仮面ライダージオウ~Crossover Stories~ 作:壱肆陸
2005年の槌口九十九が変身したアナザーライダー。改変された歴史では響鬼を倒し、妖怪「守り鬼」として13年間先祖返りを過激に守護し続けた。
音撃、鬼爪、鬼火などの鬼の能力を備えているが、特殊な能力は持ち合わせていない。しかし、変身者の九十九はヒビキの元弟子であり、極めて優れた才覚を持っていたため、戦闘能力は他のアナザーライダーを圧倒するレベルである。一定条件下で撃破しない限り、何度でも蘇る。
千年桜のソラナキ
アナザー響鬼紅が妖怪「野槌」の能力で他の魔化魍を喰らうという、極めて特殊な生育環境で生まれた魔化魍。巨大魔化魍をも凌駕する巨躯を持ち、振るう棍棒は大地を砕き、触れた生命を無に還すと言われる。正真正銘最強の魔化魍。
デザインモチーフは「牛鬼」+「オロチ」+「ツチグモ」+「ロクロクビ」
キャラ紹介長くなりました146です。
遅れたのはマリオしてたからですね。はいすいませんでした。マリオギャラクシーは一週目全クリ致しました。
今回は前回のタイトル詐欺の名誉挽回、本当に内浦へ行きます。
一応補足を入れますと、今話が進んでいるのは「(ほぼ)原作通りに劇場版で完結したラブライブサンシャインの時間軸」です。
「ここすき」(詳細は前回の前書きで)、是非ともよろしくお願いします!
「Aqoursの高海千歌さんと、渡辺曜さん!!??」
静岡に修学旅行に来た壮間たち。そこで香奈がスクールアイドルAqoursの母校、浦の星女学院に行こうと説得をしていたところに現れたのは、元Aqoursの二人だった。
「え…でも、そんな事って…っうあっ!?」
「す…すいません!あ、あ、あの…サイン…ください!」
どこからか取り出した色紙を差し出す香奈。緊張と動揺の様子だが、裏腹に目の前の壮間を突き飛ばしたほど血眼になっている。
「サイン…!?えっ…どうしよう、曜ちゃん書いたことある?」
「前に何回か…なんか文字アートにするのがいいって聞いたことあるよ。って千歌ちゃん大きいって!そっち半分は私が書くから!」
一方、千歌と曜は突然のことに若干浮かれているようだった。功績に反してサインは慣れていないらしい。
「ありがとうございます!えへへ…どうしようソウマ、サインもらっちゃったぁ」
「うん…そりゃよかった。すごい嬉しそう」
「こっちこそありがとうだよ!あっそうだ、ついでに握手もする?」
「こらこら、あんま調子乗らないの千歌ちゃん。本題それじゃないし」
曜の言葉に、緩み切った顔の香奈以外は気を取り直す。
幽霊が現れると噂になっている浦の星女学院の廃校舎。彼女らは、その話に食いついてきたのだ。
咳払いの後に話を切り出したのは、千歌だった。
「さっきの噂…浦の星に幽霊が出るっていう話。それに合わせて、人が消えるって話も知ってるよね?それで消えた人っていうのが…廃校当時の生徒の子たちなんだ」
「……それ、やっぱりもしかして!」
香奈がスマホを取り出し、ある画面を見せた。
それはあるSNSアカウントのページ。半月ほど前から一切の更新が止まってしまっている。
「これAqoursの津島善子さんのツイッターアカウント。その後は小原鞠莉さんと黒澤ダイヤさんと黒澤ルビィさんのインスタも止まってる。これってまさか…」
「……うん。最初に内浦にいた善子ちゃんと花丸ちゃん、梨子ちゃんがいなくなって、心配して帰ってきた当時三年生の三人とルビィちゃんもその後…まだ消えてないのはもう私と曜ちゃんだけ。でも、何も考えずに行ったら私たちもきっと…
私たちはみんなを助けたい!だからお願い、私たちと一緒に浦の星に来て!あなたたちなら、よくわかんないけど大丈夫な気がするんだ」
見ず知らずの相手に頼むことではない。しかし、仮面ライダーの力を持つ壮間たちにそれを頼むのは、結果として最適だ。容易く起きた奇跡に壮間は目を見開きつつも、香奈と視線を合わせ、お互いの決断を確認した。
「わかりました、俺たちで良ければ―――」
「駄目だ」
その言葉に横入りしたのは圧のあるミカドの声。話を聞けど、反対の姿勢を崩さないミカドに、香奈は隠す気の無い難色を見せる。
「はぁぁぁぁ?Aqoursの御二方の頼みだよ?やるに決まってんじゃん、やる流れなの!無駄に反対しないでくれる?テンポ悪いよ?」
「そもそも距離がある上に探索も時間を割く。睡眠時間を削ってまで調べる価値があるのか。それとも昼間に行く気か?それこそ論外だ。例え旅行と言えど集団行動を乱す者は立場と信用を失い、最悪重大な損害を招く。仮にも集団の一員である以上、その行動は余りに軽率だ」
饒舌に繰り出される理論武装の全弾発射。それに対し香奈の足りない頭に浮かんだのは、苦し紛れの反撃だけだった。
「へ、へーんだ。えらく抵抗するじゃん。もしかして…ミカドくん幽霊怖いんじゃない?」
またも正論が返ってくると思っていた。
しかし、返ってきたのは彼らしくない沈黙。
「……」
香奈はここぞとばかりに即座に理解した。苦し紛れがまさかのラッキーパンチだ。そして、彼女は弱みに平気でつけこめる程度には性根が悪い。
「あー、はいはい。そーゆーことならオッケーオッケー。てか、そもそもミカドくんいなくてもソウマいるじゃん!幽霊も平気な強ーいソウマに頼っちゃうし。ねー、ソウマ」
「いや俺はミカドいた方が安心というか…」
「ねぇぇぇぇぇぇっ!?」
「あっはい。そっすね」
「とゆーわけで、幽霊が怖いミカドくんは大人しく!引きこもって!みじめーに留守番!ソウマだけでアナザーライダー倒しちゃうから!さー行きましょう皆さん!」
「待てッ!!」
釣れた。香奈の煽りが的確にミカドのプライドを貫いた。
「怖いだと?そんなわけがあるか。行けばいいんだな、上等だ」
言い終わる前に無駄に強い足取りで旅館の出口に向かう。
何はともあれ、浦の星行きは決定。千歌と曜は胸をなでおろすと同時に、並ぶ三人の背中に消えた仲間たちの影を重ねていた。
「……で、どうやって行くの?内浦まで」
「曜ちゃん何言ってんの。そんなの電車とバスに決まって……
あーっ!こんな時間に走ってるわけないじゃん!」
頼んだ身であるが。交通手段がない事に千歌は今更気付いたようだ。
しかし、それは壮間とて分かっている。だから少し離れた広い公園まで移動したのだ。
「さっき呼んだので、そろそろ来るはずなんですけど…あ、アレです」
壮間が指さすのは上空。指先が示す方向から星が、いや、何かしらの大きい飛行物体が向かってくる。その光景は砂浜でのデジャヴを感じさせるが、降りてきたモノはあの時よりも想像を絶していた。
「…未来ずら……」
「花丸ちゃん乗り移ってるよ千歌ちゃん」
移動手段はもちろんタイムマジーン。最高速度は時速722.3km。東京から15分足らずで静岡に来る圧巻のスピードだ。
ちなみに内浦まで行くには5分で十分。
「時間無いって何だったの?」という香奈のツッコミと、「それはそれだ」というミカドのガバガバ反論が赤いタイムマジーン内で繰り広げられた。
______
あっという間に内浦へ到着。それはつまり心の準備をする暇も無いということで、目的地の浦の星女学院を前にして狼狽しまくってる人物がいた。
「あぁぁぁぁっ!!浦の星…浦の星だ…!本物だ…!いや、分かるよ。今は喜んでる場合じゃないってことは。Aqoursの皆さん助けに来たんだから。でもさぁぁぁ…あの浦の星に、元Aqoursの初期メンバーお二人と一緒に来れるってもう…もうさ…あぁっ!」
言うまでも無く香奈だ。校門の前で左右ウロウロしながら、数秒おきに悶えている。楽しそうで何よりだと壮間は思う。
心の準備が出来ていないのは香奈だけではない。
千歌と曜もそうだ。ここに来るのは、Aqoursとして先に進むことを決意した、あの日以来。
「開いてる…」
千歌がそう零した。校門が少し開いていた。
あの日もそうだった。でも、千歌はそれを閉じ、ここを思い出の中に仕舞った。お別れをしたはずだった。
校門に手を伸ばすのが、少し怖い。
身勝手な考えだとは理解してる。でも開けてしまえば、楽しいままで終わった浦の星での時間が、上書きされてしまうようで―――
「何をしている早く行くぞ」
引きつった顔と凄まじい眼力で、ミカドが校門を開けた。勇み足な彼に壮間と香奈も続く。
「そうだよね…ここに懐かしみに来たんじゃない」
彼らと一緒に来て、本当に良かった。思い出も何も関係のない彼らがいたから、気付くことが出来た。
楽しい思い出を汚さないようにするんじゃない。
楽しい思い出のまま、先に進むため戦いに来たんだ。
「行こう、曜ちゃん。みんなを助けよう」
「……うん」
力強く進む千歌の姿。ずっと見てきて、ずっと変わらない背中。
やっぱり遠い。曜はそう感じてしまった。
______
校舎は長らく使われていないのに鍵も何も掛かっていなかった。つまり、ここに誰かが来ていたという証拠。幽霊かどうかはともかく、本気で調べる必要がある。
そこで、壮間たちは二つのチームに分かれることになった。
提案+強行したのはミカド。幽霊が怖くないとアピールしたいのか、早く帰りたいのか、とにかく心情穏やかじゃないのは伝わった。
そうして分かれたチームの一つ目、壮間と曜は二階を散策していた。
「広い…ですね」
「だよねー!これ私たちがいた頃、教室すごい余ってたんだよー」
これで会話が終わった。気まずい。
壮間は人見知り、曜もそんなにグイグイ来るタイプではないので、さっきからブツ切りの会話が続き、その度に微妙な空気になっている。
夜も深まってきた。懐中電灯を頼りにしているが、それがかえって不気味だ。壮間はさも平気な風に振舞っていたが、実際は怪談すら苦手な部類。何かが出たら曜を置いて逃げない自信がない。とりあえず内心謝っておく。
「壮間くんってさ…」
「は、はいっ!すいません!」
「なんで謝るの…?」
「いや、つい…それで、なんですか?」
「あ、うん。壮間くんって、何か得意なことってある?お姉さんに教えてみなよ」
曜から投げられた、突拍子もない話題。気を使ってくれたのか分からないが、壮間は変に勘繰らず素直に答えた。
「いや…別に」
「やっぱり。でも変わりたいって思った。それで今、夢中になってることはあるよね?」
やっぱりと言われたのが少しグサリと来たが、その次の言葉に少し思考が止まった。
前までなら即答で「無い」だった問いだ。でも今は、心当たりが確かにある。
既に三つの物語を巡り、たくさんの主人公を見てきた。自分もそうなれるんじゃないかと、僅かに思い始めている。
「夢中」。その単語は、驚くほど壮間の心を的確に表していた。
「…はい。詳しいことは…ちょっと恥ずかしいんで言えないですけど」
「ふーん。じゃあ壮間くんも普通怪獣だね」
「普通…怪獣?」
「普通星に生まれた、普通怪獣。自分を普通だと思ってて、ずっと変わりたがってた、君みたいな女の子がいたんだ」
そう話す曜の視線の先は、廊下の奥。その瞳に移しているのは過去の光景だと、なんとなく分かった。
「でも私はそんな風には思わなかった。普通なんて嘘っぱち。ひたすらに夢中になって、みんなを巻き込んで…その子がいたから私たちは輝けた。学校は救えなかったかもしれない。それでも…輝きは確かにそこにあったんだよ」
誰の話をしているのか、それも分かった。
曜が抱いているのは多分憧れだ。それも、近くで輝くものに対する憧れ。壮間の香奈に対するそれと、よく似ているように感じた。
「でも、それはもう3年も前。楽しかった記憶も遠くなってきて、あの時いっしょに輝いてたみんなも…いなくなっちゃった。そんなわけないって分かってるんだ。それでも…たまに思っちゃうんだよ。あの時間は、ただの夢だったんじゃないか…って」
きっと溜め込んでいたのだろう。千歌には言えなかった、関係の無い壮間にだから言えた、溢れ出すような曜の言葉。
「…悲しいですね」
いくら努力したって、やりたいように一生懸命になったって、その輝きは永遠じゃない。太陽だっていつかは死ぬ。人間の短い命ではどう頑張っても、すぐに終わりが来る。その後はきっと何も残りはしない。
これを悲しいと言わずして、何と言うのだろうか。
珍しく会話が続き、曜について行った先はある教室の前。
曜自身も、ここに来てしまったことを驚いているようだった。
「ここって…」
そこは、3年前に彼女たちが過ごした教室。
誘われるように、そっと、曜はその扉に指先を乗せる。無意味に早まる鼓動を感じながら、扉に掛けた手をゆっくりと横に……
『おはよう、曜ちゃん』
誰かの声が、そう囁いた。
瞬間、視界に飛び込む光。その眩しさが、夜闇の黒一色を塗り替える。
そこに広がるのは明らかな非現実。0時を示す時計が呼んだ明晰夢。
二人は、女生徒で賑わう教室の中に立っていた。
_______
一方、ミカドと香奈と千歌のチームだが。
「これで俺たちが担当する区域の調査は終わった。そこの女が言う消えた人間など影も形も無い。幽霊の噂も虚言と証明された。早急に帰るぞ」
「ちょ…ミカドくん…速いって…」
「そうだよ…曜ちゃんたち、まだ二階に…はぁ…」
香奈と千歌はミカドの極端な速足に引き回され、息も絶え絶えに。
実際特に何も見つからなかったのだが、それにしてもミカドの焦りが顕著すぎる。これには思わず千歌も一言。
「ミカドくん…だよね。そんなに幽霊怖いの?」
「馬鹿を言うな怖くなどあるはずがない殺すぞ貴様」
「いやいや無理あるって…そんな恰好で言われても」
千歌と香奈がミカドの姿を今一度確認。
白装束に線香を大量に持った両手。塩水を体にかけたらしく、磯の匂いがプンプンする。誰がどう見たって除霊態勢MAXだ。
「これは装備だ。この時代の対幽霊武装を揃えたに過ぎん」
「それ怖いってことなんじゃ…」
「うんうん」
「揃いも揃ってこの時代の女は馬鹿しかいないのか。幽霊は敵だ!しかも物理攻撃無効、防御透過、浮遊能力持ち、その上攻撃手段は呪術で回避のしようがない!こんな厄介な相手に対策をしない方が遥かに愚かだ!そもそも一度殺した敵の魂が再び襲いに来るなど悪夢以外の何者でもない!」
「あー怖いってそういう…」と、二人は揃って心の中で呟いた。流石は未来人の戦場育ち。幽霊の怖がり方も現代離れしている。
「…あれ?」
「ッ!?」
香奈の視界を何かが通過した。漏れ出た声に一瞬で反応し、塩を手に握るミカド。
「誰かいた!?」
「千歌さん…今、確かに何かがそこに…」
現在一同がいるのはある教室。香奈は黒板の前、教卓を指さした。それを千歌が確認に行こうとした瞬間―――
「死ねぇ!!!」
ミカドが放り投げた机で教卓が吹き飛んだ。
衝撃の光景に香奈と千歌の口が開く。というかこの男、今幽霊に死ねと言った気がする。
激しい音と共にひしゃげた教卓の影から飛び出したのは、幽霊……ではなく、犬だった。
「犬…スコットランド原産 シェットランド・シープドッグ、通称シェルティか。驚かせやがって」
「驚いたのはこっちなんだけどなぁ…でも、いまどき野良犬なんて珍しい…って、どうしたんですか千歌さん?」
「ううん、でも…鼻の毛色が左右で違う。こんな感じの犬、誰かから聞いたような…」
何処かで聞いた。その記憶は、一番楽しかった時間の何処か。それを手繰り寄せるため、千歌は犬に手を伸ばす。
しかし、その指先は犬の黒い毛をすり抜けた。
目を凝らすとその体は半透明。それは正しく、幽霊のようで。
「千歌さん!」
時計は0時を過ぎている。香奈の叫び声の向かう先には…
醜悪と恐怖の象徴のような、真っ黒な体に瞳を宿す、本物の『幽霊』が浮かび上がっていた。
「……」
「え…?」
千歌が振り返り、悲鳴を上げるよりも早く、幽霊は千歌の耳元で何かを囁いた。
次の瞬間、千歌の姿は淡い光に包まれて消失。闇に浮かび上がるしわくちゃな太陽のような、その顔が次はミカドに向けられた。
「ッ……!」
ミカドは叫んで怖がるような真似はしない。ただ真っ先に全速力で教室の出口に向かう。しかし、開いていたはずの扉は閉まり、鍵ではない何かによって固く閉ざされている。
すると今度は迷いなく窓に向かってダッシュ。身を屈めて窓に飛び込むが、窓の前の透明なバリアに阻まれ、激突&墜落。香奈とミカドは、一切の逃げ場を失った。
「千歌さんを…返せぇぇぇっ!」
塩を撒きながらアクロバティックに逃げ惑うミカドに対し、香奈は掃除用具入れのホウキを固く握り、幽霊に立ち向かう。興味がないように背中を向ける幽霊に、香奈は全力でホウキを叩きつけた。
当然、それで撃退できるのは小動物が関の山。ホウキは軽い音を立てて幽霊に当たっただけ。背中を小突かれた幽霊の首はグリンと回り、漆黒の眼が香奈を見つけた。
だが、香奈の心に恐怖より先に浮かんだのは、大きな発見。
幽霊なのにホウキが当たった。つまり
「『GHOST』、『2015』…!ってことは!
ミカドくん!こいつ、幽霊なんかじゃない!年が書いてある!アナザーライダーだよ!」
一呼吸の後には、幽霊―――否、アナザーゴーストの体は勢いよく蹴り上げられ、天井に張られた己の結界に衝突。
「殲滅だ」
アナザーゴーストを踏みつけたミカドは、殺意に満ちた気迫でドライバーにウォッチを装填した。
______
「なんだよ…これって…今真夜中のはずだろ!?」
曜と壮間が迷い込んだ、不思議な空間。窓からは太陽の光が指し、この廃校舎の中で普通の学校のように半透明な幽霊の女生徒が集まり、楽しそうに過ごしている。何を取っても虚構でしかない光景だ。
「みんな…どうして…!」
曜の眼差しに込められたのは、驚きと、喜び。その反応で壮間も察した。
ここにいるのは行方不明になった人々。廃校当時の浦の星女学院の生徒たちが、当時の姿でここにいるのだ。
懐かしそうに、フラフラとその中心に向かおうとする曜を、壮間の手が掴んだ。
「駄目です曜さん!こんなの絶対おかしい!」
「でも…みんながそこに…!」
「分かってます!でも、こんなのアナザーライダーの仕業に決まってる!だから、こんな空間ぶっ壊して、俺が皆さんを助けます!」
迷いは罪。2014年で学んだ心を反芻し、壮間はドライバーとウォッチを構えた。
「変身!」
《ライダータイム!》
《仮面ライダー!ジオウ!!》
「壮間くん!?なに、それ…!?」
「さっきの、夢中になってる事。それがこれです!」
壮間の変身に曜は目を丸くする。その衝撃は思い出に惑っていた曜を叩き起こし、その胸に高揚と期待を抱かせた。
この心地の良い空間は、あの時間そのものだ。でも決して現実じゃない。人知を超えた何かで友達が捉えられている、それこそが現実なのだ。
曜の心はまだ揺れている。でも、彼ならこの幻想も、輝きへの未練も断ち切ってくれるかもしれない。
「さっき君たちと会えたの、やっぱり奇跡だったんだ…!」
ジオウが扉を開けても、日差しが照った非現実。この空間は学校全域に広がっているようだ。そうなると、変身したはいいが打つ手が思いつかない。
「まずアナザーライダーを見つけないと。きっと学校のどこかに…」
そう思った矢先。本当に直後の事。
幻想空間にヒビが入り、ガラスが割れるように暗闇から二つの影がジオウに突撃した。
一つは仮面ライダーゲイツ。もう一つは…まさに今探そうとしていた、アナザーゴーストの姿だった。
「痛った…ミカド!どうなってんのかわかんないけど気を付けろよ!って聞いてねぇし!」
ジオウに目もくれずアナザーゴーストと戦闘をするゲイツ。無駄に怖がらせたことへの仕返しか、いつもより怒りのオーラが激しい気がする。
「あぁもう!俺も戦うって!」
「なんだ貴様、この幽霊もどきは俺が始末する!貴様はそこで寝ていろ!」
「二人の方がいいだろどう考えても!いい加減、ちゃんと協力ってのを…」
ジオウとゲイツで揉めている間に、アナザーゴーストの姿が消える。
と思ったら死角に出現し、衝撃波で二人の体を弾き飛ばした。
幸い、大したダメージではない。そこでジオウとゲイツはそれぞれ反撃を試みるも、無重力的なぬるりとした動きで回避されてしまう。まるで煙に殴りかかっているようだ。
「貧弱な部類だが、厄介さは一級だ。それなら…」
ゲイツはジカンザックスを装備。そのままジオウに投げ渡した。
「時間短縮だ、協力させてやる。狙撃で奴の動きを封じろ」
「お前なぁ…まぁいいや」
ジオウは渡されたジカンザックスをゆみモードに。言われた通り、宙に浮かんでゲイツを翻弄するアナザーゴーストに照準を合わせた。
しかし、放たれた矢はアナザーゴーストから反れ、あらぬ方向へ。
「下手糞か貴様!!」
「弓矢初めてなんだよ仕方ないだろ!」
見事に外れた壮間人生初の矢。だが、その結末は予想外のものとなった。
反れた矢が壁を貫く前にアナザーゴーストが割って入り、その体に矢が突き刺さったのだ。
「なんだと…!?」
「学校を…守った?」
その上当たり所が悪かったのか、アナザーゴーストは倒れたまま起き上がらない。
なんにせよ好機だ。今のうちにトドメを刺さんと、ゲイツがドライブウォッチを構えた。
刹那、ゲイツの体を刺す、電撃のような戦慄。
「ッ…!?」
アナザーゴーストが、ゾンビのように、心臓に引っ張られるように立ち上がった。その虚無を見る眼に変わりはない。だが、ゲイツは克明に感じ取ってしまった。
アナザーゴーストの、『開眼』を。
「グッド、モーニング…」
震えて淀んだ声で、アナザーゴーストが声を発した。
それはまるでバンシーの宣告。死を告げる叫び声。
「ハハ…ハハハッ!」
亡者の動きから一転。アナザーゴーストは地面を蹴り、一瞬でジオウに接近。ビビッドとも言える体捌きでジオウに回し蹴りを放つと、そこから一切の無駄がなく、且つ予測不能な柔軟な動きで、途切れさせずジオウに連撃を叩き込んでいく。
「なんだコイツ…急に強…すぎるっ!」
カウンターを狙うも全て読まれる。今度はアナザーゴーストが浮かび上がったかと思うと、ジオウの頭を掴み、放たれるのは首を狙って残像が生じる速度のボレーキック。
まるで死神の鎌。生身で喰らえば斬首不可避を予感出来てしまう。
だから、ジオウはその瞬間にジカンギレードを呼び出した。
その場所は首元。剣はその時だけ盾となり、アナザーゴーストの必殺を防御する。
「やっと隙を見せたな」
手練れは一瞬の好機を見逃さない。
そのタイミングを見計らい、ゲイツはアナザーゴーストに熱を帯びた拳を炸裂させた。
《タイムバースト!》
その一撃でアナザーゴーストは校舎の壁に叩きつけられ、爆発。
裁鬼との修行で身に着けた防御が無ければ負けていた。もう少し戦いが伸びていても同様だ。それほどにアナザーゴーストの豹変は狂気だった。
怪奇としか言えない戦いだったが、なんとか勝利を収めることが出来たのだった。
「まだ終わっていない。幽霊の正体を見るまではな」
「そうだった!早くしないとすぐに復活して…」
壮間の心配は的中し、煙の中から人影が逃げ出した。その姿を見ることも叶わず、廊下の曲がり角へ。
「あっ…待て!」
壮間もミカドも気付いていない。2018年でアナザーライダーを倒すという事が、別の時間軸への切り替えを発生させることを。
アナザーゴーストが一時的に撃破されることで、「アナザーゴーストが存在した歴史」が消え、「仮面ライダーゴーストが存在する歴史」が蘇る。
それにより、アナザーゴーストが作り上げた幻想空間は崩れ去り、幽霊にされていた人々の魂も、安置されていた肉体に還された。
「そうだ…私は…!」
その中の一人は、目を覚ますと同時に思い出した。
かつての戦いを、記憶を、心を、己の使命を。
再生を証明するように、その手には緑色の『眼』が握られていた。
______
「一足、遅かったか…」
二階から上がる爆炎と書き換わった世界を感知し、令央は奥歯を噛み締める。
彼が佇むのは浦の星女学院の屋上。厚い雲の先にある月に筆先を重ね、『彼女』が作り上げた世界に思いを馳せた。
「ハハハハッ!!どこまでも素晴らしい!いや、目覚ましいと言うべきか!泥臭く、それでも精巧に創られた結末を!土足で踏みにじる愚行…神々しいレベルで冒涜的だ!怒りを通り越し、私はこれを芸術として賛美しよう!」
令央は手に持ったスケッチブックから、二枚の絵を破り取る。
描かれているのはどちらも怪人。刺股を持ったクジラの怪人と、籠を被った青い鳥の怪人だ。
令央が二枚の絵を投げ捨てると、陽炎のように像が揺らぎ、その絵は現実へと昇華する。即ち、「ホエールイマジン」と「ブルーバードイマジン」―――「仮面ライダー電王」の歴史に存在した二体の怪人が、この時間に顕現した。
「見守らなければ。美しく、愚かしい、
______
爆発に紛れて逃げたアナザーゴーストの変身者を追う、ジオウとゲイツ。タイムジャッカーが介入する前にという焦りに反し、予想外の障害が現れてしまった。
令央が送り出した、二体のイマジンだ。
「怪人!?なんでこんなところに!」
「恐らく奴らは『イマジン』だ。だが、この時間に存在するはずが…」
ホエールとブルーバードが二人の進路を妨害。聞こえていた足音はあっという間に遠のいてしまう。ここで取り逃せば、またアナザーゴーストが復活する。また同じことの繰り返しだ。
「くっそ…なんだよコイツら、地味に強い!」
焦りが募るジオウの耳に、背後から別の足音が聞こえた。
《Stand by》
微かな電子音の後に、闇から生じた浮遊体がイマジンを退かせる。
幽霊のようにも思えたが、ヒラヒラと空中を舞う挙動と形状は、まるで風に飛ばされた服。いや、詳細に言えばそれは…
「空飛ぶ…パーカー?」
黒と緑のパーカーは、イマジン達の前に降り立った白い体に被さり、一体化。
そうして誕生した戦士は、瞬く間に二体のイマジンを蹴散らした。
フードを脱いだその戦士は、黒と白、そして緑の三色で構成された、単眼の仮面ライダー。
《テンガン!ネクロム!》
《メガウルオウド!》
《Clash the Invader!》
2015年の時間から追放された戦士の一人。
完璧なる戦士、仮面ライダーネクロム。
「彼の…朝陽の心は私が繋ぐ。
私の、心の叫びを聞け!」
最後に登場、仮面ライダーネクロム!本当に今回の章はいつにも増して「やりたい放題」を心がけるつもりです。お祭り男です。ちょっと雑感否めませんが…
色々と謎も残りますが、それは次回。まずはアナザーゴーストの目的と、令央の正体に迫りたいと思います。
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