仮面ライダージオウ~Crossover Stories~   作:壱肆陸

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羽沢天介
仮面ライダービルドに変身した青年。23歳。羽沢つぐみの義兄。自称天才科学者で、通称「天に二物しか与えられなかった男」「人当たりの良いマッドサイエンティスト」「悪意のない悪意」。アナザービルドによって殺害されたことで、ビルドの歴史が消滅した。2017年では壮間の「戦う理由」を認め、仮面ライダービルドの力を託した。修正された歴史では記憶を失うこともなく、つぐみとの出会いは無かったことになった。

本来の歴史では・・・つぐみ達を守るために、過剰なまでに命を懸けてスマッシュとの戦いに身を投じる。しかし、スカイウォール計画の阻止に失敗し、彼女たちの「いつも通り」は瓦解。天介は自分の存在に理由を失い………


デュエマに目覚めた精神年齢12歳、146です。
今度は5000円使ってデーモンコマンドデッキ作りました。あとはプレイする相手ですね!問題は!

今回で響鬼×いぬぼく編終わるといったな。あれは嘘だ(土下座)。
最後にエピローグだけ書かせてください…とりあえずアナザー響鬼戦決着です。祝え。


目覚める約束

大地から湧き出る魑魅魍魎、「オロチ現象」。

この世の終わりと化した千年桜の塚で、物語を巡る決戦が繰り広げられる。

 

 

「インチキ過ぎでしょ!魔化魍がクソ程出てきやがる!」

 

「無駄口を叩くな茨田。手を休めれば喰われるぞ」

 

 

蛮鬼は刀弦響、裁鬼は専用の小型音撃弦の二刀流で魔化魍を斬り付ける。

 

魔化魍に対処できるのは、蛮鬼、裁鬼、天鬼、ゲイツのみ。ゲイツはタイムジャッカーのオゼに手間取っているため、鬼の三人でこの無数の魔化魍を相手しなければならない。

 

 

「邪魔はさせません…私達が必ず…!」

 

 

天鬼は音撃管で魔化魍「ウブメ」を撃破するが、それを区切りに意識が揺らぎ、膝を地につけてしまう。天鬼は若手であり、女性の鬼。血を吐きそうなほど悔しいが、体力の限界が現実だった。

 

空を飛ぶ魔化魍には裁鬼も対応できるが、そうすれば地上の魔化魍に防衛線を突破されてしまう。

 

 

これ以上他の皆に負担はかけられない。

血の味がする呼吸を肺に取り込み、音撃管「烈風」を空に向けた。

 

 

「無理すんなって、若いのが」

 

 

速い銃声。魔化魍の群れに、寸分違わぬ精度で鬼石が撃ち込まれる。

その直後、暴風の如き勢いの音撃が魔化魍たちを木っ端に還した。

 

聞き覚えがある音撃だった。背後で腕を伸ばすのは、銃身の長い音撃管「嵐」を構えた、橙色で八本角の鬼。

 

 

「トウキさん!怪我は…」

 

「平気だっての。自称生涯現役、甘く見るなよ後輩ちゃん!」

 

 

音撃戦士 闘鬼。

管の鬼が追加で一人、それも屈指の実力者が加わったことにより、状況は一気に好転。

 

熟練の手際で魔化魍を次々討伐し、鉈を振りかざした闘鬼は裁鬼と並び立つ。

 

 

「こうやって古い人間が出しゃばるってのも、どうにもいかがなもんかねぇ。なぁサバキよ」

 

「どうせ消える伝統だ、どうでもよかろう。

それより酔いどれ男に背中を預けるというのは、少し心臓に悪いのだがな」

 

「流石に飲まんわい。ちゅーわけで、背中頼むぞ親友!」

 

 

戦いの火は更に広がる。

アナザー響鬼は凛々蝶、双熾、カルタに妨害され、千年桜の破壊に至っていないが、ここに石を一つ投げ込むだけで一変するような戦況だ。

 

加勢に向かおうとするオゼを、ゲイツが全力で阻止。

というより、ゲイツはオゼを本気で殺しに行っている。

 

 

「行かせんぞタイムジャッカー。貴様は今ここで、俺が殺す!」

 

「邪魔?妨害?妨碍?いいよいいよ!きみたちの干渉で実験はわたしの知らない方向に進む!わたしは今!その結末が観測したくてしたくてしたくて!仕方が無いッ!!もっともっとわたしを誘って!興奮昂奮亢奮冷めやらぬ願いの渦に!!」

 

 

その狂った叫びを掻き消す熱量で、千年桜の防衛戦は続く。

この戦いの行方は―――未熟な王へと委ねられた。

 

 

 

________

 

 

 

「俺は行きますよ。ヒビキさん、貴方を倒して!」

 

 

声高に宣言した壮間に対し、ヒビキも並々ならぬ気迫を向ける。

壮間にはすべてを話した。それを聞いたうえで邪魔立てするのであれば、敵と見なすしかない。

 

ヒビキは腰から音角を外し、角を展開して指で弾く。

壮間に対し、初めて本気を出すつもりだ。息を吞み、ジクウドライバーとジオウウォッチを構える。

 

 

《ジオウ!》

 

「変身!」

 

《ライダータイム!》

《仮面ライダー!ジオウ!!》

 

 

ヒビキは紫の炎を振り払い、仮面ライダー響鬼へと変身。

それに向かい合うのは、壮間が変身した仮面ライダージオウ。

 

ゴングを待つもりはないと、響鬼の腕は躊躇なくジオウに伸びる。

 

生身ですら相手にもならなかったヒビキの強さは、壮間もよく知っている。

だが、その攻撃を回避したジオウは、続く二撃目、三撃目もなんとか躱して見せる。

 

 

「本気で勝つ気みたいだな」

 

「当たり前ですよ。鍛えましたから!」

 

 

「戦えている」。その感覚は確かなものだった。

ジカンギレードを持ち、銃と剣を上手く使い分ける。そう簡単に揺るがない集中力も手に入れ、それに対応する体や戦闘知識も身についている。響鬼も素直に驚く程だ。

 

 

しかし、それは「前よりは」の話に過ぎない。

 

 

 

「っ…!あぁッ……!」

 

 

響鬼の拳がジオウを打ち付ける。異常ともいえる馬力は、ジオウの体を軽々と吹き飛ばす。

音撃棒から放たれる炎弾はジカンギレードの銃撃を容易く撃ち落とし、烈火剣での剣捌きは特訓相手の誰ともレベルが違う。

 

更に一撃がジオウに入った。

余りの衝撃で、手から響鬼ウォッチが離れる。放られたジカンギレードが地面に突き刺さる。

それでもジオウは痛む体で、再びウォッチを強く握り、立ち上がった。

 

 

「もうやめろ。勝てるわけないだろ、俺に」

 

 

響鬼の言葉は事実だけに、重く圧し掛かった。

 

事実、響鬼の攻撃にギリギリ耐えているのが現状。扱いは赤子同然。

ジオウは、響鬼に一度だって攻撃を掠めることすら出来ない。

 

勝てるわけがないのだ。

壮間が鍛えたのは精々二週間やそこら。それまでの人生は、人並みの努力しか出来なかったような男だ。そんな人間が、四百年も鍛え続けた男に勝てるわけがない。

 

積み重ねた時間の重さが違う。

それでも、壮間は言葉を吐き続ける。

 

 

「…勝ちますよ。自信なんて無くても、『アナザー響鬼を倒せる』って、色んな凄い人が俺を信じてくれたんです。だから俺は、九十九さんに勝てます。

 

九十九さんと向き合おうとしない、ヒビキさんにだって」

 

 

気分が悪かった。響鬼の胸に、悪臭が立ち込めるような気分。

こいつに何が分かるんだ。四百年も足掻いてきた苦しみが分かるのか。

分からないなら黙って消えてくれ。やっと、あの日の罪を償えるのに。約束を果たせるのに。

 

 

「…暑苦しいな。オマエは、そういうタイプじゃないと思ってた」

 

「俺だって…背伸びしてますよ。今まで通りだったら、ヒビキさんを前に俺は絶対に折れてた。でも…そうはいかない理由があるんです。ヒビキさんの足元にも及ばない、しょーもない理由が」

 

 

これだけ一方的に叩きのめされた。天地程の力の距離を見せつけられた。いかなる努力も策も無意味だと知らしめられた。これだけやっても、何故この「普通の少年」は倒れない。

 

そのどうしようもなく熱い声が、ヒビキの視界を曇らせる。

 

理解できない響鬼の前で、ジオウは拳を振り上げ、地面を蹴った。

 

 

「俺の…自慢の幼馴染に啖呵切ったんです。王様になるって。

だったら…とんでもない虚勢張ってでも!俺は絶対成し遂げるしかない!」

 

 

彼を突き動かすのは、ただの「意地」。

だが、そうだった。積もった記憶の底で思い出した。

 

ヒビキだって、彦匡だって最初はそうだった。

「守りたい」「運命を変えたい」そんな大した物じゃない。

 

暴れる力しか無かった自分を見て欲しかった。

ただ愛した人に、格好つけたかっただけの少年だ。

 

 

壮間のその思いと、若さ。

それに動揺したヒビキの意識と集中が一瞬だけ鈍り、地面に刺さったジカンギレードに足を取られる。

 

実力では決して届かなかった。

だが、壮間が諦めず、ヒビキに僅かな迷いがあり、そこに幾つかの偶然が重なって―――

 

 

ジオウの拳が、響鬼へと届いた。

 

 

 

「……ッ!…」

 

 

顔面に入った、たった一撃。力の入ってない、不意の一撃。

それでいて、初めて届いた壮間の一撃。

 

響鬼はその一撃の勢いに身を任せ、倒れた。

天を仰いだまま、響鬼は仰向けのまま動かない。

 

 

「…ありがとうございます」

 

 

自分の拳を見つめ、ジオウはそう言い残して走り去って行った。

 

残された響鬼の顔に残る、ジンジンとした感覚。

久しぶりに感じる熱い痛みだ。

 

 

「何十回も生きてて、子供に殴られるのかよ…」

 

 

陽光が木々をすり抜けて降り注ぐ。

「自分の重ねた時間を信じろ」。彼のその言葉に、響鬼は笑って吐き捨てた。

 

 

 

「やっぱ俺、弱いじゃねぇか…」

 

 

 

_______

 

 

 

アナザー響鬼から千年桜を守る戦いは続く。

肝心のアナザー響鬼を主に相手するのは、最強のシークレットサービスである双熾。しかし、アナザー響鬼の強さがはっきり言って出鱈目過ぎる。

 

 

双熾の戦闘力は極めて高い。百鬼夜行の首謀者である犬神をも下す強さ。更にそれが、九尾の狐の能力によって何人にも分身している。

 

そこに凛々蝶、カルタが加わっているというのに、

その圧倒的な実力を前に、劣勢を強いられていた。

 

 

「ちよ、カルタ…!何やってんだよ狐ヤロー!」

 

 

屋内の人々を避難させ、残夏と共に卍里が千年桜へと戻ってくる。

しかし、そこは既に混沌とした戦場。非力な先祖返りである卍里が出来ることなど、無い。

 

 

「クッソ…っ!俺は…!」

 

 

爪が手に食い込むほど拳を握る卍里。

その悔しさなど知る由もなく、戦いは激しさを増す一方。

 

アナザー響鬼はった二本の棍棒で、五人の双熾の刀、カルタの骨腕、凛々蝶の薙刀を完璧に捌ききっている。それどころか、気を抜けば反撃どころか一瞬で千年桜を抉り取られる。

 

 

「異・音撃打……紅蓮撃砕の型」

 

 

短く深い呼吸の後、棍棒が振り下ろされた衝撃で地面が爆裂。

桁違いのパワーの上に、俊敏な動きのおまけ付き。一瞬で双熾との間合いを詰め、刹那の隙に音撃打を叩き込んだ。

 

攻撃を喰らったのは分身だ。

だが、双熾の分身は卍里とは違い、感覚や状態を共有する。本物の双熾にも、並大抵では言い表せないダメージが刻まれてしまった。

 

 

「御狐神くん!」

「来ては…いけません!」

 

 

心配が先に立った凛々蝶は、アナザー響鬼を前に無防備な背中を晒す。

瞬間、アナザー響鬼から伸びる四本の爪。響鬼の「鬼闘術 鬼爪」を模した能力だ。

 

九十九の警告に嘘はない。その爪は無慈悲に、無作法に、障害となる同胞の首筋へ振り下ろされ―――

 

 

 

「―――凛々蝶ちゃん!」

 

 

 

木の陰から飛び出した体が凛々蝶を押し飛ばし、鬼爪は虚空を切り裂く。

目を開いた凛々蝶に生じるのは、安堵を掻き消す切迫感。

 

 

「片平さん…!?」

 

「ごめん!やっぱり私、黙って待ってるなんて出来なかった!」

 

 

他の従業員と妖館に残ったはずの香奈。勝手に妖館から抜け出した彼女は、何が出来る訳でも無いと分かっていながら、全速力でこの戦場へと赴いた。

 

丸腰のただの人間が此処に来るのは、控えめに言っても自殺行為。見つからなかった、もしくは巻き込まれなかっただけ奇跡と言える。しかし、その幸運を自ら捨てた香奈を襲うのは、秒読みの死に対する恐怖。

 

 

「君は…早く逃げるんだ!僕らは先祖返りだ、また生まれ変わる!

せめて…この時代に関係のない、君たちだけでも!」

 

 

双熾がやられ、もうこれ以上千年桜を守ることが出来ない。

戦況は瞬く間に瓦解していき、このままでは魔化魍とアナザー響鬼に皆が殺される。

 

だが、きっと誰もが戦うことを止めない。それは自分も同じ。

だから、凛々蝶は未来から来た香奈たちだけでも、逃げて欲しかった。

 

 

「…嫌だよ!来世とか前世とか知らない!私の友達は…今ここにいる凛々蝶ちゃんで、今のみんなだから!」

 

 

香奈は腕を広げ、アナザー響鬼の前に立ちはだかった。

涙を堪え、震える脚で立つ彼女は、とても優しくて凄い少女だ。「死んでほしくない」、誰だってそう思う。

 

しかし、歯止めを失った殺意には、彼女の「素質」は届かない。

 

 

届くとすれば……

 

 

 

「香奈から…離れろっ!」

 

 

 

死角に現れた戦士の、全体重をかけた全身全霊の不意打ち。ヒビキを倒し、彼はようやく千年桜へと辿り着いた。

 

 

「ソウマ!」

 

「香奈、凛々蝶さん、双熾さん。九十九さんは…俺に任せて」

 

 

ジオウは態勢を戻したアナザー響鬼を前に、右腕のホルダーに手を伸ばす。

 

暴走した彼女に届くのは、また別の主人公の素質。

勇気と資格を伴った、「力」だ。

 

 

《響鬼!》

 

 

ジオウは響鬼ウォッチのカバーを回し、ウォッチを起動。

響鬼の顔が刻まれたウォッチを左スロットに装填し、ジクウドライバーを回転させた。

 

 

《ライダータイム!》

《仮面ライダー!ジオウ!!》

 

 

ジオウの前に現れる、音撃鼓のビジョン。

その中に形成された響鬼アーマーにノックするように触れると、アーマーは分解して宙を駆ける。

 

だが、そんなあからさまなパワーアップを、敵が黙って見ているはずもない。

アナザー響鬼はジオウに向けて、赤い炎を吐き出した。超高密度、高出力、高温の妖気を帯びた炎は、対象を炭化させるまで消えることは無い。

 

 

「炎が…日寺くん!」

 

 

ジオウの全身が炎に包まれる。

思わず名を呼んだ凛々蝶だが、不思議と不安は感じなかった。

 

炎の上から鎧が覆い被さり、炎に巡らされた妖気が書き換えられる。

赤い炎を紫に染め上げ、それを振り払って出でるのは英雄の姿。

 

 

そう、何も恐れることは無い。

ぼくたちには、ヒーローがいる。

 

 

《アーマータイム!》

《ヒビ・キー!》

 

「はぁぁぁ……たぁっ!」

 

 

両肩に音撃鼓の装備。「ヒビキ」の複眼。額の二本角にジオウの触角を合わせて、四本角の鬼のよう。纏った炎は手の平で具現化し、二本の音撃棒を形作った。

 

彼をここまで送り届けた、自称シークレットサービスのウィルは、その姿を盛大に祝福する。

 

 

「祝え!全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来を知ろしめす時の王者!

その名も仮面ライダージオウ 響鬼アーマー!また一つ、ライダーの力を継承した瞬間である!!」

 

 

響鬼の力を継承したジオウは、音撃棒を両手にアナザー響鬼へと立ち向かう。

前に戦った時は惨敗を喫した。だが、壮間は「鍛えた」。成果はどうあれ、その事実が壮間の心から恐怖を消し去った。

 

 

「はぁっ!」

 

 

アナザー響鬼の棍棒攻撃。それを受け止めるのではなく、一瞬だけ音撃棒で受けて、相手の攻撃に合わせて受け流す。

 

防御が甘くなった右腕方向に素早く回り込み、斬り付けるような一撃と蹴り。そして、めった打ちにするような乱雑かつ不規則な連打、連打、連打。

 

勢いで圧して、最後に体目掛けて両方の音撃棒で強打。

あの強さのアナザー響鬼に対し、ジオウの粗削りな攻撃は見事に決まった。

 

 

「あの力…姿…ヒビキ…!私は…絶対に許さない……!」

 

 

生き返るように立ち上がるアナザー響鬼。

どうやら、先の攻撃も防御されていたようだ。さっきのラッシュが成功したのも、アナザー響鬼の動揺に畳み掛けたに過ぎない。やはり、一筋縄どころの相手ではない。

 

 

(あんなこと言ったけど…このままじゃ負けるのは俺だ。やっぱ強い…だったら…!)

 

 

音撃棒から発射した炎弾で、アナザー響鬼を足止め。

ジオウは一旦距離を取り、さっき視界に捉えた卍里に駆け寄る。

 

 

「卍里さん!」

 

「壮間、おまえ勝ったのか…ヒビキさんに…!」

 

「頼みがあります。アナザー響鬼を倒すには、皆さんの力が必要です!」

 

 

卍里はジオウの言葉を聞き、思いついた事を簡潔に耳打ちする。ジオウも、それに賭けることを即決。

すぐにアナザー響鬼との戦闘に戻り、その間に卍里は手が空いている先祖返りたち、そして鬼に作戦を伝え回った。

 

 

「オッケ~☆じゃ、まずはボクの番だね~」

 

 

残夏が顔の包帯を解く。これは封魔の呪いが施されており、これを外すことで百目の力が解放される。掌、腕に無数の「目」が現れ、残夏はその全ての視線をアナザー響鬼へと向けた。

 

 

「右側に三歩動いて、左に防御、そっから三回目の攻撃はフェイントだから気を付けてね~♬」

 

「…っ!はい!」

 

 

残夏の言うとおりにアナザー響鬼が動く。

ジオウはそれに合わせて動くことで、防御と攻撃の質が格段に向上した。

 

残夏の体に大きな負担が掛かるため滅多にやらないが、これが百目の能力。

敵の思考、思念、場所、過去、未来、本気の彼に視えない物はない。

 

残夏の指示で、大勢は大きく好転した。隙が無かったアナザー響鬼にも攻撃がヒットし始め、逆にジオウが一方的にやられることは皆無に。

 

 

「九十九さん…貴女を、必ず止める!」

 

「人間に…私の何が分かる……!!」

 

 

アナザー響鬼の攻撃精度が、確実に荒くなっている。

激情と動揺。そして恐らく、女性である上に長く軟禁されてきたが故の、スタミナ不足だ。

 

 

「今だ!」

 

《フィニッシュタイム!》

《響鬼!》

 

 

必殺待機状態へと移行し、両肩の「音撃鼓ショルダー」からエネルギー状の鼓が具現化。音撃棒の動きに合わせて鼓はアナザー響鬼に飛んで行き、数回の突撃の後に重なり合って一つとなり、アナザー響鬼の胴体に音撃鼓を形成した。

 

この音撃鼓は、接着した敵の動きを妖気で拘束する。

しかし、アナザー響鬼はそれでも動きを止めず、その状態のままジオウへと襲い掛かる。

 

 

「私に…任せて…!」

 

 

今度はカルタが変化。がしゃどくろになって巨大化したカルタはアナザー響鬼を食い止め、巨腕を地面に叩きつけて土煙でアナザー響鬼の視界を奪った。

 

ジオウを一瞬だけ見失った。

だが、土煙の中ですぐにその気配を捉えた。闘気を向け、こちらに突っ込んでくる。

 

 

「終わりだ…!」

 

 

アナザー響鬼は棍棒に炎を纏わせ、煙を裂いて現れたジオウの頭に振り下ろした。

殺った。ところが、その確信は次の瞬間に蒸発して消える。

 

 

「不良…なめんなぁっ!!」

 

 

頭を砕くはずの棍棒は、空振りに反転。

目の前にいたジオウは消滅し、代わりに現れたのは豆狸。最後の最後で、彼女は狸に化かされた。

 

渡狸は豆狸の姿でアナザー響鬼の顔に張り付き、再び視界を奪う。

 

渡狸の偽物特攻で、勝負を決めるのに十分な隙が生まれた。

一反木綿の反ノ塚に乗って空中で待機していたジオウは、その瞬間にアナザー響鬼を目掛けて飛び降り、胴体の音撃鼓に向けて渾身の飛び蹴りを放つ。

 

 

「おらぁぁぁっ!!」

 

《音撃タイムブレーク!!》

 

 

「鼓は桴で鳴らすもの」。その固定概念を利用した、上空からの不意打ち。

ジオウは勢いを止めず、連続蹴りで音撃鼓を打ち鳴らす。その連撃は確かに音撃となって、アナザー響鬼の全身に響いていく。

 

だが、想像以上の耐久。この調子だと、アナザー響鬼を倒す前にジオウの限界が来る。

 

 

「俺らを忘れんなよ!行くぜロックンロール!」

 

「文字通り支えてやる。しっかり叩き込め!」

 

 

そこに駆け付けたのは、蛮鬼と裁鬼。

ジオウの連続蹴りで隙だらけのアナザー響鬼の背中に、それぞれ音撃弦「刀弦響」と「閻魔」を突き刺し、音撃震「地獄」と「極楽」を取り付けた。

 

 

「助力します、日寺さん!」

 

「折角だ、派手に行こうや!」

 

 

更に天鬼と闘鬼が続いて、アナザー響鬼の体に鬼石を打ち込んだ。

二人の音撃管「烈風」、「嵐」。そこに合体させるは、音撃鳴「鳴風」と「つむじ」。

 

 

今ここに揃う、四人の鬼と、響鬼を受け継ぎし者。

鼓・弦・管の三つの音撃が一つとなり、偽りの響鬼を討ち祓う。

 

 

「音撃斬!冥府魔道!」

「音撃斬!閻魔裁き!」

 

 

師弟が掻き鳴らす、闇のビート。

如何なる強者であっても、この死神の爆音から逃れることは出来ない。

 

 

冥府

  魔道

 

閻魔

  裁き

 

 

「音撃射!疾風一閃!」

「音撃射!風神怒髪!」

 

 

威吹鬼から受け継いだ技と、闘鬼が編み出した豪快な奥義。異なる風は互いに強め合うことで、鬼をも刈る旋風となる。

 

 

  

  

  

  

 

 

物語の最後を彩る多重奏。その主役を飾るのは他でもない、次代の王。

その新米の「鬼」は、炎の音撃を全ての己で叩き込む。

 

 

「行っけぇぇぇぇっ!!」

 

 

音撃時空連打

 

 

共鳴する五つの清めの音が、アナザー響鬼の全身を駆け巡る。

それでも、尚も倒れないアナザー響鬼。鬼もただ、全力の音をぶつけるのみ。

 

そして、全ての音撃が完全に一つになった時

アナザー響鬼の体が、爆炎の中で弾けた。

 

 

 

「負けた……私が……!?」

 

 

土塊を撒き散らし、人間の姿になった九十九が膝から崩れ落ちる。

鬼の仮面ライダーの勝利で、勝負は決した。

 

いや、まだ終わってはいない。

 

例え消える時間だとしても、九十九とヒビキの確執が残ったままだ。

それを伝えずして、バッドエンドを覆したとは言えないはずだ。

 

 

「九十九さん、聞いてください。貴女の前世…いや、もっと遠い昔の話を」

 

「私の……?」

 

「否ッッ!!聞く必要など…全く!皆無であるッ!」

 

 

壮間の言葉を罵るような口調で遮る声。

クロエと蜻蛉から逃れた、アヴニルだ。

 

 

「お前確か…タイムジャッカー!」

 

「この若輩極まる愚か者の言葉など、聞く価値は一切ッ無い!貴公はヒビキを恨んでいるのだろう?それがどうだ、こんな志半ばで折れるつもりか?」

 

 

ジオウは無視できない大きな二つの違和感を覚えた。

一つ、タイムジャッカーがまだ何かしようとしていること。

 

そしてもう一つが、「彼女の体からアナザーウォッチが排出されていないこと」。

 

 

「そうだ…私はヒビキを…!」

「ダメだ九十九さん!俺の話を聞いてくれ、ヒビキさんは九十九さんを!」

「前世の話?そういえば先祖返りは同じ運命を繰り返すのだったな!ならばヒビキは、前世でも貴公を裏切り続けたに決まっている!幾度の人生を汚された恨み、許せるはずがあるまい!違うか!」

 

 

アヴニルの言葉は虚偽も甚だしい。もし真実を知っているのなら、ヒビキに対するこの上ない侮辱だ。しかし、その煽りは九十九の憎悪を増大させるには十分過ぎた。

 

ジオウの説得など、九十九の憎悪の前では触れた途端に消え去ってしまう。

 

 

「あぁ……うあ゛ぁぁぁぁッ!!」

 

《ヒビキィ…》

 

 

九十九が声にならない叫びを上げ、体内のウォッチが再び起動。

 

アナザー響鬼が、復活を遂げてしまった。

 

復活だけで留まらないのを、その場にいる誰もが感じていた。アナザー響鬼の体から放出される、異常な熱気。腕だけだった紅が、全身に浸食していくように広がっていく。

 

ジオウは一度、これに似た現象を見たことがある。

それは拭えない敗北と絶望の記憶。白い怪物へと変貌した、アナザービルドと同じだ。

 

 

「素晴らしいィッ!吾輩の見立て通り、この娘はハイクラスアナザーへと進化を果たす!さぁオゼ!奴に『刀』を持たせるのだ!今ここに最強の王が誕生するッ!」

 

 

ゲイツを退けたオゼの視線の先には、アナザー響鬼にやられた際に手放された、双熾の刀が。

 

オゼは刀に向かって歩みを進める。

タイムジャッカーの目的の一つである「ハイクラスアナザーの覚醒」。それが目前に迫っているというのに、オゼは意外にも浮かない顔をしていた。

 

 

「……ダメ!」

 

 

オゼの手が届く寸前で、何かを感じた香奈が刀を取り上げた。

目を丸くして驚くオゼは、黙って手を差し出す。だが、香奈は唇を噛み、抱きかかえるように刀を持って離さない。

 

 

「それ…必要なんだ。渡してよ」

 

「いや!絶対に渡さない!もうこれ以上、あんた達の好きになんてさせないから!」

 

「つまり…それはわたしを妨害するってこと?

何の力も無いただの人間が?わたしの邪魔?この不愉快な障害にも意味があり、実験を高次なものに導くとするのなら…あぁそうか、そうか!そうだ!そうに違いない!そうに決まっている!何故ならナゼならなぜならッ!今、わたしは溺死寸前の知的探求心に酔いしれているのだから!」

 

 

悪い方向に吹っ切れた、もしくは何かが外れたようだった。

オゼは刀に興味を無くし、興奮しきった笑みを浮かべてアナザー響鬼の前に降り立つ。

 

 

「ありがとう!やっぱり予期せぬトラブルはわたしに世界を教えてくれる!あなたには感謝するよ、名前も知らない少女A!」

 

 

進化の最中にあるアナザー響鬼。その熱気を一身に受け、

 

オゼの手が、アナザー響鬼の体を貫いた。

 

予想外の行動に、全員が身構えた。

その中で最も激しく感情を震わせたのは、アヴニルだ。

 

 

「貴様ぁッ!何をやっているオゼぇぇぇッッ!!」

 

「アヴニル。わたしはね、思うんだよ。

今の彼女に刀を渡せば、ハイクラスアナザーが誕生する。でも…それは『やらなくたって分かること』なんだよ」

 

 

オゼはアナザー響鬼を殺したのではなく、彼女の体内の別次元―――アナザーウォッチが存在する次元に手を入れたのだ。そしてオゼは、そこでアナザーウォッチを握り、

 

砕いた。

 

 

アナザー響鬼の姿が崩壊し、再び九十九の姿へ。

それと同時に、オゼが袖越しに彼女の手首に触れる。その時、彼女の体に刻まれた「封魔の呪い」が、消え去った。

 

 

「妖怪『野槌』はウサギも鹿も人も食べる大喰らいの妖怪。何百年も封じ込められた妖の魂は、飢えて飢えて仕方無いよね。さぁ起きて、近くにご飯がいっぱいだよ」

 

 

九十九の様子が急変する。これまでとは比べ物にならない、悲痛に満ちた呻き声。腕や首に蛇の鱗が生じ、着けていたマスクも朽ち果て、変化して裂けた口が露になる。

 

永らく封じ込められていた野槌の力は、本能のまま餌を探す。餌はあった。オロチ現象で湧き出た、無尽蔵の魔化魍だ。

 

 

「体内でウォッチを破壊することで短時間ライダーの力は体内に留まる。そこで妖怪の力を解き放ち外から吸収される魔化魍の力で霧散を抑制。それどころか先祖返りという特異かつ強靭な肉体全部を媒介として魔化魍妖怪ハイクラス化寸前のアナザー響鬼全ての力が混然一体となって顕現する!あぁヤバいやばいヤバイ!これしかない!この上なく至上に凄く…楽しいっ!」

 

 

魔化魍たちが九十九―――野槌の口に吸い込まれ、その肉体を変貌させていく。

完全に妖怪化した九十九の体に、アナザー響鬼の力も融合し、骨格から肢体まで異形の存在に。

 

巨大魔化魍を遥かに上回る巨体。紅の鱗で覆われた胴体から、蜘蛛のように生える八本の腕。背中からは棍棒を持った人間の腕が二本伸び、魚類のような尾は動くだけで大木を薙ぎ倒す。

 

顔は響鬼のような紋様と歪んだ角、口元を封じる拘束具は引き裂かれ、顔を二分する程の大きな口が開き、喚き声を上げた。

 

紅く、醜く、規格外のその姿は、

見る者に「太陽」をも想起させる。

 

 

「もうこれはアナザーライダーという定義で測れない!髄の髄まで貪って!喰って!舐って!わたしの子供、最強の魔化魍ッ!そうあなたの名前は…魔化魍『ソラナキ』っ!!」

 

 

―空亡―

黒雲を帯びた太陽の姿で描かれる、百鬼夜行の終わりに現れる最強の妖怪。全ての妖怪を踏み潰す万能の力を持つ。その正体は百鬼夜行が明けて昇る太陽を妖怪として見なした、2006年以降に認知されるようになった創作妖怪であるとされる。

 

 

「嘘だろ……どうすればいいんだよ、あんなの……!」

 

 

どれだけ心が強くあっても、この暴力と理不尽が具現化したような化け物を前にすれば、誰だって絶望せずにはいられない。

 

しかし、折れれば何かが変わるわけでも無い。

各々は己の武器を握り直し、最強の魔化魍「ソラナキ」に抗う。

 

 

「やるしか…ない!」

 

 

野ばらが脚を凍結させ、凛々蝶とクロエ、蜻蛉がそれの切断を図る。

しかし、凍結状態は一秒と保たず、ソラナキの身体は隅々まで刃の立たない鋼鉄の強度を誇る。

 

残夏でも理性の無い存在の思考は視えないし、動きが見えたところでどうこう出来る物ではない。その圧倒的な大きさに対しては、変化したカルタでも足止めにすらならない。

 

ソラナキの腕が地面に刺さるだけで地割れが起き、大地が崩壊する。触れた場所から生命が吸われるように、足元の草木は瞬く間に朽ち果てる。

 

ジオウ、ゲイツ、そして四人の鬼。彼らの攻撃もまるで意味を成さない。

魔化魍である以上、音撃でしか倒せないのだが、この図体でありながら音撃を叩き込む隙がまるで無い。

 

 

ソラナキが大きく動いた。棍棒を持った、背中の腕。

 

 

「―――避けろォっ!!」

 

 

刹那後の死。それを感じ取った裁鬼と闘鬼が、ソラナキの攻撃軌道から全員を逃がした。

 

大きく振りかぶった、ソラナキの一撃。

 

響く轟音。

棍棒が叩きつけられた大地は塵になり、塚の半分と悟ヶ原家の屋敷が、一撃で破砕された。

起こった熱風に触れただけでも、植物は瞬く間に灰に還る。

 

 

強さを測る次元ではない。災害と言うにも生温い。

これは、一つの終末や終焉と言って然るべき存在だ。

 

 

「げぇ…ちょっとこれヤバいでしょ。どーしよ」

 

「退くに決まっておろう!あんなモノに王としての価値など無いわッ!」

 

 

ヴォードとアブニルは、恍惚と笑うオゼを置いてこの時間から消え去った。

 

オゼが作り出したソラナキを倒さなければ、アナザー響鬼を倒したことにはならない。しかし、端的に言ってそれは不可能だ。勝てるはずがない。

 

それでも戦うしかない。世界を喰らう化け物を野放しには出来ない。

 

何より、壮間は約束した。

香奈に「王になる」と、ヒビキに「九十九を救う」と。

それを投げだすことは、今の壮間には出来はしない。

 

 

ソラナキが再び動いた。

今度はさっきの逆方向に腕を向ける。次の一撃で、ここら一帯は完全に崩れ、千年桜も木端微塵だ。

 

覚悟を決める暇もないまま、無造作に

その腕は振り下ろされた―――

 

 

 

「遅くなった、すまない」

 

 

 

軽い音。その後に轟く衝撃音。

ソラナキの一撃を、彼はただ一人で弾き返した。

 

逞しいその背中は、眼前の絶望の化身よりも、大きく見えた。ソラナキを前に誰もが絶望したように、彼の背中は誰もを鼓舞し、希望を与える。

 

 

「ヒビキさん!」

 

 

卍里がその名を呼ぶ。

仮面ライダー響鬼。壮間に負けた彼は、ある事に気付かされた。

 

 

「壮間、卍里。オマエらは、俺を強いって言ったな。

でも違う。気付いたよ。俺は何も強くなんか無い」

 

 

壮間の拳に、たった一撃に、ヒビキは完敗した。

 

何百年も鍛えた。これだけ強くなっても無理なら、諦めるしかない。とんだ驕りだ。二十年も生きていない彼にさえ、勝てないくせに。だから、

 

 

「もう少し足掻くさ。弱い奴なりに、みっともなく。俺はオマエ達の……“師匠”だからな」

 

 

彼女に好かれるために走った、始まりの日。

あの日の少年、飛牛坂彦匡は強さを得て、今そこにいる。

 

 

「見てな、俺の背中を」

 

 

響鬼の手に握られた、「響鬼」と彫られた短い刀。

一度目の人生で、死を迎える前日。九十九に渡された物だ。

 

響鬼の妖気に反応し、刀が大きく燃え上がる。

四百年の時を経て錆びついた刃が、息を吹き返すようだった。

 

そして、その刀は赤い刀身の機工剣に変化を果たす。

 

 

「―――響鬼、装甲」

 

 

響鬼の身体が、今一度炎に包まれた。

燃え盛る烈火の炎は、響鬼の身体を紅く染め上げる。

 

「牛鬼」の力、「響鬼」の力、彼が積み上げた「時間」が一つとなり、練り上げられる究極の「装甲」。

 

 

装甲(アームド)響鬼

彼が辿り着いた、強さの極地。

 

 

「もう約束を違えない。さぁ…勝負だ」

 

 

欠片も無い理性の代わりに渦巻く、果てしない憎悪。

ソラナキは、奥底から湧き上がる感情を絶叫した。

 

二本の腕が、響鬼の命を奪わんと迫る。

 

響鬼は刀―――装甲声刃(アームドセイバー)を下げ、片脚を後ろに滑らせ、回避の素振りを見せない。

彼の全ての神経は、敵を屠るために、限界まで研ぎ澄まされた。そして、

 

一瞬きの間に、ソラナキの脚が三本、腕が一本、

攻撃の一つも響鬼に届かせることは出来ず、音を立てて地に落ちた。

 

 

「え……?」

 

 

その光景に、オゼの笑いが止まった。

ソラナキの身体は当然のように再生する。だが、その隙に響鬼は懐に潜り、ソラナキの胴体を燃える刃で切り裂いた。

 

 

「ありえない…なんで!どうして!わたしのソラナキは最強のはずなのにっ!?」

 

 

オゼの叫びなんて、響鬼にとっては心底どうでもいい。

 

ソラナキは腕を振りかぶり、またあの一撃を放とうとする。それに合わせ、響鬼も剣を構えた。

 

 

「……はぁっ!!」

 

 

同時に解き放たれた衝撃は、空気を震わせて鍔迫り合う。

響鬼が放つ全力の斬撃は、地形さえ変えるソラナキの鉄槌をも凌駕し、それどころか十分な威力を残したままソラナキへ到達。棍棒を粉砕し、そこから伝播するように腕や胴体の半分を消し飛ばした。

 

 

仮面ライダー響鬼は“強”の戦士。

強さとは、時間であり生き方そのもの。憧れたその背中はやはり、まだ遥か遠くに。

 

 

「鬼神覚声」

 

 

変形させた装甲声刃に、響鬼の声を注ぎ込む。

音撃の到達点。それは、己の「声」を刃に宿して邪気を断つ、究極奥義。

 

 

 

音撃刃

鬼神覚声

 

 

 

業火の刃がソラナキに迫る。

オゼは時間を止めようとするも、千年桜の力場がそれを許さない。

 

 

「帰って来い……ツクモ!!」

 

 

鬼神覚声はソラナキの体と、彼女に巡る魔化魍とアナザー響鬼の力だけを断ち切る。

その斬撃は次元をも超え、崩れたアナザーウォッチの核を打ち砕いた。

 

 

 

 

 

声が聞こえる。

 

 

闇を裂いて近づいてくる声は、

とても懐かしい、熱い声だった。

 

 

 

「………彦匡……」

 

 

 

ソラナキの体が弾けた。

 

偽りの太陽は消え、百鬼夜行が明ける。

千年桜の桜吹雪の中で、鬼に抱きかかえられた少女は、彼の顔に触れて涙を流した。

 

 

「ごめんなさい……私ずっと……気付けなくて……!」

 

「あぁ…お互い様だ」

 

 

遥かな時を超えて、ようやく届いた約束。

その日、一つの長い戦いが終わりを告げた。

 

 

 




響鬼は最強のライダー。だからこそ、最強の装甲響鬼を出しました。
はい、響鬼アーマーの影薄いとか言った奴、謝るから職員室に来なさい。

魔化魍「ソラナキ」は、本文にも書いた通り、創作妖怪「空亡」がモデルです。妖怪として認知されるようになったのが「仮面ライダー響鬼」よりも後の事なので、この作品で魔化魍として出すのは丁度いいかなって。

次回はエピローグで、今度こそ終わりです!

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