したその異常生物は、余りに強大だった。

まるで敵わない凶暴さ。それに加え、人間や先祖返りでは、どう足掻いても倒すことは出来ないと来た。彦匡は、生まれて初めて己の非力さを憎んだ。

 

 

「どいてな」

 

 

その一言と足音の次に、鉄を鳴らした音が聞こえた。

そこに立ったのは人間の男だった。だが、彼はその姿を「鬼」へと変え、圧巻の強さで魔化魍を討ち祓ってみせた。

 

 

彼は名を「カブキ」と言った。

身を守る強さを得たい彦匡、九十九は、彼に弟子入り。偶然にも鬼の力を持っていた彦匡は、修行の末に音撃戦士へと変身を果たす。

 

鬼となった彦匡は瞬く間に強くなり、魔化魍から九十九を守るだけの強さを得た。

 

 

「彦匡…さま……ごめん…なさい…助けてくれたのに…私……力に…なれなくて…」

 

 

九十九は華奢だが、腕っぷしには目を見張るものがあった。

しかし、鬼には成れず、封魔の呪いのせいで妖怪の力も使えない。彼女が彦匡に並び立つことは出来ないだろう。

 

 

「…助けてねぇよ、勝手に連れ出したんだ。いい加減、先祖返りの柵にはうんざりだったからな。言っとくが今の気分は最高だ」

 

「でも……彦匡さまは…」

 

「だから、さま付けはやめてくれ。俺はオマエを攫った。その詫びとして……あぁ、俺がツクモを、ずっと守ってやるよ。それで堅苦しいのは無しだ」

 

 

彦匡は九十九の髪を後ろで結び、その眼を見て約束した。

涙を流しながら、九十九は初めて笑顔を見せた。目を奪われるほど愛おしい、そう思ったのはそれが初めてだった。

 

 

そして、鬼となって数年が経ったある日。

伝説の魔化魍、オロチが復活した。

 

オロチは比類なき強さを見せ、村を襲っては人間を喰らい尽くす。

それに対抗出来るのは、鬼のみ。彦匡もまた、鬼としてオロチへと立ち向かった。

 

激闘の末、オロチは討たれた。

但し、ある音撃戦士の命と引き換えに。それが響鬼―――彦匡だった。

 

 

彦匡が死に、生きる気力を失った九十九は、自ら命を絶ったという。

 

 

それが、「一回目」の二人だ。

 

 

 

その数年後。

飛牛坂家の本家に、「飛牛坂彦匡」が生まれた。

 

先祖返りは死んだとしても、その血族のどこかからまた生まれ変わる。それが「不変」に片足を入れた人間の宿命。

また、先祖返りは同じ容姿、同じ力、同じ運命、稀に記憶をも受け継ぐ。

 

そう、彦匡には、前世の記憶が鮮明に残っていた。

 

 

彦匡は前世の無念を抱いたまま成長した。

そして、運命が二人を引き合わせ、彼はまた出会った。

 

 

「ツクモ……」

 

 

九十九もまた、再び生まれていたのだ。

だが、彼女は彦匡と違い、記憶を継いではいなかった。

 

同じ運命を辿るわけにはいかない。今度は家から逃げることをせず、彦匡は自分から槌口家の先祖返りとの政略結婚を志願。家に守られつつ、九十九を守ろうと考えた。

 

自由が無くたって、幸せにはなれるはず。

そう信じて、二人は平穏な日々を送った。彼女も幸せそうだった。実際、そうだったのだろう。

 

だが、彦匡は気づいてしまった。

 

槌口家は彦匡に隠れて、九十九を実験台に妖術の研究を行っていた。

あろうことか、それは「人工的に魔化魍を生み出す」研究。半生物半妖怪の先祖返りの体組織と野槌の力を使い、「妖怪と生物の融合」を企んでいたのだ。

 

 

彦匡は、九十九を連れて家から逃げ出した。

槌口家に囚われている限り、九十九に幸せは無い。彼女を守るため、彦匡は再び鍛錬し直し、鬼の力を得た。

 

 

それでも、追手は二人を狙ってやってくる。

魔化魍ばかりを警戒していた彦匡は、人間の刺客への意識が薄れてしまう。その結果、彦匡は槌口家の暗殺者に不意を突かれ、九十九がそれを庇い、凶刃に倒れた。

 

己の油断で九十九をまたしても守れず、抜け殻のようになっていた彦匡は、その直後に妖怪に襲われてあっけなく死亡した。

 

 

 

今度は十年後、彦匡はまた生まれてしまった。

記憶は前々世のものまでハッキリと残っている。どうやら鬼になったことで妖の力が濃くなり、確実に記憶を引き継ぐようになってしまったらしい。

 

九十九は何があっても鬼には成れない。また出会ってしまった九十九は、何一つとして覚えてはいない。深い孤独に囚われたまま、彼と出会ってしまう。

 

三回目はまず鍛えて響鬼になり、そこから九十九を連れ出した。

だが、今度は事故で九十九の能力が暴発。病に臥せた彦匡は死亡し、一回目と同じく九十九もそれを追う。

 

四回目は強い身体を欲した。しかし、前世の恐怖か九十九に寄り添いきれず、そのせいで野良の妖怪に九十九を殺される

 

五回目は逃亡に成功し、波風立たない生活を送るが、大災害により二人とも命を落とす。

 

 

何度も何度も死に、その度に生まれ変わり、決まって九十九と出会って鬼となる。そして、どうやっても九十九を救うことは叶わない。

 

これは彼の魂に刻まれた運命。どこまでも残酷な運命だ。

 

彦匡は諦めなかった。幾度となく繰り返される人生の中で、運命を変える方法を模索した。運命を引きちぎるほど強くなるため、鍛えて鍛えて鍛え続けた。

 

しかし、努力は彼を裏切り続ける。

 

運命を変えたという先祖返りの話は聞く。悟ヶ原にも何度も話を聞いた。思いつく限りの手は尽くした。それなのに、何故自分はそうならない。

 

 

数百年の時間を経て、その魂の炎は摩耗し、

いつしか、冷めきった心だけが残っていた。

 

 

何度目の人生か。時は二十世紀の終わりを目前としていた、平成の時代に。

 

彦匡は、九十九と出会うべきではないと考えていた。

自分が彼女と会ってしまうから、彼女は死ぬ運命を辿る。四百年前のあの日、九十九を連れ出したのが間違いだった。そう思うしかない。

 

 

しかし、そんな彦匡の決心さえも、運命は裏切る。

 

 

「ヒビキさん…ですよね……私を…弟子にしてください…!」

 

 

自力で脱走した九十九が、彦匡―――ヒビキの下に現れてしまった。

自由が欲しくて、強さに憧れたという。今までの記憶で、これほどの憤りと絶望を味わったことは無い。運命は、どうしても彼女を殺したいらしい。

 

 

何度も鬼には成れないと説明した。残酷な現実だって見せた。それでも、頑なに九十九は離れようとはしなかった。

 

受け入れないまま、九十九は事実上の弟子となってしまった。

 

だが、驚くほどに何も起こらなかった。

槌口家は昔に比べて九十九に執着せず、それでいて封魔の呪いはより強固になっているため、暴発の心配はない。妖怪も江戸の頃に比べると、随分と弱くなった。

 

そうして九十九と過ごせることが、嬉しくないわけが無かった。それこそ、ヒビキがずっと焦がれてきたものなのだから。

 

こんな日が続けばいい。

そう思い始めた時に限り、運命は決まって牙を剥く。

 

 

魔化魍「ノツゴ」の出現。強力な魔化魍だが、最強の座にいるヒビキにとって、恐れる敵ではなかった。

 

油断は全くしなかった。全力でノツゴを倒しにかかった。九十九を守ることに、全身全霊を注いだ。

 

それでも、不自然に引き寄せられるように、ノツゴの顎が九十九を襲った。

 

 

「……っ…ツクモ!!」

 

 

命に別状は無かった。だが、その事実はヒビキの目を覚まさせる。

やっと、運命を変えるほど強くなったのではないか。一瞬でも期待した自分は愚かとしか言いようがない。

 

何も変わっていないじゃないか。

このままでは、何度も見た最悪の結末が訪れてしまう。

 

 

「ツクモ。オマエみたいな役立たずは弟子じゃない。出ていけ」

 

 

ヒビキは、九十九を一方的に突き放した。

何を言われても弟子を辞めようとしない九十九。何度拒絶しても、涙を流してすがりつく。

 

 

ヒビキだって離れたくはない。

愛しているんだ、四百年前のあの時からずっと。だからこそ、愛されることがこんなにも苦しい。

 

だから、ヒビキは九十九を叩きのめした。愛の欠片も無い、暴力で。

心にも無いことを吐き連ねた。九十九の居場所を槌口家にリークした。

 

これだけの仕打ちをすれば、九十九はヒビキを憎むはずだ。

復讐しようにも、絶大な力の差を見せつけた。もう彼の前に現れることは無いだろう。

 

 

「これで…いいはずだ…」

 

 

その時は、そう思っていた。

彼女が響鬼を殺す力を得るなんて、思いもしないで。

 

 

九十九が憎しみを抱えて戻ってきた、あの瞬間

ヒビキの心は、先祖返りの運命の激流を前に、完全に砕け散った。

 

 

 

 

 

 

「納得できたな?俺はもう死ぬのなんて怖くないし、鬼も魔化魍も消えればいいと思ってる。それに、俺が大人しく死ねば…他に誰も死なないんだろ」

 

 

ヒビキの話が終わった。

想像を絶するほど永く、壮大な物語。同時に納得も出来た。ヒビキがあっさりとウォッチを継承したのは、響鬼の歴史を消して、己の運命を書き換えるためだったのだ。

 

ヒビキはきっと、今の九十九に対して激しい負い目を感じている。だから死んで詫びようとしている。

 

その上、2018年ではアナザー響鬼が出現したことから、九十九は生存しているのだ。

ここで命を捨てれば、九十九を守ることが出来る。四百年越しの約束を果たせる。それが、冷めきったヒビキが出した最善の結論。

 

 

「…それでいいんですか」

 

 

壮間はヒビキを理解した。彼の生き様を非難するつもりはない。

でも一つだけ、飲み込むことが出来ない事があった。

 

 

「ヒビキさんは…九十九さんを生かしたかっただけなんですか?」

 

「そうだよ。そのための人生だ」

 

 

即答だ。ヒビキの言葉に迷いはない。

それでも、壮間はどうしても納得できない。

 

これまで先人から教わるだけだった壮間は、今初めて

他の「主人公」を、否定した。

 

 

「違う…ヒビキさんも…九十九さんも!一緒に生きたいんじゃなかったんですか!」

 

「…話聞いてたか?それが出来ないから、俺はアイツを突き放したんだろ!」

 

 

激昂が込められた、ヒビキの言葉。

それは壮間じゃなく自分に向けられた、悲しい怒り。

 

 

「俺は…さっきの話を聞いて、心からヒビキさんを尊敬しました。守るために、どこまでも鍛え続ける生き様。それこそが『響鬼』なんだって。貴方がちゃんと凄い人で、安心しました」

 

「…でも俺は、約束の一つも果たせない」

 

「そんなわけない!」

 

 

再び、ヒビキの言葉を否定する。

 

壮間は知った。彼は、誰よりも鍛えた男だ。誰よりも強い男だ。

きっと運命だって、捻じ伏せる男だ。

 

 

「守れます。そうに決まってる。

貴方がそう信じて、鍛え続けて、積み重ねた時間の重さを!貴方以外に誰が信じるんだ!」

 

 

努力は必ず報われる。

そんな温い若者の信条なんて、ヒビキには届かない。

 

だから壮間も、心を決めた。

 

 

「分かりました…貴方が信じないなら、俺ももうヒビキさんを信じない。

だから、俺がやります」

 

 

壮間の言葉に目を向けたヒビキに向け、ライドウォッチを握った拳を突き出した。

 

 

「ヒビキさんの努力も約束も勝手に継いで、俺が九十九さんを止めます。

俺は行きますよ。ヒビキさん、貴方を倒して!」

 

 

 

 

 




冒頭の昔話は、「牛鬼は人助けをすると絶命する」という伝承を元にしました。

今回の話でオリジナルのヒビキとはだいぶ差別化できたと思います。
響鬼編だからと、七人の戦鬼要素も入れたくて…(あっちは戦国時代ですが)。僕は歴史がだいぶ苦手なので、細かいツッコミは無しです。

次回で多分響鬼×いぬぼく編完結です。エピローグやるかもですけど。
またかなり詰め込んでるので、まだまだ急展開にご期待ください。

感想、評価、お気に入り登録、よろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。